
Empowered JAPAN in SAGA 開催レポート
2019 年 6 月 29 日 (土)
主催/ Empowered JAPAN 実行委員会 (事務局: 日本マイクロソフト株式会社)
共催/株式会社佐賀新聞社
後援/佐賀市、佐賀県、佐賀大学、佐賀商工会議所、
公益財団法人佐賀県女性と生涯学習財団、総務省、厚生労働省、国土交通省、
経済産業省九州経済産業局、文部科学省、一般社団法人日本テレワーク協会、
特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会

「Empowered JAPAN 2019 in SAGA」開催概要
Empowered JAPAN 2019 in SAGA Opening

日本テレワーク学会 会長
Empowered JAPAN 実行委員会 委員長
東北芸術工科大学 デザイン工学部 企画構想学科 教授 (工学博士)
テレワーク月間実行委員長 東北都市学会会長
テレワーク推進フォーラム (総務省・経済産業省・
厚生労働省・国土交通省主宰) 副会長
松村 茂 氏
当初の予定では 100 名ほどの席を用意していましたが、本日は 160 名ほどがいらっしゃっています。大変多くの方に関心を持っていただき、ありがたく感じています。
Empowered JAPAN は、昨年春に「Empowered Woman JAPAN 2018」いう形でスタートし、おかげさまで全国でたくさんの参加をいただきました。
Empowered JAPAN のプロジェクトに対して、皆さんは今日、どんな関心を持ってお越しいただいているでしょうか。働き方改革、テレワーク、学び直し、リカレントなど、様々なキーワードがあります。また、働きたくてもなかなか働くチャンスや仕事が見つからない人や、自分のキャリアをアップしていきたい、働きながら学びたいという人も、日本中にたくさんいます。女性に限らず、そうした皆さんと一緒に活動していこうという思いを込めて、今年から Woman を外して Empowered JAPAN となりました。
皆さんは、働くこと=オフィスに行くことだと思っていないでしょうか。テレワークは「離れた場所で働く」という意味の造語で、少しずつ広まりを見せていますが、正しい理解はまだ進んでいません。「在宅勤務でしょ」と思っている方もたくさんいますね。政府が進めているテレワークでも、「通勤混雑緩和」「介護や育児をされる方が在宅で働く」など、在宅での働き方が優先されています。
私たち Empowered JAPAN は、次のテレワーク社会を考えて取り組みを進めています。それは「ワーカー (働く人) の時代」と言い換えることができます。どんな仕事を選ぶかはもちろん、仕事をする場所も選べる。そんなふうに、ワーカーが様々な自由を選択できる社会です。仕事のために佐賀を離れなければいけない、東京や大阪に行かなければいけないという時代ではなくなっているのです。
また、誰でも働ける「ダイバーシティ (多様性) 」や、「労働時間の選択」、「時間配分」もテーマです。オフィス以外の好きな場所で、好きな時間だけ働ける。朝の2時間、夕方の 2 時間、早朝、お昼の後、子どもが学校から帰ってくる前の1時間など、細切れに働くことも、テレワークなら可能です。
最後に「場所の自由」です。テレワーク、特に在宅勤務には、離れた場所で一人で働くというイメージがありますが、実際にはテレワークは在宅勤務だけではなく、好きな人と一緒に働くことができる魅力的な働き方です。子どもと一緒に、親のそばで、大切な人のそばで働ける。仲間と一緒に働ける。会社がどこにあっても働けるのです。地域の側は、どこでも働く人を受け入れられるので、佐賀市で働きたいと思えば移住して働くこともできます。調査では、東京から地方に出て行きたい人が加速度的に増えていますし、移住も非常に流行っています。ワーカーの時代とは、ワーカーが主体的に選択し、仕事を探して働く時代のことなのです。そしてそういうことができるのは、今はものを作る仕事ではなく、情報を扱い、人の頭の中で仕事を行う時代になったからです。未来とは、オンラインで人と人がつながった社会のことなのです。
Empowered JAPAN は、今年佐賀でも開催します。本日の講演やディスカッションを通じて、より多くの方にこのプロジェクトに参加いただければと思います。

