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2023/10/03

20 年先を見据えて前橋市が取り組む、「職員が主役」のデジタル変革

前橋市は群馬県の中南部、日本百名山に数えられる赤城山の裾野に位置し、市内には雄大な利根川が流れる県庁所在地です。全国有数の農業生産額を誇る一方で、古くは明治期の日本の発展を支えた製糸業、現在でも輸送用機械器具製造業や金属製品製造業など、ものづくりが盛んな地域でもあります。

そんな同市では、2018 年度からの 10 年間を計画期間とする「第七次前橋市総合計画」を策定し、「新しい価値の創造都市・前橋」の実現を目指して市民・企業・団体・行政それぞれが主体的に解決に取り組むまちづくりを進めています。

この第七次前橋市総合計画を、デジタル変革によって補完することを目的として 2021 年に策定されたのが「前橋市 DX 推進計画」です。「住民の利便性向上」「新たな価値創造」「すべての住民に」という 3 つの柱と 8 つの重点事業を定め、5 か年計画で取り組みを展開しています。

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これまでのやり方を変えて、20 年後を見据えた ICT 活用を目指す

「極端な話、これまでの ICT の使い方を止めて、仕事のやりかたを根底から覆すことまで想定して取り組んでいます」と語るのは、同市の ICT 関連部門で 15 年にわたってシステムの運用、調達および DX 推進に携わってきた、前橋市 未来創造部 参事 兼 情報政策課長の岡田 寿史 氏。

この発言の背景にあるのは、総務省が 2018 年に発表した「自治体戦略 2040 年構想」です。この構想では、我が国の人口が縮減し、生産人口も減っていくなかで、自治体が持続可能な住民サービスを提供し続けられるように、自治体行政の標準化や共同化、そして ICT 活用を前提とした自治体行政の展開が求められています。働き手が減っていく中で業務の効率化を行う必要がある一方、住民サービスを低下させるわけにもいきません。

岡田氏は、本構想達成のために今できることを考え、すぐに手を打ち始めなければならないと強い危機感を抱いているといいます。
というのも同市では、ICT 技術は、現状主に住民から市役所の窓口に提出された紙の書類に記載された情報を記録する手段として、またその記録を元に住民へ戻す通知書類を作成するツールとして使われているに留まっています。つまり、情報を紙に記載してもらうことが前提であり、手続きの一部しかデジタル化に至っていない実情があります。

岡田氏はこの状況を大きく変えたいと考えており、「住民の皆さまが市役所に行かなくても、手元のスマートフォンや PC に入力するだけで手続きが済み、市役所からの通知もスマートフォンや PC に届けられるように、すべての流れをデジタル化していきたい」と目指す姿を語ります。

しかし、庁内には 2000 以上の手続きがあり、5 年間でこれらすべてをデジタル化するのは至難の業です。「達成困難な目標を定めなければ、今の半分程度の労働力で今以上のサービスを提供するという、本来の目的は絶対に叶わない。設定した目標から逆算して、今できることをその時々で選択して実行しています」(岡田氏) そしてその言葉の裏には、後輩職員たちに対する厳しくも温かい思いがありました。

「2040 年には、今の 20 〜 30 代の職員がマネジメント層になります。彼らは今より半分の人材で今より困難な仕事をしなければなりません。その仕組みは一朝一夕でできることではありませんから、今から彼らを巻き込み、2040 年構想の実現に向けて目線を揃えておく必要があるのです」(岡田氏)

職員が自ら、自身の業務を自動化。業務効率化により見える景色を変えていく

同市では DX 推進計画に基づき、2021 年からの 2 年間で 13 のワーキンググループ活動を行ってきました。これらの取り組みのなかで「情報政策課が RPA (業務自動化) ツールのシナリオを作成し現場に渡すよりも、現場の職員が自ら RPA のシナリオを作成・運用し、自分たちの業務を効率化する方が効果的」であることに気付いたといいます。

岡田氏によると、与えられた RPA ツールは現場のニーズに完全に合致しない場合も多く、活用されなくなってしまうケースが散見されていたそうです。
そこで、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング) 研修や RPA ツール開発のフォローアップを行い、実際の開発は現場職員に任せたところ、職員がつくったツールによって業務の自動化に成功した事例がいくつか見られるようになりました。そしてその効果は、自動化による業務効率化だけに止まらず、働き方、業務内容にまでプラスの変化を与えました。

「隣で働いている同僚が、研修から帰ってきてからなにかやっているな、と思っていたら、1 週間後にはそれまで長時間かけてやっていた業務を自らつくったツールで自動化して、余った時間で別の業務に取り組むようになる。そんな景色の変化を目の当たりにする職員たちへの波及効果は、とてつもなく大きいと感じています」(岡田氏)

こうした経験をもとに、情報政策課では 2023 年度から BPR 研修の対象を全部署に拡大しました。「この 2 年間は緩やかな進捗でしたが、ここから一気に成果が跳ね上がっていくことを期待しています」(岡田氏)

しばしば制度や方針が変更になる自治体の特徴を鑑みても、職員による RPAシナリオの 内製化の意義は大きいといいます。「自分が制作した自動化ツールであれば、制度が変わった際に変更すべき部分はすぐにわかります。さらに、業務の自動化が進むほどに、本来力を入れるべき対面サービスに注力できるという効果も生み出すことができるはずです」(岡田氏)

20 年後でも業務の中心を担い得る Microsoft 365

こうした前橋市の取り組みを支えているのが、2022 年度から全庁に導入された Microsoft 365 のアプリケーション群です。なかでも、プログラミングの知識や技術がなくてもアプリや自動化ツールを内製化できる Power Platform は、RPA 内製化の推進に大いに役立てられています。

