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2021/04/14

教員たちで実現した学校 ICT 革命 データを統合して真の探究的な学びの環境を構築

「校務系と教務系に分断されて USB メモリで行き来していた情報を 1 台のデバイスで扱えるようになったのは、教育現場においては革新的だと思います。以前は個人情報も含まれる校務や教務を校外に持ち出すことは考えられませんでしたが、今は高いセキュリティが担保されているので、自宅や外出先からでも安心・安全に仕事ができるようになりました。私たち教員にとって働き方の大きな変化になり、遅くまで残業する先生はほとんどいなくなりました。外出が制限される時期においても、自宅から校務や授業が滞りなく進められています」聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校 ICT教育推進部 副部長 理科教諭 増田 瑞綺 氏は、同校の ICT 化の最大のメリットについてこのように語ります。

 聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校は「Microsoft 365 Education A5」の導入によって、GIGA スクール構想の先を行く教育環境づくりを推進しました。驚くことに外部の業者に頼ることなく、現場の教員だけで環境づくりを完了させ、日常の教育活動と並行しながらも安定運用しているのです。

 同校の取り組みの背後には、「生徒の探究の心を育む」ことに対する強い思いがありました。先生・生徒があらゆるデジタルツールを安心して使いこなせる環境のもと、生徒の「問題を発見し、解決に導く能力」を育む――そんな新時代の教育を実践する同校の取り組みに迫ります。

Toride Seitoku Junior and Senior High School

新たな学びを実現するために教員自ら教育 ICT 基盤の見直しに着手

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校は、茨城県取手市で中高一貫教育を提供する私立中学・高等学校です。建学の理念に「和」の精神を掲げ、自立した女性を目指す教育を実践しています。

 社会変化に応じた学校改革を続ける同校は、2019 年度から 3 つの軸からなる新カリキュラムをスタートさせました。礼節を土台に社会と繋がる「グローバル」、主体的に深く学ぶ「探究」、そしてグループで課題解決に取り組む「協働」です。

 新たな学びを実現するうえで、ICT 基盤の見直しは不可欠だったと、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校 校長 湯澤 義文 氏は振り返ります。

「旧来の教育や学校運営方法ではこれからの社会に適応できないと全教職員が認識していました。生徒が能動的に学習に取り組む"探究的な学び"を実現しながら、同時に生徒の情報を適切に守るにはどうすればいのか。5 年ほど前から新たな ICT 基盤を模索していたのです」(湯澤 氏)。

 探究的な学びの実現には「場所にとらわれないセキュリティの仕組みが必要だった」と、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校 ICT教育推進部 部長 情報科・数学科教諭 渋谷 将晴 氏は説明します。

「従来、教員は職員室で、生徒はコンピュータ教室でデスクトップ PC を利用していました。しかし、真の探究的な学びを実現するには、いつでも、どこでも、デバイスに触れ、その場の気づきや記録をまとめられる環境が理想です。これは生徒だけではなく教員にも言えることです。クラウドを活用し、学校や家庭など場所を問わず学習する環境が求められる今、『校務ネットワークとの境界を守る(境界防御)』だけではセキュリティを担保できず、いわゆる"ゼロトラストセキュリティ"の考え方が求められたのです」(渋谷 氏)。

 「校務用端末で作った教材を授業用の端末に移すときは、USB メモリによる中継が必要でしたが、抜き忘れ等によるデータ紛失のリスクがあり、対策に悩まされていました」と、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校 ICT教育推進部 副部長 理科教諭 増田 瑞綺 氏は振り返ります。

自分で調べ、考え、まとめ、発表する探究的な学びのための教育環境を整備するにあたり、まずは生徒の重要な個人情報を守る強固なセキュリティが重要です。そこで同校では教員が主体となってシステムの選定に着手。教員自らさまざまな比較検討を実施し、最終的に同校が出した結論は、「Microsoft 365 Education A5」の導入でした。

学生利用特典で生徒の Office 利用権・セキュリティ機能が無償! コストを大幅に最適化し、探究的な学びを実現

パソコン教室のリプレイスに伴う ICT 基盤再整備は 2016 年度から構想されていました。検討とトライアル期間を経て、2017 年度にはマイクロソフトが提供する無償版教育 ICT ソリューションの Office 365 Education A1 が、そして 2019 年度から Microsoft 365 Education A5 が導入されています。

Microsoft 365 Education A5 は、授業・校務を支援するマイクロソフトが提供する最上位の教育クラウドサービスです。これにより、Office アプリケーションだけでなく、マイクロソフト最高クラスのセキュリティ機能が利用できるようになります。最高クラスのセキュリティと聞くと、気になるのがコストですが、Microsoft 365 Education A5 のコストパフォーマンスは非常に高かったと、渋谷 氏は強調します。