お子様向けワークショップを同時開催しました
「Empowered JAPAN 2019 in SAGA」の会場別室では、小学生 23 名を対象とした「大人気ゲーム Minecraft、マイクロビットで学ぶプログラミング体験ワークショップ」を開催しました。
講義形式でプログラミングの基礎を学んだ後、プログラミングを実践し、最後に作品を発表するというもので、真剣な表情でプログラミングに打ち込む子どもたちの姿が見られました。
共催・佐賀新聞社からのご挨拶

佐賀新聞社 編集本部 編集局長
大隈 知彦 氏
私自身は新聞記者で、実にアナログな仕事しかしたことがありませんが、ICT の進展で記者の仕事も随分変わりました。平成元年から新聞記者をやっていますが、当時は原稿は手書き、写真はフィルムの時代でした。社内で仕事をするにはそれで支障はなかったのですが、甲子園やインターハイなどの取材では苦労をしました。取材が終わって宿泊先のホテルに戻ると、まず佐賀から送った荷物をほどいて、大きなファックスを設置したり、カメラマンはバスルームに暗幕を張って暗室にしたりと、仕事をするための準備の作業にかなりの時間をとられる時代でした。それが今では、カフェやファミレス、自宅で原稿を書いても全然支障がありません。いつでもどこからでも原稿や写真を送れますし、今この瞬間にも、ポケットの中のスマホで通信社からのニュースをどんどん受け取っている。そういう時代になっているのです。
しかし、仕事のやり方は変わったものの、働き方や、効率化したことで生み出される時間の使い方、勤務形態などはあまり変わっていません。これからは、ICT をどう生かしてどんな働き方をしていくかを真剣に考える時代です。人口減少、人手不足が進んでいますから、多様な働き方に向けていかに準備するかは、会社にとって人材確保の面でも非常に大切になっています。
先日、テレワークを当たり前にするという理念を持った東京のあるベンチャー企業の記事を読みました。700 名以上いる従業員は、基本的に全員がテレワークで出社義務はなく、本社のオフィスも実質的に存在しないそうです。そういう企業が増えると、転勤や単身赴任もなくなってくるでしょうし、オフィスビルが不要になれば街の形、都市の形が変わってくる可能性さえあると思います。それがどのくらいのスピードで進むかわかりませんが、確実に大きな変化をもたらしてくるでしょう。
どう働くかは、どう生きるかと同じです。本日のイベントが、理解を深め、これからさらに日本を進める契機になればと思っています。
市長からのメッセージ

佐賀市長
秀島 敏行 氏
私が佐賀市役所の職員として採用されたのは、昭和 41 年でした。市役所にあったのは、そろばん、計算尺、手回しの計算機という時代でした。それから約 50 年、電算化で様々なシステムが変わり、さらに今、テレワークに変わろうとしています。そのような中で、「いつでも どこでも 誰でも、働き、学べる世の中へ」という Empowered JAPAN の理念に、私も心から敬服しています。
働くことは、人間にとって大きな喜びの一つであり、私はすべての人とその喜びを共有したいと思っています。市長になって以降、私は発達障がいへの対応に力を入れてきました。発達障がいの方はいろいろな個性をお持ちで、得意分野で大変な能力を発揮される一方で、人と一緒に仕事をしたり周りのペースに合わせて仕事をするのがやや苦手という人もたくさんいらっしゃいます。テレワークは、こうした方にも個性を活かして働くチャンスや喜びを提供できるものと期待しています。佐賀市内で発達障がいの診断を受けた小中学生は、ここ 6 年で年々増加し、小学生の 8.8%、中学生の 6.8% に上ります。こうした子どもさんにできるだけ早く教育・訓練の機会を提供して症状を和らげられればと考えています。さらに次の段階として、こうした方々のトータルライフを考える必要があります。社会の中で自立するために働く場を提供する、という観点で、テレワークには大きな期待が寄せられています。
また、私たち佐賀市のような地方都市では、若い人を中心とする人口減少に悩んでいます。それに歯止めをかけるために働く場を確保する必要があり、従来は企業誘致に力を入れてきました。そんな中で、2016 年 10 月に西日本で唯一のマイクロソフトイノベーションセンターができ、それに続いて IT 系企業が佐賀に進出してきてくれるようになりました。昨年度は7社が進出し、約 450 名分の雇用の場を確保していただきました。
佐賀市は暮らしやすさ、子育てしやすさで全国のトップクラスに位置付けられています。都市化された部分もある一方で、田舎の風景も残っています。食べ物も水も空気もおいしく、生活環境がよいこの地で、テレワークによって東京や福岡にいるのと同じように仕事ができるのです。また、佐賀市の優秀な人材を企業が遠隔で採用することで、オフィスを開設することなく佐賀市とつながりができる新しい形の企業誘致にも期待しています。すばらしい生活環境と魅力的な仕事という、これまで共存が難しかったものを結びつけるのがテレワークであると信じています。

