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コマツ (株式会社小松製作所)

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掲載日: 2017 年 12 月 22 日

未来の建設現場を創造するために「スマートコンストラクション」を提供、
その IoT 基盤として Microsoft Azure を採用

コマツ (株式会社小松製作所)

コマツ (株式会社小松製作所)

建設機械の市場で国内トップ、世界 2 位の売上規模を持ち、建設機械の ICT 化にも積極的に取り組んできたコマツ (株式会社小松製作所)。同社は建設機械のみならず、建設現場全体の ICT 化を推進するため、2015 年 2 月から「スマートコンストラクション」の提供を行っています。これを支えるシステムの IoT 基盤として採用されているのが Microsoft Azure。リージョン数が多く国内にも 2 拠点用意されていることや、国内法に準拠した契約が可能なこと、リージョン間での通信スピードが高速なこと、OSS もサポートしていることが高く評価されました。データを蓄積するデータベースは、DataStax Enterprise (Apache Cassandra) や Azure BLOB Storage、Azure SQL Database、Azure HDInsight を適材適所で活用。システム構築開始からわずか 2 か月でサービスを開始、オンプレミス システムに比べて約半分という低コスト立ち上げも実現しています。

「スマートコンストラクション」を支える IoT 基盤 として Microsoft Azure を採用

<導入の背景とねらい>
「ハード視点」だけでは生産性および安全性の向上に限界、
建設現場全体の ICT 化を推進する「スマートコンストラクション」を提唱

少子高齢化などの影響によって、人材不足が進む建設現場。この問題を解決するには、建設現場に ICT を取り入れることで、安全性と生産性を高めていく必要があります。このような取り組みは既に業界全体で加速しており、国土交通省も建設現場での ICT 活用を目指す「i-Constraction」を打ち出しています。そしてこの動きをリードし続けているのが、建設機械市場で日本トップ、世界でも 2 位の売上規模を持つコマツです。

コマツによる建設現場への ICT 導入に向けた取り組みは、1998 年にまで遡ります。施工現場で使われる建設機械の健康状態を常にモニタリングして不具合や故障を未然に防止すること、故障した際も原因箇所や稼働場所の把握が即座に行えることで建設機械のダウン タイムを極小化することを目指し、建設機械に GPS を設置するというアイデアが生まれたのです。また、当時、建設機械の盗難が多発しており、盗難に遭った際に建設機械の場所が特定できることによって、結果的に盗難予防の二次的効果も生まれました。このアイデアは、GPS の位置情報のほか、建設機械を動かす各種コントローラーからのデータをコマツのデータセンターに送り、稼働状況や燃料残量などの情報を収集/活用する「KOMTRAX (コムトラックス)」へと結実。この機能は 2001 年から、コマツのすべての建設機械に標準装備されています。

またその後も、車両の「健康状態」「稼動状態」の把握をほぼリアルタイムで可能にする、鉱山機械管理システム「KOMTRAX Plus」を提供。2013 年には ICT ブルドーザーや ICT 油圧ショベルといった「ICT 建機」の導入も行っています。これは自動制御可能な建設機械であり、非熟練オペレーターでも熟練オペレーターのような精度で作業ができるため、人材不足を解消する切り札になると期待されました。

写真:コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部 本部長 四家 千佳史 氏

コマツ
執行役員
スマートコンストラクション推進本部
本部長
四家 千佳史 氏

「ICT 建機に 3 次元データを投入し自動制御を行うことで、現場作業の生産性は 2 ~ 3 倍向上しました」と語るのは、コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部 本部長の四家 千佳史 氏。しかし、建設機械を ICT 化するという「ハードウェア視点」の取り組みだけでは、生産性や安全性の向上に限界があることにも気がついたと振り返ります。「たとえ ICT 建機で土砂の掘削を効率化しても、それを運び出すダンプ トラックの手配が追いつかなければ、全体の生産性は上がりません。建設現場にはさまざまなプロセスがあり、これらをトータルで効率化しなければ、全体最適化は不可能なのです」。

この課題を解決するためにコマツは 2015 年 1 月、建設現場 ICT ソリューション「スマートコンストラクション」というコンセプトを発表。ICT 建機のみならず、建設現場のあらゆる情報を ICT でつなぎ、安全で生産性の高い現場を実現すると共に、蓄積されたデータを社会インフラの整備や災害復旧などに役立てるための取り組みを開始するのです。

