NBAは、さまざまな配信チャネルで1日約100億回の対話を行い、ファンを大満足させていますが、競技連盟はこの盛り上がりを当然のことだとは考えていません。NBAはMicrosoft Azure上に構築された新しいDirect-to-Consumer(D2C)プラットフォームを展開し、各自の好みに合わせてカスタマイズした役立つコンテンツをファンに提供しています。ファン体験を向上させる取り組みの1つ、NBA CourtOptixでは、ファンの関心をさらに高めようと、Azure AIの機能を使用して、何十億ものデータポイントを選手や試合に関する洞察力に富んだ指標に変えています。競技連盟は将来、Azureによってさらに刺激的で画期的な発展を遂げることができるでしょう。
“私たちは常に多くのデータを処理してきました。しかしその可能性を引き出し、何十億ものデータポイントから価値あるものを見つけるには、AzureとAIが必要でした”
チャーリー・ローフ氏, 統計技術製品開発部門長, 全米プロバスケットボール協会
バスケットボールファンの新時代
全米プロバスケットボール協会(NBA)のファンは多様な層で構成され、競技連盟との関与度合いも様々です。お気に入りのチームの状況を追うだけなど、気楽な気持ちでNBAをフォローするファンもいれば、日々試合を観戦したり、ファンタジーリーグに参加したり、スポーツや選手に関する幅広い情報を深く掘り下げて調べたりと、NBA関連のあらゆることに没頭するファンもいます。NBAにとって、こうしたファンの一人一人が大切であり、競技連盟はファンが求める楽しく最新のコンテンツを提供できるよう努力しています。
このようなファンは多くのコンテンツを消費します。NBAのすべてのディビジョンとコンテンツ配信チャネルを通じて、ファンとNBAの間で日々100億回の対話が行われています。競技連盟とファンのつながりは、ますますデジタル化しています。そのためNBAは、包括的なD2Cプラットフォームとテクノロジーを通じて、熱狂的なバスケットボールファンに、より豊かな体験を提供できる方法を模索しています。
「私たちは、試合に対するファンの関わり方の変化を認識しようとしています」と話すのは、全米プロバスケットボール協会のメディア・オペレーション&テクノロジー担当上級副社長のケン・デゲンナロ氏です。「バスケットボールの試合は長年、テレビ放送に重点を置いて一方通行で視聴者に提供するものでした。それが、デジタルメディアの登場で双方向の関係に変わりました。ファンはこのプラットフォームを使用するだけで、NBAと直接関わり、フィードバックを提供できます」
この対話は、試合がないときでも、オンデマンドのストリーミング、ソーシャルメディア、Webを通じて、1日24時間続けられます。NBAは、この対話に関する理解を深め、その知識を利用して明示的および暗示的な好みに基づいてファン向けのコンテンツをカスタマイズし、競技連盟がこれまで提供してきたものとは大きく異なる体験ができるコンテンツを提供することを目指しています。
価値のあるパートナーシップと新しい考え方
NBAは、D2Cのビジョンを実現するには、適切なテクノロジーパートナーが必要であることを認識していました。その役割を満たすために選択されたのがマイクロソフトです。
「マイクロソフトは、Azureを始めとする多くのサービスだけでなく、ベンダーとパートナーのマイクロソフトエコシステムについても、最高水準の企業です」とデゲンナロ氏は言います。「NBAとマイクロソフトは、エキサイティングなD2C体験について共通のビジョンを持っています。NBAはバスケットボールの知識とデータを提供し、マイクロソフトはテクノロジー製品と深い技術的専門知識を提供します」
D2Cプラットフォームは、NBAの考え方と戦略がわずかに変化したことの現れです。NBAは、新しい計画によって、ファンとの直接的な関係が強まり、全体的な関与レベルが上がることを期待しています。その方法の1つが、コンテンツの配信とマーケティング活動の両方でパーソナライズを強化することです。
「お客様が4枚のTシャツ、大人用Lサイズ1枚、大人用Mサイズ1枚、子供用Sサイズ2枚を購入した場合、当社のマーケティングでは、火曜日夜の試合のチケットを2枚提供するべきではありません」とデゲンナロ氏は言います。「そのお客様には家族がいると推測できるため、土曜日昼の試合のチケットを4枚提供するほうがよいでしょう。ここ何年もの間、Internet of Thing(モノのインターネット)が話題になっていましたが、今は、Internet of Behavior(振る舞いのインターネット)が重要になっています」
