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Microsoft® Windows® XP Tablet PC Edition のアプリ作成を課題とした授業を実施
学生たちと考えるペンインターフェイスの将来
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東京大学大学院 情報理工学系研究科では、五十嵐健夫講師が指導する「メディア情報学」において、Microsoft Windows XP Tablet PC Edition がインストールされたタブレット PC を使った授業をいち早く実施しました。講義内容は認知モデルや視覚化、描画といった、主にコンピュータのユーザーインターフェイスの基礎から応用までを、主要な論文の論講を通じて学ぶというもので、2002 年度は 30 人程度の学生が参加して 10 月から 2003 年 2 月まで開催されました。単なる座学ではなく、より実践的なものにするために、学生には 20 台のタブレット PC が貸与され、新しいユーザーインターフェイスを使ったアプリケーションの開発が課せられました。学生はそれぞれ独自のアイデアに基づいてアプリケーションを開発し、最後の授業でデモンストレーションを行いました。
<導入の背景とねらい>
直感的なインターフェイス開発を模索するために
東京大学大学院で「メディア情報学」の指導にあたっている五十嵐健夫講師は、一貫してユーザーインターフェイスに関する研究を続けており、多くの論文を発表しています。平面に手書きで描画した線の組み合わせを、自動的に立体に変換するプログラム「Teddy」の作者としても有名です。Teddy は PC 用ソフトウェアの他、ゲーム機用にも移植され、販売されています。
五十嵐講師が理想とするのは"次世代の GUI (グラフィカル ユーザーインターフェイス) "。現在の一般的な GUI をさらに進歩させることを目指しています。
かつてのコンピュータは CUI (キャラクタ ユーザーインターフェイス) で、文字の組み合わせによるコマンドを入力するのが一般的でした。そしてその応答も文字や数字によるものでした。複雑な作業をさせるには、複数のコマンドを組み合わせなくてはなりません。コンピュータの機能が豊富になるほどコマンドも増え、ユーザーは多数のコマンドを覚えて使いこなす必要があったのです。こうした CUI の複雑さは、GUI の出現によってある程度解消されました。マウス操作で、画面上に描かれたボタンやメニューを選択し、クリックすればよくなったのです。ユーザーがコマンドを覚える必要はなくなり、タイプミスによる間違いもなくなります。
しかし「画面上のボタンをクリックする」ことも、必ずしも自然な動作ではありません。たとえばペンで紙に絵を書く場合、すばやく引けば細い線になり、ゆっくりならば濃く太い線になります。しかし現在の一般的な描画ソフトでは、初めにペンの太さをボタンで切り替えます (もちろんこのほうが便利な場合もあります) 。つまりコンピュータに指令を与える際に、ボタンという「記号」を使っているという点に変わりはないのです。
そこで五十嵐講師は、できるだけボタンを使わず、直感的な操作のできるインターフェイスの開発に取り組んでいます。「文字を使っていたコマンドをボタンに置き換えただけでは、まだ本当の GUI とは呼べません。結局、機能が豊富になるほどボタンが増え、ボタンのある場所や個々のボタンの意味などを覚えないと使えないというような、使いづらいものになってしまいます。ユーザーが実行したいことを直感的にコンピュータに伝えられるのが本当の GUI です。その点、表示された画面上にそのままペンを置いて指示を出す『ペン操作』なら、ボタンをクリックすることを想定して考案された『マウス』というデバイスとはまったく違った、より直感的なユーザーインターフェイスを開拓できると考えています」と、五十嵐講師はペンインターフェイスの可能性に対して、強い期待を持っています。
<導入の結果と効果>
ペン入力アプリケーションをわずか 1 か月で開発
