データベースの第一人者、ジム グレイが語る
Microsoft SQL Server 2005
| 「the Microsoft Conference 2005」のスペシャル キーノート 1 では、SQL Server の開発に大きな影響を与えてきたマイクロソフト コーポレーション リサーチ グループのジム グレイ (Jim Gray) が、SQL Server 2005 について、さまざまな視点から詳細な解説を行った。
| |
|  | |
 ジム グレイ (Jim Gray) マイクロソフト コーポレーション リサーチ グループ テクニカル フェロー グレイ博士は、データベース、およびトランザクション処理の分野においての専門家であり、マイクロソフトにてスケーラブルコンピューティング (コモディティのソフトウェアとハードウェアからスーパーサーバーやワークグループシステムの構築) に注力。マイクロソフトへの入社前には、Digital、Tandem、IBM、AT&Tにて、RDB、ACMS、NonStop SQL、Pathway、System R、SQL/DS、DB2 および IMS-Fast Path などのデータベースやトランザクション処理システムに従事。 バークレイ校にて博士号、シュトゥットガルト、パリにて名誉博士号を取得。National Academy of Engineering、American、Academy of Arts and Science、the National Academy of Science の会員であり、ACM フェロー、データマネジメントに関する Morgan Kaufmann Series の編集者でもある。1998 年には、ACM 最高の栄誉であるチューリンぐ賞を受賞。また、データベース、およびトランザクション処理システムの書籍、トランザクション処理/概念と技法などの著者。 |
|
 | SQL Server 2005 は第 4 世代、 もっともこだわった点がセキュリティ。 |
|
 |
長年にわたってデータベースに関わっているジム グレイは、ここ 20年 におけるハードウェアとソフトウェアの進化から講演を始めた。「1985 年時点のゴールは 1,000 トランザクション/秒でしたが、実際は 100 トランザクション/秒しか達成することができませんでした。ところが、現在は 8,000 トランザクション/秒をらくらくと突破しています」と語る。このハードウェアとソフトウェアの驚異的な発展があってこそ、SQL Server 2005 の開発が可能となったのだ。しかも IT 革命は始まったばかりで、まだまだ継続するという。
SQL Server もまさにイノベーションの歴史であり、4 世代にわたった発展を続けてきたとジム グレイは説明する。SQL Server 6.0/6.5 の第 1 世代から SQL Server 7.0 の第 2 世代を経て、第 3 世代の SQL Server 2000 へ。そして、今回リリースされた SQL Server 2005 が第 4 世代というわけだ。
各世代において絶えず新たな機能を加えることで SQL Server は進化してきたが、今回の SQL Server 2005 が何よりもこだわったのはセキュリティだという。「SQL スラマー (コンピュータ ウィルス) からは本当に手痛い攻撃を受けました。しかし、私たちはそこから学ぶことも忘れませんでした」と語るジム グレイは、「SQL Server 2005 は、セキュア バイ デザイン、セキュア バイ デフォルト、セキュア バイ デプロイメントをモットーにしています」と、あらためて今回セキュアなデータベースの開発が大きなテーマであったことを強調した。
 | SQL Server 2005 はここが "クール"。 「.NET Framework との統合」「Visual Studio との統合」。 |
|
 |
ジム グレイは、SQL Server 2005 の "クール" な点として、「.NET Framework との統合」「Visual Studio との統合」「ビジネス インテリジェンス」を挙げる。そして、リレーショナル データベース、XML、テキスト、ETL ツール、レポーティング、自動チューニング…などが標準搭載されていること、Visual Studio を初め、Windows やBizTalk Server など他のマイクロソフト製品と統合できること、また、ソケット単位での価格設定のため、TCO (総所有コスト) を大幅に削減できることが、SQL Server 2005 の価値であると伝えた。
ここでモニタは、ぎっしりと細かな字で埋めつくされた画面に切り替わる。「これは、SQL Server 2005 の約 1,000 にも及ぶ機能の中から、100 個に絞り込んだものです」と、ジム グレイ。この機能のすべてが SQL Server 2005 の "クール" な点だとアピールした。