デジタル革命 ~激変する私たちの産業と社会~
日本マイクロソフト株式会社
エバンジェリスト 業務執行役員
西脇 資哲 氏
先進の IT やデジタル技術のプレゼンテーションに加えて、
AI をはじめとする最新技術を活用したデモンストレーションを行いました。その一部をご紹介します。
エネルギー管理システムがインターネットにつながることで、ビルや店舗の省エネ・防犯対策などを遠隔で最適化できるようになります。また、個室トイレの空き状況をデータとして取得し、アプリで確認できるようにするといった活用もなされています。

スターバックスでは、コーヒーマシンが IoT 化され、コーヒー抽出量の管理だけでなく、各地域の水温、気温、湿度に適したコーヒーを出せるようコントロールされています。家畜の管理や、医療施設でこれから容体が悪くなる人の予測などにも IoT は活用されています。

PowerPoint の「サブタイトルをスタートする」という機能を使うと、マイクに向かって話した内容を即文章化できます。他言語対応で疑問文なども正確に理解して表示が可能。さらに、手書きの文字を見分けてテキスト入力することもできます。
会場から無作為に選んだスタッフをカメラで撮影すると、AI が性別や年齢、容姿を読み取って教えてくれるというデモンストレーション。統計上のデータから判断する AI は、物事を精緻に当てるのではなく「外さない」ということが重要だと語られました。
東京の自宅にいるマイクロソフト社員を Teams で呼び出すデモンストレーション。AI が人物を判別し、背景を自動的にぼかす機能があるため、プライバシーを守ることができます。英語で話した内容を自動的に字幕として表示することも可能です。
将来、世界の仕事の何割かを AI が奪い、今ある仕事の 65% は全く新しい仕事になると言われています。しかし、相手の気持ちを汲んでコミュニケーションをとること、カリスマ性やひらめき、0 から 1 を生み出すことなどは人間にしかできないことなのです。
AI が人間と同じレベルになり、私たちの代わりの役目を担うようになってきました。この素晴らしい AI やインターネットの力を私たちの働き方改革に活用すれば、あらゆる壁が取り払われ、いつでもどこでも誰とでも、安心して働くことが可能となります。
そんな時代だからこそ、人間が持っている素晴らしい本質に目を向けて、私たちの能力を磨き、それで競争をしていくべきです。今のほとんどの教育機関では「インプット教育」が中心ですが、これからは「それに対してどう思う?」という問いかけに子どもたちが応えることで発想を豊かにする「アウトプット教育」が重要になるでしょう。
人間の人生は、生まれたときから豊富に学び、豊富に伝えることの連続です。赤ちゃんはミルクをもらったり抱っこしてもらったりするために懸命に方法を考え、泣いたり動いたりします。就職する、働く、時にはパートナーを見つける、それらもすべて学びと伝えることの連続でできているのです。