ファンの活動と振る舞いに関する応用知識を、コンテンツのパーソナライズにも活用します。例えば、世界のさまざまなタイムゾーンにいるファンは、いつもライブで試合を観戦できるとは限りません。しかしファンの典型的な利用パターンを把握すれば、NBAは適切な長さにカスタマイズされたハイライトシーンリールをパッケージ化して、ファンが視聴可能なときに利用してもらえるよう、ファンのスマートフォンに提供できます。ファンが刺激的なプレーを好んで見ている場合は、ダンクシュートやスティール、そしてアクション満載のシーンばかりをハイライトに詰め込むことができます。特定の放送局、さまざまな画像、あるいはファンの喜びと関与レベルを最大限に高めるものなら何でも表示するように、フィードをカスタマイズすることもできます。
最も重要なのは世論
ファン体験を強化するために、NBAはNBA CourtOptixを構築しました。このAI主導型のデータ分析システムは、選手とボールの空間位置情報を使用して、試合中のアクションに関する有意義なインサイトを引き出します。NBAの常連ファンは、このシステムがNBAの公式ツイッターフィードや試合放送で使用されているのを見たことがあるかもしれません。
NBAは、NBAの全試合で選手追跡機能を提供するパートナーと連携しています。試合中は、カメラが選手とボールの動きを1秒間に25回撮影し、1試合につき150万の空間的座標を取得します。選手の撮影総数は、NBAシーズン全体で約20億データポイントになります。
NBAはMicrosoft Azureを使用して、その膨大な数字の意味を解明しています。「Microsoft Azureは、業界をリードする最先端のクラウドおよびAIツールを使用して、膨大なデータを高速処理し、ファンが理解し、関与し、楽しむことができる実用的なインサイトへと変換します」と、全米プロバスケットボール協会、統計技術製品開発部門長、チャーリー・ローフ氏は語ります。「私たちは常に多くのデータを処理してきました。しかしその可能性を引き出し、何十億ものデータポイントから価値あるものを見つけるには、AzureとAIが必要でした」
NBAは、Azure Data Lake Storage、Azure Machine Learning、Azure Databricks、そしてオープンソース製品のApache Airflow、MLflow、さらにCourtOptixの構成要素であるDelta Lakeに加え、Azure Functions、Azure Cosmos DB、Azure Kubernetes Service(AKS)、Azure Event Hubsを利用しています。すべての撮影データと他のさまざまなソースから取得されたデータはクラウドで一元管理されますが、一部の履歴レコードは、Microsoft SQL Serverを実行しているオンプレミスのシステムに残されます。NBAの開発チームは、さまざまなスキルセットを持つ従業員にとって、Azure Databricksが特に有用なツールであることに気付きました。
「私たちは、Azure Databricksノートブックで、多くのことを適切に処理できます」とローフ氏は言います。「それがAzure Databricksを選んだ理由の1つです。Azure Databricksノートブックでは、SQLクエリの専門家、PythonやScalaの開発者がすべて同じ場所で柔軟に作業できます。これはワークフローの観点から見ても非常に大きなメリットです」
NBA CourtOptixシステムを効果的なツールにするには、同システムが、機械学習とモデリングを通じて、バスケットボールの試合に関する知識を獲得する必要があります。コーチやファンなら、ポストアップ、ボールスクリーン、バックカットは何かを知っているかもしれませんが、CourtOptixにはまずそれを教える必要があります。CourtOptixがこれらの概念を学習すると、試合に関してより洗練されたインサイトを配信できるようになります。
