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三井住友海上あいおい生命保険株式会社

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掲載日: 2017 年 5 月 18 日

Microsoft Azure が生命保険の商品開発のスピードを大きく加速。大量データを使った複雑かつ高度な保険数理計算に Microsoft Azure と HPC を導入することで、計算時間を劇的に短縮。ユーザー部門独自の取り組みでありながら、クラウド サービスならではの利点が成功を導く

三井住友海上あいおい生命保険株式会社

三井住友海上あいおい生命保険株式会社

「業界トップ水準の品質と飛躍的な成長の実現」を掲げ、顧客ニーズと環境変化に応じた商品とサービスを提供し続ける、三井住友海上あいおい生命保険株式会社。多様化する顧客ニーズに対応した競争力のある商品を提供するには、「保険数理」に基づいた複雑かつ高度な計算を、大量データを使って行うことが欠かせません。

この業務を担う商品部では、商品開発のスピードを加速すべく、保険数理計算にかかる計算時間の短縮化を検討しました。これまでの高性能クライアント PC とサーバーで構成された社内システム環境にくわえ、パブリック クラウドの Microsoft Azure とハイパフォーマンス コンピューティング (HPC) を導入することで、計算時間を劇的に短縮。IT 部門ではないユーザー部門独自の取り組みでありながら、最先端の IT を活用することで、部門の業務生産性の劇的な向上を実現しています。

<導入の背景とねらい>
商品開発のスピードを加速するには「保険数理計算」の計算時間を短縮する必要があった

MS&AD インシュアランス グループにおける生保事業を担う中核会社として、顧客への安心と満足を提供し続ける、三井住友海上あいおい生命保険株式会社 (以下、三井住友海上あいおい生命)。同社は、グループが定める経営ビジョンである「持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険、金融グループの創造」に向け、2016 年度より中期経営計画「Next Challenge 2017」のステージ 2 を開始。社員 1 人ひとりが自ら考えチャレンジすることで、「最高品質の商品とサービスの提供」と、それにともなう「飛躍的な成長と持続的な収益向上の実現」を目指しています。

三井住友海上あいおい生命保険株式会社 商品部 商品数理グループ 課長代理 塚原 由久 氏

三井住友海上あいおい生命保険株式会社
商品部
商品数理グループ
課長代理
塚原 由久 氏

顧客から選ばれ続ける存在であるには、多様化するニーズに応えた競争力のある商品を迅速に開発し、提供することが欠かせません。商品開発における検討では、商品案それぞれについて将来にわたる収支の見込みや、通常の想定を超える事象が起きた場合の損失を見積もったうえで、保障内容や保険料の水準を決定しています。

同社の保険数理業務を担う、三井住友海上あいおい生命保険株式会社 商品部 商品数理グループ 課長代理 塚原 由久 氏は、近年、保険数理計算を必要とする案件および試行パターン数が、非常に増加していると語ります。

「保険商品は、市場金利をはじめとする経済環境の変化に大きく影響を受けます。2016 年 1 月のマイナス金利もあって、保険数理計算の回数が大幅に増加しました。また、競合他社も次々に新商品を投入している中、競争力を確保するためにひとつの案件で膨大なパターンの計算を試行するようになってきています。お客様から高い評価を得るには、環境変化に対応し競合他社に先駆けて魅力ある商品を提供し続けねばなりません。そのために商品部でやるべきこととして、同じ時間で対応できる案件数を増加させることがまず挙がりました」(塚原 氏)。

三井住友海上あいおい生命保険株式会社 商品部 商品数理グループ 課長代理 兵庫 一範氏

三井住友海上あいおい生命保険株式会社
商品部
商品数理グループ
課長代理
兵庫 一範 氏

同社商品部ではこれまで、Excel のマクロで作成した収益性計算ツールを利用し、商品部内に設置したクライアント PC で処理する形で保険数理計算を行ってきました。しかし、商品開発のサイクルが短期化する中、従来の方式は限界を迎えつつあったといいます。

この点について、三井住友海上あいおい生命保険株式会社 商品部 商品数理グループ 課長代理 兵庫 一範 氏は、次のように説明します。

「当社には 300 万件以上の保有契約があり、また、毎年の新規契約数は 30 万件以上にのぼります。従来の方式では、1 回の計算に最大で約 30 時間を要していました。これは複雑な保障に対し、多数のパラメーターを用い、長期の契約期間にわたって計算するため、やむを得ないものでした。そして、業務時間を有効活用するため、金曜日の夜に計算処理を実行し翌週月曜日の朝に結果を確認する場合もありました。この 1 回だけでも大変ですが、計算は 1 回で済むとは限りません。パラメーターなどの見直しがあれば、何度も計算を繰り返すことになります。そのため、計算時間の短縮が課題だったのです」(兵庫 氏)。

