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2024/03/26

柔軟性、先進性から Microsoft Azure を標準採用、デジタル コンストラクションを始め数々の施策を実現している大和ハウス工業の DX 戦略

1955 年に「建築の工業化」を企業理念に創業し、戸建住宅をコア事業に幅広い領域で事業活動を展開する大和ハウス工業株式会社。DX にも積極的に取り組んでおり、デジタル コンストラクションを始めとする数々の施策を実現しています。そのパブリック クラウド基盤として重要な役割を担っているのが、Microsoft Azure です。2018 年に Microsoft 365 を導入したことを契機に、新しい価値を生むための投資への転換としてパブリック クラウドであるAzure を標準とすることに決定。これによって DX への取り組みを大きく加速していったのです。DX の土台となるデータ統合基盤の構築や、基幹系ポータルのモダナイズも Azure 上で実現し、基幹系システムである SAP S/4HANA も Azure 上で稼働。さらに最近では、Azure OpenAI Service の活用も開始しています。今後も Azure を標準クラウドとして、既存システムのモダナイズや DX を進めていく計画です。

DAIWA HOUSE INDUSTRY CO LTD

企業での利用に適したクラウドだと評価し Azure の標準採用を決定

2022 年 5 月に「第 7 次中期経営計画 (第 7 次中計)」を策定かつ発表し、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の 3 つの柱によって、持続的成長モデルの構築を目指している大和ハウス工業株式会社 (以下、大和ハウス工業)。これらを実現するうえで重要な位置付けにあるのが、デジタル トランスフォーメーション (DX) の推進です。

「情報システム部門では第 7 次中計に合わせて、第 7 次 IT 中計を策定しています」と語るのは、大和ハウス工業で執行役員 情報システム部門担当を務める松山 竜蔵 氏です。最終的に「なりたい姿」を明確にし、そこからバックキャストすることで、組織をまたぐ 7 つのテーマを設定。その進捗は「DX アニュアルレポート」で公表していると説明します。

しかし大和ハウス工業における DX への取り組みは、ここから始まったわけではありません。既に 2019 年には着手されており、それ以前も IT 基盤の見直しなどが行われてきたのです。

「もともとはオンプレミスで IT システムを運用していましたが、保守サポートの終了や老朽化でシステムをリプレイスする際の費用負担が発生すること、リース満了となる 5 年先のキャパシティに合わせてリソース計画を立案しなければならないこと、自社運用に関わる担当者の負担が大きい、といった問題を抱えていました」と言うのは、大和ハウス工業で本社情報システム部長を務める川口 正起 氏。これらの問題を解決するため、2006 年にはプライベート クラウドへのシステム移行を開始し、2014 年にフルクラウド化を実現したと振り返ります。

その後、パブリック クラウドの提供が本格化し、低コストでリソースの追加が柔軟に行えることから、ハイブリッド クラウド化に向けた検討をスタート。2015 年に、とあるメガクラウドに仮想マシンを 1 台立ち上げ、試験的な活用を開始しています。この時の印象を、大和ハウス工業 情報システム部 本社情報技術管理グループでグループ長を務める櫻井 直樹 氏は、次のように振り返ります。

「実際にこのパブリック クラウドを使って感じたのは、管理に関する独自の作法があり、考えていた以上に保守業務の負担が大きいということでした。これではせっかくパブリック クラウドを使っても、プライベート クラウド以上のメリットを享受することはできないと考えました」。

そのためしばらくはプライベート クラウド中心の運用が続きましたが、2018 年に Microsoft 365 を導入したことで、状況が大きく変化します。大和ハウス工業では Microsoft 365 と共に Azure ExpressRoute も導入されていますが、これを使うことで Azure への接続が安全に行えることから、Azure 導入の検討が始まったのです。

「実際に Azure を使ってみると、それまで使っていたパブリック クラウドに比べて、保守運用を任せられるパートナーが数多くいるうえ、柔軟性の高いマネージド サービスが多いこともわかりました。またマイクロソフトは日本企業のニーズを熟知しており、こちらの要望に合わせた対応をしてくれることも、大きな魅力となりました」 (櫻井 氏)。

そこで 2019 年にはパブリック クラウドとして Azure を標準として採用することに決定。ここからパブリック クラウドを積極的に活用した、DX への本格的な取り組みが始まったのです。

DX 第一弾として始まったデジコン プロジェクト、より魅力ある建設現場の実現へ

DX の第一弾として着手されたのが「デジタル コンストラクション (デジコン)」プロジェクトです。その背景について「建設業界は生産性が低く、高齢化も進んでおり、近い将来には技術者/技能者が減少するのではないかという危惧があります」と語るのは、大和ハウス工業 上席執行役員で技術統括本部 副本部長・住宅安全担当を務める河野 宏 氏。この課題の解決を目指し、2019 年にデジコン プロジェクトを発足したのだと説明します。

「デジコンで実現したいのは、働く人にとってさらに魅力的な仕事になるよう、建設現場の働き方を DX で抜本的に改革することです。かつての『3K (きつい、汚い、危険)』のイメージを変え、将来を担う若い世代が『魅力的に感じるところ』へと建設業の仕組み自体を変えていく。これを当社だけで実現するのではなく、業界全体を巻き込んだ変革にしていきたいと考えています」。

