「我々の場合、海外とのやり取りが頻発する大規模なプロジェクトも多く、当事者として、私自身も様々な課題に直面しました。そこで、I T によってこれらの課題を解決できたらと考えました」――サービス立ち上げに至る経緯について、三菱商事株式会社プロジェクト開発ユニットマネージャー堀江茂氏はこう振り返っています。
1999 年夏、同じ課題に対して、IT を活用した ASP(Application Service Provider )という方式を考えていた荘司茂雄氏(プロジェクト開発ユニットインターネット事業担当マネージャー)のアイデアを聞いた堀江氏は、新たなビジネスとしての ASP サービスに確信を持ったといます。但し、当時、国内で ASP という概念はまだ一般的ではなく、もちろん、プロジェクト管理を支援する ASP サービスも存在しませんでした。そこで、このプロジェクト管理の仕組みを、プロジェクト開発ユニットの前身であるプロジェクト開発部が中心となって構築することになったのです。
三菱商事株式会社 プロジェクト開発ユニット インターネット事業担当 マネージャー 荘司茂雄 氏
システム構築に当たっては、米国製の既存のパッケージを採用することも検討されましたが、試行を重ねた上で出された結論は、自らが中心となってシステムを開発するというものでした。「できあいの仕組みを持ってきて、お金だけ出すという形では、本当に良いサービスを実現することができないと考えました。ソフトウエアの開発から、自分達も一緒になってアイディアを出し、サービスの仕組みを作れば、必ず良い結果が得られると考えたのです」(堀江氏)。プラント建設の世界で、堀江氏は長年「フル・ターンキー」方式によるプロジェクトに携わって来ました。これは三菱商事がエンジニアリング、機器の調達、及び据付工事を一貫して行い、プラントを運転可能な状態にして客先に提供するビジネスです。顧客の満足度を最大限に高めるためには、新システムでもこの方式が必要であると考えたのです。開発システムの基盤となるソフトウエアプロダクト選定に当たっては、様々な面から慎重な検討が加えられました。ASP というサービス形態である以上、使用するソフトウエアについては、ネットワーク対応が必須であり、また、多くの利用者が機密性の高い情報をサーバー上に展開するため、アクセスコントロールなどセキュリティ面での機能も重視されました。更に、将来的には海外への展開も考えているサービスであるため、グローバルなビジネス展開が可能で、実績・将来性のあるベンダー、そしてソフトウエア製品を選定する必要がありました。この結果、プラットフォームとしてマイクロソフトのサーバー製品が、またプロジェクト管理の要となる工程管理機能実現に向けて着目されたのが Microsoft® Project でした。「代表的なプロジェクトマネジメント向けの製品について評価を行った結果、汎用性が高い Microsoft Project を選択しました。工程管理等の機能については、開発するよりもマイクロソフト製品との連携を行うことの方が良いと考えました」(荘司氏)。
各種ドキュメント管理や電子メール情報の管理は、Microsoft Windows® 2000 Advanced Server と Microsoft Exchange 2000 Server で構成され、クラスタリングされた、“文書サーバー”と“メールサーバー”で行われます。一方、アクセス権限などプロジェクトごとの情報は Microsoft SQL Server(TM) 7.0が搭載された“データベースサーバー”に格納され、またプロジェクト管理という用途に向け、特に考慮された機能もあります。
Active Directory によるきめ細かいアクセスコントロールで
必要情報とユーザーをシームレスに直結
「Microsoft Project と連動した工程管理機能、そして利用者によって参照できる情報をきめ細かく切り分けられるアクセスコントロール機能は、このシステムのキーポイントと言えます」(プロジェクト開発ユニットインターネット事業担当秋山光輝氏)。例えば工程管理については、管理者のデスクトップ PC 上で稼動する Microsoft Project 2000 のプロジェクトファイルを、ASP サービス側へアップロードするだけでよく、その後は、HTML 形式に自動変換された工程管理情報(ガントチャート他)を、アクセス権のあるメンバーが参照できるようになります。一方、アクセスコントロール機能の具現化に当たっては、Active Directory がフルに活用されており、これによって必要情報とユーザーの関係をきめ細かく設定でき、信頼性の高いシステムを実現しています。また、利用者の利便性を高めるため、画面レイアウト、ボタン等の表記などもわかりやすさを重視した設計となっています。サービスオープンと同時に、日本語/英語の両言語環境で利用できるインターフェースや、ヘルプデスクサービスを用意した背景にも、この“誰にでも使えるシステムを実現する”という考えがありました。
現在の Project Stations では、主に“工程管理”と“情報共有”機能が提供されていますが、更なる機能拡張計画も挙げられています。
「次のステップでは、調達業務の支援を考えています。現在、多くのマーケットプレース型調達サービスが提供されていますが、充分には機能していません。我々は、プロジェクトに関係する人にとって、本当に役に立つ調達機能を提供したいと考えます」(荘司氏)。三菱商事では、社内の物流や決済サービスと連携することで、これら包括的で利便性の高い ASP サービスの提供を目指します。また、今回のサービス立ち上げに参画した、Plus- T Inc. の上野剛史氏は「国内企業の海外進出のフォローはもちろん、将来は Project Stations 自体を広く海外でも展開したいと考えています。そうした時、ワールドワイドなブランドである HP やマイクロソフトとの協調は底力を発揮してくれるだろう期待しています」と語っています。最後に、三菱商事が考える今後の ASP サービスの“ありかた”について堀江氏は、「我々自身がお客様の声に耳を傾け、更なるサービスレベルの向上を目指します。お客様の立場で考える姿勢こそが、21 世紀型商社の姿だと考えます」と展望を語って締めくくりました。