次いでプログラマに向け、「.NET Framework との統合」「Visual Studio との統合」について補足説明を行った。「プログラム言語とデータベースのミスマッチを解消するために .NET があるのです。共通言語ランタイム (CLR) の統合を使用すると、任意の .NET Framework 言語でストアド プロシージャを作成できます。このストアド プロシージャを使ってデバッギングやブレークポイントの設定なども可能になります。また、Visual Studio との統合によって、さらに充実した開発環境をプログラマに提供できるようになります」と解説。そして、「SQL Server と Visual Studio をいかに統合させるか。そのために、この SQL Server 2005 の開発に 5 年を要することになったのです」という内幕も語ってくれた。
 | 長期開発の副産物? SODA (サービス指向データ アーキテクチャ)。 |
|
 |
SQL Server 2005 の開発期間中に Web サービスが本格化し、SOA (サービス指向アーキテクチャ) が注目を浴びるようになった。ジム グレイは「データを .NET Framework でカプセル化し、Web サービスでやりとりするのが SOA ですが、私たちはこのデータのカプセル化に特定の方法があることを発見し、それを SODA (Service Oriented Data Architecture: サービス指向データ アーキテクチャ) と名付けました」という。そしてデータを 4 種類 ― (1) エンタープライズのコアの情報であるリソース データ、(2) そのキャッシュ コピーである参照データ、(3) メッセージが行き交うサービス統合データ、(4) ジャーナルやログといったアクティビティ データ ― に分類し、SQL Server 2005 では、これら 4 種類のデータをフィーチャしながら、SODA を構築しやすい環境を提案していくと語った。
そのための機能として、データベース上でネイティブに実装、稼動できる Web サービスや疎結合型のアプリケーション構築の問題を解決できるサービス ブローカ、SQL Server 2000 から大幅に進歩したクエリ通知などがあるという。
そして「SQL Server 2005 は非常にすばらしい XML のサポートを持っている」という声が、既に多くのユーザーから寄せられていることを報告した。
 | データの出し入れに新機能、 データソース統合とレポーティング。 |
|
 |
SQL Server 2005 はデータをどのように抽出し変換するか。その答えが、データ変換サービス (DTS) と呼ばれていたものを刷新したSQL Server インテグレーション サービス (SSIS) だ。「ファイル、レガシー システム、Web サービス、さらにはオラクル、DB2 …、このインテグレーション サービスはどこからでも自由にデータを抽出できます」という。そしてそれをパイプラインで変換し、処理していくのだが、そのパフォーマンスが並列処理によって、従来のデータ変換サービスより約 10 倍速くなっているとも語った。
また、データをどう外に出すかについては、レポーティング サービスが挙げられる。Visual Studio との統合によって、インタラクティブなレポートが簡単に作成できることが SQL Server 2005 の特長だという。さらには KPI (主要業績評価指標) についても、プレゼンテーションがしやすいようにアイコン表示などを可能にしている。
次にジム グレイはデータベースを高い視点から語ってみせる。「データベースから始まる流れがあります。まずデータがあって、それが情報に変わります。そしてその情報が知識へ、その知識が英知へと変わっていくのです。現時点のデータベースはデータをカバーしているに過ぎませんが、SQL Server 2005 はその境界をさらに上のレベルまで動かそうとしています」。
データから情報へ、情報から知識へと変えるために不可欠なのが BI (ビジネス インテリジェンス) やデータ マイニングであるが、中でも重要なのが「予測」だという。これはリレーショナル データベースにはできないことで、「サポートとコンフィデンス (信頼性)」という新たな考え方が必要だと説く。この概念は SQL Server 2005 の中に反映され、新たに追加されたアルゴリズムによって、データ マイニングはより一層の拡張性を見せている。「今までは、データ マイニングは統計学者やエキスパートの領域でした。SQL Server 2005 のリリースによって、ここにいるお客様にもアプローチしやすい環境ができたのです」と自信をのぞかせる。
さらなるデータ マイニングの革新や、ファイル システムとデータベースを融合させるための Win FS など、今後の展開を語りながらも、ジム グレイはあらためて今回の SQL Server 2005 に対する熱い想いを込めながら講演を締めくくった。
「SQL Server 2005 は、Microsoft Windows、Visual Studio、Office 12、SharePoint、BizTalk Server、そのすべてを束ねたものです。さまざまなプラットフォームでデータを管理します。SODA のプラットフォームとしても初めてのものです。XML や Web サービスにも対応します。そして、何よりも使いやすいのです。私自身も 5 年間、待ちわびました。皆さん、後はお使いいただくだけです」。
