Web サーバーの OS を Windows Server 2003 に移行することで、処理効率を 10〜40% 向上させることが可能になりました。また IIS 6.0 が新たに装備したワーカープロセスなどの機能によって、サービスの安定性や信頼性も高まっています。
ユーザーコメント
「Windows Server 2003 ならハードウェア構成を変えずに、従来に比べて 10〜40% のパフォーマンス向上が期待できます」
株式会社ジェイティービー
Web トラベル事業部
事業部長
北上真一氏談
株式会社ジェイティービー
本社 JTB ビル
インターネットを活用した旅行予約、決済サービスを業界に先駆けて提供し、現在も急成長を続けている JTB の Web サイト。ここではアクセスが集中する Web サーバーを、Windows Server 2003 へとアップグレードしています。その目的は処理効率をさらに高めると共に、安定性やコストパフォーマンスもこれまで以上に向上させること。既に β 版を検証する段階で、10〜40% ものパフォーマンス向上効果があることが確認されています。2003 年 6 月には製品版によるサービス開始を予定。今後もデータベースサーバーの64 ビット化などで、Windows Server 2003 を活用することが計画されています。
(*より詳細な技術情報へ)
<導入の背景とねらい>
コストパフォーマンスをこれまで以上に高めるため
JTB 公式ホームページの Web サーバーに Windows Server 2003 を導入
株式会社ジェイティービー
Web トラベル事業部
事業部長
北上真一氏
急成長を続けているインターネットビジネスを展開している企業にとって、必要なパフォーマンスをいかにして確保するかは、ビジネスの成否を大きく左右する重要な課題です。しかしその一方で、サーバーなどのハードウェアへの投資をできるだけ抑制したいというのも、経営者にとっての本音だと言えるでしょう。現時点における十分な性能はもちろんのこと、将来の拡張性も視野に入れたシステムの構築を、いかに効率的な投資で実現していくのか。これはインターネットビジネスに代表される“アクセス量の予測が難しい”システムを抱えている企業にとって、共通の課題になっています。この課題への対応策として Windows Server 2003 の導入を行ったのがインターネット上で旅行商品の予約、決済サービスを展開している株式会社ジェイティービー (以下 JTB) です。
同社はインターネットビジネスの将来性にいち早く着目し、1995 年 4 月に他社に先駆けてホームページによる情報発信を開始。さらに1998 年 3 月にはインターネット上で予約、決済まで完結できる 「JTB INFO CREW」 をスタートしています。当初はこれらのシステムを UNIX ベースで構築していましたが、1997 年 4 月には Windows NT® Server 4.0 をベースに再構築。その後さらにMicrosoft Windows® 2000 Server を中心としたシステムへと移行しています。
Windows Server 2003 導入に向けた作業が始まったのは 2002 年 1 月のこと。その目的は大きく 3 つあったと、JTB Web トラベル事業部で事業部長を務める北上真一氏は説明します。まず第 1 は将来も見越した十分なパフォーマンスを確保すること。第 2 はパフォーマンスだけではなく、コストパフォーマンスも高めていくこと。そして第 3 はシステムの安定感をこれまで以上に高めていくことです。
JTB INFO CREW のシステムは、商品情報を提供する 「参照系」 と予約処理などを行う 「予約系」 に分かれていますが、アクセスの 99% 以上は参照系に集中しています。このアクセスに対応するために、参照系の Web サーバーは Windows Network Load Balancing Service (以下 NLBS) によって負荷を分散していますが、当初は 3 台だった Web サーバー数はスケールアウトを繰り返すことで 7 台にまで増加、CPU の使用率も平均で 60〜70% に達しており、これ以上のアクセスを安定的に処理するにはサーバー数の追加が必要になっていたのです。しかしサーバー数の増大は、運用負担やサーバー設置スペースの増大、電源確保により大きな投資が必要になるなど、さまざまな問題をもたらします。これらの問題を回避するには各サーバーの処理能力を高める必要があったのです。
「Windows Server 2003 ならハードウェア構成を変えずに、従来に比べて 10〜40% のパフォーマンス向上が期待できます」 と北上氏。OS のアップグレードでサーバーの処理能力が高まれば、ハードウェアに新たな投資を行うことなくパフォーマンスを高めることが可能になります。これこそが今回の Windows Server 2003 導入の最大の目玉だったと言います。
JTB ではまずマイクロソフトの Joint Development Program (JDP) に参加する形で Windows Server 2003 の評価を開始。
2003 年 1 月には Rapid Deployment Program (以下 RDP) にも参加し、Windows Server 2003 の導入に向けた作業を進めていきます。そして2003 年 6 月には最もアクセス量の多い参照系 Web サーバーのアップグレードを完了。Windows Server 2003 導入の第一歩を踏み出すのです。
<導入システムの紹介>
最初の導入対象はアクセスの多い参照系 Web サーバー
ワーカープロセスによる安定性向上にも期待
株式会社ジェイティービー
Web トラベル事業部
コンテンツ管理課
国内・海外パッケージツアーグループ
中田幸児氏
JTB INFO CREW のシステム構成は旅行商品の情報を提供する 「参照系」 と、予約トランザクションなどの処理を行う 「予約系」 に分かれています。参照系にはフロントエンドに 7 台の Web サーバーが用意され、NLBS によって負荷を分散。そのバックエンドには旅行商品の情報を格納したデータベースサーバーと、関連商品販売用のサーバーが用意されています。予約系システムは用途ごとに、アプリケーション機能も含んだ Web サーバーが用意され、そのバックエンドにはトランザクションサーバー (MTS)、エージェントサーバー、データベースサーバー、ゲートウェイサーバーなどが設置され、JTB の基幹情報システムが稼働するホストコンピューターとキューイングシステム (MSMQ) によって連携するようになっています。
