OBA のソリューションで実現が可能なソリューションのバリエーションは非常に多くあり、業務の数だけバリエーションがあるといっても過言ではありません。しかし、似たような業務をまとめてカテゴリー分けをすることで、ある程度の基本シナリオを定義することができます。ここでは、いくつかの代表的なシナリオとその製品構成をご紹介します。
エンタープライズ コンテンツ管理は、企業がもっているさまざまなコンテンツの蓄積、管理、活用を包括的に行うソリューションです。コンテンツの種類は紙文章から、電子文章、画像、映像、音楽そして Web サイトのデータなど多岐にわたりますが、ここでは最も一般的なワークフローと連動した文書管理システムの構成を紹介します。
図1.4 ECM の文書管理、ワークフロー システムの基本構成
SharePoint Server を中核とした、文書管理、ワークフロー ソリューションの基本構成です。クライアントとしては InfoPath もしくは Excel、Word が多く採用されますが、社内の環境で Windows 以外の PC などが混在しているため、これら PC でも Web ブラウザでデータ入力ができるようにしたいという要望で InfoPath Forms Services を採用するケースもあります。ドキュメントの格納や検索、保管、管理は SharePoint Server が一手に引き受けますが、ワークフローに関しては SharePoint が提供している標準ワークフローを用いるケース、Visual Studio や SharePoint Designer を使ってカスタマイズしたワークフローを用いるケース、さらに SharePoint Server との連携機能をもつワークフロー ベンダーのソリューションを使用するケースと大きくわけて 3 つのバリエーションがあります。また、データ連携に関しては IIS 側に設定したカスタムの Web サービスを経由して基幹システムの既存データを入力支援機能として用いたり、SQL サーバー側にデータをストアしたもので入力支援を行ったりとさまざまです。なお、このケースではフォームの申請や承認などを行うため、SharePoint Server 自体がユーザーを認証している必要があり、Active Directory の環境が使われます。Active Directory と連動することによりシングル サインオンを実現し、ドキュメントごとに設定されている (直属の上長への承認) といったルールなども申請者が承認者を指定しなくても、実現できるようになります。
図1.5 文書管理ワークフロー ソリューションの SharePoint Server 2007 のサンプル画面
上記は具体的な UI のイメージの一例です。申請中の文章の状況や、承認が必要な文章、そしてそのユーザーが申請できる書類の一覧などが、SharePoint のアプリケーション ポータルの画面にまとまっています。ログイン ユーザーを SharePoint が認識していますので、ユーザーの職種や職位に応じて申請できる書類の一覧を変更して表示できるようにしておけば、すべての社員それぞれが申請できる申請書類を一か所にまとめたワンストップの申請書ポータルを構築することができます。
図1.6 Visual Studio を使い、入力支援機能をつけた Word の見積書
上記の画面は申請を行うための見積書のドキュメントの一例です。Word で作成されたこの見積書はVSTO により開発された過去の見積書のデータや商品のデータを再利用することができる入力支援機能がついています。また、申請のためのボタンに関してもこのドキュメント特有のリボンを表示し、不必要なメニューを非表示していることにより迷いにくく、わかりやすい操作性を実現しています。
ビジネス インテリジェンスは、データを可視化し、企業のさまざまなレベルでのさまざまな意思決定に役立つためのデータを整理、統合、分析を行うためのソリューションです。最近では多くのシステムがアナリストなどの専門家に依頼せずに、自分で必要な情報をまとめることができるシステムになっており、より使い勝手を高めたユーザー インターフェイスが提供されてきています。一口にビジネス インテリジェンスといっても、分析を行うデータと UI の見せ方などによって、システム構成がさまざまに変化しますが、ここでは分析のアプリケーションとしては馴染みの深い Excel と SharePoint Server の Excel Services をベースとしたダッシュボードをグループで共有しつつ、さらに Performance Point Server による統合業績管理を行うための分析システムの構成例をご紹介します。
図1.7 ビジネス インテリジェンスのシステムとしての基本構成
