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2024/03/21

ホシザキが業務用冷蔵庫などの機器を IoT 化する「ホシザキ コネクトWi-Fi」の提供を開始、データ収集のしくみには Azure Sphere を採用

2024 年 1 月に「ホシザキ コネクトWi-Fi」の国内提供を開始した、総合フードサービス機器メーカーであるホシザキ株式会社。初期費用ゼロで機器の IoT 化を実現、改正食品衛生法に対応した顧客の温度記録作成を自動化するほか、故障やエラーの検知および対応の迅速化も可能にしています。そのデータ収集のしくみとして採用されているのが、Microsoft Azure Sphere。オールイン ワン型のチップでエッジ デバイスを低コストで製造できることや、10 年間のセキュリティ アップデートで安全性を継続的に担保できることが高く評価されました。開発パートナーとしては、IoT 関連システムの高い実績を持つ NSW株式会社が参画。約 1,700 台という大規模な PoC (Proof of Concept:概念実証) を行い、高いスケーラビリティを備えたシステムを Microsoft Azure で実現したことも、注目すべきポイントだと言えます。

HOSHIZAKI CORPORATION

※導入先にインターネット接続できるデバイスおよび Wi-Fi 環境があり、かつ、中継器が不要の環境下において、サービス対象の当社の各機器に取り付ける Wi-Fi モジュールを無償で提供・設置し、初月の利用料金を無料とすることとして。

スーパー、コンビニ、外食チェーン店から大量調理施設、物流拠点まで、幅広い展開を目指している「ホシザキ コネクトWi-Fi」

「オリジナル製品を持たない企業に飛躍はない」をモットーに、モノづくりの「極限への挑戦」を果敢に続け、フードサービス機器の総合メーカーへと成長したホシザキ株式会社 (以下、ホシザキ)。現在では、全自動製氷機や業務用冷蔵庫、食器洗浄機、ビールサーバーなどで国内トップクラスのシェアを持ち、日本国内のみならず海外でも積極的にビジネスを展開しています。また製品の製造/販売に加えてサービスの提供にも注力しており、食の多様化や変化にもきめ細かく対応。このサービスの高度化および迅速化の一環として、2024 年 1 月に提供を開始したのが「ホシザキ コネクトWi-Fi」です。

「ホシザキ コネクトWi-Fiは、弊社が提供する業務用冷蔵庫などの機器に Wi-Fi モジュールを取り付け、稼働データや温度データをクラウドで管理する SaaS 型の新サービスです」と説明するのは、ホシザキ 本社営業部で部長を務める赤羽 直樹 氏。初期費用ゼロで機器のIoT化を実現し、インターネット経由でいつでもどこからでもリアルタイムで機器の稼働状況や温度を確認、管理、記録できるのだと言います。「販売済み製品を含むホシザキの業務用冷蔵庫などの主要製品を対象にしており、今後は対象製品を順次追加、温度管理であれば他社製品への対応も可能です」。

ホシザキがこのようなサービスを提供するに至った理由の 1 つとして「食に関連する事業者に課せられている書類作成の負担を軽減したい、という思いがあります」と説明するのは、ホシザキ 本社営業部で主幹を務める小島 豊明 氏です。その中にはフロン排出抑制法によるフロン点検帳票義務のほか、2021 年 6 月に完全施行された改正食品衛生法による、HACCP に沿った衛生管理実施状況の記録、保存の義務もあると語ります。

「これらは手書きや手入力で行われていることが多く、大きな業務負担につながっています。またホシザキ自身としても、DX 推進の一環として、お客様に付加価値のある、従来の保守サービスを拡充する新しいビジネスを行いたいと考えていました」。

ホシザキが自社製品の IoT 化に取り組んだのは、実はこれが最初ではありません。2021 年 12 月には IoT による温度管理システムである「ホシザキスマートバンド クラウド」を発表、2021 年 6 月に完全施行された改正食品衛生法にいち早く対応しているのです。