学び直しと社会参画 ~テレワークの可能性について~
写真右
IT エバンジェリスト
若宮 正子 氏
1935 年東京生まれ。東京教育大学附属高等学校 (現・筑波大学附属高等学校) 卒業後、三菱銀行 (現・三菱 UFJ 銀行) へ勤務。定年をきっかけに、パソコンを独自に習得し、同居する母親の介護をしながらパソコンを使って世界を広げていく。1999 年にシニア世代のサイト「メロウ倶楽部」の創設に参画し、現在も副会長を務めているほか、NPO 法人ブロードバンドスクール協会の理事として、シニア世代へのデジタル機器普及活動に尽力している。安倍政権の看板政策「人づくり革命」の具体策を検討する「人生 100 年時代構想会議」の最年長有識者メンバーにも選ばれた。
写真左
EverySwitch
大坪 紗耶 氏 (モデレーター)
これからの学びとは、 やりたいこと、やるべきことを決め 自らやる勉強のこと
テレワークとは何かとよく聞かれるのですが、私は「インターネットやコンピューターを使って、働く場所や時間を決めないで仕事をする柔軟な働き方」「通勤に不便な所に住んでいても、育児や介護をしていても仕事ができる新しい働き方」だとお話ししています。新しい働き方は、あなたの世界を拡げてくれます。遠く離れた人と一緒に仕事をすることで出会いがある。仕事を通じて新しい社会を知ることもできる。そして、収入も選ぶことができるのです。自分のお金を持つということは自立を助けてくれもします。今まで買いたくても買えなかったものが買えるだけでなく、自分に再投資する、自分を再教育するお金を確保することができるからです。一般的な家庭では、まず子どもの教育投資をしますし、少し余裕がある家では夫がよりよい職業に就けるよう資格を取ることに使うなどが多くなりがちです。妻が自分の再教育のために投資することは、なかなか難しいのが現実でしょう。しかし、私たちも自分に投資をすれば、より高度な知識が得られ、より高度な収入を得る可能性もあるのです。
テレワークを始めるには「まず学ぶこと」です。そう言うと、皆さん「30 歳を過ぎたのにまた勉強? 何を勉強すればいいの? 学校に行く時間もお金もないわ」となりがちです。しかし、これからの学びは、私たちが若いときの学びと違います。義務教育や先生に言われてやる宿題、単位を取らないと落第する、高校に上がれなくなるなど仕方なく受けてきたものとは異なるのです。これからの学びとは、自分が主体性を持ってやりたいこと、やるべきことを決めて、自分からやる勉強のことです。だからこそ、学ぶ楽しさが発見できるのです。
誰にとっても学び直しは必要です。人生 100 年時代を考えると、義務教育の勉強などはとっくに頭から消去されているので、新しいネタを仕入れなければなりません。さらに、進歩と変化の激しい時代では、仕事も、仕事のやり方も変わりつつあります。そんな時代やるべき勉強は新しく始める仕事の役に立つことになります。
いつでもどこでも学ぶこと エストニアの大学で感じた未来
今はネットやテレビを使えば大抵の勉強はできますし、これからはさらに充実していくでしょう。もちろん、自分で調べるのが一番身に付きますが、それでもわからないことは、後輩やお子さん、お孫さんなど自分より若い人にどんどん聞く癖をつけましょう。先に生まれた人ではなく、ある分野で自分よりも優れている人が先生だと、私は思っています。学び続ければ、学びの楽しさを知ることができるし、自分の世界を拡げることもできます。拡がった世界で、さらに新しい、あなたにとってやりがいのある仕事が発見できるかもしれません。
先日、エストニアを訪問する機会がありました。電子政府が進んでいることで有名な国ですが、そこで大学の卒業式に行きました。驚いたのは、卒業生として卒業証書を授与された 70% が女性だったこと。しかもほとんどが年配の方で、多くの方が子連れだったことです。この方たちは自分から勉強して、社会に出て働いて、あるときは子育てして、また別な分野やさらに進んだ勉強をしているのです。例えば、修士課程でも通学なしで遠隔授業だけで取れる単位もあるので、出産の前後などはその仕組みを使ったりしています。ですから、修士課程で卒業証書をもらう頃になると、結果的にある程度の年齢になります。卒業後は社会に出て働いたり、博士課程に進まれる方もいるでしょう。エストニア政府としては、才能がある人は男の人でも女の人でも外国人でもいい。その人の能力を精いっぱい成長させ、自分の国のためにその才能を使いたいという考えなのです。
エストニアの卒業式で感じられた未来は、私たちの生活もこれからは、学びも仕事も家庭も並立する、そんな時代に入ってくるということを感じさせてくれました。

若宮正子氏の著書
『独学のススメ 頑張らない!
「定年後」の学び方 10 か条』
中央公論新社
(中公新書ラクレ (655))

日本エイサー株式会社

デル株式会社

Dynabook 株式会社

エプソンダイレクト株式会社

富士通株式会社

富士通株式会社

レノボ・ジャパン株式会社

パナソニック株式会社

NEC パーソナルコンピュータ株式会社

株式会社サードウェーブ

VAIO 株式会社
