「教育再生」は、「経済再生」と並ぶ日本国の最重要課題として捉えられており、さまざまな取り組みが進められています。

自民党 教育再生実行本部においては、「人造りは国造り」を基本として、(1) 平成の学生大改革、(2) 大学入試の抜本的改革、(3) 新人材確保法の制定、(4) 学力向上という 4 つの検討課題を柱とした数多くの議題について、数年にわたって議論・検討が重ねられています。

そうした活動の一環として実証実験などが進む「高等学校における遠隔教育」について、自民党 教育再生実行本部本部長を務める遠藤 利明 氏に伺いました。

【プロフィール】 
山形県第 1 区 当選 7 回。2015 年 6 月 25 日に、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に就任。自民党において政務調査会長代理、教育再生実行本部本部長、スポーツ立国調査会会長などを務める。政治信条は「同じ目の高さの政治」。1997 年にはアジアの国々と友好親善を図るために、国会議員のボランティア グループ「アジアの子どもたちに学校をつくる議員の会」を結成。以来、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイなどに小学校を贈呈してきました。

 

地域間格差をなくし、全国民が高度な教育を受ける機会を保証する一助に

教育は、国の礎です。

私は、第二次大戦後の混乱から今日の世界有数の経済大国になれたのは、すべての国民が等しく高いレベルの教育を受けていることによってなし得たものと考えています。

インターネットが登場して世界が激変した今、日本の新しい発展をもたらす上でも、まずは国民が「どこに住んでいても高度な教育を受ける機会を構築」することが必要不可欠なのです。

 

しかし残念なことに、高等教育の現場には、地域間格差が生じやすくなっています。

 

要因の 1 つが、少子化です。

高等学校や大学への進学率は上昇していますが、現在少子高齢化に伴い、特に高等学校では一校あたりの生徒数が減少しています。

このため、離島や過疎地などにおいては特に各教科、科目などの専門知識を有する教員を十分に確保できない学校、最悪の場合は閉校といった悲しい事態も生じています。

遠藤 利明 氏のインタビュー写真

遠藤 利明 氏のインタビュー写真

2 つ目には、不登校の生徒や、療養中の生徒たちの存在が挙げられます。
実は、不登校生徒は毎年約 5 万人以上存在しており、病気療養を理由とする長期欠席者も、1 万人以上が高等学校に籍を置いています。こうした生徒たちにも、どこにいても高い質の教育を受けられる機会を保証することは、とても重要です。

 

こうした状況を打開するために有効となるのが、ICT を使った「遠隔教育」の実践です。

 

しかし、従来の教育制度において「遠隔から行う授業」は、担当教諭の指導の下で行われる場合を除き、原則として、高校の正規授業として認められていませんでした。

 

そこで、各所で議論が繰り返され、2015 年 4 月 1 日に学校教育法施行規則が改正されるに至りました。

 

この改正によって、全国の高校における遠隔教育が解禁され、高度教育の機会均等に向けた可能性が大きく開けたのです。

 

『慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザインラボ カンファレンス「高等学校遠隔授業解禁と教育イノベーション」~遠藤利明自民党教育再生実行本部長をお迎えして~』の 1 コマ

学校教育法施行規則に、新たに加えられた一文

 

第八十八条の二

 

高等学校は、文部科学大臣が別に定めるところにより、授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。

 

今まで必要でも学べなかった新しい学びを、遠隔授業で実施

遠隔教育が本格的に開始されるのは、まだこれからのことです。そのため、今は誤解もあるかもしれません。

遠隔教育というと録画したビデオ教材を視聴するような印象を受けるかも知れませんが、目指すところはまったく異なります。遠隔授業が目指しているのは、あくまでも「授業」であって、「教材」ではないのです。

 

遠隔授業では、遠隔地にいる先生が通信で教室をつないで授業をするわけですが、普段の授業と同じように生徒は先生に質問できますし、先生が、宿題をしっかり提出しない生徒を叱ることもあります。

遠隔 “授業” ですから、双方向に映像と音声が伝わります。一方的な聴講ではありません。

実証実験に参加した生徒も、「いつもと違う先生の授業を受けるのは、新鮮で楽しかった」と言っていたそうです。

この辺については、遠隔授業を長年現場で実践され、今回の遠隔授業解禁の取組にも尽力された慶應の國領先生、梅嶋先生の研究グループが詳しいので、彼らに聞いてもらうのがよいかもしれません。

 

「遠隔地にいる専門教員が授業を行うようになったら、現地にいる教員の役割はなくなるのか?」という不安を持たれている方もいるかも知れません。

 

まず、誤解のないように言いますと、これまでの学校教育が劣っていたとは考えていません。

たとえば、OECD (経済協力開発機構) が 2003 年に実施した生徒の学習到達度調査において、日本人生徒の「読解力」の得点が、OECD 平均程度まで低下していたこと明らかになったことがありますが、その後、現場の努力によって、2012 年の調査ではトップレベルにまで回復した実績もあります。

