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国立がん研究センター東病院

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掲載日: 2016 年 4 月 14 日

グローバルで使えるセキュアな新薬開発基盤を支える Microsoft Azure
Microsoft のソリューションをフル活用し、治験業務負荷とコストの大幅削減を実現

がん専門病院として、1992 年に設立された国立がん研究センター東病院。研究開発を重視する同院にとって、新しい薬を開発し、国の承認を受けるための臨床試験「治験」の実施は重要な業務に位置付けられています。しかし、治験に関する記録や報告をカルテなどの原資料と照合・検証する「SDV (Source Data Verification、または Source Document Verification)」という作業には非効率な面も多く、これまで膨大な手間とコストがかかっていました。そこで同院では、院外からの SDV を可能にする「リモート SDV システム」を、Microsoft Azure を基盤として開発し、大幅な効率化とコスト削減を実現しました。

イメージ

国立がん研究センター東病院 正面玄関

<導入背景とねらい>
新薬開発に不可欠な治験のコスト削減と効率化を目指す

写真:国立がん研究センター東病院 前病院長 西田 俊朗 氏

国立がん研究センター東病院
前病院長
西田 俊朗 氏

写真:国立がん研究センター東病院 現病院長 先端医療開発センター長 大津 敦 氏

国立がん研究センター東病院
現病院長 先端医療開発センター長
大津 敦 氏

国立がん研究センターは、旧厚生省 (現在の厚生労働省) により、6 施設ある国立高度専門医療研究センターの 1 つとして 1962 年に創設されました。2015 年 4 月には国立研究開発法人へ移行し、「がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会をめざす」を標語に、がんの治療・研究に取り組んでいます。

1992 年には、千葉県柏市に国立がん研究センター東病院 (以下、東病院) が開院。創設時に開院した築地の中央病院とは少し性格が異なり、新しい診断や治療法の開発に重きを置いた運営が行われています。このため、東病院においては「治験」が重要な位置を占めています。東病院 前病院長の西田 俊朗 氏は、次のように説明します。

「新薬の開発には 5年~10年という長い年月がかかります。シーズの段階から動物実験で安全性や効果を確認し、そのあと臨床試験を行います。治験とは厚生労働省の承認を得るための臨床試験のことで、安全性を確認するフェーズⅠ、効果を確認するフェーズⅡ、既存の治療法と比較するフェーズⅢに分かれています。当病院では、なかでも特にフェーズⅠに力を入れてきました」 (西田氏)

治験においては、治験を依頼した製薬会社と病院との情報の共有・確認が重要です。ただし、試験内容を記録したカルテを院外に持ち出すことはできません。そこで、製薬会社の担当者が病院に出向き、SDV 作業を行います。東病院 現病院長 先端医療開発センター長 大津 敦 氏は、次のように説明します。

「SDV は治験における重要な記録や報告を、医療機関が保存するカルテなどの原資料を直接閲覧して照合・確認する作業です。当病院では、年間 100 件程度の治験を請け負っており、SDV 用に 12 の専用の部屋を用意していますが、部屋はつねに埋まっている状態です」 (大津氏)

治験に不可欠な SDV ですが、製薬会社にとっても病院にとっても、けっして負担は軽くありません。

「電子カルテを製薬会社の担当者に見せる際、病院側では専任の担当者をつけなければなりません。製薬会社も人件費や交通費がかかります。治験によっては、毎週、SDV が必要な場合もあり、その時間・コストは膨大です。概算すれば、製薬会社は 1 つの治験で数千万円単位のコストが必要になります」 (大津氏)

<導入の経緯>
Azure 上の「治験の原データ管理システム」に外部からアクセスする「リモート SDV システム」を構築

写真:国立がん研究センター東病院 治験管理室 治験コーディネーター 原田 裕紀 氏

国立がん研究センター東病院
治験管理室 治験コーディネーター
原田 裕紀 氏

写真:国立がん研究センター東病院 臨床研究支援部門 データ管理室 青柳 吉博 氏

国立がん研究センター東病院
臨床研究支援部門 データ管理室
青柳 吉博 氏

写真:株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ システムソリューション第 2 事業部 ゼネラルマネジャー 小浦 文勝 氏

株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ
システムソリューション第 2 事業部 ゼネラルマネジャー
小浦 文勝 氏