 「当初セキュリティやウイルス対策ソフトなどは、他社製品の組み合わせを検討しました。本校では 2017 年より無償版の Office 365 Education A1 を導入していたため、マイクロソフト製品のアップグレードも並行して検討した結果、Microsoft 365 Education には学生利用特典(SUB : Student Use Benefit)があることがわかりました。これは教員 1 人分のライセンスを契約すれば、生徒 40 人の Office 利用権などが無償で提供されるものです。教員分のライセンス契約をすれば、生徒全員分の利用料はかからないことになります。他社製品を組み合わせて契約するよりも、見積もり額に数十倍近くの差があり、はるかに安い予算で必要な機能を整備できるとわかったときは驚きでしたね。クラウド型管理に変更したことで、以前はその都度業者を呼んで行なっていた保守・設定費用が不要になりました。情報関連予算を従来よりも安く抑えつつ、本校が求めていた真の探究的な学びにあった環境が実現できています」(渋谷 氏)。

システムの刷新と並行して、教員には Microsoft Surface Pro が校務・教務兼用 PC として用意され、生徒への貸与用に Microsoft Surface Go が 1 クラス分調達されました。生徒用の端末ではクラウド接続型の共有 PC モードを構築しました。一度のログインで瞬時に生徒ごとに設定された PC として開くことができ、ログアウトすると初期化される仕組みになっています。この設定は生徒の持ち込み端末との相性が良いです。端末を持っている生徒、持っていない生徒が混在する中、必要に応じて学校共有 PC と 生徒自身の BYOD 端末を自由に使い分けることができる環境は、探究的な学びを実現するうえで欠かせないものでした。生徒は一人当たり 15 台までの端末で Office が利用できるようになり、学校内のどこでも、また自宅でも学ぶことができるのです。

学校の機密データも Microsoft 365 Education A5 の高度なセキュリティで安全管理

Microsoft 365 Education A5 のセキュリティについては、教員や生徒の「ID」、共有や持ち込み、支給といったさまざまな種類の「デバイス」、電子教材から生徒の成績情報に至るあらゆる「ファイル」、それぞれの観点からゼロトラストセキュリティを実現していると渋谷 氏。「ファイル」を例に挙げて、このように説明しました。

「本校では年度初めに、電子教材ならここまで閲覧可能、成績情報はここだけ閲覧可能、というように学校内の電子情報の取り扱い範囲を明確に定めています。Azure Information Protection(※1)という機能を使えば、このルールを 1 つ 1 つのファイルに適用することができます。私達は『先生しか開けないファイル』『生徒と先生しか開けないファイル』『外部でも開けるファイル』と、取り扱い範囲を大きく 3 つに分類しています。たとえば成績情報は『先生しか開けないファイル』。もしこれが外部の人や生徒によって開かれそうになったとき、システム側が自動でロックしてくれます。セキュリティの理想は先生方が意識せずに情報が守られることにあります。システム側が自動でファイルを保護することで、先生方はより教育に集中することができます」(渋谷 氏)。

 個人情報の流出だけでなく、外部からの不正なアクセスに対しても Microsoft 365 Education A5 は大切な役割を果たしています。Azure Active Directory(※2)や Microsoft Intune(※3)という機能によって、二段階認証を実現するとともに、パスワード流出時にアクセスを禁じたり、不正アクセス時にパスワード変更を通知したりする仕組みを構築しました。

 また、「デバイス」の保護は Microsoft Defender(※4)に加え、Defender for Endpoint(※5)を使うことで、ウイルスに感染した場合は自動的にネットワークから切り離し、初期対処や修復ができるようになっています。

操作性の高い管理画面とサポート体制で ICT 初心者の教員でも構築・設定・運用可能な Microsoft 365 Education A5 

これほどまでに高度なセキュリティ機能を実装していることから、Microsoft 365 Education A5 導入の際は大きな苦労があったと思われるかもしれません。しかし意外にも増田 氏は、外部業者による支援を介することなく、教員だけで構築を進めることができたと言います。

「私の担当科目は理科で、情報ではありません。私のように ICT に精通していない人でも設定できたのは、Microsoft 365 Education A5 の大きな利点だと思います。構築や設定はおおむね画面の指示に従って作業するだけで進めることができ、途中でつまずいてしまった場合でも、マイクロソフトのサービスはオンライン上の説明が充実しているので、少し検索するだけで解決策を導くことができます。それでもわからないときはマイクロソフトのサポートのお世話になりましたが、外部業者に委託せず構築することができましたね。使い始めてからも Microsoft 365 Education A5 のセキュリティ機能は高度に自動化されているため、管理者として日常で気にすることはほとんどありません」(増田 氏)。

校務改善、働き方改善、生徒との探究学習時間創出、そのすべてを実現

このように自前で高度なセキュリティ対策基盤を構築した同校ですが、もともと Microsoft 365 Education A5 導入の検討時から、各種ツールを使った校務の効率化にも期待していたと増田 氏は語ります。

