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畿央大学

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掲載日: 2016 年 8 月 10 日

肢体不自由児たちの可能性を伸ばすデジタル教材開発と、保護者たちを支えるコミュニティづくりを、Microsoft Azure の R&D クラウド助成プログラムで加速

写真:畿央大学

畿央大学

畿央大学 教育学部 西端 律子教授を代表者とする研究グループでは、2012 年から特別支援教育に貢献するデジタル教材の研究・開発に取り組んできました。そして今、奈良県立奈良養護学校および東大阪大学の研究グループと共同で開発・運営している「教材共有ネットワークサイト TMSN」の機能強化を計画。Microsoft Azure の R&D クラウド助成プログラムを活用し、重複障碍児対象のデジタル教材マッチングシステムの開発及び地域・家庭との連携促進に資する取り組みを続けています。

<Microsoft Azure 導入の背景とねらい>
障碍ある児童の "可能性" を守る特別支援教育の充実へ、デジタル教材の研究・開発を推進

「教育方法」の理論と実践は、はるかソクラテスの時代から今日に至るまで、人類が取り組み続けている遠大なテーマであり、人間の持つ尊厳と可能性を育み守るために、必要不可欠な取り組みです。 畿央大学においても、教育学部 西端 律子教授を代表者とする研究グループにおいて、その一端を担う重要な研究 (文部科学省科学研究費補助金 課題番号 15H02941 課題名「重複障碍児対象のデジタル教材マッチングシステムの開発及び地域・家庭との連携」) が今、進められています。

その研究成果は、奈良県立奈良養護学校および東大阪大学の研究グループと共同で開発・運営している「教材共有ネットワークサイト TMSN (Teaching Materials Shared Network:以下、TMSN)」を通じて公開されています (無償の会員登録が必要)。

Teaching Material Shared Network

教材共有ネットワークサイト TMSN (Teaching Material Shared Network)

教材イメージ

教材イメージ

西端 教授が担当しているのは、ブラウザー上でインタラクティブに操作できる絵合わせパズルなどさまざまなバリエーションが用意されている「Flash 教材」ですが、長年「教育方法・技術論」を担当してきた西端 教授にとって、この研究は、未知の領域であったと言います。

「私は主に "教育の情報化" に携わっており、特別支援教育については、あまり詳しくありませんでした。しかし 2012 年のある日、現職の先生方を対象として開催した、電子黒板やタブレットの活用方法に関する講習にご参加いただいていた奈良養護学校の先生に、『今日ご紹介いただいたデジタル教材はすべて、特別支援教育では使うことができません。何か、特別支援教育に適したものはないでしょうか?』と相談をいただいたのです。それがすべての始まりでした。」

奈良県立奈良養護学校は、上肢・下肢・体幹に障害のある児童・生徒のための学校です。小学部から高等部まであわせて 104 名の児童・生徒が在籍しています(平成 28 年 4 月現在)。

西端 教授も、「求められていたデジタル教材の開発は、思っていた以上に大変だった」と、振り返ります。

「視覚より聴覚が優位な子ども、反対に聴覚が視覚より優位な子どももいます。また、市販もしくは Web などで公開されているデジタル教材を使っていると、ある子どもは途中で怯え、別の子どもはパニックを起こします。先生方は、子どもがなぜそのような反応をするのか、わかるまでが大変です。注意深く反応を見ているうちに、カエルの絵やビープ音が苦手だったことがわかりました。そのため、『色』や『キャラクター』、『効果音』などの組み合わせを、子どもに合わせて変更する必要があります。最初に相談いただいた先生のご苦労が、とてもよく分かりました。」

保護者のニーズをより多く満たすために 小規模なレンタルサーバーから、クラウド サービスへ移行

写真:畿央大学 大学院 教育学科研究科 教授 教育学部 現代教育学科 教授 博士(人間科学) 西端 律子 氏

畿央大学
大学院 教育学科研究科 教授
教育学部 現代教育学科 教授
博士(人間科学)
西端 律子 氏

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(2013 年に可決・成立) が 2016 年 4 月 1 日に施行され、障碍者への「合理的配慮」などの基本的な考え方が広まりつつある今、TMSN も大きく変わろうとしています。そのきっかけの 1 つとなっているのが、「テクノロジーの変化」です。

2012 年当時、奈良養護学校ではデジタル教材作成に、PowerPoint を使用していたと言います。しかし、プレゼンテーション用に用意されたアニメーションなどの機能では、インタラクティブな教材開発に必要な「分岐」や「反復」といった処理が十分に行えません。 そこで、「プログラム言語を知らなくても、比較的手軽に、インタラクティブなコンテンツを作成できるアプリケーションとして、Flash を利用した教材開発に、学生と共に取り組み始めました」と、西端 教授は言います。

