「Microsoft Innovation Lab 2019」レポート(後編)
日本マイクロソフトが 2019 年に開催したスタートアップやその支援企業、オープンイノベーションに取り組む企業などを対象にしたイベント「Microsoft Innovation Lab 2019」。
キーノートや複数のブレイクアウト セッションの様子をお届けした前編レポートに続き、こちらではフューチャー セッション以降の様子をレポートの後編としてお送りします。
フューチャー セッション
ブレークスルーとイノベーションを実現する最新テクノロジーたち
西脇 資哲
当日の午後には併催の「Japan Partner Conference」のメイン カンファレンス会場で、両イベント来場者が共に参加できる「ブレークスルーとイノベーションを実現する最新テクノロジーたち」と題したフューチャー セッションも開催。
日本マイクロソフト 業務執行役員兼エバンジェリストの西脇 資哲が、「Microsoft Teams」「HoloLens 2」「Surface Hub 2」など、マイクロソフト製品の最新機能についてデモを交えて解説しました。また特別ゲストとして平井 卓也 IT ・科学技術担当大臣もステージに登壇いただき、内閣府が提唱する未来社会のキーワード「Society 5.0」についてご紹介いただきました。
平井 卓也大臣
平井 卓也大臣は「日本は人口の 6 割が 50 歳以上という、人類史上例のない状況へ突入する。こうした状況で生じる様々な課題を、デジタル テクノロジーで解決していくのが Society 5.0。一気にデジタル トランスフォーメーション、デジタライゼーションを進めていかないといけない」とお話されました。
また西脇は、スマートな働き方に貢献するグループウェア「Microsoft Teams」の最新機能をデモンストレーション。マイクロソフトの AI やブロックチェーン技術の活用事例、「HoloLens 2」と 5G ネットワークの連携実験の様子なども披露しています。
Innovation Keynote
新しい時代でイノベーションを牽引するニューエイジたち
左から西脇 資哲、日下 光 様、山内 奏人 様、せきぐち あいみ 様
西脇は続いて、「Microsoft Innovation Lab 2019」のメイン会場で開催された「Innovation Keynote」でも、モデレーターを担当。「新しい時代でイノベーションを牽引するニューエイジたち」とのテーマのもと、まさにニューエイジを代表する 3 人のパネリストを招き、トーク セッションを展開しました。
パネリストは、レシート買い取りアプリの高校生起業家として注目を集めた、ワンファイナンシャル CEO の山内 奏人 様、VR アーティストのせきぐち あいみ 様、エストニアでブロックチェーン事業を行う blockhive OÜ 共同創業者の日下 光 様です。
いずれも西脇がかねてから「絶対に会いたい」と思っていた人達です。冒頭では。せきぐち様に VR アートのライブ ペイントを披露いただきました。VR 空間の中に立体的かつ美しい風景が描かれていく様子に、参加者からは歓声も。
トークセッションでは、西脇が設定したテーマに対してパネリストが回答する形で行われました。「今の活動を始めたきっかけ」のほか、「注目している国」や「くじけそうになったときに支えになるもの」「これからやってみたいこと」などのテーマでトークが展開。
15 歳で起業し、17 歳でレシートを現金化するアプリを発表した山内 様は、友達を喜ばせたいとの思いから、「購買履歴をビッグデータとして企業のマーケティングに活用するために、レシートを買い取るビジネスを考えついた」と当時を語ります。
せきぐち様も同様に、人を喜ばせたいとの思いで VR アートを行なっており、「3D データに書き出せるようにしたら、喜んでもらえるのではないか」という想いで取り組んできたことが、結果として仕事にもつながり、今があるとお話されました。
現在エストニアと日本の二拠点生活を送る日下 様は、エストニアでいち早くブロックチェーンに取り組んできた第一人者です。しかし今、「ブロックチェーン」はバズワードとなっていることもあり、「あえてその言葉を使わないようにしている」と語ります。「ブロックチェーンはインフラに近いものなので、本来はインビジブルであるべき。その言葉が大きく使われているうちは、まだプロダクト・マーケット・フィットしていないということ」との持論を語ってくれました。
ブレイクアウト セッション 5
新興ファンドが狙う新しいスタートアップ支援の形とは
左から東 明宏 様、堤 達生 様、澤山 陽平 様、西條 晋一 様
フューチャー セッションの裏では、「新興ファンドが狙う新しいスタートアップ支援の形とは」をテーマにしたセッションも開催。
