PC displays which show Power BI and Excel.

NTT 東日本(東日本電信電話株式会社)は、北海道、東北、関東、甲信越の 17 都道県において、固定ネットワークを活かして生活やビジネスに密着した多彩なサービスを展開する、通信業界のリーディングカンパニーです。
同社において先端技術を活用したDX 推進事業の開発を担うデジタルデザイン部では、概念実証(PoC)として、ローコード開発サービス「Microsoft Power Platform」を活用したフリーアドレスの座席を管理するアプリ「ロケーションバトラー(ロケバト)」を開発。将来的なサービス展開を視野に、社内で運用を行なっています。

Profile

東日本電信電話株式会社 デジタルデザイン部
ファシリテーション部門 DX 戦略担当 主査
柴田 亮介 氏
2021 年入社。前職では、大手電機機器メーカーにて、パッケージ導入フィールド SE、パッケージ開発 SE として従事。現在は、ロケバトを始めとしたマイバトラーシリーズのソフトウェア開発を行うバーチャル組織である DX ラボの開発担当プロジェクトマネージャーとして、開発内製化を推進中。

東日本電信電話株式会社 デジタルデザイン部
ファシリテーション部門 DX 戦略担当
山田 幹也 氏
2021 年入社。新人配属後に Power Platform に触れ、「ロケバト」アプリの開発担当として従事。現在は、マイバトラーシリーズの開発、保守サブリーダとして、開発内製化やロケバトの社内展開を推進中。

2名のプロフィール写真

(左から柴田氏、山田氏)

■ DX 推進サービスのノウハウを社内の働き方改革に生かす

-NTT 東日本におけるデジタルデザイン部の役割についてお聞かせください。

 NTT 東日本は、皆さまがよくご存知の通信事業者としてだけではなく、地域活性化を軸とした ICT 企業としてのサービスもご提供しています。私たちデジタルデザイン部は、AI や IoT といった最先端のデジタル技術活用によるビジネスの創出・高度化や、ソフトウェアの内製化および技術基盤の開発を行う部署として、デジタル革新本部内に設置されました。同じ本部内にある「デジタルイノベーション部」が NTT 東日本社内のDX推進を担当しているのに対して、私たちはお客さまの DX 推進をお手伝いする役割を担っているのが特徴です。
ロケバト開発において Power Platform を採用することにした理由も、私たちが先端技術を活かしたサービスをお客さまにご提供するにあたり、まずは社内での PoC を通してノウハウを蓄積したものをお勧めするほうが、お客さまの納得感が高まると考えているからです。NTT東日本はグループ会社含めて 3 万 8,000 人ほどの従業員がいます。この規模の PoC を経たサービスを提供できるのは、当社の大きな強みだと考えています。

NTT 東日本デジタルデザイン部の情報発信メディア:
「D3-ディーキューブ-」

-ロケバトを含む共通業務 DX ツールの開発に至った経緯をお聞かせください。

 コロナ禍において、図らずも NTT 東日本自体が働き方改革を迫られたことが背景にあります。ニューノーマルな働き方を模索するなかで、フレックス通勤やリモートワーク、サテライトオフィスなどが導入されると同時に、さまざまな課題が浮上してきました。そこで、本来デジタルデザイン部はお客さまの DX 推進を目的とするチームなのですが、ゆくゆくはお客さまに提供することを念頭に置きながら、まずは社内の働き方改革をサポートするためにノウハウや技術を提供していこうという発想から、業務改善プロダクト「マイバトラー」シリーズが誕生したのです。
マイバトラーシリーズは、Butler (執事)の名の通り、それぞれスケジュール調整、代表電話への自動応対、残業時間管理などの機能を備えた、ニューノーマル時代における業務の困りごとを解決するためのプロダクト群です。そのなかでロケバトは、フリーアドレスになったオフィスの座席状況を確認・予約できる座席管理アプリとして開発されました。

■システム開発未経験者が Power Platform でローコードアプリ開発を実践

-ロケバトの開発で工夫されたのはどんな点でしょうか?