上記はビジネス インテリジェンス (BI) のソリューションの基本構成になります。ECM のソリューションと違い、こちらのソリューションは基幹システムの状況などにもよりますが、ノンコーディングでのソリューションの構築も可能です。この例では基幹システムのデータを BizTalk Adapter Pack と SQL Server Integration Services をうまく組み合わせ、夜間の基幹へのシステム負荷が軽い時を見計らってデータをSQLサーバー側に吸い出しています。SQLサーバー側にはデータウェアハウスが構築されており、データ分析用の多次元データベースも用意されているため、表示、分析させたいデータ内容に応じて Excel を使い、ノンコーディングで多次元データベースに接続し、ピボット テーブルやピボット グラフで分析を行ったり、SharePoint Server 2007 上に分析用のダッシュボードを構築したりすることが可能です。もちろん、必要に応じて Performance Point Server の機能を利用することで、経営者向けのバランスド スコアカードの構築も可能になります。
図1.8 SharePoint Server 上に構築された分析用のダッシュボード例
図1.8は SharePoint Server 上に構築されたデータ分析用のダッシュボード例です。グラフなどは Excel グラフでデータ接続を保持した環境を作成し、その後 SharePoint Server 2007 上に発行して SharePoint Server がもつ、Excel Services で表示をさせています。そのため、データ接続自体はサーバー側で動作している際も接続設定が保持されており、画面上でフィルタの設定をして簡単な分析が行えるようにしてあります。画面の上部のあるインジケーターも SharePoint Server がもつ KPI Web パーツで実現しています。
上記は簡単な分析画面のため、SharePoint Server 2007 のみの機能を利用して画面を構築してありますが、このダッシュボード上に Reporting Services で作成したレポートの内容を Web パーツの一部として表示させたり、パートナーが提供している Silverlight に対応したコントロールなどと組み合わせ、さらに動的なアニメーションなどを表示させ、よりデータの特徴を理解しやすくする View の構築も可能です。また、KPI の表示に関してもあまり複雑ではないデータであれば SharePoint Server の機能だけでも View の構築は可能ですが、より高度なスコアカードの管理が必要な場合には Performance Point Server のモニタリングの機能を活用し、各種インジケーターなどを構築します。
次はユニファイド コミュニケーションの例です。OBA ソリューションでのユニファイド コミュニケーションとの連携の例はまだ事例が多くない状況ですが、その中の 1 つである ECM ソリューションと連携した緊急承認の例を紹介します。
図1.9 ECM ソリューションと UC ソリューションの連係によるシステム例
このソリューション例では、ECM のソリューションで紹介した基本構成に加えてサーバー側に Office Communications Server 2007 を加え、さらにクライアント側に Office Communicator 2007 をインストールし、カスタム ワークフローの中で、承認者のプレゼンスの状態を見ながら、インスタント メッセージングで即時承認をもとめられるようになっています。また、申請中のドキュメントの状況をトラッキングする Web パーツ内で承認者のプレゼンスの状態をチェックしながら、まだ承認をもらえていないドキュメントに対してのインスタント メッセージングによる催促もできるようになっており、さらに必要に応じて IP Phone と連動して、相手に電話もかけられるように連携しています。
今回の例でご紹介しているソリューションは基本構成の例ではありませんが、1 つの実装案として紹介させていただきました。ほかにも BI ダッシュボードのスコアカードの状態をみながらスコアの担当者とインスタント メッセージングをして事情を確認したり、ダッシュボードの画面をみながら Web 会議を行ったり、ビジネス インテリジェンスシステムとの連携も可能です。
以上が OBA の基本的なアーキテクチャとソリューション シナリオになります。すでにお気づきかもしれませんが、それぞれのソリューションの基本例が本章の冒頭でご紹介したインフォメーション ワーカーの活動つまり、「コラボレーション」や「ビジネス デシジョン」そして「コミュニケーション」に密接にかかわっていることがわかると思います。そして、その組み合わせが無限にあるのと同じように、業務の内容に応じてソリューションがあり、どのソリューションに関しても the 2007 Microsoft Office system というインフラを活用することで、一貫した操作性の使いやすいソリューションを実現できるようになっています。
もちろん、業務シナリオによっては各種コンポーネントの使い方がかわってきますし、さらに別のアプリケーションやサーバー製品が必要になるケースもでてきます。また、企業の現場ではマイクロソフトの製品環境だけで情報系のITシステム全体が構築されているということは多くないと思いますので、現場の状況に合わせたカスタマイズが必要になってきます。そういった場合でも、OBA が提供するさまざまなサービスを利用することで接続を行い、データの再利用性を高めることができるのです。