W ventures 代表パートナーの東 明宏様にモデレーターを務めていただき、パネリストには STRIVE 代表パートナーの堤 達生 様、Coral Capital Founding Partner の澤山 陽平 様、XTech Ventures 共同創業者ジェネラルパートナーの西條 晋一 様ら、ベンチャー キャピタリストが登壇いただきました。それぞれの新興ファンドの特徴や投資スタンスやポリシー、直近の取り組みが紹介されたほか、投資ラウンドやフェーズごとの支援の違いや、ベンチャー キャピタルのあるべき姿についても意見が及んでいます。
ブレイクアウト セッション 6
無形資産を活かした、世界で戦える “ものづくりスタートアップ” とは
日本のものづくりスタートアップがグローバルで戦うためには、ヒト、カネ、チエをいかに集め、活用するかが重要なファクターとなります。そこで無形資産であるヒト、カネ、チエの各分野の専門家によるセッションも開催。
モデレーターにフォースタートアップス株式会社 シニアヒューマンキャピタリストの神宮司 茂 様を迎え、リアルテックファンド グロースマネージャー 木下 太郎 様、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授の白坂 成功 様、ものづくりスタートアップを代表して、株式会社エアロネクスト 代表取締役 CEO の田路 圭輔 様がパネリストとして登壇いただきました。スタートアップの運営には「ブランド化できる無形資産を集めることが大切」といった、組織作りや人集めのポイントについて意見が交わされています。
ブレイクアウト セッション 7
弁護士がスタートアップ エコシステムに与える影響とは
左から尾西 祥平 弁護士、草原 敦夫 様、野本 遼平 様、下平 将人 様
起業において法律への知見や姿勢の重要性が増すなか、スタートアップ界隈でも法律のプロフェッショナルである弁護士が活躍する場面が増えています。そこでスタートアップ エコシステムで活躍する、三浦法律事務所の尾西 祥平弁護士をモデレーターに迎えたセッションも開催しました。
READYFOR 株式会社 執行役員 CLOの草原 敦夫 様、株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ シニアアソシエイトの野本 遼平 様、株式会社ドリームインキュベータ ビジネスプロデューサーの下平 将人 様がパネリストとして登壇されました。スタートアップにおけるリーガルの重要性をはじめ、リーガル関係者をエコシステムに入れるべきタイミングや、社外弁護士に依頼するときのポイントについて語り合っていただきました。
「スタートアップでどのようにリーガル的な価値を発揮していくか」というテーマでは、法務の「ガーディアン」的な役割と、事業をグロースさせる「プレイヤー」の役割はそれぞれ棲み分けるべきであること、どういった弁護士が良いかを見極める基準などについても言及。
終盤ではビジネスとリーガルの連携をテーマに、マネジメントの人間がリーガルの必要性を意識し、事業側とリーガルの関係づくりが重要であると示されました。
ブレイクアウト セッション 8
スタートアップが大企業連携を通してのイノベーション創出の秘訣とは
左から松本 真尚 様、楠谷 勝 様、阿久津 智紀 様、浮田 博文 様
ブレイクアウト セッションの最後には、スタートアップと大企業がそれぞれ WIN-WIN かつシナジーを生み、真の「オープンイ ノベーション」を実現する仕掛け人たちに登場いただきました。
株式会社 WiL General Partner & Co-founder の松本 真尚 様がモデレーターを務め、東京海上日動火災保険株式会社 デジタルイノベーション共創部長 兼 東京海上ホールディングス株式会社 事業戦略部 部長の楠谷 勝 様、JR 東日本スタートアップ株式会社 営業推進部 マネージャーで株式会社 TOUCH TO GO 代表取締役社長の阿久津 智紀 様、富士通株式会社 グローバル マーケティング本部 ポートフォリオ戦略統括部 エコシステム推進部 シニアマネージャーでFUJITSU ACCELERATOR 代表の浮田 博文 様がパネリストとして登壇し、それぞれの取り組みを紹介しています。
ピッチ コンテスト
「Microsoft Innovation Lab Award 2019」
イベントの最後には、スタートアップや大手企業の新規事業を対象にしたピッチコンテスト「Microsoft Innovation Lab Award 2019」を開催しました。これまでも日本マイクロソフト社内やスタートアップを対象としたピッチコンテストは開催してきたが、大規模なイベントとしては初の試みです。
ピッチコンテストの参加条件は、「テクノロジーを駆使して今後の世界を変えていくスタートアップ企業であること」「設立後 5 年以内の非上場スタートアップ企業であること」「自社のプロダクト/サービスを有していること」の 3 点です。
書類審査を通過した 5 組が各持ち時間6分で、新規事業についてプレゼンテーションを行い、AI、IoT、ブロックチェーンなど、テクノロジーを用いたプロダクトやソリューションの革新性を競りました。
【ファイナリスト】
Laboratik