商品部が抱えていたこの課題は、2016 年度に入りさらに緊急性を増すことになります。2016 年 6 月のイギリスの EU 離脱問題を背景に大きな金利変動があり、保険数理計算が突発的に必要になったのです。兵庫 氏は当時の状況について、「前提条件がわずか 1 日でも大きく変われば、当社商品の収益性を分析し直さなければなりません。その対応はきわめて大変なものでした。したがって、こうした変化に迅速に対応し、適切な経営判断を下すためには、保険数理計算の短縮が重要であると考えました」と語ります。

<システム概要と導入の経緯、効果>
Azure と Microsoft HPC Pack で構成したプラットフォームを活用することで、計算時間を劇的に短縮

商品部のミッションである「競争力のある商品の迅速な開発」には、保険数理計算の時間を短縮することが求められました。大量データを用いて複雑かつ高度な計算を行うことから、同部門では独自に専用のシステム環境を構築しています。この環境についてユーザー部門の裁量の範囲で改善を図るべく、商品部は 2016 年 7 月より対応策の検討を開始。これはまさに、Next Challenge 2017 で目指している「社員 1 人ひとりが自ら考えチャレンジする」ことが体現された動きといえるでしょう。

まず商品部が検討したのは、既存の Excel マクロの収益性計算ツールから商用パッケージ製品への移行です。この方式であれば、計算時間の改善は確実に見込まれました。しかしユーザー部門が自ら簡単にプログラムを修正できなくなり、新商品に合わせた柔軟な開発ができなくなることが懸念されました。

次に考えたのは、サーバー仮想化や HPC を導入し、プログラムを自社開発することでした。計算を行うコンピューターの台数を増やし、プログラム再構築で性能向上できれば、それだけ計算時間を短縮できると期待したのです。しかし自前でサーバーを構築する場合、ピーク時に合わせた高性能なサーバーを必要とします。初期構築やリリース後の保守では高額のコストが発生するうえ、開発にも長期間を要することが懸念されました。また導入後の運用作業やシステム障害対応などで、本来業務に専念できなくなることも避ける必要がありました。コストと開発期間といった観点から、自社開発でのサーバー仮想化や HPC の導入は、ユーザー部門単独での取り組みとしては非現実的だったのです。

商品部単独で取り組みを成功に導くためには、商品開発のピーク時に合わせて十分なコンピュート リソースを確保できること、システム運用や障害対応に負荷がかからないこと、Excel マクロ並みにユーザー部門でも簡単に修正できること、といった要件を満たしたうえで、短期間で開発することが求められていました。

この難題を解消すべく、商品部は日本ビジネスシステムズ株式会社 (以下、JBS) の提供する「Ambient Office 保険数理計算 HPC Azure トライアルサービス (以下、HPC Azure)」に注目します。

同サービスは、マイクロソフトの提供する Azure と Microsoft HPC Pack で構成したプラットフォームを、分散、並列処理のコンピュート リソースとして利用するというもの。HPC Azure では、JBS が有する HPC に精通した専門チームによってサービス提供が支援されています。

塚原 氏と兵庫 氏は、コンピュート リソースとシステム運用をアウトソースし、従来のツールをそのまま活用してオンプレミスと同じ操作感で使用できるという、同サービスの特徴に大きな魅力を感じたと語ります。

「商用パッケージ製品の導入などさまざまな対策を考えましたが、保険数理計算の高速化にあたってはやはり HPC の導入が最適だと考えていました。HPC Azure では、ハードウェア調達や構築におけるコスト、工数をかけずに計算時間の短縮を図ることができます。また、クラウドならではのスケーラビリティにも期待しました。時期や状況によって、保険数理計算の回数は大きく変動します。オンプレミスで構築する場合、どうしてもピークに合わせたサイジングが必要となります。HPC Azure は必要に応じて簡単に計算ノードを増減できるため、商品部の用途においては理想的といえました」(塚原 氏)。

