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Pocket PC の汎用性とビジュアル訴求力が パナソニックデジタルネットワークミュージアムでの パーソナル情報提供システムを実現
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大規模な商業施設やテレビ局、超高層マンションなどが建ち並ぶ、東京の新名所臨海副都心。その中でもひときわ目を引くのが、松下電器産業の総合情報受発信拠点であるパナソニックセンター です。1階の最新機器が並ぶ広々としたフロアを抜けると、パナソニックデジタルネットワークミュージアムの巨大な恐竜の骨格標本が出迎えてくれます。しかし、ここは単なる恐竜博物館ではありません。パナソニックグループがめざす「デジタルネットワークによるパーソナルな情報提供」が体感できる、まさに未来の博物館なのです。ここでは、端末として汎用性と見やすさを併せ持つ Pocket PC が活躍しています。このデバイスと無線通信技術 (Bluetooth) により、一人ひとりの興味関心や見る人のペースに合わせて情報が提供され、さらにWebと連携することで、より高い「パーソナル性」を実現することに成功しています。
<導入の背景とねらい>
松下グループの 2 大テーマの 1 つである「ユビキタスネットワーク社会」を具現化し、
パーソナルな情報配信など、実用化における新たな方向性を示唆


松下電器産業株式会社
パナソニックセンター
企画運営室
販促催事担当リーダー
山田 昌子 氏
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松下グループは、その基本理念である「松下製品の生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること」を機軸に、様々な社会に貢献する取り組みを行っています。これまでも、ショウケース的施設やイベント等において、商品や技術を通じて社会やお客様一人ひとりに様々な情報を発信してきました。そして 2002 年 9 月には、ユーザーや地域、他団体とのコラボレーションをより一層意識し、もう一歩踏み込んだ形の総合情報受発信拠点を構えるべく、「パナソニックセンター」を設立しました。
「パナソニックセンターの運営コンセプトを検討する上で中心となったのが、近年における社会全体の共通テーマともいうべき、『ユビキタスネットワーク社会の実現』と『地球環境との共存』です。それらのコンセプトを、コンテンツとして実際に稼働させ、幅広い方々に体験していただける方法はないだろうかと探していました。そして様々な協議の結果、バイオテクノロジー分野での研究と事業で知られる林原グループの、林原自然科学博物館の恐竜研究成果と、松下グループのデジタルネットワーク技術を融合させた、新しい博物館を作ろうと考えたのです」(パナソニックセンター 企画運営室 販促催事担当 リーダー 山田昌子氏)。
こうして誕生した「パナソニックデジタルネットワークミュージアム 林原自然科学博物館 Dinosaur FACTory」は、まさにパナソニックセンターのコンセプトを具体化する、シンボリックな取り組みのひとつといえるでしょう。本ミュージアム設立にあたって、実現すべき目標として掲げられたのは、「一人ひとりのための情報を、誰もが自由に使える形で簡単に楽しみ、体験を外に持ち帰ってもらう」ということでした。そのため、これまでの博物館とは一線を画すような、新しい試みが求められていました。
<導入の経緯>
Pocket PC による解説を聞きながら、ミュージアムのコンテンツを体験
一般的な博物館や美術館では、展示するコンテンツそのものの魅力に全てが委ねられます。そこでパナソニックセンターでは、より一歩進んだミュージアム体験を来場者に提供するため、希望者全員に館内専用の PDA (Personal Digital Assistant:個人用携帯情報端末) を無料貸与するプランを検討しました。展示する学術資料や化石標本などとともに、PDA によって追加コンテンツをあわせて提供することで、来場者がユビキタス環境を実際に体験できると考えたのです。


「FACT scope」と名付けられた専用Pocket PC
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「複合的な体験をミュージアム内で提供することで、コンテンツそのものをより多くの人に楽しんでもらおうと考えました。また、そうした試みで来場者の満足度を向上させることはもちろん、パナソニックセンター自身の集客につなげようという期待もあります。そして最終的には、松下グループがめざすユビキタスネットワークの実用可能性を、広く社会に発信する役割を担っていこうという意図があります」(山田氏)。
実はこのようなパーソナルな情報提供を実現している博物館施設は以前にもいくつか試みがあったようです。しかし、今回のプロジェクトにあたって調査をした結果、そのほとんどが 1 台 100 万円規模のコストが見込まれる高価なハンディターミナル型で、導入には数千万円規模のコストが必要な独自アプリケーションを開発する必要がありました。開発にコストをかけることによって、たとえば来場者への配布端末台数に制限がでてしまうのでは、本来の目的にそぐわないことになります。しかも、旧来のシステムのほとんどは赤外線に反応して情報を送る仕組みのため、赤外線が当たるところでしか情報を見ることができません。これでは、展示品の周りを歩きながら情報を見ることができないのはもちろん、機能していないときには荷物になるだけになってしまいます。