「コマツは事業戦略の柱として、いい商品を作り続ける『ダントツ商品』と、それを長く使っていただく『ダントツサービス』に取り組み続けています。そしてこのスマートコンストラクションによって、『ダントツソリューション』という柱が加わりました。コマツの商品の枠を超えたソリューションによって、お客様のオペレーション全体の課題解決を目指しています」。

スマートコンストラクションには、多岐にわたるサービスが含まれています。まずドローンなどで建設現場の現況を高精度測量すると共に、施工完成図面を 3 次元データ化し、現況と完成後の地形の変化を可視化。これを元に掘削される土量などを定量化します。次に、確定した施工範囲を基に、最適な施工計画を提案。さらに、作業中の各種データを収集することで、すべての作業実績情報を蓄積・保管し、これを施工進捗管理はもちろんのこと、次の施工計画シミュレーションにも活かせるようにしています。このような一連のサービスによって人と現場、建機を有機的に結合し、三位一体での現場変革を実現可能にしたのです。

そのデータ収集と蓄積を行うことで主要サービスを提供しているのが、クラウド サービス「スマートコンストラクション クラウド サービス」です。そして その基盤となっているのが、Azure なのです。

<導入の経緯>
リージョン数の多さと日本法準拠の契約を評価し Azure を選択、
Cassandra や Spark など OSS への積極的な取り組みも採用を後押し

スマートコンストラクションの実現に向けた取り組みが開始されたのは 2013 年 4 月。情報基盤をどのように確立していくべきなのかという、技術調査が進められていきました。ここで前提となったのが、クラウドの活用です。

写真:コマツ スマートコンストラクション推進本部 システム開発部 部長 赤沼 浩樹 氏

コマツ
スマートコンストラクション推進本部
システム開発部
部長
赤沼 浩樹 氏

「2001 年から提供されている KOMTRAX のシステムは、約 40 台のサーバーで構成されたオンプレミス システムですが、これと同じことを行うには立ち上げに時間と労力がかかり、最短でも半年は必要になると見込まれました」と語るのは、コマツ スマートコンストラクション推進本部 システム開発部 部長の赤沼 浩樹 氏。また、「スマートコンストラクション クラウド サービス」 には膨大なデータが集まると予測されたため、これに追随できるスケーラビリティをオンプレミス システムで確保することも、難しいと判断されたと言います。「さらに、建設現場で活動する企業の 9 割以上は従業員 10 名以下の小企業です。このようなお客様に気軽に使っていただくには、インフラ コストをできる限り抑える必要があります。そのためクラウドの採用は必須条件だと考えました」。

このような考えに基づきクラウド サービスの選定に着手。スマートコンストラクションを全世界に展開することを前提に、グローバル展開している 4 社のクラウド サービスを俎上に載せた比較検討が進められていきました。その結果採用されたのが Azure です。その理由について赤沼 氏は「特に重視したポイントは 2 点あります」と説明します。

第 1 はリージョン数です。Azure は世界 11 か国に 40 近いリージョンを持ち、日本国内にも東西 2 拠点を確保しています。グローバル展開しているクラウド サービスのうち、国内に 2 拠点を持っているのは Azure しかないと赤沼 氏は指摘します。「これなら国内で DR 構成を取ることができ、グローバル展開も容易だと判断しました」。

第 2 は日本法に準拠した契約が行えることです。「当時、他のクラウド サービスの中には、国内リージョンを使う場合でも、日本法が適用されないケースがありました。米国の法律・裁判所の管轄ということになれば、お客様に安心して使っていただくことが難しくなると考えました」。

これらに加え四家 氏は、「リージョン間のデータ転送スピードが高速なのも魅力の 1 つです」と指摘します。採用決定前に、ドローンで収集した膨大な地形データを日本リージョンと米国リージョンとの間で転送する実験を行ったところ、Azure は他社クラウド サービスに比べ圧倒的に速かったと言います。

さらに、Windows だけではないオープン ソース ソフトウェア (OSS) のサポートに積極的だったことも、採用決定の後押しをしたと赤沼 氏は次のように述べています。

