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クラウドキャスト株式会社

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掲載日: 2017 年 9 月 28 日

Azure App Service on Linux のモビリティの高さを活用し、手間を 1/10 に削減できるクラウド経費精算システムのバックエンドを Heroku と AWS から Azure へ移行

クラウドキャスト株式会社

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「中小企業の生産性革命」をコンセプトに、クラウド型経費精算サービス「Staple (ステイプル)」を提供しているクラウドキャスト株式会社。以前はすべての機能を他社クラウド上で動かしていましたが、2017 年 8 月に提供を開始した最新バージョンでは、一部の機能を Microsoft Azure へと移行しています。この移行を決意させたのが、「Azure App Service on Linux」と「Azure Database for PostgreSQL」の発表でした。同社は Ruby on Rails を利用しており、これがそのまま移行できる点を高く評価。また、Azure のオープン ソース対応のデータベース サービスによって、運用負荷軽減と開発効率向上が可能になるとも判断されたのです。Azure への移行によってオート スケール機能が利用可能になり、Docker コンテナによるマイクロ サービス化も実現。マイクロソフトとの協業によるビジネス拡大も期待されています。

<導入の背景とねらい>
クラウド型経費精算サービス「Staple」の新バージョンを提供開始、
その一部機能の実装を Azure へと移行

2017 年 8 月、クラウドキャスト株式会社 (以下、クラウドキャスト) はクラウド型経費精算サービス「Staple」の新バージョンを提供開始しました。同社はこれまで個人事業主や小規模事業を中心にこの Staple を提供してきましたが、新バージョンはスタートアップからエンタープライズまで、幅広い企業規模に対応できるようになっています。これまで顧客から受けていた数多く要望を踏まえた、数多くの機能強化も行われています。

写真:クラウドキャスト株式会社 代表取締役 星川 高志 氏

クラウドキャスト株式会社
代表取締役
星川 高志 氏

「現在も多くの企業が経費精算を紙や Microsoft Excel で行っていますが、紙ベースで多くの転記作業が伴う処理は非効率の塊だと言えます」と語るのは、クラウドキャスト株式会社 代表取締役の星川 高志 氏。そしてこれが、国内企業のホワイトカラーの生産性向上を阻む、大きな要因になっていると指摘します。「この面倒な作業は月末にまとめて行われることが多く、これによって処理負荷が集中するという問題も発生しています。ホワイトカラーの生産性を高め、処理ピークを平準化するため、モバイル ファーストのアプローチで開発したのが Staple なのです」。

Staple を導入することで、従業員はスマートフォンやタブレットなどのスマート デバイスによって、場所を選ばずに経費申請や承認、確認を行えるようになります。ユーザー インターフェイスはスマートフォンやタブレットに最適化されており、ボットによるサジェスチョン機能も搭載。新バージョンは Azure Active Directory (Azure AD) や Microsoft Office 365 とも連携しており、ユーザー データや部門データなどの自動読み込み、接待交際費の申請時におけるコンタクト情報の参照、カレンダーに記載された訪問先情報を基にした交通経路の推測も行えます。またビジネス向けチャット「Slack」とも連携でき、承認待ちやリマインダーなどの通知を利用者に送ることも可能です。「経費精算に関するあらゆる業務をクラウドで一元管理することで、経費精算の手間を 1/10 にまで削減できます。このような "21 世紀型" クラウド経費精算によって、働き方改革も推進しやすくなるはずです」 (星川 氏) 。

Staple にはこのように多岐にわたる機能が実装されていますが、その中でも特に注目したいのが「Staple リーダー」と呼ばれる機能です。これはスマートフォンの交通系 IC カード読み取り機能を活用し、交通系 IC カードの乗車履歴を自動的に読み取るというもの。交通費精算のための経路や金額を手入力する必要がなくなり、さらなる効率化を図れるのです。Staple リーダーによって入力されたデータは、データ改ざん防止のため、修正不可能な状態でクラウドに保管されます。また Staple リーダーで入力されたことは確認画面にも表示されるため、確認作業の手間も大幅に削減できるのです。