こうした SDV の課題を解決するために開発されたのが「リモート SDV システム」です。じつは、東病院では、富士通をパートナーとして、2013 年に電子カルテ システムをリプレースしています。また、2014 年には、治験データを管理する「治験原データ管理システム」を構築しました。これは、治験データとしての真正性を確保したうえで、院内に治験データのコピーを保管するシステムです。東病院 治験管理室 治験コーディネーター 原田 裕紀 氏はシステムの概要について次のように説明します。

「『リモート SDV システム』は、この院内の『治験原データ管理システム』を外部から参照するシステムです。リモート SDV システムを使えば、製薬会社の担当者は、病院を訪れることなく、必要なときにいつでも SDV を実施することが可能になります」 (原田氏)

そして、この「治験原データ管理システム」および「リモート SDV システム」で利用されたクラウドが、Microsoft Azure でした。Azure を選択した理由を、東病院 臨床研究支援部門 データ管理室 青柳 吉博 氏は次のように説明します。

「システム メンテナンスの簡素化・耐障害性、セキュリティ維持の観点から、当初からパブリック クラウドを予定していました。Azure の他に競合サービスも検討しましたが、選定していた当時、我々が求めるセキュリティ、および医薬品や医療機器の開発・製造に必要なガイドラインに関する情報をいち早く提供していたのが Azure でした」(青柳氏)

また、「リモート SDV システム」の開発を担当した株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ システムソリューション第 2 事業部 ゼネラルマネジャー 小浦 文勝 氏は、Azure の技術的な優位性を次のように説明します。

「Azure には、通常の LAN 環境と同様にサブネットごとにアクセス権を設定できるネットワーク・セキュリティ・グループ (NSG) という機能があります。NSG を利用することで、インターネットに出ていけないネットワークを構築したり、外部からのアクセスを適切に制御したりできます。クラウド上でこうしたセキュリティを設定できることは、リモート SDV システムを開発するうえで非常に重要でした」 (小浦氏)

図:システム構成図

システム概要図 [拡大図] 新しいウィンドウ

<導入の成果>
治験の業務負荷・コスト削減の実現と治験のグローバル化への対応

写真:富士通株式会社 ヘルスケアシステム事業本部ライフイノベーション事業部 ライフイノベーション開発部 小林 義規 氏

富士通株式会社
ヘルスケアシステム事業本部ライフイノベーション事業部 ライフイノベーション開発部
小林 義規 氏

写真:国立がん研究センター東病院 副院長 先端医療科長 土井 俊彦 氏

国立がん研究センター東病院
副院長 先端医療科長
土井 俊彦 氏

現在、「リモート SDV システム」は開発を完了し、製薬会社へのデモ・説明会が実施されている段階です。製薬会社担当者の具体的な利用方法について、富士通株式会社 ヘルスケアシステム事業本部ライフイノベーション事業部 ライフイノベーション開発部 小林 義規 氏は次のように説明します。

「製薬会社の担当者には、病院が用意した Windows To Go の USB メモリが配布されます。USB メモリを PC に接続すると、USB メモリ内の Windows が立ち上がってデスクトップが表示されます。そこからリモート デスクトップを起動すると ID とパスワードで認証が行われますが、その際、Azure Multi-Factor Authentication (MFA) によりユーザーの携帯電話に 6 桁の PIN コードが送信され、それを入力してはじめてログインが完了します。あとはリモートで接続した Microsoft Azure 上の端末から、ビューアを使って治験データを閲覧するしくみです」 (小林氏)

もちろん、配布される USB メモリは BitLocker で暗号化されています。また、Windows To Go の仮想デバイスは Microsoft Intune で管理されているため、更新ブログラムの適用やマルウェア対策も問題ありません。

デモを見た製薬会社からは「医療機関を訪問して SDV をする時間と費用が削減できる」「病院職員の業務時間外でも参照できる」など、非常に前向きな評価を受けています。病院側としても、SDV のたびに担当者をつける必要も、部屋数の制約もなくなり、製薬会社、病院両社ともに治験業務の負担を大幅に削減できます。業務効率化とコスト削減によって、製薬会社はその分のリソースを新薬開発に注ぐことが可能になります。リモート SDV の活用によって新薬開発を盛り上げることは、病院の収益増だけではなく、社会への多大なる貢献にもつながると、同院では期待を寄せています。

