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「スマート」シティの未来はテクノロジーではなく、「人」で始まる

ニューヨーク市のCIOも務めたJeremy Goldbergによるブログです
男性が屋外でスマートフォンを使用して仕事をしている様子です

「スマート」シティの未来はテクノロジーではなく、「人」で始まる

2021年5月12日

私は都市が大好きです。これまで幸運にも、世界最高水準の環境で暮らし、学び、働くことができました。都市は、最先端のテクノロジーと、人の生産性が融合する拠点です。しかしそれだけでなく、豊かな歴史や美しい建築物、複雑な文化も持ち合わせています。都市は、「旧」と「新」が常に出会う場所です。私にとって、都市から生まれるクリエイティブなエネルギーは、刺激的でわくわくするものなのです。

しかし、この10年間、野心的な「スマートシティ」プロジェクトが失敗に終わった例もいくつか見てきました。テクノロジーは特定の問題に結びつけて考えるべきであるものの、科学プロジェクトのように扱われることがあります。また、適切な人材やプロセスがないゆえに、都市側でこれらのプロジェクトをサポートする体制が整っていないこともあります。私の経験では、スマートシティについて語られる際はデータが議論の中心になければなりません。ところが、このデータが後回しにされるケースがあまりに多く見られているのです。

実現するためのテクノロジー

都市を「スマート」にするのは何でしょうか?それは、テクノロジーではありません。住民の生活を向上させ、企業を繁栄させ、政府が優れたサービスを提供するために、どれだけテクノロジーが役立っているかが重要なのです。スマートシティの成功には、アクセシビリティを考慮した先見性に加え、状況や優先事項の変化に対応できるソリューションが不可欠です。都市計画者、政治家、市民団体、学者は、何十年も前からこれらのソリューションに取り組んできました。しかし、現代ではその規模がかつてないほど大きくなっています。

2018年、国連人口部は、世界人口の約55%が都市に住んでいると報告しました。2050年には、この数字が68%にまで増加すると予測されています1。都市の人口が増え続ければ、需要の増加に対応しなければなりません。

しかし、これは単なる人口増加の問題だけではありません。世界銀行の都市レジリエンスと土地利用に関するグローバルディレクターを務めるSameh Wahba氏は、この問題について端的に述べています。「COVID-19は、都市における多くの問題や不公平さを明らかにし、世界中の都市の貧困がもたらす健康や経済への壊滅的な影響を増幅させました。また、都市は気候変動に対する世界的な戦いの最前線にもあり、環境に優しく、回復力に優れた、包括的な復興の中心となり得るのです。都市は、その計画や管理、統治がうまくいけば、貧困から抜け出すためのエスカレーターのような存在になります。しかし、これは「言うは易し、行うは難し」であり、持続的かつ協調的な世界的な努力が必要です。」

今後数十年の間に何億人もの人々が都市に移り住むなかで、次世代のデジタルインフラや行政への投資を怠ると、それらの人々が十分なサービスを受けられなくなる可能性があります。幸いなことに、新しいテクノロジーには、増大する需要の規模とレベルに対応する力があり、多くの場合、すでに対応しています。例えば、ストックホルム市は、住民参加型の3Dレンダリングを都市計画のプロセスに組み込むことの価値をすぐに見出しました。

未来のために計画する

成功のカギは、過去と現在の都市を念頭に置いて計画することにあります。都市の未来は、新しいテクノロジーと既存のインフラを融合させ、環境の持続可能性や経済的機会などの具体的な緊急課題に取り組めるかどうかにかかっているのです。

最近のESI調査によると、持続可能な都市はデータ面でもリーダー的存在であることがわかっています。結局のところ、都市は複雑な場所です。都市を理解するには、大量のデータを管理し、リアルタイムの洞察を得るために必要なコンピューティング能力を活用する必要があります。意思決定者は、正確で一貫性のあるデータを武器にし、住民や企業のニーズを理解できるよう地域の人々と密接に協力しなければなりません。また、エネルギー効率の向上など、目に見えないプラスの効果を伝えることも必要です。

スマートシティを成功させるには、既存の構造体に新しいテクノロジーを統合した、強力で柔軟なデジタルインフラを構築する必要があります。成功する計画には、3つの原則があります。

  • 人のために作る— 意思決定の際には、、その取り組みが実際の人々に与える影響が最優先されること。
  • クリエイティビティを発揮する— ソリューションは、官民のクリエイティビティと生産性を高める足がかりであること。
  • 現実の問題を解決する— 特定のテクノロジーを導入したいという願望ではなく、現実の問題を優先して考えること。
     

インパクトを与える

初めてニューヨークの地下鉄に足を踏み入れたとき、この地下鉄網が都市生活にいかに重要であるかを実感したことを、今でも鮮明に覚えています。数年後、地下鉄は私の日常生活の中心となりました。

モビリティは、近年最も注目されている都市問題の一つです。その理由は、都市生活のすべての重要な要素に関わっているからです。都市の中を容易に移動できることは、そこに住む人々にとって不可欠です。モビリティは膨大な量のデータを生み出し、都市の管理に役立ちます。気候変動が迫るなか、効率的で持続可能なモビリティーソリューションへの迅速な切り替えは急務となっています。私たちが地下鉄に乗るときは、そこまで深く考えることはないものの、責任を持って環境を保護しながら、住民のモビリティを確保できるかどうかは政府にかかっています。

私は、都市でのテクノロジーの実用化を成功させるには、3つのカギとなる要素があると考えています。

  • 真実を表すデータ: より良い、より公平な意思決定を可能にします。
  • セキュリティ・ファースト: プライバシーの保護と信頼を構築します。
  • サステナビリティ: プロジェクト全体に共通する目標として、すべての取り組みにおいて追及します。
     

未来都市の構築

都市空間をすべての人にとって快適なものにするインフラを構築、改善すれば、私たちの都市は将来的に繁栄するでしょう。適切なテクノロジーやツールを使うことで、目の前の問題だけでなく、今後想定される問題も解決することができ、私たちがまだ気付きもしない問題にも、将来の世代が取り組めるようになります。都市は「旧」と「新」が出会う場所であり、現在と未来が出会う場所でもあります。今こそ、アクションを起こすときです。

イギリスのロンドン市とコロンビアのボゴタ市の事例では、両都市が未来の構築にどのように取り組んでいるかをご覧いただけます。また、マイクロソフトのウェブサイトでは、当社がどのように世界各地の政府を支援し、そこで暮らす人々を後押ししているかをご紹介しています。

参考文献:1United Nations, 68% of the world population projected to live in urban areas by 2050, says UN, May 16, 2018.