「HPC Azure は、オンプレミスとほぼ同じ環境をクラウド上で利用できるため、従来の収益性計算ツールにほとんど手をくわえる必要がありません。Excel マクロがそのまま使えるため、新たな知識や難しいプログラミング言語の習得は不要です。また分散処理は簡単なプログラム改修で対応可能なため、サービス インまでの時間を高速化できる点が大きなメリットでした。経験のない技術であったため不安もありましたが、同サービスは一挙に導入するのではなく、PoC (概念実証) の実施を前提としたサービスとなっていました。この PoC では HPC Azure 側のチューニングにくわえ、Excel のマクロで作成した収益性計算ツール側のカスタマイズも JBS に支援いただけます。課題の解消に向けた最適なサービスだと判断し、PoC による効果検証を実施しました」(兵庫 氏)。

図.システム概要図

Ambient Office 保険数理計算 HPC Azure トライアルサービスのシステム構成。Active Directory での認証のしくみや Azure 自体が備える高いセキュリティ水準により、処理対象のデータは厳格に保護される

日本ビジネスシステムズ株式会社 営業本部 金融営業 2 部 伊東 和信 氏

日本ビジネスシステムズ株式会社
営業本部
金融営業 2 部
伊東 和信 氏

三井住友海上あいおい生命 商品部と JBS では、2016 年 7 月、HPC Azure の本格導入に向けて PoC を実施。10 台の計算ノードを構築した Azure 環境と従来環境とで計算処理時間を比較検証した結果、従来環境のクライアント PC では 24 時間かかった処理が、Azure 環境では 2.8 時間と、約 1/9 にまで短縮されることが確認されました。

この結果を受け、商品部は 2016 年 9 月、HPC Azure の正式導入を決定します。10 月から開始した構築作業では、ピーク時を考慮して計算ノードを拡張できるよう設計。4 か月後の 2017 年 1 月には、システムをリリースしています。

HPC Azure の構築作業を支援した、日本ビジネスシステムズ株式会社 営業本部 金融営業 2 部 伊東 和信 氏は、構築において留意した事項について次のように説明します。

「計算ノード数を PoC 時の 10 台から増やしたとして、それで単純に処理性能が台数に比例して向上するわけではありません。その要因として、まず分散処理自体のジョブがある程度の時間を必要とすること、またノード間で計算開始までの時間にズレがあることが挙げられます。こうした特性を鑑みて、構築時には性能を最大化できるよう調整を行いました。結果として、1/20 以下にまで計算時間を短縮でき、『想定以上だ、これなら十分な効果が得られる』と評価していただけました。マイクロソフトが提供する Azure と HPC Pack の機能や性能、当社のナレッジを活かしたチューニング、この 3 つのソリューションによって、ご満足いただける環境を提供することができました」(伊東 氏)。

<導入の効果>
クラウド サービスならではの利点が、従来の人的リソースと予算内での課題解消をもたらす

Azure 側の構築作業を完了後、三井住友海上あいおい生命 商品部では 2017 年 3 月より、同サービスの本格運用を開始しています。

新たな IT システムを導入する場合、一般的には、安定運用に向けて IT システムに準じた管理体制を社内に整備することが求められます。塚原 氏は HPC Azure を採用した効果として、こうした追加の工数負荷、投資を最小限にとどめ、課題の解消が実現できたことを挙げます。

「正式な業務運用開始から間がないため、具体的な効果はまだ測定していません。ですが、新たな環境は PoC 以上の処理性能を有しますので、商品開発全体の進め方に大きな変革をもたらすのは間違いないでしょう。保険数理計算に要する時間の短縮は、商品開発サイクルの短縮につながります。また、計算ノードを拡張することで、緊急時でも膨大なパターンの計算に対応できることでしょう。何よりも評価すべきは、IT 部門が入らないユーザー部門だけでの体制で、これらを実現できたことです。IT 部門も入った開発プロジェクトなら話は別ですが、ユーザー部門だけでシステムを導入する場合、そこには『要員』と『マネージメント』で必ず問題が生じます。それを商品部だけで、予算内かつ早期に課題を解消できたのは、クラウド サービスである HPC Azure ならではの利点があってのことだといえるでしょう」(塚原 氏)。

Azure 導入によってもたらされた効果は、計算時間の短縮だけではありません。これまでのオンプレミス環境は、社内基準を満たすために、ウィルス対策などのセキュリティやバックアップの運用、サーバーの稼動監視といったシステム運用に多くの工数負荷がかかっていました。Azure ではこれらの負荷が大幅に軽減され、システム増強も 1 クリックで済む場合さえあります。システムの改修や運用に従来要していたリソースを本来業務に割り当てられるようになったことで、「競争力のある商品の迅速な開発」に向けた体制が整備されたのです。