タブレット PC の課題が出されたメディア情報学の受講対象者は、学部生時代にプログラミングを学習してきた理工系の大学院生です。ただし日頃から自分のパソコンでプログラミングを楽しんでいる人から、課題以外ほとんどパソコンを使わないという人まで、パソコンに対する親和度はさまざまです。だからこそ、既にパソコンで一般的な GUI を当然と考えない柔軟な発想が期待されます。今回の課題では、開発言語やツールに関しても、特に規定はされませんでした。プログラミングにあたって、学生たちは Microsoft Visual Studio® .NET など一般的な開発ツールをそのまま利用しました。タブレット PC の OS には標準的な Windows をベースにした Windows XP Tablet PC Edition が使われているので、学生たちは新たに操作方法を学習する必要がありませんでした。Windows プラットフォームで利用できる豊富な開発環境の中から、自分にあったものを自由に選択して利用でき、タブレット PC を受取ってからわずか 1 か月でアプリケーションを開発しました。
2002 年度末に学生たちが発表したアプリケーションは、バラエティに富んでいました。たとえば、ラフに描いたチャートを清書してくれるソフト。画面上に手書きで書いた多角形の面積を求める計算ソフト。複数の被験者に文字を書かせて、ペンの動きを統計的に調査するソフト。画面上に任意の数の線を引いて解くパズル。手書きの表から、線などを直線化して表を清書するソフト。手書きで描いた絵をアニメーションにするソフトなど、ゲームあり、実用あり、研究用途で導入できそうなものまで幅広いアイデアが出されました。
課題発表後、五十嵐講師は次のように講評しました。「今回はまだ、学生がタブレット PC に触れていた時間が短かったということもあり、マウスをそのままペンに替えただけというアプリケーションが多かったというのが正直な感想です。ただし授業中にタブレット PC でメモをとっているようすや、学生同士がタブレット PC を操作しながら話しているのを見ると、新しい使い方を予感させます」 (五十嵐講師)
つまり従来のデスクトップ PC では PC の前に座って操作しなければなりませんが、タブレット PC ならば、その必要がありません。人と人の真ん中にタブレット PC を置いて、コミュニケーションを取りながら操作するのに非常に優れたコンピュータだと、五十嵐講師はその新しい可能性を示唆します。
五十嵐講師自身、通常の講義でタブレット PC を愛用しています。「手元にある画面をそのままスクリーンに映し出し、喋りながら書けるためです。学生たちに背を向けて書くことに専念する必要がなく、非常に効率的です。チョークで手や服が汚れなくてすむという、私自身の黒板嫌いのせいもありましたが… (笑)。さらに、記述した内容をファイルに保存して、研究室のホームページなどで公開すれば、学生たちがメモを取る必要もなくなるのです」と、実際の授業での利用における便利さについても語りました。
<今後の展望>
新しいデバイスの可能性−それは次代を担う若者に
「タブレット PC を使い慣れた人が増えれば、ノート PC 同様に普及が見込まれるでしょう。タブレット PC の特長を今以上に活かしたアプリケーションが増えてくるはずです」と五十嵐講師は予想します。
「大勢の人にプレゼンテーションする場合は、パソコンにプロジェクタをつないで、Microsoft PowerPoint® などで作成したスライドを見せるのが最適でしょう。しかし少人数で画面上に図などを書き込みながら相談する場合、それが最適とは言えません。また会議の参加者全員で PC の前に集まって 1 台のノートパソコンを覗き込むのも不便です。全員の中央にタブレット PC を置いて、それぞれが自由に記入するのが便利だと思います。たとえば電子カルテを使いながら医師が患者に説明したり、提案書を提示しながら営業マンが説明するといった場面で、早期に普及が進み、使われるようになるのではないでしょうか」と、タブレット PC の適用分野について示唆しています。もちろん今回五十嵐講師が行ったように、教育の場でタブレット PC を使うことも考えられます。
今回、ほとんどの学生が課題制作以外にも授業や研究などでタブレット PC を使いましたが、学生たちからは次のようなコメントが寄せられています。
「新しいオモチャを手にした子供の喜びを思い出させてくれました」
「研究のアイデアをまとめたり、ディスカッションを行うのに Journal が役立ちました」
「研究室のミーティングでプレゼンテーションをするのに Journal が役立ちました」
「ブレインストーミングをするのに Journal が役立ちました」
「持ち運びが楽なので、デモなどに重宝しました」
「フォトレタッチなどでペン入力の良さを実感しました」
「キーボードの使えない狭い場所でも使いやすいと感じました」
「入力が直感的でマウスより疲れませんでした」
新しいスタイルをもつ新しいデバイスの可能性−それは次代を担う若者達に託されています。
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