「『スマートコンストラクション クラウド サービス』では作業状況を把握するため、油圧ショベルのパケット刃先位置情報を収集していますが、これは建設機械 1 台あたり毎秒 5 件程度のペースでデータを生み出します。現場で 10 台の油圧ショベルが稼働していれば、6 時間で 100 万レコードを超えるデータが集まるのです。これだけの量のデータを扱うには、Apache Spark のようなインメモリー型の分散処理フレームワークや、Apache Cassandra のような分散型の NoSQL データベースが必要です。今回は Apache Spark のマネージド サービスである Azure HDInsight、そして Apache Cassandra の商用パッケージである DataStax Enterprise を利用することにしましたが、既にウルシステムズ株式会社が Azure 上でのサポートを行っており、Apache Cassandra の導入も問題なく行えました。また、DataStax Enterprise (DSE) を選定した理由としては、サポートが提供されることはもちろんのこと、バックアップとリストア、ビジュアルな監視、定期的な保守作業支援といった運用管理の支援機能が強化された製品であることが挙げられます」。

<導入効果>
DB や OS の適材適所での選択や PaaS 活用でわずか 2 か月での構築を実現、
立ち上げコストもオンプレミスに比べて約半分に

コマツは 2014 年 11 月に Azure の採用を決定し、2014 年 12 月からシステム構築をスタート。そのわずか 2 か月後の 2015 年 2 月には、顧客へのサービス提供を開始しています。そのシステムの全体像は図に示すとおりです。

刃先データなどの施工実績に関係するデータは、Azure VM 上で動く受信サーバーで受け取り、それを Azure VM + Linux 上で稼働する DataStax Enterprise (Apache Cassandra) に蓄積します。建設機械やダンプ トラックなどから得られるセンサー データは、Azure IoT Hub を介して Azure BLOB Storage や Azure SQL Database へと蓄積されます。ダンプ トラック積載時の土量を計測するペイロード メーターのデータは、Azure 上の Web アプリを介して Azure SQL Database に蓄積。ドローンから送られてくる地形データは、Land XML ファイルとして Azure BLOB Storage に格納されます。なお KOMTRAX のデータも、KOMTRAX のデータセンターからの XML ファイルとして、Azure VM 上のデータベースに送られています。

「Azure VM は Windows と Linux のいずれも動かすことができ、その上で動かすソフトウェアの特性に合わせて、適材適所で OS を選択できました」と赤沼 氏。また Azure IoT Hub や Azure BLOB Storage、Azure SQL Database といった PaaS 機能も充実しているため、スピーディな開発が可能になったと言います。「リージョンへの展開も、現在は東日本をメイン サイト、西日本を DR サイトとして利用することで冗長性を確保しています。また既に米国リージョンへの試験導入も始めており、将来は海外リージョンを活用した多拠点展開も視野に入っています」。

スケーラビリティの確保も容易になりました。DataStax Enterprise に蓄積されているデータ量は数 TB に上り、Azure BLOB Storage に蓄積されているドローンの地形データも同様に数 TB 規模になっています。現在稼働している VM 数は約 60。その数も必要に応じて自由に増減させることが可能です。

システム立ち上げのコストも抑制されています。「単純な比較は難しいのですが、オンプレミスで自社構築した場合に比べ、コストは 1/2 程度になっていると思います」と赤沼 氏。運用面での工数もほとんど必要なくなり、アプリケーションの設計開発担当者がマイクロソフトのサポートを活用しながら、「掛け持ち」で運用を行っている状況だと説明します。

スマートコンストラクションを導入した現場の数は、既に 4,000 を突破。入社 2 年目の事務職社員が 5 日間のコマツの研修を受け、現場施工に挑戦して見事成し遂げるという、驚くべき事例も生まれています。また後継者難に悩む施工業者からも「経験の浅いオペレーターでも仕上がりよく施工できることに驚いた」「これなら会社を継ぎたい若者がどんどん出てくる」「建設工事の現場の景色も大きく替わるはず」といった声が寄せられています。コマツではこのような事例を積極的に集め、毎週 3 社のペースでホームページに掲載。「スマートな現場」への共感を広げていく取り組みも、積極的に進めています。

