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2022 年 9 月 2 日。あいにくの小雨模様にも関わらず、代官山駅前の Microsoft Base 代官山は熱気にあふれていました。
この日開催されたのは「リコー様事例に学ぶ Teams を活用した製造現場 DX 交流会」。リコー社から、Microsoft Teams と Microsoft Power Platform を組み合わせた DX に取り組む皆さまを招いてノウハウを学びつつ、普段なかなか顔を合わせる機会のない製造業の DX 担当の方々が交流し、情報交換することを目的として企画されました。

この交流会の大きな特徴は、オンサイトとオンラインのハイブリッド形式で開催された点です。コロナ禍で定着したオンライン形式のセミナーは、離れた場所から参加できるのは大きな利点ですが、無味乾燥なものになりがちな欠点もあります。このハイブリッド形式であれば、オンサイトにも聴衆が存在することで話者の言葉にも自然と力が入り、発表は大いに盛り上がります。
実際にこの日登壇した皆さまの発表は非常に熱がこもっており、その熱が会場のみならずオンライン参加者にも伝わっているのがよくわかりました。今後、このハイブリッド形式はセミナー開催のひとつの選択肢となるかもしれません。

製造業 DX の最新系として注目されるリコー社の取り組み

オンサイト 12 名、オンライン 100 名の定員がほぼ埋まった状態で始まった本交流会。まず日本マイクロソフトカスタマーサクセス事業本部長の日野がご挨拶を述べます。
「私たちが製造業のエンタープライズ企業を中心としてデジタル化支援を行うなかで、ほとんどのお客さまは、業務の入り口であるデータ入力のデジタル化を進めている段階で、業務全体のプロセスをデジタルに組み直して、一連の流れをデータとして可視化する部分はまだこれからという印象を受けています」
と現状を分析。リコー社の事例は、ほとんどの企業がまだ取り掛かっていない最先端の取り組みであるとし、今日の交流会への期待を語りました。

続いて、リコー社の取り組みをまとめた VTR が流されます。日野いわく、今回開発した業務フロー DX アプリについての解説パートは社内説明用につくられたものであり、「今日お集まりいただいた方のなかには、この VTR を見て参加を決めた方も多いのではないでしょうか。私たちのなかでも非常にインパクトがありましたし、業界内に響くものだと感じています」とのこと。初見でも非常にわかりやすく、今回、出荷判定時に生じた異常への対応フローのデジタル化を目指してつくられたアプリの概要はもとより、プロジェクトの実施に至った背景やプロジェクトを後押ししたリコーの社内風土、リリース後の変化などが伝わってくる内容でした。

参考:[Microsoft 365 導入事例] 株式会社リコー: リコーの DNA が刻む「ボトムアップ型 DX」ー 工場の出荷判定を Teams と Power Apps で効率化

セッション 1「リコー様の事例背景 & 紹介」

ここでリコー社の経営管理センター品質システム統括部室長の増田氏が登壇し、今回の事例の背景を紹介するセッションが開始。増田氏はまず、同社のタグラインや沿革を解説します。
その解説のなかで増田氏は、リコーは 2020 年に OA 機器メーカーからデジタルサービス企業に生まれ変わることを宣言し、2021 年 4 月から、社員自ら責任を持ち、モチベーションを高めるためのカンパニー制度を実施している点をエポックとして提示。今回のプロジェクト実現に至る土台があったことを示唆します。

今回のアプリ開発プロジェクトの舞台は、リコーの生産会社であるリコーインダストリーの東北事業所。以前から増田氏と関係性が強く、DX 活動に積極的なメンバーが揃っていたため、白羽の矢が立ったそうです。
まず増田氏はポイントとして、「ボトムアップ型 DX 活動の積極的な展開」を挙げます。「大切なのは、現場を一番よくわかっている現場の人間が、現場をよくしようという熱意を持って活動すること。そして、まずはチャレンジしてみること。こうした積極的な姿勢が大切であり、今回の事例でもそうした姿勢を持つメンバーを集めて活動してきました」。