これらのサーバーのうち、今回 Windows Server 2003 へのアップグレードの対象となったのは、参照系の 7 台の Web サーバーです。前述のように、ここにはインターネットからのアクセスのうち 99% 以上が集中するため、パフォーマンス確保に必要性がきわめて高かったからです。これらのサーバー用の OS としては、以前は NLBS を標準装備していた Microsoft Windows 2000 Server Advanced Edition が利用されていましたが、Windows Server 2003 ではすべてのエディションで NLBS がサポートされているため、今回は Windows Server 2003, Web Edition が採用されています。Web サーバー向けに特化したエディションを選択することで導入コストを抑制し、より高いコストパフォーマンスを実現しているのです。
Windows Server 2003 に搭載されている Microsoft Internet Information Services (以下 IIS) 6.0 が、基本アーキテクチャから抜本的に再設計されている点も高く評価されています。これによって処理効率だけではなく、安定性も高まっているのです。 「中でも“ワーカープロセス”を独立した形で複数起動できるようになったことは、サービスの安定的な提供に大きな貢献を果たすはずです」 と言うのは、JTB Web トラベル事業部コンテンツ管理課国内・海外パッケージツアーグループ中田幸児氏です。従来は 1 つのプロセスがリクエストとレスポンスを処理していたため、一部の Web アプリケーションに問題が発生した場合でも、IIS そのものを再起動する必要がありました。しかし IIS 6.0 ではアプリケーションごとに個別のワーカープロセスを起動できるため、Web アプリケーションの不具合の影響はそのワーカープロセスだけに限定されるのです。また 1 つのアプリケーションに複数のワーカープロセスを割り当てれば、ワーカープロセスに不具合が発生した場合に他のワーカープロセスで処理を代替できます。このためアプリケーションに問題が発生しても、ユーザーにまったく意識させることなくサービスを継続できます。
2002 年 1 月から始まった Windows Server 2003 導入に向けた作 業でまず最初に行われたのは、実機上で β3 を利用した製品機能の検証でした。パフォーマンスがどれだけ向上するのかだけではなく、実際の導入で問題は発生しないのかといった “フィージビリティ”の観点からも、検証が進められていったのです。さらに RC1 による検証を行った後、2003 年 1 月には RDP による RC2 を利用した検証がスタート。このビルドで新たに追加された NLBS 管理機能やマイグ レーションツールの評価、バッチ処理のテスト、 Windows 2000 Server との混在環境における動作確認などが行われました。そして 2003 年 4 月には製品ビルドによる検証を実施。同年 5 月に本番環境に対する導入が行われています。
「Windows Server 2003 の評価で最も印象的だったのは、セキュリティが非常に厳しくなったことです」 と中田氏。OS インストール直後のデフォルト設定が非常に厳しく、そのままでは ASP で作成されたアプリケーションが稼働しなかったと言います。もちろん OS インストール後に適切な設定を行えば、ASP を従来通り動かすことができます。アプリケーションの互換性も十分に高く、今回の OS 移行ではアプリケーションにはまったく手を加えていないと言います。
パフォーマンスの向上効果に関しては、β3 の段階で Web Application Stress (WAS) ツールを利用した負荷テストが行われており、10〜40% のパフォーマンス向上効果があることが確認されています。同一のハードウェアでパフォーマンスを高めることが可能になったため、より大きな投資効果を実現できるようになっています。
既存環境の設定内容の引き継ぎは、マイクロソフトが提供する 「マイグレーションツール」 が利用されました。これは他のサーバーの設定を Windows Server 2003 環境にコピーするというものであり、Windows 2000 Server からの設定引き継ぎだけではなく、 Windows Server 2003 同士の設定引き継ぎにも利用できます。そのため Windows 2000 Server からの設定内容引き継ぎはもちろんのこと、その設定内容を複数サーバーに展開するのも容易になっています。Windows Server 2003, Web Edition では Windows 2000 Server からのアップグレードインストール (従来の設定をその まま引き継いだインストール) がサポートされていませんが、NLBS で負荷分散を行う Web サーバーのように複数サーバーで同一の設定を行う場合には、アップグレードインストールよりもマイグレーションツールの方が便利だと言えるでしょう。
<今後の展開>
2003 年中に DB サーバーを 64 ビット化
XML Web サービスの展開も視野に
Windows Server 2003 導入に向けた作業に着手した 2002 年 1 月以降も、JTB INFO CREW のビジネスは成長を続けています。 2002 年度における売り上げの伸び率は、前年度比で約 170%。インターネット経由のダイレクト販売とコンビニエンスストア経由の販売を合 わせて、290 億円の売り上げを達成しています。当然のことながらアクセス量も急増しています。2003 年 4 月の時点で 1 日あたりのページビューは 120 万を突破。2003 年夏には 150 万に達すると予想されています。
「2005 年度にはインターネットとコンビニを含めた売り上げ額を 1000 億にすることを目指しています」 と北上氏。Windows Server 2003 に移行したサーバーを利用すれば、システムデザインを変更することなく、このシステム負荷に耐えられるはずだと言います。
次に OS をアップグレードするサーバーとしては、予約系のデータベースサーバーが挙げられています。このサーバーは 8CPU のサーバー× 2 台でクラスタ構成になっており、OS は Windows 2000 Server Datacenter Edition が利用されていますが、2003 年中には Windows Server 2003 で 64 ビット化する計画になっています。また JTB INFO CREW では 2002 年から Microsoft .NET をベースにしたアプリケーション開発が行われており、近い将来には XML Web サービスの展開も視野に入っています。Windows Server 2003 はこれらのアプリケーションの基盤としても、重要な役割を果たすことになるはずです。