若きクリエイタの "今" を訪ね "未来" を語るこのコーナー。第 3 回目はクリエイタにして起業家、それも国が選んだスーパークリエータという肩書きを持つスゴイ人に会ってきた。
場所は慶応藤沢キャンパス近くの瀟洒な建物、慶應藤沢イノベーション ビレッジである。ここは官民地域が一体となって起業を目指す研究者や学生のためのインキュベーション施設である。独特の髪型に人なつこい笑顔、そして新製品のロゴ入りネクタイといういでたちで迎えてくれた。
こうした施設で起業されたきっかけはなんですか?
「この施設に入ったのは妻が市の広報誌で公募しているのを見つけたから。つまり偶然ですね。でもタイミングが良かった。私はそのころ 10 年近くやってきたゲーム業界から少し離れてみようと、独立を考えていました。元々ゲームが好きでネットゲームを作りたく、無理矢理ゲーム業界に入り、雑用レベルの仕事から始めて、それなりの仕事ができるところまで行きましたが、もっと自分自身で企画したものをやってみたかった。当時ゲームの仕事とは別に、 VJ (ビジュアル ジョッキー) をやっていました。 VJ ソフトを開発して、書家の武田双雲氏とコラボして大きなパーティを巡業のように回ったりもしていたんです」
ゲーム業界では、インターフェイス デザインや、エフェクト アニメーションなどを担当することが多かった杉山さん。その技術を活かして弟さんと共に VJ ソフトを作り、さらにはそれらが認められて、このインキュベーション施設への入居が決まったのが 2006 年 5 月のこと。
「この施設のマネージャの方に 『IPA (情報処理推進機構) 未踏ソフトウェア創造事業』という制度があることを聞きまして、これは! ! と思って応募したところ採択決定 (12 月)。これで完全にはずみがつきました。まだこの時は片足をゲーム業界に置いて、会社も辞めていなかったのですが、完全に独立して株式会社 LoiLo を設立しました (2007 年 4 月)。同じ頃、マイクロソフト 神奈川県 慶応 SIV ラボ支援事業にも採択していただきましたし、9 月にはマイクロソフト イノベーション アワード優秀賞も受賞しました。10 月には IPA によるスーパークリエータ認定。11 月には神奈川ビジネス オーディション u-kanagawa 賞を受賞しました」
わずか 1 年半ほどの出来事である。さらっと言っているがスーパークリエータというのは、経済産業省の肝いりであるところの「未踏ソフトウェア創造事業」において、さらに優秀な人材を、天才プログラマー / スーパークリエータとして育てていこうという国家的プロジェクトなのである。
採択されることによって得られる金額は大きいが、もちろんそれはスタートのための準備に過ぎない。これから定められた期間内になにを成すのかが大事なのだ。
「すべては、この慶應藤沢イノベーション ビレッジに入ったところから始まりました。元々オフィスは欲しかったのですが、私は海が好きで、都会で働きながらも海の近く、それもサーフィンができるところに住みたかった。そういう点ではこのオフィスは鵠沼海岸の自宅からすぐで、朝会社に来る前に海に入ることができる。子供の養育を考えても最高の場所に自宅とオフィスを用意できた。このオフィスはインキュベーション施設ですから、入居期間は 3 年間と決まっています。まだ 1 年以上ありますが、愛着もあるし名残惜しいことになりそうです」
数々の支援や受賞をしている杉山さんと LoiLo だが、いったいどんなソフトを開発しているのだろうか? ? 見せてもらったのはこの 5 月からフリーバージョンの配布が予定されている「LoiLoScope」。映像編集ソフトだが、とにかくそのインターフェイスは画期的。
LoiLoScope の開発には Expression® を使われていると聞きましたが、採用の理由は?
「LoiLoScope は一億総テレビ局化を合い言葉に開発している映像編集ソフトです。特徴はレンダリングの手間がいらず、映像を切って繋げてエフェクトを掛けてという作業がすべてリアルタイムで、直感的な操作で行えるということ。またどんな操作をしても映像が止まらない、従来にないスピード感を持ったソフトです。開発は WPF ベースで行っています。インターフェイス デザインには Expression® を使いました。インターフェイスが命のソフトですから Expression® の存在は大きかったですね。新進のアプリケーションだった Expression® の採用に迷いはありませんでした。元々、私のいたゲーム業界ではタイトルごとに開発環境が変わるのは当然のことで、その度にその開発環境を学ぶところからスタートします。良いソフトであれば歴史とかシェアとか関係なしにツールを選ぶのは当然です。LoiLoScope の開発には Expression® が最適だった。それだけのことです」
画期的にしてユニークな LoiLoScope は、ビジネス展開もまたユニーク。ネットで無料配布して多くの人に使ってもらうのだそうだ。プロ向けバージョンの販売予定もあるそうだが、杉山さんの考えていることはもっと大きい。LoiLoScope を中心に据えて、さまざまなビジネス展開に夢膨らませている段階だ。
最後に将来の夢というか、目標を聞かせて下さい。
「私は人が好きで、新しいことが好きで、起業ははじめてのことですが、向いているような気がします。LoiLo は、私がデザインと営業と経営、弟がプログラマ (有名ゲームプログラマ。これまたスゴイ人) で技術面をささえる。まだまだファミリでやっている小さな会社ですが、今は LoiLoScope とともに会社を大きくしていくことを考えています。そのために海外進出。最近シリコンバレーに行ってきて、世界規模のビジネスを学びました。やはり勝負は世界です! !」
確かな技術と積極的に発表していく能力があれば、日本には数々の支援制度があるのだ。人生積極的に勝負すべし。日本の誇るスーパークリエータの将来はどこまでも明るい。近日無料配布予定の LoiLoScope 。一度お試しあれ。
Expression® Studio
Windows® プラットフォームでインターネットの利点を最大限に活用した、ダイナミックなユーザーインターフェイスの設計作業をサポートするプロフェッショナル向けデザイン ツールです。