さらに、人材という視点から 3 つのポイントを提示。1 番目のポイントは、組織を動かすために、管理職自身が変革の課題意識を持ち、行動に移す強い思いを持つこと。増田氏は「手前味噌ですが、この管理職は私自身をイメージしています」と少し照れくさそうに解説します。
2 番目は現場をよく理解して自発的に行動、チャレンジする人材。ここで同席していた伊藤氏を紹介します。そして 3 番目は、DX に関するシステム設計ができる人材。「これが今日来ている難波であり、中島です」とふたりを紹介。難波氏は「私は今回、現場の意見を取りまとめて、システムのプロである中島に伝える。その中間に関わっています」と、現場と開発者の接合点としての自身の役割を説明します。

そして増田氏は、もうひとりの協力メンバーである秋元氏を紹介します。秋元氏は、広い世代に受け入れられる使用感やユーザーの意見を代弁する立場でプロジェクトに関わっているそうです。「つくる側の思いばかりではなく、使う人にとって使いやすいものでなければ定着しませんからね」と増田氏。この多彩なメンバーを見れば、DX を迅速かつ確実に進めるには、チームのメンバーそれぞれが役割と責任を持って臨める環境が大切であることがよく伝わってきます。

ここで増田氏は注意点として、「ボトムアップ型の小集団での活動は、責任感と達成感を味わえることが大きなメリットです。一方で、責任を持たせすぎてしまうと、“失敗したらどうしよう”という気持ちが湧いてしまう。ですから“責任は管理職である私が持つ”と明言することが、大きなポイントだと思います」と管理職の意識を挙げます。
「チームのメンバーに権限を与えつつ、上長が責任を持つことで、チャレンジ精神が芽生えてプロジェクトがよい方向に回ると思います」という実体験に基づいたアドバイスに強い説得力を感じます。

現場の困りごとがコロナ禍でより深刻に。デジタルの力による解決策を模索

実は、もともとこのアプリ開発の着想は増田氏のせっかちな性格にあったそうです。「連絡をつけたい人が、広大な工場の敷地のどこで今、何をしているのかをすぐ把握できないことにストレスを感じていました」と増田氏。過去の海外赴任時代にも現地従業員とのコミュニケーションの難しさを経験しており、情報伝達の効率化を課題と認識していたのです。
さらに、コロナ禍が重なったことで、在宅勤務という選択肢も増えました。「さすがにこれは、私ほどせっかちではない人にとっても大きな問題となっていました」と増田氏。特に出荷判定時に問題が生じた際に、迅速に担当者や上長と連絡が取れなければ、大きなロスにつながってしまいかねません。

そこで増田氏は、デジタルの力で解決できないかと考えて上司に対策を相談。すると「あいつなら解決してくれるだろう」と、別の部署に所属していた中島氏を紹介されました。「中島に状況を伝えたところ、“Teams を活用すれば面白いことができそうだよ”とヒントをくれたんです。日本マイクロソフトさんも協力してくれるだろうということでしたので、それならやろうかと」(増田氏)。こうして、Teams アプリによる出荷判定時の異常対応のデジタル化プロジェクトが立ち上がることになったのです。

参考:[Microsoft 365 導入事例] 株式会社リコー: リコーの DNA が刻む「ボトムアップ型 DX」ー 工場の出荷判定を Teams と Power Apps で効率化

