ビジネスの課題を何か 1 つ挙げてみてください。たいていは、それを解決できそうなクラウド アプリが 1 つは (場合によっては多数) あります。クラウド アプリは小規模ビジネスにとって非常にありがたいものです。高額のインフラストラクチャへの投資は不要で人事、プロジェクト管理、会計、顧客リレーションシップ管理などのビジネス プロセスを管理できます。サブスクリプション ベース モデルなら、始めるのも簡単で、支払いは自分が使用した分だけです。しかし、注意を怠ると、機能が重複するいくつものアプリが存在する状態になり、非効率とコスト上昇につながります。
多くのビジネス プロセスについては、あるタスクに特化したソリューションと、総合的なソリューション (1 つのエンドツーエンドのプロセスに、または会社の多数のビジネス ニーズに対処するもの) という選択肢があります。対象を絞ったアプリが正しいアプローチとなる時もありますが、単一の集約ソリューションの優位性と比較することが重要です。
1. IT コストを削減する
アプリ集約の利点として最も顕著なものは、コスト効率です。サブスクリプションは、アプリケーションを社内でホスティングするのに比べてコストが低くなる傾向があるのは事実ですが、クラウド アプリにも使用料は伴います。多くのビジネス アプリでは、ユーザー数またはストレージ使用量に基づいて毎月料金が請求されます。このようなコストが積み重なると大きな金額となります。特に、似たような機能を持つ複数のアプリを有料で使用している場合です。
複数のサブスクリプションの管理は、手間もかかることがあります。コストを特定するための計測方法は、会社ごとに異なります。何にお金を払っているかを常に把握することは、チームごとに異なるアプリを使用しているような場合は簡単ではなくなります。請求をまとめると、会社が何を使用しているか、クラウド アプリからどれだけの価値を引き出しているかがわかりやすくなります。
2. より多くを達成する
アプリが多すぎるときの問題として、サブスクリプションに付随するハード コストのほかにも生産性低下があります。一般的なタスク切り替えと同じように、いくつものアプリの間を行き来することは従業員の時間を浪費し、フラストレーションの原因となります。そのような時間は時とともに積み重なっていきます。もっと価値のあるタスクに従業員が使えたはずの時間です。ここでは、集約によって仕事を効率化できる例をいくつか紹介します。
- 1 つのアプリでチャット、通話、会議ができるようにすれば、従業員がコミュニケーション方法をすばやく切り替えることができます。たとえば、ある問題をチャットでは解決できないと気付いたときに、そのチャットの参加者全員での会議を、ボタンのクリック 1 回で始めることができます。
- あるプロジェクトの仕事をしている従業員が、同僚と連絡を取り、その後でドキュメントでの共同作業を行い、次にプロジェクト スケジュールを手直しする必要があり、そのすべてを 2 時間ほどで完了する必要があるとします。これらのタスクのためのアプリがすべて 1 つのプラットフォームから、たとえば Microsoft Teams からアクセスできるようになっていれば、タスクを完了するための作業がはるかにシンプルになります。
- 情報が 1 つのプラットフォームに収容されていれば、従業員が情報を探すときに、目的のものが見つかるまでいくつものアプリを開く必要がなくなり、その分の時間が不要になります。
3. テクノロジをシンプルにする
クラウド アプリはオンプレミスのソリューションに比べてセットアップが簡単ですが、手間が一切かからないわけではありません。誰かが (一般的には IT 部門が) 保守する必要があります。具体的には、アプリのユーザーの追加と削除を社内での役職の変更に合わせて行うことや、アプリと他システム (たとえばアイデンティティ アクセス管理ソリューション) との統合、および従業員がソフトウェアを使っているときに発生した問題のトラブルシューティングがあります。
サポートを必要とするアプリの数を減らせば、IT 部門の時間が解放されるので、ビジネスを前進させる活動のために使える時間が増えることになります。
4. より良いインサイトにアクセスする
データは、ビジネスの最高の資産の 1 つです。誰が最良の顧客であるかを理解するにも、売上の傾向を明らかにするにも、生産の課題を常に把握するにも、データ分析が必要です。しかし、顧客データ、財務情報、プロジェクト計画がいくつものアプリに分散している場合は、重要なインサイトを見逃すおそれがあります。
複数のアプリを集約して単一のソリューションまたは適切に統合されたビジネス インテリジェンス ツールのスイートで置き換えると、会社全体にわたってデータを分析するのが簡単になり、発見した重要なインサイトをスマートな意思決定に役立てることができます。たとえば、顧客ライフサイクルのあらゆるタッチポイントを包含する顧客データに簡単にアクセスできれば、ニーズを予測してより良いサービスを提供できるようになります。売上データと従業員稼働データとを結び付けると、社内のリソースを効率的に活用する方法を理解するのに役立ちます。加えて、多くのプラットフォームには、重要な指標をひと目で確認できるように表示する機能があります。
5. セキュリティを厳しくする
現代の世界では、どのデバイス、ユーザー アカウント、アプリも外部からの侵入口となる可能性があり、データが盗まれたり、その他のビジネスを混乱させる目的で悪用されたりするおそれがあります。使用するアプリのベンダーが多数に及んでいるときは、セキュリティ侵害のリスクが高くなります。多くの人が同じパスワードを多数のアカウントで再利用しているからです。あるアカウントが侵害された場合は、攻撃者がその情報を使って他のアカウントにもアクセスできてしまうため、会社のコーポレート ネットワークにも侵入されるおそれがあります。
チームで使用するアプリの数を減らすと、セキュリティがシンプルになります。従業員が 1 つのアカウントで複数のアプリにアクセスしているときに、同じセキュリティ コントロールをそのすべてのアプリに適用できます。また、監視すべきアプリの数が少なくなれば、セキュリティ インシデントが会社に真の損害を与える前に発見できる可能性も高くなります。
アプリが多すぎるかどうかを知る方法
多くのクラウド アプリは、簡単に見つけて使うことができます。そのため、社内で使用されているアプリすべてを把握できていない会社もあるでしょう。しかし、会社用のアプリをかなり意図的に選んできた場合でも、集約の機会が残っている可能性があります。使用しているアプリが多すぎることの兆候としては、次のものがあります。
- 部署またはプロジェクト チームごとに異なるアプリを使って似たような機能を実行している。たとえば、マーケティング チームはファイルを共有するのに Microsoft OneDrive を使用し、製品開発チームは Box を使用している場合です。
- チーム メンバーが仕事のためにファイルをあるシステムからダウンロードして別のシステムにアップロードすることが必要になっている。たとえば、セールス担当者が販売契約を獲得した後に顧客情報を販売追跡ツールからプロジェクト管理ツールにインポートする必要があるという場合です。
- 重要な情報がいくつもの異なるツールに分散しているため、従業員は必要な情報を見つけるためにいくつものアプリで検索しなければならない。
- ビジネスに対する可視性が不足しているため、プロジェクト、リソース、収益の現状から “点と点をつなぐ” ことが難しくなっている。
クラウド アプリは、チームの仕事をどこからでも遂行するのに役立ちます。しかし、アプリが多すぎるとチームの有効性が低下するおそれがあります。セキュリティ、生産性、コスト管理を向上させるには、包括的なソリューションに注目して、チームが毎日扱っているアプリの数を減らす機会があるかどうかを考えてください。あるいは、アプリ集約によるコスト削減の可能性についての詳細な分析の結果を読んで自己アセスメントを行い、アプリ エコシステムをシンプルにすることがビジネスにとって適切かどうかを判断してください。