第 3 回 すくすくスクラム 勉強会開催レポート
【すくすくスクラム】 鳥形 由希氏

更新日:2010 年 1 月 22 日

■はじめに

毎回、すくすくスクラムの冒頭で参加者が必ず目にするのは、「特定のやり方がうまくいくとは思っていません」と書かれたスライドです。

アジャイルやスクラムの何らかのプラクティスが、万能であるとは思っていないし、思わないで欲しい。
と、この勉強会を主催する江端さん達は主張します。そして「上手くいったときは、なぜ上手くいったのかを考えよう」と強調します。

スクラムを紹介しながらも、押しつけることはせず、参加者に自ら考えることを促す――すくすくスクラムというコミュニティのそんな姿勢を感じます。私が好きないつもの導入です。

■第 3 回 すくすくスクラム 〜流れ〜

今回は、このような流れでした。

  1. グループワーク: [課題]の書出し
  2. 林栄一さん講義「自己組織化ってなによ?」
  3. 全員参加! ミニワークショップ
  4. グループワーク:ミニワークショップで得た[気づき]の共有
  5. グループワーク:[課題]への[対策]と[最初の 1 ステップ]の検討

たった 2 時間なのに、盛りだくさんの内容です。次に、詳細をご紹介します。

■第 3 回 すくすくスクラム 〜詳細〜

  1. グループワーク: [課題]の書出し
    まず、4、5 人のグループに分かれ、現場の自分が属するチームで今抱えている課題について話し合います。もちろん、業務や立場上さしさわりのない範囲での発言になりますが、同じIT業界で開発に携わるほかの人たちが、どんな悩みを抱えているのか、知ることができます。

    課題を共有したら、ここで一度グループワークは中断。グループごとに、各自の課題を模造紙へ書き出しておきます。

  2. 林栄一さん講義「自己組織化ってなによ?」
    次に、林栄一さんによるレクチャーです。この日は、開発の進捗管理によく使われる 2 つの手法、WBS (Work Breakdown Structure) とタスクカンバンの比較を通して、指示型組織と自己組織化された組織との違いを講義してくださいました。

    普段、私たちは、WBS やタスクカンバンをなにげなく使っているかもしれません。ここでは、それぞれの手法のコンセプトや運用上の特徴を、林さんがユーモアたっぷりに説明してくれます。くわしくは、動画をごらんください。
    「WBS を使っているとそんなふうになりがちだなあ」と、思わずうなずいてしまう話がたくさん出てきます。また、カンバンを使った手法について、概要とメリット・デメリットが、分かりやすく説明されています。

  3. 全員参加! ミニワークショップ
    さらに、ここからしばらく、参加者全員でのワークです。今回は、次のことを行いました。

    • 参加者同士で 2 人 1 組のペアになります。一方は作業者、もう一方は管理者の役をします。
    • 作業者も管理者も、ラインでかこまれた中だけを歩くことができます (※あらかじめ、グループワークに使われるテーブルのまわりに、白いラインがひいてあります)
    • さあ、2 分間で 60 歩動きましょう! ただし、他の参加者とぶつかってはいけません。これを 2 回、次のルールでくり返します。

    <指令と制御の回>
    作業者は、管理者の指示どおりに動いてください。管理者が作業者へ出せる指示は、「右へ」「左へ」「前へ」の 3 種類だけです。管理者は、作業者に触れてはいけません。

    <自己管理の回>
    作業者も管理者も、各自が自分の意思で、自由に動いてください。

    やってみるとわかりますが、このワーク、<指令と制御の回>はとても難しいです。各ペアをみると、管理者役はぎこちなく指示を出し、作業者役は物言いたそうに指示に従っています。まわりの様子を見ていなくて、うっかり他の参加者とぶつかってしまう人達もいます。結局、移動の判断を他人に任せた状態で、狭い場所を 60 歩移動することは、ほとんどの人が達成できませんでした。
    ところが、<自己管理の回>はどうでしょう。大半の人が、60 歩どころか、100 歩も 200 歩も移動できました。他のペアの動きを見ながら、自分の判断で向きを変えて移動するようになると、先ほどの窮屈さがウソのように、目標の歩数を達成できました。

  4. グループワーク:ミニワークショップで得た[気づき]の共有
    そして、グループワークに戻り、先ほどのワークでの感想を話し合いました。たとえば、私がいたグループでは、次のような意見が出ました。
    • 管理者役として、的確な指示を出すことが難しい。作業者の立場に立つことがなかなかできない。
    • (作業者役は、終始無言を貫くというルールだったため) 作業者役からのフィードバックを得ながら進められないので、不安だった。
    • 作業者役として、自分の判断と管理者役からの指示の間にワンクッションあることが、もどかしかった。
  5. グループワーク:[課題]への[対策]と[最初の1ステップ]の検討
    最後に、1. で書出した各自の課題に再び目を戻します。レクチャーとワークを通して、いまや参加者は、指示型組織と自己組織化された組織の違いを、理論と体験で理解しています。
    自分が属するチームを自己組織化する組織に変えようとすることで、解決できる課題があるのでは? そのために、具体的に明日から何ができるか? 話し合いは、自然とそのような方向で盛り上がりました。
    グループごとに出た話題を全体に対して発表して、第 3 回 すくすくスクラムは終了しました。

■勉強会のプレゼンテーション資料

■学んだこと

ここからは、私個人の感想です。今回、次の 2 点が参考になりました。

  • 進捗管理の手法そのものへの理解
    私は、普段の進捗管理で、WBS を使っています。しかし、今回初めて、WBS の背景にある考え方や運用上の問題点を認識できました。それは、カンバンという手法との比較があったからこそです。
    カンバンで大切なのは、タスクの分担についてメンバー間で調整と協調が行われることと、カンバン自体に一覧性があることではないかと、私は感じました。カンバンそのものを自分の仕事場に取り入れられれば素晴らしいですが、すぐにそうできないにしても、WBS の上での「調整と協調」「一覧性向上」を実現できないか、検討していきたいと思っています。
  • 自己組織化された組織と指示型組織の違い
    自己組織化された組織だからこそ出来ることと、指示型組織だからこそ起きる問題について、考えることができました。抽象的ですが、「自己組織化された組織と指示型組織の違い」という観点を得たように思います。
    たとえば、今後、開発チームで何か問題が起きたら、「チームが指示型組織の様相を呈していないか。そこに原因の一端がないか」という視点で問題を観察し、チームワークを良くすることによる改善方法を探ることができそうです。

■おわりに

実際の開発の現場で、たとえアジャイルやスクラムの手法を使っていなくても、すくすくスクラムという場から学べるエッセンスはたくさんあります。
それらを部分的に取り入れ、改善していくことで、仕事を良くしていきたい。参加者の一人として、そんな思いで、いつも参加しています。

Get Microsoft Silverlight

プロフィール

鳥形 由希 (とりがた ゆき)
某 SIer 開発技術センター エンジニア

某 SIerで、自社向け業務システムの開発と開発現場への技術支援を主に担当する。
仕事では他の開発手法を採用しているが、アジャイルの良い部分を学んで仕事に取り入れるために、すくすくスクラムに参加している。
将来の目標は、技術者が気持ちよく安心して開発できるプロジェクトを運営できるようになること。

このページのトップへ戻る