「カレンダーの確認、乗換案内による経路/金額確認、経費申請書への入力を省略することで、たとえば週 15 件の社外打ち合わせを行う従業員の場合、入力作業を月あたり 1 時間半短縮できます」と星川 氏。このような社員が 100 名いれば、年間のコスト削減効果は 450 万円に達すると言います。また申請区間が定期区間と重複していないかどうかもチェックできるため、重複支払いに伴うコストも削減可能。同様の条件で 1 回あたり 280 円の重複が存在した場合には、年間で 2,000 万円を超えるコストを抑制できると指摘します。

Staple リーダーは Staple の前バージョンから実現されていましたが、新バージョンではこのバックエンド機能を Azure へと移行。これによりオート スケールの機能が利用可能になり、ホワイトカラーの生産性向上をより強力に支援できるようになったのです。

図 1 : Staple の画面例

図 1 : Staple の画面例
左がスマートフォンによる経費申請画面、右上が Web による確認画面、右下が Slack による通知画面です。経費申請から承認、確認といった一連の業務をクラウドで一元管理することで、経費精算の手間を 1/10 にまで削減できます。 [拡大図] 新しいウィンドウ

<導入の経緯>
PaaS 活用の意向が強いクラウドキャストに Azure 移行を決断させた
「Azure App Service on Linux」と「Azure Database for PostgreSQL」の発表、
Docker イメージで Ruby on Rails をそのまま実行可能に

クラウドキャストによる Staple 開発の歴史は、2011 年にまで遡ります。同社はこのころに、経営者や会計担当がスマートフォンでデータ入力できるアプリを開発、これが 2011 年 12 月に行われた弥生株式会社主催の「弥生スマートフォン アプリ コンテスト」で、グランプリを獲得しています。その後、一般企業の従業員を対象にしたサービスの開発に着手。2013 年にその弥生から出資を受け、12 月には、国内初となるモバイル ファーストの経費精算サービスを発表しています。

2014 年 10 月にはブランド名を Staple へと変更。2015 年 7 月に「Staple 2」と「Staple リーダー」をリリース、2016 年 2 月には弥生株式会社の業務ソフト「弥生シリーズ」の 1 機能として利用できる「Staple for 弥生」もリリースします。それから約 1 年半の開発期間をかけ、2017 年 6 月に最新バージョンとなる「Staple 3」を発表、同年 8 月から販売を開始しています。

「Staple 2 までのバックエンドは、Heroku と AWS に実装していました」と星川 氏。その最大の理由は、高い開発生産性を実現でき、エンジニアの獲得も行いやすい「Ruby on Rails」を、開発環境として採用していたからだと説明します。2011 年当時の Azure では、その実行環境を実装することが容易ではなかったのです。それから約 5 年が経過した 2016 年 10 月、マイクロソフトは「Azure App Service on Linux」を発表。これがクラウドキャスト開発陣の気持ちを大きく動かすことになります。

「当社はできる限り PaaS を活用してサービスを実装するという方針を持っているので、Ruby on Rails を当時デファクト スタンダードである Heroku で稼働させていましたが、現在 Azure App Service on Linux なら Azure の PaaS 上に Ruby on Rails をそのまま移行できます。これまで使用していたクラウド サービスはスケーラビリティが十分ではなく、ユーザー企業の規模も限られていましたが、Azure ならオート スケール機能が利用できるため、大規模ユーザーにも対応しやすくなります」 (星川 氏) 。

そこでクラウドキャストはまず、Staple リーダーのバックエンド機能を Azure へと移行することに決定。2017 年 4 月に Azure 上での実行環境の整備を開始しています。現在の「Staple 3」のシステム構成は図 2 に示すとおりです。