セッション 2 、「DX に重要な業務フローと導線の考察」

ここで登壇者は、増田氏からプロジェクトを託された中島氏にバトンタッチ。中島氏は入社以来、さまざまな部門を渡り歩きながらリコー社の IT を担ってきたスペシャリストです。中島氏の社内 DX 推進での奮闘は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション/業務プロセスの自動化)を担当することになった頃から始まったそうです。
RPA を担当するにあたり中島氏は、「ヘルプデスクみたいな立場はつまらない」と、現場の困りごとに積極的に関わるために多くの現場へと足を運びました。すると、現場の抱える課題が見えてきました。「二度手間になりそうな転記がまだ残っていて、RPA は爆発的に普及しました。ですが、そのなかには基幹システムからのデータをダウンロードして Excel で処理するといった自動化も含まれていたんです」。

この状況をなんとかしなければと考えた中島氏が目をつけたのが、Microsoft Power Platformでした。「それぞれが RPA でデータをダウンロードするのではなく、現場で必要なデータを整備して、そこから集計すればいいのではないかと。そこで目をつけたのがセルフサービス BI である Power BI を含む Power Platform でした」。そこから Power Platform を駆使した業務改善と IT の民主化を積極的に進めるようになったそうです。

Teams と Power Platform を駆使して、現場が真に必要とする課題解決策を提示

こうしてさまざまな部門でデジタルを使った業務改善を手がけてきた中島氏から見ると、生産部門はかなり DX に向いているのだそうです。「生産部門はデジタルを貪欲に取り入れてくれますね。今回の事例もそれを示していると思います」と中島氏。
その分析のとおり、出荷判定時の異常対応のデジタル化を増田氏から依頼され、中島氏が現場を観察したところ、手順書や報告書などはすでにタブレットで見られるようになっていました。

「ただ、報告書というのは手順上、作成するタイミングはかなり後になるんです。トラブルの原因究明や在庫の確認、シッピングの時間確認など、いろいろな人たちが動いた結果を、班長がまとめる。その際に連絡手段として使われるのは電話やメールといったアナログなツールでした。ここをコラボレーティブアプリの Teams で改善できそうだと目をつけました」(中島氏)。
たとえば、検査員が異常を発見したときに写真を撮影して Teams で共有すれば、改めて撮影する手間も省けますし、リアルタイムの事象を報告書に記録できます。中島氏は「こういった現場が気づいていない部分や課題の本質を解決するデジタル化が大切」と語ります。

「たとえば、現場から記録用の画像にスマートフォンで文字や図形を描き込みたいという要望がありました。その機能を付与することは技術的に困難です。ただ、なんのために文字や図形が必要なのかを聞くと、現場を知らない人への説明や後々の記録用だということがわかりました。。それなら現場からスマートフォンで書き込む必要はありませんから、、後で SharePoint に保管されている画像に書き加える方が手間もかからないしわかりやすいのでは?、と、」このように目的を確認し、アイディアを提示する、それで真に現場から必要とされる DX につながるのです(中島氏)。

DX の目的は、人を幸せにすること。DX の本質を実現する Teams アプリの可能性。

Teams アプリを採用した理由について中島氏は、Microsoft の展望に驚きと共感を覚えたことが大きかったといいます。
「今日司会をしてくれている日本マイクロソフト澤本さん “これから先、Teams が業務のフロントエンドになりますよ”という言葉が心に響いたんです」と中島氏。「言われてみれば確かに、ひと昔前は電話で行っていたやりとりが Teams のチャットに代わって文字データが残るようになり、Web 会議も録画データが残るようになった。つまり、今まで消えていたコミュニケーションが、データという形でシステムに乗るようになるわけです。それを活用したシステムができれば、ひとり一台の PC を持ち、ネットワークにつながれるようになった Windows95 以来の変革が起きるのではないかと思ったんです」(中島氏)。新しい技術が出てきて世界が変わるのであれば、それに乗るに越したことはないですよね、との言葉に、会場の DX 担当者たちは大きくうなずきます。

次に中島氏が「当たり前のようでいて当たり前にできていないことが多いですよね」と言いながら示したのが「テクノロジー」「現場の困りごと」「現場のアイディア」を 3 つの極とする図。「この 3 つが組み合わせればすごくいいものができると私は思っているのですが、今日参加している皆さん、現場のアイディアを活用できていますか?と呼びかけます。