「教育機関向けの Office 製品は無償版でもアンケート作成アプリの Microsoft Formsなど多くのアプリケーションが用意されていますが、私は Microsoft 365 Education A5 のみで提供される『Power BI』のデータ分析機能が非常に魅力的に映りました。たとえば学校見学の来校者に実施していた紙のアンケートを Microsoft Forms に変え、入試後のデータも組み合わせて Power BI で分析することで、地域ごとの出願率が瞬時に可視化できます。これはスクールバスのルート検討にも役立てることができています。Microsoft 365 Education A5 の導入によって、探究的な学びの実現やセキュリティの堅牢化にとどまらない、『校務DX(デジタル トランスフォーメーション)』が実現できると感じました」(増田 氏)。

アンケートを紙からデジタルに変えることで、作業負担の劇的な削減と集計の正確性を得ることができたのです。さらに Microsoft 365 Education A5 の導入は、期待していた以上の劇的な変革を同校にもたらしました。並行して進められていた業務改革と合わせて、教員の働き方がまったく変わったと、増田 氏と渋谷 氏は笑顔で振り返ります。

「初心者でも簡単に業務アプリを開発できるサービス『Power Platform』によって、校務のデジタル化も進みました。出張申請や保護者からの電話連絡などを電子化することによって、申請作業や電話応対にかかっていた時間を、一日につき数十分〜数時間といった単位で減らすことができました。最近では生徒用 Surface Go の貸し出し管理システム(備品管理システム)なども教員自らが開発・運用するなど、『校務 DX』が着々と進んでいます」(渋谷 氏)。

使われなくなった教務黒板

こうした業務効率化によって教員が生徒たちに向き合う時間を増やしたことで、探究的な学びの質を高めることができたと湯澤 氏は語ります。

「一人ひとりの興味関心に基づいた探究的な学びを実現するには、授業の手法や評価について、絶えず批判的に省察する必要があります。教員同士が協働する時間、生徒と向き合う時間が今まで以上に大切になります。Microsoft 365 Education A5 によって実現した『校務 DX』により、その時間が確保できるようになりました。昨年度、一般入試以外での大学進学率が 93% に達したことは、生徒たちをより支援する時間が取れるようになったひとつの成果だと考えています。総合型・学校推薦型選抜入試で合格するためには、面接できちんと自分のプレゼンができ、考えを小論文にまとめねばなりません。まさに、探究的な学びの効果と考えています」(湯澤 氏)。

同校の生徒は Microsoft Teams や Microsoft OneNote の活用は当然のこと、全生徒や教職員を対象にしたアンケートを Microsoft Forms で取り、集計結果をふまえて卒業論文を執筆するなど、探究的な学びのために Microsoft 365 Education A5 を使いこなしています。

デジタル化したからこそ見えた校務の課題を見直し、さらに進める学校改革

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校では、今後もさらに「校務 DX」や、それに伴う学校改革を進めていくと、湯澤 氏、増田 氏の両名は意気込みます。 

「Power Platform によって日々の業務を見直す癖がついたことで『このやり方って必要なの?』『こんな風にデジタル化できないかな』など、デジタル化したからこそ可視化できた課題がまだまだあります。今後は勤怠管理データも Power BI に取り込み、業務が集中している箇所を見える化し、さらに自動化・効率化していくつもりです」(増田 氏)。

学校の ICT 改革には、新しいことに積極的に取り組む風土作りも欠かせません。

「幸いこの学校には、年配の先生が若い先生の意見に耳を傾ける風土がありました。ICT 化についても、若い先生の提案を前向きに受け入れ、積極的に活用することで、教育を変えていこうという全体的な動きとなっています。これからも、生徒の教育を第一にしながら学校改革を進めていきます」(湯澤 氏)。

Microsoft 365 Education A5 と Surface による、場所にとらわれないゼロトラストセキュリティを基盤とすることで、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校は、良質な探究的な学びの実現と校務の DX を果たしました。今後も同校はさらに輝かしい未来を育てていくことでしょう。

(※1)Azure Information Protection : 共有する電子メール、ドキュメント、機密データを制御し、保護をサポートするサービス。

(※2)Azure Active Directory :  ID の管理とセキュリティ保護を行う認証サービス。

(※3)Microsoft Intune : モバイル デバイス管理 (MDM) とモバイル アプリケーション管理 (MAM) を中心にしたサービス。

(※4)Microsoft Defender : Windows 10 に組み込まれたウイルス対策プログラム。

(※5)Microsoft Defender for Endpoint : 予防的な保護、侵害後の検出、自動化された調査と対応を可能にする EDR サービス。

“校務系と教務系に分断されて USB メモリで行き来していた情報を 1 台のデバイスで扱えるようになったのは、教育現場においては革新的だと思います。”

増田 瑞綺 氏, ICT教育推進部 副部長 理科教諭, 聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校

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