コミュニケーションを可視化するピープル アナリティクス システム「We.」を提供。「We.」は『チームが見える』を当たり前にし、組織変革を自律化する」がコンセプトのエンゲージメント改善ツールで、組織や人事のデータを分析し、クリエイティビティや生産性の向上につながる「データ ドリヴンな組織改革マネジメントを実現できる」というもの。
ZEROBILLBANK JAPAN 株式会社
ブロックチェーン技術を活用した企業内通貨を発行・管理する「ZBB CORE」を提供。企業間でのデータ アクセス権の定義、個人情報基盤(PDS)の適切な管理といったポイントをブロックチェーンと組み合わせ、「企業間におけるデータ流通を再定義する」ようなプロダクトの設計を目指している。
株式会社 Linc’well
IT を活用した次世代クリニック チェーンブランド「Clinic For」を展開。オンライン予約や事前問診、電子カルテの共有を実現しているほか、将来的にはアプリケーションの強化によるオンラインでの健康管理や薬剤配送の実現も目指す。
株式会社 T-ICU
集中治療専門医による遠隔集中治療支援サービスを提供。専門医が 24 時間体制でサポートを行い、画像情報を共有した上で現場へアドバイスを行っている。医師不足や医療格差の解消に向け「クラウド ホスピタル構想」を提唱。病院に所属せず専門医の能力をシェアする遠隔医療プラットフォーム「DaaS(Doctor as a Service)」を提供する。
株式会社 Scalar
ブロックチェーンと分散データベースを融合した分散型台帳プラットフォームを提供。改ざんが困難なブロックチェーンを使用しつつ、スケーラビリティを向上させる特許出願済みの技術を活用することで、スループットやパフォーマンスの向上を目指す。
審査員は日本マイクロソフト執行役員 最高技術責任者 兼マイクロソフト ディベロップメント代表取締役社長の榊原 彰をはじめ、DNX Ventures マネージングディレクターの倉林 陽様、グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの今野 穣様、経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室長 津脇 慈子様、フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長 CEO 志水 雄一郎 様の 5 名が担当しました。
「市場性」「実現性」「社会性」「技術力」「グローバル」の 5 つの視点で評価する厳正な審査の結果、専門医による遠隔集中治療支援システムを提供する T-ICU が最優秀賞のほか、スポンサー賞 2つ をトリプル受賞されました。また優秀賞に はScalar が選ばれています。
左から榊原 彰、 株式会社 T-ICU 中西 智之 様
審査員の一人である日本マイクロソフトの榊原は、最優秀賞の T-ICU に対し「医師不足という問題の解決が、社会性という面で大きく評価された」と講評。T-ICU には今後、「Microsoft for Startups」の活動に基づいた支援を提供することとなっています。
オープニング キーノートから多くのセッションやブース展示、ピッチコンテストやその後のネットワーキングまで、「Microsoft Innovation Lab 2019」の会場には終日多くの人が訪れ、スタートアップならではの熱気や、オープンイノベーションを目指す企業の関心の高さが際立ちました。
オープン イノベーションを目指す企業とスタートアップが出会い、つながり、ともにイノベーションを起こすきっかけへの一助になれていることを願っています。
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Microsoft Innovation Lab 2019 Sponsors
Special スポンサー様
株式会社電通
Platinum スポンサー様
富士通株式会社
Gold スポンサー様
株式会社OKPR
大日本印刷株式会社
デジタルハリウッド株式会社
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
Silver スポンサー
株式会社インフキュリオン・グループ
ギットハブ・ジャパン合同会社
株式会社Sun Asterisk
株式会社センシンロボティクス
B Dash Ventures株式会社
株式会社PIVOT TABLE
株式会社ポケット・クエリーズ
株式会社ホロラボ
Pitch Contest スポンサー
株式会社パソナグループ
株式会社 PR TIMES
Exhibitor
SBI R3 Japan 株式会社
エンコグナイズ合同会社
株式会社コミュニティオ
PSYGIG株式会社
株式会社CTIA
株式会社Scalar
株式会社 PR Table
株式会社Viibar
HEROZ株式会社
株式会社BONX
ランサーズ株式会社
株式会社 Ridge-i
Refreshment
カルビー株式会社