この三方良しの関係を成立させることを考えると、マイクロソフトのソリューションはとてもよくできているんですよ、と中島氏。「プロが使おうと思えば使えるものも用意されているし、ローコードツールも用意されている。バランスが取れているんです」。さらに、と言葉をつなぎ、「ローコードというと、ガバナンスを保つのが難しいと、二の足を踏む人も多いかと思います。ただ、ガバナンスを保つのは当たり前で、そのより重要なのは、IT は人の生活を便利にするためのツールなので、ユーザーが“いいね”と言ってくれることがすべてなんです」。現場が喜んで使ってくれるもの、感動してくれるものをつくるのがDXだと思います、と中島氏。DX の本質を突いた言葉に、参加者たちが引き込まれるのが伝わってきます。

最後に、今回のプロジェクトの成功要因について語る中島氏。「Teams アプリがすごいよ、という私の話に対して、増田はすぐにメンバーを集めて、すぐに動いてくれた。こういうことがやりたかったんだ、と」そういう現場のニーズに刺さることができる。それがIT担当者の本望ですよね、と笑顔で語り、セッションは終了となりました。

Q&A は大盛況。時間に収まらず延長戦を実施。

続けて行われた Q&A のセッションも大盛況。次々と手が上がるオンライン参加者からの質問に増田氏と中島氏が回答していきます。「クラウドサービスを使う上で、トラブルが起きたときの対処法は?」「紙にこだわる人たちを巻き込んで DX を進めるコツは?」といった DX を推進する上での心構えから、「このプロジェクトの開発期間は?」「水平展開への障壁は?」といった具体的な質問まで、日本中の名だたる企業の IT 担当者から矢継ぎ早に声が上がります。
結局、時間内に全ての質問に答えきれず、全セッション終了後に延長戦を設けることに。ここまで数多くの企業が一堂に介してオープンに交流できる場の希少性と、リコー社の取り組みの先進性を強く感じる一幕でした。

続いて、リコー社のアプリ開発に参画した Microsoft Corp Teams 製品開発シニアプロダクトマネージャーの京増とプリンシパルプロダクトマネージャーの片山から、「 Teams を中心にした業務アプリ開発」というタイトルで、Teams のアプリでどういうことができるのか、実際に開発する際にどういった UI があるのかというテーマでセッションを行いました。

本セッションでは、中島氏の言葉にあったように、Teams はアプリ上で他者とのコラボレーションを完結できるコラボレイティブアプリであり、ゆくゆくはインターネットブラウザや OS と同じくらい重要なデジタルプラットフォームになり得るツールであることを実感していただくために、事例や実際の UI を紹介しながらの解説が行われました。
セミナーのなかで主催者が自社製品を紹介するパートは、いきおい PR 色が強くなってしまいがちですが、増田氏と中島氏のセッションがあったことで、説得力を持つ内容として受け入れられていたのではないでしょうか。

こうしてすべてのセッションが終了し、会場は交流会へ。Q&A セッションから持ち越されたオンラインでの質問は延々と続き、増田氏と中島氏は用意された軽食に手をつける暇もなく回答に追われていました。

改めて主催の日本マイクロソフトより、初めての試みだったオンサイトとオンラインのハイブリッド交流会に予想以上の活況をいただき、誠にありがとうございました。引き続きリコー社とそれに続く素晴らしい事例をご支援し、またこのような場で皆さまと交流できることを、心待ちにしています。

今回リコー社にご紹介いただいた内容は、以下のオンデマンドセッションよりご確認頂けます。
工場のホウ・レン・ソウは今日から変わる!~Teamsコラボレーティブアプリを活用した、製品出荷判定業務のDX化事例~(株式会社リコー)[製造業DXフォーラム 2022] (microsoft.com)