柴田 今回、私はプロジェクトマネージャーとして関わったのですが、実は山田を含めた私以外の 4 名の開発メンバー全員が、それまでシステム開発の経験がありませんでした。よって、ローコード開発に限ったことではなく、まず初めに各開発工程でやるべきことを定めたり、ドキュメントのテンプレートをつくったりと、基礎からのレクチャーが必要でした。
その上で、 ロケバト開発の企画段階で機能要件がある程度最初から決まっていたため、要件定義工程を簡略化できると考えました。まずは手を動かしてアプリケーションを作成し、1 週間をひとつの区切りのスプリントとして成果物を評価・改善していくという「アジャイル開発」の手法を採用しました。その結果、未経験者による開発にも関わらず、開発開始から 3 か月で初版をリリースすることができました。

山田 今回は Microsoft 365 E5 に付帯する Power Platform を使ったため、データ数や API コール制限などいくつかの制約事項があったので、設計や実装に工夫が必要でした。また、当初はすべて Power Platform で構築しようとしたのですが、Power Automate と接続してロジックをつくるなど、ツールを併用することもありました。初めての経験ということもあり、開発工程の手戻りが多かったことは反省点として感じていますので、次回以降のプロジェクトに活かしていきたいと考えています。

-実際に Power Platform でローコード開発を経験してみて、どのようなことを感じましたか?

柴田 ローコード開発はサンプルやプロトタイプを簡単につくれるので、特に立ち上がり時には便利に使える実感を得られました。また、例えば Power Platform には、認証基盤がすでに実装されていることなど通常開発時に考慮するべき要件がプラットフォームとして備わっているため、アプリの機能開発に集中できるのはとてもいいと思います。Microsoft のその他のサービスとの互換性の高さも利点ですね。VBA(Visual Basic for Applications)や Excel の関数を覚えているレベルの SE であれば、すぐに使いこなせるのではないでしょうか。

山田 柴田の言うとおり、学生時代に学んだ関数をそのまま使える部分も多く、操作は身につけやすかったです。ただ、ある程度コーディングが必要になる部分もあったので、わからない部分は各関数のドキュメントや Microsoft Learn を参考にしながら進めました。ボタンを押して画面遷移するといった簡単な動作はすぐにつくれたのですが、複雑な処理が必要になった場合、どのように実装するかについては、ある程度の試行錯誤が必要でしたね。

柴田 スピード感を持って簡単にアプリ開発ができるという点は非常に有益です。今回の開発をきっかけに知見を蓄えていけば、お客さまに有益なご提案ができるのではないかと感じています。さらに社内の人材育成という視点から見ても、ローコードで一連の開発を経験することで、スキルを向上させたり知見の幅を広げたりできると思いますので、引き続きトライしていきたいです。

-課題に感じた点はどんなところでしょう?

柴田 今後の活用を考えたときに、ローコードありきで考えるのではなく、まず満たすべき要件に対して、ローコードがいいのかスクラッチがいいのかを見定める必要があると感じました。アプリ開発にあたり、まずはローコードでサンプルやプロトタイプをつくってみて、そのままローコードで実現可能かどうか検証し、場合によってはスクラッチでつくるといった判断が重要になると思います。

■社内の評価を受けて、サービスとしての展開を視野に入れる

-ロケバト導入後の社内の反応はいかがですか?

柴田 現在は本社ビルで営業部門が利用するフロアとサテライトオフィスに導入されています。営業部門 2300 名とサテライトオフィスを利用できる従業員約 2 万人が、ロケバトを使ってフリーアドレスになっている座席の空き状況を確認して予約できる状況です。

山田 ユーザーである従業員には、直感的な操作が受け入れられているようです。口コミで利用者が広がっていて、今もいろいろな部署から引き合いが来ています。私もサテライトオフィスを利用することが多いのですが、座席を探す手間が省けますし、「オフィスに行っても座席がないかもしれない」という不安を前もって払拭できるのは便利ですね。今後に関しては、複数の予約が取れたり予約可能日数が増やせたりといった機能の拡張を考えています。

-今後はバトラーシリーズをはじめとした DX ツールをどのように展開していく予定ですか?

社内での業務改革などに資するツールとしてバトラーシリーズを拡張、展開していきたいと考えております。ロケバトと他のツールの連携も視野にいれております。

-今後、Power Platform やその他のツールをどのように役立てていきたいとお考えでしょうか?

スクラッチ開発時に要件定義工程でのプロトタイプとして Power Platform を利用していく計画です。まず、プロトタイプを作ってみて評価するというアジャイル的な形が実現できると考えています。

 日本マイクロソフトからは、2021 年 4 月の Microsoft 365 E5 導入時からさまざまなサポートを提供していただき、よいパートナーシップを築けていると感じています。Microsoft 365 E5 に Power Platform が付帯されていたおかげで、ローコード開発ができる環境を構築できたことは私たちにとって大きな一歩ですし、これを使いこなした経験やノウハウをもとにしたサービスを、お客さまに提供していきたいと考えています。
いずれローコード開発に関する知見が蓄積され、製品化が視野に入る段階で、外部データベースとの連携など、Power Platform のライセンス版ならではの機能も必要になってくるはずですから、その際にはまた相談に乗っていただければと思っています。

NTT 東日本デジタルデザイン部の情報発信メディア
「Digital Design Diagram」