こうした条件の検討を経て、対応する通信手段をふくめたデバイスの検討が行われました。旧来の赤外線通信とともに、携帯電話や PHS による通信、そのほか様々なプラットフォームの PDA が対応する通信環境など、あらゆる候補を検討し、その先進性、将来的な拡張性などを考慮した結果、Bluetooth による通信を可能にする PDA が最良と判断されました。選択候補にはパナソニックグループが高い市場評価を得ている携帯電話端末も挙げられていましたが、端末としての性格、つまり画面サイズやその表示能力、操作性、通信面も含めた機能管理のしやすさなどの要素、あるいは運用開始後の通信コストなどが重要視されました。さらにこの検討にあたっては、導入にかかる作業工数、また運用時のシステム管理負荷などについてもあわせて熟慮がなされています。
こうした検討を経て採用を決定されたのが、マイクロソフトの Windows Mobile テクノロジをベースとする Pocket PC でした。採用にあたっては、ハードな使用に耐えうる機器としての堅牢さに加え、実際の使用時の電池性能や運用効率等も採用のポイントとして考慮されました。パナソニックセンターが採用した Pocket PC では、1度の充電で約 90 分間 Bluetooth 通信をしたまま連続稼働でき、ハイシーズンには 600 人を超える来館者に貸し出されています。また、Pocket PC は Windows Media Player や Pocket Internet Explorer といった、高性能で汎用性のあるアプリケーションを標準搭載しており、追加コストをかけることなく、これらのテクノロジを利用できる点も評価されました。
<システムの概要>
来場者の体験履歴や画像データをサーバーに蓄積。インターネット経由で後日の閲覧も可能。
Pocket PC 導入に際して第一に検討されたのは、展示物に対する来館者一人ひとりの興味や関心、見学ペースに応じて、どのような情報配信を行うかということでした。そこで強く意識されたのが、ナビゲーションとコミュニケーションの充実です。その両者を実現するために、通常の博物館施設に多く見られるような、パネル形式の説明書きを必要最低限に抑え、代わりに「 FACT スポット」と呼ばれる解説ポイントを館内の随所に設置しています。
来場者が Pocket PC を持ってそのポイントに近づくと、Bluetooth を通じて来場者の位置情報が認識され、それに呼応して Pocket PC に装着されたSDカードに収録されているコンテンツが呼び出されます。こうして、展示物に関する様々なデジタルコンテンツが Pocket PC の画面上に自動的に再生されるのです。
本システムの構築を担当したパナソニック SS マーケティング株式会社 SI 事業部 首都圏 SI グループ グループマネージャーの田村亮氏は、次のように説明します。「位置情報を認識させるためのシステム作りには、かなりの労力を要しました。システム設計において、汎用性の高いプラットフォームを有している Pocket PCの採用は決めていました。しかし、個々の要件を満たすための通信環境構築、拡充のためのソフトウェア開発とあわせて、狭域通信を確保するアンテナ指向性を調節する必要もあったからです」。


システム構成図
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こうして運用されているシステムをベースとする Pocket PC によって来場者が楽しめるコンテンツは、展示の解説ばかりではありません。館内には 2 か所の「ピクチャースポット」があり、展示されている恐竜と一緒に記念撮影ができるようになっています。Windows Media テクノロジを利用し、来場者はこのスポットで自らの意思によってシャッターを押すことができるようになっており、撮影した写真をすぐに Pocket PC の画面上で確認できます。
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パナソニック SS マーケティング株式会社
SI 事業部
首都圏 SI グループ
グループマネージャー
田村 亮 氏
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「単なる写真撮影ではおもしろくないでしょう。そこで、人の手ではとても撮影できないような天井近くのポイントにカメラを設置しています。まるでティラノサウルスに食べられそうになっている写真が撮れたりするので、行列ができるほどの人気スポットとなっていますね」(山田氏)。ここで撮影された画像データは、一度 Microsoft Windows® 2000 Advanced Server 上に送信された後、画像への合成処理が行われた上で、Pocket PC に再送信される仕組みになっています。
このように、一人ひとりの興味関心に応じて受信した情報やピクチャースポットで撮られた画像は、Pocket PC に履歴が記録され、サーバーへ格納されます。そして、退館時に手渡される ID とパスワードで専用 Web サイトへアクセスすれば、自分が楽しんだコンテンツや画像を、インターネット経由でどこからでも閲覧できるようになっています。
「サイトにアクセスして来られる方は、来館者の約 3 分の 1 でしょうか。その多くが、Web サイトへ転送されたご自身の画像を見に来られているようです。実はこのサーバーにアップロードされている画像は、撮影した画像とあらかじめ用意されていた背景画像を合成した写真なので、驚かれる方も多いようです」(山田氏)。このサイト上ではそのほかにも、イベントの情報や館内に設置されたライブカメラからの画像配信など、来場者が本ミュージアムでの体験を反芻できるようになっており、再訪意欲を喚起させるコンテンツが盛り込まれています。