図 2 :システム構成図

図 2 :システム構成図
Staple 3 のシステム構成。フロントエンドには ReactJS/React Native を採用し、開発生産性を高めながら圧倒的な応答速度を実現。Staple リーダーのバックエンドは Azure App Service on Linux で Docker コンテナを構成し、その上で Ruby on Rails を動かしています。 [拡大図] 新しいウィンドウ

まずフロントエンドには、ReactJS/React Native を採用。これによってコードの再利用性を高めつつ (65 ~ 70% のサーバー側コードを再利用して iOS/Android ネイティブ コードの生成が可能) 、圧倒的な応答速度を実現しています。

バックエンドは、Azure App Service on Linux で Docker コンテナを構成し、Ruby on Rails の環境を構築。フロントエンドで読み込まれたデータはここで変換などの処理を行ったうえで、他社クラウド上で稼働する他の Staple バックエンドへと伝達されます。

写真:クラウドキャスト株式会社 開発マネージャー 小池 平理 氏

クラウドキャスト株式会社
開発マネージャー
小池 平理 氏

「Staple 3 ではフロントエンドを改めてスクラッチ開発しましたが、React を利用することで小さなチームでも、短期間で開発が完了しました」と語るのは、クラウドキャスト株式会社で開発マネージャーを務める小池 平理 氏です。また Staple リーダーのバックエンドは既存のものを Azure へと移行していますが、Docker を利用し移行できるのでコード変更は不要であることと、App Service は移行時にステージング環境から本番環境への切り替えが容易であることから、移行作業の手間はおおよそ 1/2 程度に、移行作業の時間はおおよそ 1/5 程度に軽減され、合計で 1/10 程度に短縮しました。「今回はマイクロソフトの技術支援を受けながら Azure 上でのシステム構築を行いましたが、Docker コンテナなら Ruby on Rails をそのまま移行できるので、技術的な問題は特に発生しませんでした」。

<導入効果>
技術面ではオート スケールやマイクロ サービス化がメリット、
しかしそれ以上に大きいのがビジネス面での協業

それでは Azure への移行によって、どのような効果が得られたのでしょうか。「技術的な利点としては、やはりオート スケール機能が利用できることが挙げられます」と小池 氏。これによって大規模なユーザー企業にも、対応しやすくなったからです。「Azure のオート スケールは数秒で機能し、スピード感があります。またスケール ダウンも迅速なので、課金も抑えやすくなります」。

また Azure App Service on Linux で Docker コンテナを構成したことで、マイクロ サービスへの移行が可能になったことも、重要なポイントだと指摘します。「ここでノウハウを蓄積できれば、他の機能もマイクロ サービス化可能になるでしょう。これによってサービスの柔軟性が高まり、変化への対応も行いやすくなります」。

Azure への移行に伴い Azure AD の利用を開始したことで、ユーザー管理の負担が軽減可能になったことも、見逃せないメリットです。これによって顧客システムの人事情報と連携しやすくなり、ユーザー管理の省力化および自動化が実現できるからです。また Azure AD でユーザー管理を行うことで、 Office 365 との連携も行いやすくなります。「たとえば接待交際費の申請では申請者の氏名はもちろんのこと、接待相手の会社名も必要です。Azure AD と Office 365 から情報を入手できれば、これらの入力の手間も省けるようになります」 (小池 氏) 。

その一方で星川 氏は、「Azure への移行は技術面以上に、ビジネス面でのメリットが大きいと考えています」と語ります。「テクノロジーは短期間のうちにコモディティ化し、いずれはどのクラウドも、機能面での差異は小さくなっていくでしょう。しかしビジネス面での経験や体制は、そう簡単にまねできるものではありません。日本マイクロソフトは国内市場で 30 年にわたるビジネス経験を持ち、強力な支援体制も確立しています。その重要性に気がついていない人も少なくないようですが、これこそがマイクロソフトの最大の強みではないでしょうか」。