それに、私の亡くなった父親も山形県で教育者として過ごしています。日本の教育者には、等しく敬意を抱いています。

ICT 活用による遠隔教育の最大のポイントは、実は「教育現場を支える教員を、助けるためのものだ」ということなのです。

教師が、授業として生徒たちに伝えたいこと、教えたいことはさまざまにあると思います。しかし、個人の努力には、限界があります。いくら志と信念を持っていても、経験と学びに要する時間は有限です。だからこそ、さまざまな専門家の協力を仰ぐ必要が生じます。

それなのに従来の学校教育法では、教室にいる教師以外が授業を行うことを認めていなかったのです。

 

そうした制約が、遠隔教育の解禁によって解放されたのです。遠くの地にいる専門家とチームを組んで授業を行うことができます。都市部から離島・山間地域に赴任した場合でも、同じチームで授業を行うことも可能です。授業の可能性が大きく広がるわけです。

これは、より多様な学習機会を望んでいる生徒たちにとっても、望ましいことではないでしょうか。

 

『慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザインラボ カンファレンス「高等学校遠隔授業解禁と教育イノベーション」~遠藤利明自民党教育再生実行本部長をお迎えして~』の 1 コマ

遠藤 利明 氏のインタビュー写真

遠藤 利明 氏のインタビュー写真

海外転勤する家族にも、日本の高等教育を受ける機会を拡充

遠隔教育の可能性について言及する上で、1 つ忘れていただきたくないことがあります。
それが、「日本人学校」の存在です。

 

今は、大企業ばかりでなく、中小企業も海外に進出している時代です。しかも、企業が進出するのは、多くの場合、今後、国際社会において活躍する可能性の高い新興国です。

 

家族を連れて赴任しようと思っても、子どもたちの教育機会が限られている国々が多いのです。

 

私は、1997 年に国会議員のボランティア グループ「アジアの子どもたちに学校をつくる議員の会」を結成して、私が若手の議員仲間を誘って結成し、それぞれのポケット マネーを毎月 1 万円ずつ積み立てながら、これまでにカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイなどに今まで 14 の小学校を贈呈してきました。

Jean-Philippe Courtois マイクロソフト インターナショナル プレジデントと握手をしている遠藤 利明 氏の写真

Jean-Philippe Courtois マイクロソフト インターナショナル プレジデントと握手をしている遠藤 利明 氏の写真

学校ができると、子どもたちが皆、目をキラキラさせて喜んでくれるのです。彼らは皆、勉強がしたかったのです。私はその瞳を見るたびにうれしくなります。教育機会を均等に与えるということは、その子どもたちの可能性を伸ばし、国の未来を築くことにつながるのだと、想いを新たにしています。

 

翻って、日本に住む子どもたちは、非常に恵まれた教育環境の中に居ます。

 

しかし、先ほど言ったように、親御さんが海外に赴任する際に、一緒に海外に移住しようとしても、子どもたちを受け入れる「日本人学校」が、非常に少ないのです。これは、軽視できない問題です。しかも、高校教育を行う日本人学校は、上海にただ一校あるのみです。

 

つまり、日本の教育を受けさせたい親御さんは、海外に単身赴任するか、お子さんだけ国内に残していくほかないのです。

日本人として、高度な教育を受ける権利は、どこに住んでいても保証されなければなりません。日本人学校の高等部を増やしていくためにも、遠隔教育の普及は欠かせないと思います。

 

Jean-Philippe Courtois マイクロソフト インターナショナル プレジデントと共に。

これからの時代を担う人材育成にも、「遠隔教育」が貢献できる可能性

教育再生を論じる上で重要なことは、「これからの時代に求められる資質と能力」を見定めることだと思います。 2015 年 5 月 14 日に政府の教育再生実行会議が行った第七次提言にも、「リーダーシップ」、「創造性」、「多様性を受容する力」など、求められる人物像が記されています。

中でも「基礎となる学力・体力」として、「文系理系問わない幅広い教養、日本人としてのアイデンティティ、国語力、英語力、情報活用能力」が挙げられています。

これからの時代を生きる人たちに必要とされる資質・能力 ~求めれる人物像~ [課題の発見力、解決力、志、リーダーシップ] [創造性、チャレンジ精神、忍耐力、自己肯定感] [完成、思いやり、コミュニケーション能力、多様性を受容する力] [基礎となる学力・体力 ~文系理系問わない幅広い教養、日本人としてのアイデンティティ、国語力、英語力、情報活用能力~] 引用:教育再生実行会議 第 7 次提言 (2015 年 5 月 14 日提出) より

これからの時代を生きる人たちに必要とされる資質・能力 ~求めれる人物像~ [課題の発見力、解決力、志、リーダーシップ] [創造性、チャレンジ精神、忍耐力、自己肯定感] [完成、思いやり、コミュニケーション能力、多様性を受容する力] [基礎となる学力・体力 ~文系理系問わない幅広い教養、日本人としてのアイデンティティ、国語力、英語力、情報活用能力~] 引用:教育再生実行会議 第 7 次提言 (2015 年 5 月 14 日提出) より