 しかし「ホシザキ コネクトWi-Fiとスマートバンド クラウドはまったくの別物です」と語るのは、これらの企画・開発を担当するホシザキ 中央研究所で執行役員を務める佐々木 誠 氏です。先行して提供していたスマートバンド クラウドは大量調理を行う事業者向けのサービスであり、食材入荷から調理に至るまでの温度管理を行うことを目的としていたのに対し、ホシザキ コネクトWi-Fi はスーパーやコンビニ、外食チェーンも含め幅広くカバーし、温度だけでなく機器の稼働データも管理することを目的にしているのだと説明します。「そのためスマートバンド クラウドの開発、提供と並行する形で、2021 年 1 月にはホシザキ コネクトWi-Fi の実現に向けた検討も始まっていたのです」。

低コストでのモジュール製造とセキュリティ担保が可能な Azure Sphere を採用

ホシザキ コネクトWi-Fi の実現で最も重視されたのが、機器に取り付ける Wi-Fi モジュールの価格でした。ホシザキが提供する業務用冷蔵庫などの製品には、以前からマイコンが装備されており、機器のフロントパネルで温度や稼働状況を確認できるようになっています。ホシザキ コネクトWi-Fi ではこのマイコンからデータを取り出し、Wi-Fi 経由でクラウドにデータを送るしくみを追加する必要がありますが、導入しやすいサービスを提供するには、そのコストをできる限り抑える必要があったのです。

「2021 年末には複数のボード開発ベンダーに、どの程度のコストでできるのかについて相談していました」と言うのは、ホシザキ 中央研究所 開発部で部長を務める山崎 真 氏。その結果、最終的に開発パートナーに選ばれたのが、NSW株式会社 (以下、NSW) でした。「NSW は十分に安価な価格を提案してくれました。また IoT に関する実績も申し分ないため、一緒に取り組んでいただくことにしました」。

低価格な Wi-Fi モジュールを実現するために NSW が採用したのが、マイクロソフトが提供する IoT デバイス プラットフォーム「Azure Sphere」です。これは、エッジデバイスの中核となる MCU (Micro Controller Unit) チップ、Linux ベースのセキュア OS、Azure によるデータ収集サービスで構成されるものであり、Wi-Fi による通信機能も装備しています。

その採用理由について「まずコストの制約が厳しいということから、IoT デバイスで多く採用されている汎用ゲートウェイの利用は、最初から除外することにしました」と語るのは、NSW 取締役 執行役員常務でサービスソリューション事業本部長も務める竹村 大助 氏。汎用ゲートウェイは専用チップを複数組み合わせて構成する必要があり、1 台あたり数万円になってしまうのだと説明します。「そこで注目したのが、2020 年 2 月に一般提供が始まっていた Azure Sphere です。Azure Sphere の MCU チップには IoT エッジに必要な機能がすべて搭載されており、複数の専用チップを組み合わせる必要がありません。そのため低コストで Wi-Fi モジュールを製造できると判断しました」。

しかし Azure Sphere 採用の決め手になったのは、コストだけではないとも竹村 氏は指摘します。もう 1 つ「不可欠な条件」とされたのが、セキュリティを担保できるしくみの存在でした。

 「店舗にも展開するのであれば、このエッジ デバイスはコンシューマー デバイスと同様の使われ方をすることになります。そのためユーザー側に専門家がいなくても、セキュリティを担保できるしくみが必要です。IoT デバイスでは OS やソフトウェアのアップデートができないことが理由で脆弱性が放置されているケースが少なくありませんが、Azure Sphere には『ダウンストリーム OTA (On-The-Air:無線通信経由でソフトウェアのアップデートを行う機能)』が用意されており、10 年間のセキュリティ アップデートが保証されています。これなら店舗への展開も安心して行えると考えました」。

約1,700 台の製品を約600 拠点に設置、大規模な PoC でスケーラビリティも確保

2022 年 9 月には、業務用冷蔵庫などの製品に Wi-Fi モジュールを実装して運用するPoCをスタート。驚くべきなのはその規模です。約 1,700 台の製品を約 600 拠点に設置し、どのような無線環境を用意すれば Wi-Fi でのデータ送受信が問題なく行えるのか、サービスを使う顧客や販社、ホシザキのサービス担当者がどのようなデータを求めているのか、そのためにどのようなアプリケーションを作っておくべきなのか、といったことが検証されていったのです。