「私たちはまず、試合中の特定のイベント、例えばドライブ、ドリブル、ショットなどを見つけます。次にそのイベントにタイムスタンプを付け、従来のボックススコアや実況情報と組み合わせます」とローフ氏は説明します。「イベントリストが作成されたら、幅広いデータウェアハウスを構築し、ファンが興味のあるイベントだけフィルタリングして見ることができるようにします」
この洗練されたデータ操作は驚くほど迅速に実現しました。「これまでチームの誰もAzureを操作したことがなかったため、Azureを短期間で立上げられたことに非常に感銘を受けました」とローフ氏は語ります。
NBAは、個々のファンの好みに基づいてデータを絞り込み、ファンにとって最も重要なコンテンツを提供することで、ファンの関与を高めるという最終目標を目指す予定です。「ゆくゆくは、これらの統計情報をパーソナライズして、ファンが欲しいものをもっと簡単に手に入れられるようにしたいと思っています」とローフ氏は言います。「特定のチームのファンであることがわかった人に対して、私たちはそのチームに関する情報をより簡単にお勧めすることができます。ファンが検索する必要はありません。私たちは、視覚化に関してもAzureで何ができるか楽しみにしています。視覚化の分野で多くの取り組みを行い、Webやソーシャルメディアを通じて、選手や試合に関する情報をより幅広い視聴者に届けたいと思っています」
ファンに合わせて調整された体験
NBAは、CourtOptixを使用して、ファンが製品を利用する方法、ファンが興味を持つコンテンツ、ファンが使用しているデバイス、そしてNBAが各ファンに合わせて適切にコンテンツをカスタマイズするのに役立つ主要指標に関する理解を深めたいと考えています。
AzureでD2Cプラットフォームを構築したことで、NBAが将来サービスを拡大する大きな可能性が開かれました。「私たちは、Azureを使用して、こうしたデータの分析とパーソナライズを大規模に行うことができます」とデゲンナロ氏は言います。「私たちのオンプレミスシステムには物理的な制限があります。ハードウェアを買い足さずにできることには限りがあり、それは私たちが望んでいることではありません。現在、私たちには、過去の技術的なハードルに邪魔されず、より革新的なことをリアルタイムで実行できるコンピューティング能力があります。データ革命が起きている、と言ってもよいでしょう」
Azureを利用すると、NBAが活用したいと考える幅広い追加サービス、Personalizerも提供されます。これはAzure Cognitive Servicesに含まれるAI主導型のサービスです。「Personalizerを使用して、ファンの行動やファンに関する情報に基づく適切なストーリーをファンに提供していきます」とデゲンナロ氏は説明します。「ファンの好みに合わせて、アプリケーションやWebサイトのレイアウトを変更できます」
総じて、NBAはAzureへの移行に満足しており、すべての必要な要素を革新的な方法で統合するのは非常に簡単であることに気付きました。進展は非常に早く、競技連盟は数週間で開発を完了し、パーソナライズされた最高のファン体験を提供するというNBAの取り組みを推進できました。
「現在、スポーツやエンターテイメントの分野には多くの競争相手がいます」とデゲンナロ氏は言います。「重要なのは、ファンが何度も訪れてくれるようなエクスペリエンスを提供し、ファンが私たちのために割いてくれる時間を非常に大切にしていることを示すことです。私たちは、ファンがNBAとともに過ごしてくれる時間を、ストレスのない楽しい体験ができる時間にします。私たちが望んでいるのは、NBAのファンになるハードルを低くすることです。そしてマイクロソフトがそれをサポートしてくれます」
全米プロバスケットボール協会の詳細については、Twitter、Facebook、LinkedInでご確認ください。NBA CourtOptixの詳細をご確認ください。
“NBAとマイクロソフトは、エキサイティングなD2C体験について共通のビジョンを持っています。NBAはバスケットボールの知識とデータを提供し、マイクロソフトはテクノロジー製品と深い技術的専門知識を提供します”
ケン・デゲンナロ氏, メディア・オペレーション&テクノロジー担当上級副社長, 全米プロバスケットボール協会
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