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2023/06/14

Teams と AI チャットボットの連携により、ヘルプデスク対応を効率化。問合せデータ活用でさらなる業務 DXへ

ユーザーからの問合せに自動で返信する「チャットボット」の導入が各企業で加速しています。業務効率化やコスト削減が見込まれていますが、このツールの真価はそれだけにとどまりません。

東日本電信電話株式会社 (以下 NTT東日本) ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部は Microsoft Teams と AIチャットボットを連携させることによって、有人対応の品質向上やナレッジの共有などの業務プロセス改善を始めています。身近なヘルプデスク対応をデジタル化することで、有効な DX の第一歩を踏み出しているのです。

Nippon Telegraph and Telephone East Corporation

ビジネスモデルの変革が求めた営業サポートの課題

情報通信事業者としての「つなぐ使命」を遂行するべく、固定電話や光回線インターネット接続サービスなど、欠かすことのできない社会インフラを支え続けてきたNTT東日本。

 災害の激甚化や少子高齢化など、さまざまな社会問題を抱える現代日本において、NTT東日本は「地域の未来を支えるソーシャル イノベーション企業」であることをトップ メッセージに掲げています。地域社会の想いや特色を深く理解し、それぞれの地方自治体や教育機関、企業組織にとって適切な DX をもたらすことを、新たな経営スタイルに据えたのです。

 適材適所なソリューションを提供するためには、膨大な商材知識や情報が必要になります。変革の渦中において、同社の法人営業フロントを支援するビジネスサポート部でも試行錯誤が行われていました。東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部  設計設定サポート&プランニンググループ SE推進担当 担当課長塚本浩司氏と、プロセスプランニンググループ 企画総括担当 担当部長 折笠剛士氏は、課題について次のように説明します。

「ビジネスサポート部では、『このサービスの詳細について知りたい』『この機器の設定はどうすればいいのか』といった社内の営業や SE からの問合せに対するヘルプデスク対応をしています。NTT東日本には全国に数千名の営業メンバーがおり、ヘルプデスク 11 名ですべての問合せに対応しています。これらの問合せへの回答が遅れるということは、結果的にお客さまを待たせてしてしまうということになります。しかし、毎月千数百件という電話やメール問合せに対してスピーディに対応しきれないこともあり、改善の方法を模索していました」(塚本氏)

 「営業、SE からの問合せに対して単発で回答するだけでなく、全体のナレッジにしていきたいとも考えていました。履歴を Excel に蓄積するといった従来のやり方ではない、まったく新しい方法が必要でした」(折笠氏)

 こうした課題に対応するため、ビジネスサポート部は チャットボット「PKSHA Chatbot」の導入を選択します。選定の理由について、東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部 設計設定サポート&プランニンググループ SE推進担当 高橋治氏はこう語ります。

 「いつでもすぐに即答できる体制を築くには、マンパワーだけでは限界があります。システムの力を借りなければなりません。数あるチャットボットを比較検討した結果、最も機能に優れていて、かつスピーディに対応していただけたのが PKSHA Chatbot でした」(高橋氏)

 通常、チャットボットを機能させるには質問の意図をカテゴリー分けするなど整理した上で、回答を用意して FAQ データを作成する必要があります。これには多くの稼働と高度なノウハウが必要であり、導入までに時間を要してしまいます。しかし、ヘルプデスクの負荷を軽減するためにも、できるだけ早く導入を進めねばなりません。さらに、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) による混乱期にあって、ヘルプデスクへの問合せは増加。チャットボット構築にかかる稼働を捻出することは難しい状況でした。

 そのような状況の中、ビジネスサポート部は FAQ の作成支援サービスを提供する PKSHA の提案を採用します。PKSHA Chatbot を提供する株式会社PKSHA Workplace の大槻一至氏は、当時をこう振り返ります。

 「PKSHA Workplace は、お客さまが元々保有する、メールやチャットの問合せ情報や既存のマニュアルなどから AI により質問と回答のセットを生成するサービスを提供しています。これにより、精度の高い FAQ の作成を支援し、従来の準備コストを大幅に抑えることが可能になります。NTT東日本さまへの導入あたっても、何万という膨大な過去の問合せ履歴から、似たような QA を自動的にグルーピングし重複排除することによって、短期間で構築することができました」(大槻氏)

 こうして 2020 年 12 月から、ビジネスサポート部における PKSHA Chatbot の利用が始まりました。

Teams と AIチャットボットの連携によるハイブリッド対応

社内ポータルに Web 版 PKSHA Chatbot が掲載されたことにより、チャットでの問合せを実現。しかし、ヘルプデスク業務としては、まだ改善の余地が残っていました。

 「外出先で問合せを確認したいと思っても、その都度社内システムにログインする必要があります。これではまだ効率的な運用とは言えませんでした」(塚本氏)

 一方、コロナ禍をきっかけにして、NTT東日本ではコミュニケーション基盤として Microsoft Teams が盛んに活用されるようになりました。ビジネスチャットやオンライン会議はもちろんのこと、社内電話も Microsoft Teams Phone に切り替わっています。

 「意外に思われるかもしれませんが、NTT東日本でも Teams Phone を活用しています。外出先や在宅勤務中でも、オフィスへの着信をスマホで受けられるのでとても便利です。社内で使うだけでなく、お客様にも、テレワーク向けソリューションのひとつとして提供しています」(塚本氏)