<導入の結果と今後の展望>
真の「ユビキタスネットワーク社会」に 1 歩でも近づく施策へ。収集データの活用や One to One 施策などの実用実験を重ねたい
このデジタルミュージアムの来館者満足度アンケートでは、9 割以上が「満足」と評価しているといいます。専用 Web サイトへのアクセス率約 30% 、リピート率約 30% といった数値に、パナソニックセンターの期待を実現できているといえるでしょう。
「来場者の満足度については、展示物と Pocket PC の端末としての適性が、相乗効果を生み出している結果だと思います。多くの見学者は 1 時間から 1 時間半と、同規模の博物館の倍程度の時間をかけて楽しまれています。情報を見る画面に十分な大きさがあり、ストレスを感じずに楽しめるからだと思います。おそらく携帯電話や PHS の画面サイズでは、ここまでゆっくりご覧いただくことはできないでしょう。また、恐竜の博物館という性格上、子どもでも容易に操作できる必要がありました。インターフェイス開発のための柔軟な環境を活用して、ボタンをできるだけ少なくし、シンプルな操作で十分に楽しめるように設計しています。就学前の幼児でも 3 分ほどの簡単なガイダンスのみで十分に使いこなすほど、高い操作性を獲得することができています」(山田氏)。
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 現在行われている研究内容を垣間見ることのできる Dinosaur FACTory 内部
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こうしたストレスのない端末利用により、見学者もミュージアム側も互いに大きな労力をかけることなく、数多くの来場者の履歴を収集することができました。見学者が、どの展示をどのように見学したかを把握できるため、次の展示の企画やマーケティングに活かすことが可能となり、開設 1 周年を経過したいま、実際に本ミュージアムで開催されるイベントの内容や解説の内容刷新などに活かされつつあります。
「一般に博物館の解説は、見学者を受け身にさせがちです。しかし、本ミュージアムは自ら情報を得るために行動する必要がある上に、さらに退館後も Web サイトにアクセスするといった働きかけ型のスタイルとなっています。つまり、本システムは、見学者との能動的なコミュニケーションを継続させる仕掛けであり、One to One 型のサービスの第一歩と言えるでしょう。このようなシステムに興味をお持ちになるのは、博物館関係者ばかりではありません。最近では、流通業や小売業など他業種の方の見学も増えてきています」(山田氏)。
そしてこの Pocket PC 採用の何よりの効果は、松下グループのめざす「ユビキタスネットワーク社会」への第一ステップとして、ある一つの方向性を示すことができたことだといいます。「博物館施設として考えた場合、これだけのインフラをもったものは、当センターが初ではないかと自負しています。内外の博物館施設からもこのシステムは高い評価を受けており、当システムをベースとしたさまざまな展開が具体的に予定されています。それはパナソニックセンターが採用したこの仕組みのビジネス的、技術的な展開というだけでなく、『一人ひとりへの情報配信』という考え方そのものの広がりを示唆していると感じています。今後ネットワーク社会が成熟する過程で、ユビキタス化に私たちが貢献していくためには、提供者と利用者の関係を一時的なものとせずに、コミュニケーションを継続させていくことが重要ではないでしょうか。その認識はもはや一般的になりつつあり、おそらくどのような産業、分野においても共通となるのは間違いないでしょう」(山田氏)。
そういった意味で本ミュージアムにおける施策は、松下グループのめざす「ユビキタスネットワーク社会」への第一ステップとしてとらえられています。そして、今後の展望について山田氏は次のように語っています。「まず、博物館として来場者との双方向コミュニケーションの密度を高めていく必要があるでしょう。コンテンツの質、量ともにまだまだ努力する必要がありますし、構築したシステムの活用法をさらに検討していく必要があります。たとえば年齢などの属性に応じて情報の内容や切り口、語り口を変えてみたり、リピーターの方には再訪による特典があったりといったアイデアを実現していきたいと考えています」。
また、本システムが可能とする環境について、田村氏は次のように付け加えます。「狭域での無線通信環境構築、という本システムには、手本となるような同種の事例がなかったために苦労はありましたが、現在ではユーザーへの安定した通信環境提供を実現できています。今後はこうした環境がもたらす効果や意味とともに、無線通信のセキュリティ面やデバイスのコストなどまでも含めた、運用全体を考えていくことが課題でしょうね」。
今後の社会でさらなるユビキタス化が進んでいくと、たとえば、ミュージアムに来場するまでの電車等の交通機関、商業施設や学校、家庭といった一人ひとりの生活を取り巻く社会のあらゆる場面において、継続的なコミュニケーションが可能になっていきます。また、ミュージアムで得た一人ひとりの興味関心を深堀していくことができるよう、他の博物館や団体、興味を持つ個人等との連携が容易に実現できるようになっていきます。
パナソニックセンターの取り組みは、今後到来するユビキタスネットワーク社会の、目に見える先行事例として大きな役割を担い続けていくことでしょう。
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