身に付けた知識を、問題解決や物事のメカニズムの解明などにつなげていくには、さまざまな人物から教えを乞うことが有効になるかもしれません。遠隔教育が貢献できる可能性は十分にあるでしょう。

 

国語力、英語力に関しては当然のことでしょう。特に英語に関しては、拙くてもいいから発言、発信することが大事です。今は、インターネットを通じて世界中と対話できます。英語力の重要性が増しているのです。私が TOEFL を大学入試に導入することを提言したのも、学生のうちから英語を書いたり、話したりする機会を増やことが重要だと思ったからです。

そして、情報活用能力については、多様な情報が流れるインターネット上のデータから情報を峻別する力、ICT を活用するリテラシーがますます重要になるでしょう。

 

今、若い人たちの SNS が社会的な騒動に発展するなど、ICT には負の側面もあります。しかも、変化が激しい。これに対して、教育の現場独自の努力だけで、授業を創るのは無理があります。

こうした ICT リテラシーや活用という重要分野については特に、遠隔教育を活用して、見識ある方々と一緒に、チームとなって授業を作り上げていくことが有効になると思います。

誰にでも使いやすく、あらゆる教育機関が導入しやすい 「信頼できる」製品およびテクノロジに期待

日本マイクロソフトを始めとする ICT 企業に期待するのは、「誰にでも使いやすい」ツールを揃えてほしいということですね。世界共通で活用できれば、一番いい。加えて、「子どもたちの情報を扱っている」という社会的使命をこれまで同様に大事にしてほしい。

 

使いやすいというのは、まず簡単に操作できるということ。それこそ、ICT に不慣れな私でも簡単に扱えるものがいいですね (笑)。 先日、私が主宰する超党派議員連盟に慶應の國領先生、梅嶋先生を講師にお呼びした際に、お 2 人が「子どものデータだからこそ大事に扱わないといけない」とご指摘されていました。また、「データ活用の前提条件には、社会的責任がある」とお話されていました。まさにそのとおりだと思います。

そして、最後に、全国の教育機関に無理なく導入できる価格設定が必要であると考えます。
その点、マイクロソフトでは教育機関向けに、無償提供しているライセンスがあると聞いています (Office 365 Education E1)。企業向けの有償サービスを、教育機関向けに無償提供するという姿勢は、とてもすばらしいと思います。

 

今後も、生徒たちが世界共通で活用できる技術を、そしてセキュリティが強固で、安心して活用できるサービスを、どんどんと提供していただきたいと思っています。世界共通のテクノロジを学ぶことで、生徒たちは一生使えるスキルを身に着けることができます。これからの日本を引っ張っていってくれる人財育成が、産官学の連携によって実現していかれることを期待しています。

 

『慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザインラボ カンファレンス「高等学校遠隔授業解禁と教育イノベーション」~遠藤利明自民党教育再生実行本部長をお迎えして~』の 1 コマ

慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザインラボ カンファレンス

慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザインラボ カンファレンス


私たち慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザイン・ラボでは、日本マイクロソフトの提供する Skype for Business を活用した「高校遠隔授業汎用モデル on Skype for Business」の共同研究を行っています

 

Skype for Business を採用した理由は 3 つあります。

 

1 つ目は、マイクロソフト製品が世界中に普及していること。

2 つ目は、Office 365 Education E1 という無償プランで、Skype for Business が利用できること。

3 つ目が、プライバシーの保護などの考え方と対策がしっかりとしていることです。

 

中でも、もっとも重要なことが、3 つ目の「プライバシーの保護」です。生徒たちの学びの場では、さまざまな試行錯誤が行われています。もっとも大切なことは、「思考過程において、発想は自由である」ということです。

つまり、最終的に世間に向けて発表する言葉と、思考段階の言葉は異なるということです。

 

たとえば、「離島の医療資源不足をどのように解決するか?」というテーマで、Skype を使ってディスカッションを行うとします。その際には、各自が調べてきたデータを根拠として、自由に意見交換が行われます。とにかく、いろんな言葉が交わされます。こうした過程で発せられた言葉やアイデアは、確実に保護しなくてはいけないのです。

学びの場から得たデータを次の教育に活かすためのビッグ データ分析に使うことはあっても、広告配信のために二次利用することなど、断じて許してはいけません。

そもそも、生徒たちが学びの場で発する言葉は、彼らの頭の中に直結しています。これが、外部に流用されることは、決してあってはいけません。自発的な学びを促す「教育」の中では自分の考え、発想の源となる情報をすべて、保護してあげることが重要です。

 

その点で、マイクロソフトは世界最高レベルのセキュリティを備えている上に、Office 365 というクラウド サービスにおいても「データの二次利用は行わない」と、プライバシーの保護を明確に約束しています。非常に信頼できるパートナーだと言えるでしょう。


マイクロソフトの遠隔教育への取り組み

 

慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザイン・ラボと日本マイクロソフト「高校遠隔授業汎用モデル on Skype for Business」の共同研究で合意

【実証実験実施: 大阪府教育委員会】登校困難な生徒を支援する Skype for Business Online を活用した遠隔授業サポート システム 

 

 

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