「スマートコンストラクション クラウド サービス」 のシステム構成図

スマートコンストラクションを支える 「スマートコンストラクション クラウド サービス」 のシステム構成。建設現場で発生するさまざまなデータを DataStax Enterprise (Apache Cassandra) や Azure BLOB Storage、Azure SQL Database、Azure HDInsight (Apache Spark) で蓄積し、各種アプリケーションから利用できるようにしています。[拡大図] 新しいウィンドウ

<今後の展望>
スマートコンストラクションの基盤をオープン プラットフォームにし、
建設現場のシェアリング エコノミー実現を目指す

「2 年あまりにわたるスマートコンストラクションの取り組みを通じて、お客様が現場でどのような課題を抱えているのかが、はっきりと見えてきました」と四家 氏。これからはいよいよ、現場の最適化を本格化していくフェーズに入ると語ります。そのためには、アプリケーションのラインアップ拡充が必要であり、運転手の減少でボトルネックになりやすいダンプ トラック運行を最適化する「TRUCK VISION」や、現場の状況と 3 次元図面を AR で重ね合わせて施工箇所を確認できるアプリケーションなどの開発および提供を、既に進めていると言います。

その一方で、「スマートコンストラクション クラウド サービス」でデータ収集と蓄積を行っている基盤機能をオープンな IoT プラットフォーム「LANDLOG」として提供する取り組みも開始しています。2017 年 7 月にそのためのジョイント ベンチャー結成を発表。2017 年 10 月には新会社を設立し、プラットフォームの提供を始めています。コマツ自身は今後、スマートコンストラクションで利用可能なアプリケーションの開発と提供に専念していく予定です。

スマートコンストラクション動画の例

コマツは、「スマートコンストラクション動画館外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きますという特設サイトを設け、各種 PR 動画を配信しています。



「スマートコンストラクションのインフラをオープン化し、だれでも利用できるようにすることで目指しているのは、Uber のようなシェアリング エコノミーを建設現場で実現することです。他社の建設機械からもデータ収集を行えるようにし、それらのデータを PaaS のような形で、各種アプリケーションから利用可能にしていきます。これまでの建設現場は人と建設機械で構成されていましたが、ここにソフトウェアが組み込まれることで、建設現場は大きく変革されるでしょう。また、ここで収集されたビッグ データは、他のビジネスにもイノベーションをもたらすはずです。そのためには新技術を常に取り入れていくことが重要になります。『スマートコンストラクション クラウド サービス』で Azure を採用したことは、このような側面でも大きな貢献を果すはずです」と四家 氏は今後の展望を語りました。

写真左より、四家 氏と赤沼 氏

事例の英語版の記事はこちらで紹介されています 新しいウィンドウ

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ソリューション概要

プロファイル

コマツ外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きます は、国内トップ、世界 2 位の売上規模を持つ建設機械および鉱山機械メーカーです。建設現場への ICT 導入にも積極的に取り組んでおり、2001 年にはいち早く、建設機械に搭載した GPS や各種コントローラーからデータを収集/蓄積して活用する「KOMTRAX」の提供を開始。2013 年には、非熟練オペレーターでも熟練オペレーターのような精度で作業ができる「ICT 建機」の市場導入も実現しています。そして 2015 年 1 月には自社製建設機械のみならず、建設現場全体の ICT 化を目指す「スマートコンストラクション」を発表。人手不足に悩まされている建設現場の課題を、ICT によるスマート化で解決しつつあります。

導入メリット

  • ウルシステムズ株式会社外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きますが Azure 上の DataStax Enterprise をサポートしており、膨大なデータを蓄積する分散型 NoSQL データベースを問題なく構築できた。
  • Azure VM は Windows と Linux の両方が使えるため、その上で動かすソフトウェアの特性に合わせ、適材適所で OS を選択できた。
  • Azure IoT Hub や Azure BLOB Storage、Azure SQL Database、Azure HDInsight といった PaaS 機能も充実しているため、スピーディな開発が可能になった。
  • 国内に 2 拠点のリージョンがあり、国内だけで DR 構成を取ることが可能になった。また海外にも多数のリージョンがあるため、今後のグローバル展開も容易になると期待されている。

ユーザー コメント

「ICT 建機のようなハード視点では、建設現場の生産性や安全性の向上には限界があります。スマートコンストラクションは人、現場、建機を有機的に結合し、三位一体での現場変革を目指す取り組みです」

コマツ
執行役員
スマートコンストラクション推進本部
本部長
四家 千佳史 氏

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