しかし、当時に比べて状況が大きく変化しています。世間には Flash 非対応の iOS (iPhone、iPad などのモバイル用 OS) が普及していき、保護者の方々からも『自宅の iPad でデジタル教材を使いたい』 という要望が増加。
加えて、メーカーによる Flash Player のサポート終了がアナウンスされたことで、4 年近く積み重ねてきた Flash 教材を HTML5 へ移行させる必要が生じてしまったのです。

さらに、特別支援教育を実践する現場からも、TMSN に追加したいさまざまな要望が寄せられてきたと言います。それが、「おすすめ教材をリコメンドする機能」と「ネットワーク上の、ゆるやかなコミュニティづくり」です。

西端 教授は次のように説明します。
「Flash 教材はまだ数が少ないのですが、奈良養護学校の先生方が作り続けてきたアナログの教材は、膨大な数のノウハウがたまっており、TMSN 上で『作り方』や『使い方』をデータベースとして公開しています。保護者の方々に、ご自宅でもさまざまな教材をお使いいただきたいのですが、発達水準や個人への適性など、検索分類が非常に細かくなっているため、能動的に検索するのは大変な手間となります。そこで、マシンラーニングなどの機能を使って、『この教材をお使いの子どもの多くは、こちらの教材もご利用されています』、と自動的に推薦されるしくみがあれば、便利だろうという声がありました。」

そして、もう 1 つのコミュニティづくりには、「動画コンテンツが重要な役割を担う」と言います。

「保護者の方々は、すべての授業を見ているわけではありませんので、ほかのお子さんたちが、どのように学習を進めているか分かりません。そのため、ご自宅で新しい教材を使う際、お子さんの反応に戸惑うこともあるでしょう。そうした時、研究授業の模様を収めた動画をネットで視聴できたら、どれだけ心強いでしょうか。たとえば、絵柄などが原因でパニックを起こしたり、できると思った操作がうまく行かなかったりした時でも、授業の様子を見て『こうすればいい』あるいは、『ここで焦る必要はない』と心の備えができます。そうして、同じ動画を確認し合い、ネットワークを通じて全国の保護者の方々と意見を交換したりできる、ゆるやかなコミュニティができれば、より大きな安心が得られるのではないでしょうか。」

しかし、こうした機能とサービスの充実を図るには、従来利用してきた安価なレンタルサーバーでは性能的にも不十分でした。また、自分たちの手で、新たな環境を構築することは、時間的にも金銭的も、そして技術的にもできません。
そこで西端 教授たちは、2015 年度に入ると、限られた研究費の中で活用でき、環境構築に多くの時間と手間を奪われることなく、安全・安心に継続運用できる環境を求めて、TMSN をパブリック クラウド サービスへ移行させることを検討します。
そして、選ばれたのが Microsoft Azure でした。

<Microsoft Azure の採用理由と導入効果>
世界最高レベルのセキュリティで、プライバシーを保護。 Azure の機能を活用し、理想とするサービスの実現へ

TMSN をクラウド サービスに移行させる理由は以下の 3 点です。

  1. 運用保守の手間が少ない
  2. 将来的な容量の増加にも、問題なく対応できる
  3. 初期費用の負担も少なく、スモールスタートできる

そして、実際の移行先として Microsoft Azure が選ばれた主な理由は、下記の通りです。

【Azure が選ばれた理由】

  1. 高度なセキュリティおよび、厳格なプライバシーポリシーにより、データの安全を担保
  2. Machine Learning、Media Service などの機能により、リコメンド システムや動画配信を実現可能
  3. マイクロソフトの「R&D クラウド助成プログラム」(※) の適用
    (※) 学術的価値のある研究や、社会課題の解決につながる研究を応援するため、クラウド利用権を研究者に提供するプログラム

西端 教授は、「畿央大学の基幹システムも、すでに Azure に移行していることから、信頼性や可用性について、まったく不安もなかった」と前置きしつつ、選定理由について次のように説明します。

「これまでに実施してきた研究授業の様子は、すべて録画しており、かなりの量がたまっています。しかし、これをどうやって公開するのかが問題でした。いくら視聴制限をかけても、一般の動画配信サービスに、授業の様子を収めた動画をアップロードすることの不安は拭えません。子どもたちのプライベートな映像を、"他人の箱" に預けるわけにはいかないのです。
一方、Azure は、"契約者専用の箱" です。マイクロソフトのセキュリティは世界トップレベルですし、データセンターが置かれた各国の法律に基づいて、厳格にプライバシーが守られていますので、安心感がまったく異なります。
その上、Machine Learning 機能を使うことで、データベースのリコメンド システムも実現可能です。私たちが必要としていた機能のすべてが、揃っていたのです。」