なお星川 氏は一般社団法人 Fintech 協会の理事を務めており、日本マイクロソフトも Fintech 協会の会員になっています。このような関係もあり、2017 年 1 月には協業に向けた話し合いもスタート。具体的な取り組みとしては、Staple と Office 365 の親和性の高さを活かし、これらを一緒に販売する体制の構築が考えられていると言います。

<今後の展望>
将来はすべての機能も Azure へと移行、
販売チャネルも拡大しより多くの企業の業務変革を支援

Azure App Service on Linux 上で動く Staple リーダーの機能は、外部のサービスから API 経由で利用することも可能です。この API を活用した OEM 提供も行われており、既に複数のシステム提供企業が、API 課金による Staple リーダー利用の契約を行っています。今後はエンド ユーザーへの直接的なサービス提供に加え、このような間接的なビジネス モデルも積極的に推進していく計画です。

また Staple リーダーだけではなく、他の機能を Azure へと移行していくことも検討されています。「最終的にはすべての機能を Azure へと移行し、マイクロ サービス化したいと考えています」と小池 氏。Azure はデータ分析や機械学習などの機能も揃っているため、これらを活用した不正検知の高付加価値機能も実現していきたいと言います。

もちろんマイクロソフトとの協業によって、販売チャネルを拡大していくことも目指されています。「現在でも中小企業の 9 割は紙と Excel で経費精算を行っており、従業員 1,000 人以上の企業でもスマートフォンが登場する以前の古いシステムを使い続けています」と星川 氏。既に業務にスマートフォンを活用しており、Office 365 などのクラウド利用にも抵抗がない企業であれば、Staple を導入するメリットは大きいと語ります。「電子帳簿保存の制度化や働き方改革への要請も、Staple にとっての追い風になっています。経費精算はその第一歩として、取り掛かりやすいテーマだからです」。

さらに星川 氏は、Staple によって経費申請入力の平準化を推進することで、キャッシュ フローの把握も迅速に行えるようになると指摘します。経費精算の効率化は、財務戦略にも大きな貢献を果すのです。「当社は "中小企業の生産性革命" をコンセプトに、中小企業における業務効率を IT によって実現してきました。今後も Staple を中心とした数多くのサービスを展開し、既存の枠組みにとらわれない新しい発想で、より多くの企業の業務変革を支援していきたいと考えています」。

写真左:代表取締役 星川 高志 氏、写真右:開発マネージャー 小池 平理 氏

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ソリューション概要

○プロファイル

クラウドキャスト株式会社外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きますは、2011 年 1 月に設立された Fintech 企業です。「中小企業の生産性革命」をミッションとして掲げ、クラウドを活用したモバイル ファーストの経費精算サービス「Staple (ステイプル)」を開発、中小企業の業務効率化を支援してきました。2017 年 8 月にはその最新バージョンである「Staple 3」の提供を開始し、対象顧客をスタートアップからエンタープライズまで拡大。既存の枠組みにとらわれない新しい発想で、世界を変革する人々を応援し続けています。

○導入メリット

  • Azure App Service on Linux と Azure Database for PostgreSQL を活用することで、他社クラウド上で構築した Ruby on Rails の環境を、容易に Azure へと移行できた。
  • Azure へと移行することで、オート スケール機能が利用可能になり、Docker コンテナによるマイクロ サービス化も実現できた。
  • マイクロソフトの長年にわたるビジネス経験を活かし、協業によって販売を拡大できる点も、大きなメリットだと評価されている。

○ユーザー コメント

「マイクロソフトの長年にわたるビジネス経験と強力な支援体制は、他社が簡単には追随できない大きな強みです。最終的には全機能を Azure へと移行し、マイクロソフトとの協業でビジネスを拡大していきたいと考えています」

クラウドキャスト株式会社
代表取締役
星川 高志 氏

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