 こうした環境とツールの進化に伴い、2021 年 11 月、ビジネスサポート部は Teams と PKSHA Chatbot を連携させました。普段の業務で使い馴染んでいる Teams 上に PKSHA Chatbot を搭載することで、問合せ対応がより便利で使いやすいものに進化したのです。現在 PKSHA Chatbot はヘルプデスク機能を拡張し、PKSHA AI ヘルプデスク for Microsoft Teams として活用されています。さらに、有人対応機能も備え、Teams のチャットから直接質問できるだけではなく、AI チャットボットでは回答しきれない質問に対しては、人の対応に切り替えることができます。

 同社の Teams 上に、サードパーティーのアプリを導入するにあたり、慎重な検討を実施し、厳格なセキュリティ基準を満たしての実装でした。

効率化により 3 人分の稼働削減効果。有人対応の品質向上も

Teams での質問に対して、簡単な内容ならば AI チャットボット が回答し、複雑な質問はシームレスにオペレーターに切り替わるという、ハイブリッドなヘルプデスク対応の実現によりビジネスサポート部にはどのような変化が訪れたのでしょうか? 折笠氏、高橋氏、塚本氏はそれぞれこう答えます。

 「チャットボットの利用率が向上しました。従来は電話がほとんどで、チャットボットは 1 割ほどだったのですが、現在は 35% にまで向上しています。繋がりにくい電話と違って確実に答えてくれることに加えて、『いざというときは有人に切り替わってくれる』という安心感も大きいと思います。回答時間の短縮化と問合せ対応の自動化が進んだことにより、3 人分程度の稼働削減効果がありました」(折笠氏)

 「回答をオペレーターが引き継いだ場合も、Teams 上で視覚的に資料を共有できるので、以前よりわかりやすい回答ができるようになったと感じています。また、Teams ならば他者のやりとりも見ることができるので、回答のフォローができるようにもなりました。一人ではなく、チームとして問合せに対応することができるようになったのです」(高橋氏)

 「複雑な説明の場合、電話だと伝えたつもりでも伝わっていないという事が往々にしてありますが、Teams ならば過去のやり取りを遡って確認できるため、行き違いが少なくなります。履歴を確認できることはそのままナレッジの共有に繋がりますし、個人別の応対内容を分析することによって、より効果的にオペレーターの指導・育成ができると考えています」(塚本氏)

 ビジネスサポート部は PKSHA Chatbot を Teams に連携することによってチャットボット利用率を向上させたのみならず、有人対応の品質をも改善させたのです。折笠氏は、その意義を次のように語ります。

 「回答のスピードや品質を向上させることは、そのままお客様に対する NTT東日本のサービスを向上させる事に繋がります。いつでも即応する チャットボット の役割と、複雑な質問に答える人の役割が、それぞれうまく発揮できるようになりました」(折笠氏)

Teams を DX 推進のプラットフォームに

DX推進は一朝一夕に成し得るものではなく、ビジネスサポート部における PKSHA Chatbot の導入も時間をかけて実施することで着実に効果を上げてきました。トライアルにはじまり各種機能を段階的に搭載し、メンバー全員が納得感をもって進むことを心掛けるなど、実績を一つひとつ積み上げてきたのです。

今後は、さらにサービス品質を高めていきたいとNTT 東日本ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部 設計設定サポート& プランニンググループ SE推進担当の磯貝氏は意気込みます。

 「チャットボット の一次対応から、有人で本格的な回答をするまでの時間をどれだけ短縮できるかが、今の課題です。蓄積されたデータがそのままステップアップのための宝物になると思いますので、分析と改善のサイクルを回していきます」(磯貝氏)

 蓄積されたデータの活用に関しても、先駆的な取り組みが試みられています。

 「先日、AI による FAQ の自動生成について PoC を実施しました。日々貯まっていくログを AI が分析して、FAQ を作ってもらう試みです。これを形にすれば、FAQ 作成にかかっていた稼働時間を大きく削減することができ、人間はより応対に傾注できるようになるでしょう」(折笠氏)

 「応対データを深掘りすることによって、エリアごとの商材理解度や、新サービスが登場した際の効果的な説明方法なども見えてくると考えています。PKSHA Chatbot を起点とした業務 DX について、引き続き支援して参ります」(大槻氏)

 最後に、折笠氏は ビジネスサポート部の DX 推進についてこう展望しました。

 「Teams から利用できる PKSHA Chatbot については、社内の別の商材を扱う部門からも相談を受けています。窓口が一本化され、あらゆる部門への問合せができるのが理想だと思いますので、横展開を進めていく予定です。今回のプロジェクトは、Teams にサードパーティー製品を組み合わせることで、業務 DX の可能性を広げるきっかけになりました。現在、案件の進捗管理などを Teams 上で可能にするために、Power Platform を利用したローコード開発にもチャレンジし、さらなるお客様対応品質の向上および DX 人材育成に取り組んでいます。Teams を業務 DX 推進のプラットフォームとして活用していきたいと思います」(折笠氏)

 社内ヘルプデスクのチャットボット導入を出発点に、数々の業務 DX が進む NTT東日本ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部。その経験が日本各地に伝わりお客様の継続的成長を支えることで、豊かな社会が築かれていくことでしょう。

“Teams ならば他者のやりとりも見ることができるので、回答のフォローができるようにもなりました。一人ではなく、チームとして問合せに対応することができるようになったのです”

高橋 治 氏, ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部 設計設定サポート&プランニンググループ SE推進担当, 東日本電信電話株式会社

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