R&D クラウド助成プログラムから広がる、大きな可能性

そして、もっとも重要な点が「R&D クラウド助成プログラム」による研究費支援であったと、続けます。

「2015 年度、私たちの研究が文部科学省の研究補助金の交付対象に選ばれたおかげで、外部の協力を得ながらクラウド サービスへの移行を図ることができました。しかし、研究期間を過ぎれば、限られた大学の研究費をやりくりすることになります。私たちの研究しているデジタル教材が利益を生むことはありません。そうした状況の中で、安心してクラウド サービスを継続活用するためには、周囲の理解と協力が必要不可欠です。ですから、マイクロソフトの R&D クラウド助成プログラムを初めて知った時から、非常に期待をしていたのです。今回、無事支援対象として選んでいただけたことは、とてもありがたかったです。」

そして、Azure 活用によって、TMSN のネットワークが今後拡充し、コミュニティとしての機能が十分に整うことで、「一般の方が想像するよりも、はるかに大きな効果が期待できる」と西端 教授は話します。

「特別支援学校が自宅から送り迎えできる距離にあれば、保護者の方々も安心ですよね。しかし、たとえば北海道のように広大な場所では、送迎できるような範囲内に通学できる学校がほとんどありませんので、児童たちは、寄宿舎生活を送ることになります。保護者の方々にしてみればやはり、離れて暮らす児童の様子が気になると思います。
そうした状況下で ICT 活用が広がれば、リアルタイム映像で寄宿舎の様子を確認することも可能ですし、ビデオ通話など、さまざまな手段を使ってコミュニケーションすることも可能になります。今後、クラウドの活用は、ますます拡大していくのではないでしょうか。」

<今後の展望>
ICT にかかる手間を減らし、研究者が "夢" を追うスピードを加速

リコメンド システムの構築など、TMSN の機能・サービス向上は、2016 年度から本格的に進行すると言います。

「本当は、自分たちで Microsoft Visual Studio のような開発ツールを使いこなすことができればいいのでしょうが、私たちの本分は、あくまでも教育方法・教育の情報化の研究です。技術的な面に関しては、専門家の方々の力を、ぜひお借りしたいと願っています。
その点、マイクロソフトは Microsoft BizSpark というスタートアップ支援プログラムを整えるなど、技術者のコミュニティづくりにも積極的だと聞いています。そうしたコミュニティを通じて、研究をサポートしてくださる方々と出会う機会が用意されているのも、Azure 活用の魅力だと思います。」

西端 教授は最後に、「あの日、講習会の最後に質問をしていただけて、本当に良かった」と振り返ります。

「私たちは、奈良養護学校の先生にお声をかけていただいたからこそ、この研究に携わることができています。この事には、本当に感謝しています。私たち研究者には、夢があります。すべての子どもたちが楽しく学べる環境を整えるというのが私の夢です。この研究も、その重要な夢の一つです。
私の場合、夢を実現するために 25 年前から ICT と向き合い、サーバーの立ち上げなどを自分の手で行ってきた経緯がありますが、今回のクラウド移行では、昔のような苦労がなくなりました。サーバーが手元にありませんので、日々運用管理する手間も負担もありません。余計な肩の荷を降ろすことができて、非常にすっきりとした気持ちです。
今から同じ夢を追う研究者の方たちは、サーバー設定など面倒な作業を一気に飛び越えて、マシンラーニングなど先進的な機能を低コストに活用し、研究を加速することができます。これは、非常に素晴らしいことだと思います。クラウドがもたらした、非常に価値のある変化です。」

写真:西端 律子 氏

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ソリューション概要

プロファイル

畿央大学外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きます は、1946 年に開設された「奈良県認可冬木文化服装学院」を礎として発展。2003 年 4 月に健康科学部を開学して以来、11 年目を迎える新しい大学です。建学の精神として「徳をのばす」、「知をみがく」、「美をつくる」の3つの理念を掲げ、豊かな人間性を追究することを教育の最終目標であるとする考え方に立ち、教育活動に取り組んでいます。

導入メリット

  • サーバーの調達や運用保守の手間もなく、サイトを運用可能
  • 高度なセキュリティおよび、厳格なプライバシーポリシーにより、データの安全を担保
  • Machine Learning、Media Service などの機能により、リコメンド システムや動画配信を実現可能
  • マイクロソフトの「R&D クラウド助成プログラム」により、研究費用を支援

ユーザーコメント

「私たち研究者には夢があります。今から同じ夢を追う研究者の方たちは、サーバー設定など面倒な作業を一気に飛び越えて、マシンラーニングなど先進的な機能を低コストに活用し、研究を加速することができます。これは、非常に素晴らしいことだと思います。クラウドがもたらした、非常に価値のある変化です。」

畿央大学
大学院 教育学科研究科 教授
教育学部 現代教育学科 教授
博士(人間科学)
西端 律子 氏

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