デジコン プロジェクトではまず、設計および施工を中心に現場から上がってくる課題をリストアップし、それらの優先順位を明確化。優先順位の高いものから施策化し、課題解決が進められていきました。ここで重視されたのが、データの収集、蓄積、連携だったと説明するのは、大和ハウス工業 技術統括本部 建設DX推進部 住宅系施工グループでグループ長を務める林 健人 氏です。

「今は先が読めない世の中になっており、過去の経験則や成功体験に基づく業務推進では立ち行かなくなっています。そこで重要になるのがデータです。デジコンではまず、プロセスや組織ごとに分散していたデータを集約して組み合わせ、業務に活用していくことを目指しました。気づきを与えて作業の効率や品質を向上させました。当社ではこれを『守りの DX』に位置付けています」。

このような「守りの DX」としては、Microsoft Power Platform や Azure、Microsoft 365 など、マイクロソフトの各種サービスを活用し、マイクロソフト・コンサルティングチームと一緒に既にさまざまな施策が実現されています。その代表例として林 氏が挙げるのが、施工現場管理のためのダッシュボードです。

「これは 2020 年に実施した業務分析を基に、現場の要望に合わせて実装したものであり、施工管理者に必要な情報を集め、ダッシュボード画面で可視化しています。これによって、施工管理者がデータを探す手間を省いて生産性を高めると共に、情報の組み合わせや類似物件の情報などから新たな気づきを得ることができたのは大きいことです」。

これまで散在していた情報をひとめで把握できるようにしたことで、作業の効率や品質が向上しました。自動通知などの機能を組み合わせることで、コンプライアンス意識も向上しました。さらに、気象や地震などの災害情報と施工現場位置や工程情報をマップ上に重ねることで、非常時の情報把握スピードが速くなったと言います。

「このような取り組みを進めてきたことで、最近では DX に対応できる人材が育ってきました」と河野 氏。これこそが現時点における、デジコン プロジェクトの最大の成果ではないかと語ります。「今後は AI を活用したサプライチェーン マネジメントの強化も含めた『攻めの DX』にも着手していきます。これまでは DX によって経営基盤の強化や経営効率の向上を進めてきましたが、これからは収益モデルも進化させていく計画です」。

他にも数々の施策を実現、DX を加速すると共に、情報システムへの考え方も変革

デジコン プロジェクトは大和ハウス工業の DX における先駆けとなりましたが、これ以外にもさまざまな DX プロジェクトが実施されています。

まず 2020 年には DX の土台となる「データ統合基盤」の構築に技術統括本部 建設DX推進部と着手。複雑化していたデータ連携の流れを整理したうえで、API によるデータ連携プロトコルとデータ モデルを明確化、ユーザーの必要に応じてデータソースにアクセスできる環境を構築しています。これについて松山 氏は「コンセントにつなぐだけで必要なデータにアクセスできる、というイメージでデータ活用ができるようにしています」と説明します。

これと並行して、基幹系ポータルである「D-SMART」の Azure 化も進められています。これはもともとプライベート クラウドで運営されていたものですが、Azure へと移行と同時にモダナイズ (マイクロサービス化) も行われています。

基幹システムそのものも Azure へと移行。大和ハウス工業では SAP ECC がプライベート クラウドで稼働していましたが、これを SAP S/4HANA へと移行するタイミングで、Azure へと移し替えています。

生成 AI への取り組みも既に始まっています。Azure OpenAI Service を使ったチャット サービスを 2023 年 10 月に社内リリースしているのです。業務への適用はまだ試行段階ですが、環境提案書の自動作成や、図面からの構造化データ作成などが検討されていると言います。

さらに 2023 年 11 月には、施工業者のモバイル端末に対して、大和ハウス工業が情報を提供するしくみも構築。Microsoft Entra ID Premium (旧称 Azure Active Directory Premium) および Entra B2C の技術を使うことで、施工業者の BYOD (Bring Your Own Device) から、インターネット経由で直接社内の業務システムへの安心安全な接続を実現。これはサプライチェーン DX の一環として行わるものであり、DX を社内から社外へと広げていく取り組みの第一歩としても、重要なものだと言えます。

「Azure を活用することで、これらの施策に必要なインフラをすばやく用意することが可能になり、スケールアップやスケールアウトにも柔軟に対応できるため、サービスインまでのリード タイムを短縮することができました」と川口 氏。「Azure には時代を先取りした新たなサービスも次々と追加されています。もし Azure がなければ、当社の DX への取り組みはもっと時間がかかっていたはずです」。

これに加えて松山 氏は「Azure によって情報システム部門の考え方も、プロセス重視からスピード重視へと変化しました」と言及。またシステム構築後のスタンスも、できるだけ長期にわたって償却するというものから、必要がなくなれば思い切りよく止めてしまい、より重要な領域に重点投資していく、というものに変わっていると言います。

「当社は 7 次中計最終年度に売上高 5 兆 5,000 億円を目指しており、そのうち 1 兆円は海外の売上です」と松山 氏。グローバルでの IT ガバナンスを確立していくうえでも、マイクロソフトのサポートには大きな期待を寄せていると語ります。「今後もパブリック クラウドは Azure を標準とし、既存システムのモダナイズや DX の基盤として、活用を続けていきたいと考えています」。

“デジコンへの取り組みを進めてきたことで、最近では DX に対応できる人材が育ってきました。今後は AI を活用したサプライチェーン マネジメントの強化も含めた『攻めの DX』にも着手していきます”

河野 宏 氏, 上席執行役員 技術統括本部 副本部長 住宅安全担当 環境担当, 大和ハウス工業株式会社

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