さらに定期開発の側面においても HPC Azure の導入はメリットを生んでいます。兵庫 氏は、「収益性計算ツールは、新商品の内容に応じて頻繁に改修が発生します。新規にパッケージ製品を導入した場合、改修のたびに社外のベンダーへ改修の依頼が必要であり、対応までにリード タイムとコストが発生したでしょう。HPC Azure ではフロントのツールをそのまま活用できるため、従来どおり柔軟な開発が可能です」と語ります。

図.収益性計算ツール

同社商品部では HPC Azure 環境と従来環境を併用したハイブリッド方式を採用している。案件数が少なく時間的に余裕がある場合には従来環境を利用することで、コストの最適化を実現。いずれの環境も、これまでと同様に収益性計算ツールから利用することが可能。兵庫 氏は、「JBS にオンプレミス側の IT ベンダーとの連携を支援していただいたことも成功の要因だと思います」と語る

<今後の展望>
機械学習、データの可視化などでも、Azure の利用を検討

HPC Azure 環境を利用することで、保険数理計算に要する処理時間を大幅に短縮し、「競争力のある商品の迅速な開発」を支援する強力なシステム環境を構築した、三井住友海上あいおい生命 商品部。現在、HPC Azure の利用は、保険数理計算の中でも「キャッシュフロー」の計算部分のみにとどまっていますが、今後、HPC Azure を利用する計算領域の拡大を計画していると、兵庫 氏は語ります。

「HPC Azure は、モンテ カルロ シミュレーションなど確率論的な手法で一度に多量の計算をする場合にも有効と考えており、今後はキャッシュフロー以外の領域でも適用していきたいと考えています」(兵庫 氏)。

さらに塚原 氏は、今回 Azure を利用したことをきっかけに、データの分析や可視化といった用途で Azure を活用していきたいと続けます。

「新商品の開発には、お客様の年齢や性別、入院期間といった情報を分析する必要があります。今回の目的はあくまでも『計算時間の短縮化』でしたが、たとえば Azure Machine Learning による機械学習分析や、Power BI によるデータの可視化など、Azure と関連した各種サービスも活用できるのではないかと考えています。HPC Azure の採用では、非常に大きな効果を見越しています。それと同等以上の効果が見込める提案や支援を、今後、JBS や マイクロソフトには期待したいですね」(塚原 氏)。

マイナス金利などの環境変化や多様化する顧客ニーズに応じて、常に最適な保険商品を開発し続けている三井住友海上あいおい生命。同社商品部が体現した「社員 1 人ひとりが自ら考えチャレンジする」活動が、今後あらゆる組織で行われることで、同社のサービスはいっそうの発展を遂げていくに違いありません。

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プロファイル

2011 年に三井住友海上きらめき生命保険とあいおい生命保険が合併し設立された、 三井住友海上あいおい生命保険株式会社 新しいウィンドウ 同社は、MS&AD インシュアランス グループにおける生保事業を担う中核会社として、「業界トップ水準の品質と飛躍的な成長」の実現に向け、社員一丸となった取り組みを進めてまいります。

導入製品とサービス

導入メリット

  • Azure と Microsoft HPC Pack で構成したプラットフォームを活用することで、保険数理計算の計算時間を 1/20 以下にまで圧縮。商品開発のスピードを大きく加速することができた
  • コンピュート リソースのみを Azure にアウトソースするというしくみにより、従来の収益性計算ツールでの運用をほぼそのまま踏襲。大規模なシステムの構築を要することなく、ユーザー部門独自の取り組みでありながら劇的な効果を生み出すことができた

ユーザー コメント

「新商品の開発には、お客様の年齢や性別、入院期間といった情報を分析する必要があります。今回の目的はあくまでも『計算時間の短縮化』でしたが、たとえば Azure Machine Learning による機械学習分析や、Power BI によるデータの可視化など、Azure と関連した各種サービスも活用できるのではないかと考えています。HPC Azure の採用では、非常に大きな効果を見越しています。それと同等以上の効果が見込める提案や支援を、今後、JBS や マイクロソフトには期待したいですね」

三井住友海上あいおい生命保険株式会社
商品部
商品数理グループ
課長代理
塚原 由久 氏

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