「ホシザキ様からのご要望によってこれだけの規模の PoC を行うことになりましたが、これによって当初からサービスのスケーラビリティを強く意識したシステム構成にできました」と言うのは、NSW サービスソリューション事業本部 クラウドサービス事業部副事業部長 兼 サービスインテグレーション部長を務める遠藤 重樹 氏。収集したデータを可視化する機能は、NSW が提供する IoT 製品「Toami」を Azure 上で構成し、その他の機能部分はサーバーレス機能を積極的に活用することで、高いスケーラビリティを確保していると説明します。

「PoC では想定外のことも数多く発生しましたが、NSW はすぐに対応し、これだけの規模でも安定的に動くシステムを実現してくれました」と佐々木 氏。また、当初想定していた以上に安価のモジュールを作ってくれたことも、高く評価していると語ります。

 このような評価に対して「Azure Sphere の採用によってマイクロソフトの支援を受けられたことも、迅速な問題対応に大きな貢献を果たしています」と指摘するのは、NSW サービスソリューション事業本部 営業統括部 第一営業部でマネージャーを務める三宅 一平 氏です。「先行していた海外事例の情報も、マイクロソフト経由で幅広く集めることが可能になりました。当社だけで対応していたら、これだけのスピード感を実現するのは難しかったかもしれません」。

それでは、ホシザキ コネクトWi-Fi は具体的にどのようなメリットをもたらしているのでしょうか。山崎 氏は、次のように述べています。

「業務用冷蔵庫は、エラーが出ても冷却を止めない設計になっており、お客様がエラーに気付かないことも少なくありませんが、ホシザキ コネクトWi-Fi はエラーが出た際にはお客様にメール通知されます。データは弊社にも共有されるため、お客様の要望に応じて、故障発生時の迅速な対応や、パッキン劣化などのお客様が気付きにくい故障の改善提案などができるようになりました。またどの部分で問題が発生しているのかもわかるため、訪問前に必要な部品を手配してから対処することで、訪問回数を減らすことも可能になりました」。

その一方で、飲食店チェーンが求めるデータを提供できることも大きなメリットだと指摘するのは、小島 氏です。

 「チェーン本部では店舗管理を徹底するため、店舗スタッフがマニュアル通りに機器を運用しているか、消費電力に対して十分な冷却効率になっているのか、といったデータが必要です。ホシザキ コネクトWi-Fi ならこれらのデータも可視化でき、発生した問題もすぐに把握できます。また、マイナス 23℃ だった設定をマイナス 20℃ にすることで電気料金が半分になったケースもあり、これもお客様に評価いただきました」。

もちろん、各種の法令に求められる記録作成も自動化されており、これも利用顧客から評価されていると赤羽 氏。今後は段階的に対応機器を増やしていき、最終的にはホシザキ製品の標準装備にしていきたいと語ります。

「対応機器の数が増え、より多くのデータを集めることが可能になれば、そのデータを製品設計に役立てることも可能になるでしょう」と佐々木 氏。近い将来には集めたデータを AIで活用することも視野に入っていると語ります。

「ホシザキは製氷機や業務用冷蔵庫で国内トップクラスのシェアとなっており、これらに標準装備されれば膨大なデータを集めることが可能になります。これだけの規模感を持つフードサービス機器メーカーは他にありません。この特性を活かすことで、これまでになかったサービスを実現していきたいと考えています」。

“ホシザキ コネクトWi-Fi は、業務用冷蔵庫などに Wi-Fi モジュールを取り付け、稼働データや温度データをクラウドで管理する SaaS 型の新サービスです。初期費用ゼロで機器の IoT 化を実現し、インターネット経由でいつでもどこからでもリアルタイムで機器の稼働状況や温度を確認、管理、記録できます”

赤羽 直樹 氏, 本社営業部 部長, ホシザキ株式会社

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