Microsoft 365 を導入するにあたり、「まず組織内でコミュニケーションを図るためのグループウェアとして、働く場所や時間を選ばずにチームで目標を達成できるものを選ぶ必要がありました」と岡田氏。

Microsoft 365 であれば Microsoft Teams によって業務上のコミュニケーションを完結できます。それに加え、Teams と同じプラットフォーム上で動かせる、Power Automate (業務自動化ツール) やPower Apps (ノーコード・ローコードアプリ開発ツール) を含む Power Platform を備えていたことが、導入を後押ししたポイントだったといいます。

導入時になにより重要視していたポイントは、将来にわたって安定したサービス提供を期待できる基盤であることだったといいます。
「私たちは 20 年後を見据えて計画を進めています。ですから活用するツールも、20 年後においても業務の中心を担い得る製品を選びたいという思いがありました」(岡田氏)

スモールスタートで実証してから全庁導入を実施

現在は全職員分の Microsoft 365 ライセンスを取得している同市ですが、導入は段階的に進められました。まずは数個のライセンスを取得して検証を行い、使い方や運用の方法を整理したうえで全庁導入に踏み切ったのです。その理由について岡田氏はこう語ります。

「市役所という組織は、一旦動き始めたプロジェクトは止めづらいという特徴があります。ですから、途中で止めることを前提にスモールスタートして、ある程度確証が持てた段階で展開する方法を採用しました。その方が経済的ですし、定着にもつながりやすいはずです」(岡田氏)

全庁導入の前には災害発災時の記録や職員研修の一連の動きをアプリ化するなど、Power Platform の活用方法の検証も行われました。

「最初から自分たちで運用しようとすると余計な手間がかかりますから、まずは外部の業者さんの力を借りておおまかな機能を備えたアプリの雛形をつくってもらい、開発過程をひと通り学ばせてもらったうえで、細かい部分を自分たちで手直しする作業を通して検証していきました」(岡田氏)

市役所の外で活躍する職員をサポートするツールが必要

岡田氏によると、現在は業務に関するコミュニケーションをすべて Teams に集約しようとしている段階だといいます。「市役所のオフィスにいながら、実際の業務は Teams を入り口としたサイバー空間上ですべて完結する状態が理想」(岡田氏)
これは、リモートワークを含む「いつでもどこからでも業務できる環境」が整うということでもあります。

「組織として多様な働き方に対応することは、生産人口が減っていく時代の必須条件であると同時に、市役所外での企業や団体、市民の皆さまとの協働を可能にし、真に住民に寄り添ったサービスの実現につながると考えています」と岡田氏。さらに、職員が日常的に使うデバイスの選定にも気を配る必要性を訴えます。

「クラウドサービスである Microsoft 365 をフル活用するためにも、常に携帯することを前提としたデバイス選びが必要です。そういう意味においては、Microsoft 365 などのクラウドサービスと親和性が高く、バッテリー駆動時間などの機能面でもデバイスの集中管理などのセキュリティ面でもオフィス外での利用が考慮されている必要があります。一例として、 Microsoft Surface  は非常に有用なデバイスだと考えています」(岡田氏)

すべての業務をデジタル化して、データを再利用できる環境を構築

今後同市では「自動化できる業務はすべて自動化したうえで、業務データを蓄積して再利用できる環境づくり」を目指しています。そのためにはまず、業務データの蓄積における工夫が重要だといいます。

「すべてのデータに対して、メタデータという形で適切な属性を紐づけていくことが重要です。将来的に庁内全体の業務構成を可視化し、適切なサービスの開発・提供につなげるには、質の高いデータの蓄積が必須だからです」(岡田氏)

こうした構想を実現するにあたり、行政機関におけるデータの相互運用性を向上するために政府が定めた GIF (政府相互運用性フレームワーク) 規格に沿ったデータモデルの管理や活用が容易な Microsoft 365 は、最適なツールであると言えるでしょう。

「質の高いデータを蓄積できれば、生成 AI の活用も視野に入ってきます。これが実現すれば、たとえば市のホームページに自動応答システムを構築することで、ホームページに掲載されている情報のなかから、ユーザーが必要としている情報に格段に辿り着きやすくなるはず」と岡田氏。ホームページ上には膨大な行政サービスの情報は載っているものの、検索性に乏しいことが積年の課題となっており、AI はその解決手段として期待できるといいます。

岡田氏は以下のように、日本マイクロソフトのサポートに期待を寄せます。
「AI が嘘をつくようなことがあってはいけませんから、インプットデータを前橋市のページドメインに限るなど、ノイズが入らない工夫が必要だと思っています。そのあたりは私たちにはまだ知見がありませんから、ぜひ生成 AI 分野をリードする日本マイクロソフトさんに協力していただきたい」

20 年先のあるべき姿から逆算して、今やるべきことを導き出し、職員が主役となってデジタル変革を進める前橋市。その取り組みはきっと、着実に住民の暮らしを便利で豊かなものに変えていくことでしょう。私たち日本マイクロソフトも、そんな前橋市の皆さまを 20 年後のその先も、陰で支える伴走者でありたいと願っています。

“2040 年には、今の 20 〜 30 代の職員がマネジメント層になります。彼らは今より半分の人材で今より困難な仕事をしなければなりません。その仕組みは一朝一夕でできることではありませんから、今から彼らを巻き込み、2040 年構想の実現に向けて目線を揃えておく必要があるのです”

岡田 寿史 氏, 未来創造部 参事 兼 情報政策課長, 群馬県前橋市

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