また、本システムによって、海外からのリモート SDV も可能になりました。東病院 副院長 先端医療科長 土井 俊彦 氏は、その意義について、次のように説明します。

「いまや、創薬をはじめとする研究はグローバル化しています。たとえば、米国のある病院は台湾や上海、ポルトガル、ブラジルなどに系列の病院を展開し、24 時間、治験を実施して、各病院のデータをリモートで SDV できるしくみを提供しています。今回、開発したリモート SDV は、今後、当病院がグローバルで治験に取り組むうえでも重要な一歩です」 (土井氏)

<今後の展開>
医療情報のクラウド化も視野に、クラウド上でのデータの長期保存とさらなるデータ活用を目指す

東病院では、将来、電子カルテ情報も含めて、すべての医療情報をクラウドに置くことも検討しています。その理由の 1 つが、データの長期保存が困難なことです。土井氏は、データの長期保存の問題点を次のように説明します。

「以前は、大きいテープで保存していましたが、その後、サイズの小さい CD になり、次にハードディスクになりました。ただし、ハードディスクでも、耐用年数がきたらデータ移行が必要になりますので、そのたびに膨大なコストがかかります。しかし、クラウドに保存できれば、こうしたデータ移行の手間・コストは不要になります」 (土井氏)

その際にも、Microsoft Azure が大いに活躍することになりそうです。特に青柳氏は、オンプレミスのシステムで Azure 環境を構築できる Azure Stack、そしてハイブリッド クラウド環境を管理できる OMS (Operations Management Suite) に期待を寄せます。

「いきなりクラウドに移行するのはハードルが高いと思いますが、Azure Stack を使えば、Azure と同じ環境をオンプレミスで構築して運用できるので、適切なタイミングでクラウドに移行することも容易になると期待しています。また、現在、クラウド環境の管理用に OMS を検証中ですが、オンプレミスで利用している System Center とも親和性があり、非常に使いやすいと思います」 (青柳氏)

なお、現時点では、Azure 経由で参照できるのは治験のデータだけですが、将来的にデータをクラウド上にあげることができれば意義は大きいと、土井氏は次のように語ります。

「クラウド上の治験データを原資料として定義できるなら、クラウド上で共通のフォーマットで閲覧することもできるはずです。つまり、世界共通の電子カルテとして利用可能です。世界中の医療関係者や研究者が閲覧できて、さらにゲノム情報と組み合わせて研究開発にも活用できるようになればすばらしいですね。こういう話をすると、いつも夢物語といわれるのですが…」 (土井氏)

2013 年に導入された新しい「電子カルテ システム」、それに続いて 2014 年に開発された「治験原データ管理システム」と今回の「リモート SDV システム」は、国立がん研究センターが掲げる「がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会をめざす」ための、着実な一歩といえそうです。同病院の歩みを支える Microsoft Azure は、非常に重要な役割を担っていくことでしょう。

集合写真

前列:国立がん研究センター東病院
後列:株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ、富士通株式会社

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ソリューション概要

プロファイル

国立がん研究センター東病院 外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きますは、1992 年に千葉県柏市に開設されたがん専門病院です。国立病院では初めて緩和ケアに取り組み、日本で最初に陽子線治療を開発・導入するなど、日本のがん治療・研究をリードしています。「こころとからだにやさしいがん診療」の実現をモットーに、患者さんのための「あしたのがん医療」を創る研究・開発に取り組んでいます。

導入メリット

  • クラウド上の治験データへの外部からの安全なアクセスを実現
  • 治験の SDV にかかる企業側、病院側の手間とコストを削減
  • 治験のグローバル化への対応
  • 電子カルテ情報を含む医療データのクラウドへの移行に向けて基盤を整備

ユーザーコメント

「当初から、システム メンテナンスの簡素化・耐障害性、セキュリティ維持の観点からパブリック クラウドを使う予定でしたが、我々が求めるセキュリティ、および医薬品や医療機器の開発・製造に必要なガイドラインに関する情報をいち早く提供していたのが Azure でした」

国立がん研究センター
研究支援センター 研究推進部データ管理室 東病院 臨床研究支援部門データ管理室
青柳 吉博 氏

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