投資を最適化するポートフォリオを管理、低コストのグループ管理など、いま企業に求められる機能が加わりました。
Office Project Standard を使ってプロジェクトの計画妥当性や進捗管理だけでなく、組織全体のリソース分析や計画精度評価などを実施できるしくみを構築しました。さらに、組織内のプロジェクトの遅延一覧や中期的な開発計画精度を見える化することにより、常に組織全体視点でプロジェクト管理できるようになっています。
このしくみにより、個別製品開発のプロジェクト管理レベルが向上したことに加え、企画工程を含めた組織全体の製品開発レベルが向上しました。
当社が開発している半導体の顧客からの要求は、品質、開発期間、コストすべてにおいて厳しくなり続けており、さらに、同業者との競合も厳しくなるばかりです。このような状況で、弊社は顧客と約束した計画どおりに商品やサンプルを提供するだけでなく、品質の面でも他社よりも優れたものにすることがビジネス成功のカギだと考えています。
特に、デジタル オーディオ アンプに代表されるアナログ半導体は、電圧破壊や電流集中の影響を設計やシミュレーションだけで抑えることは難しく、試作回数が増える傾向があります。また、顧客要求に応えるためには顧客ごとの固有要求に応える必要があり、開発モデル数は増加する一方です。したがって、本質的に試作が増えがちなアナログ半導体であるにもかかわらず、より多くの製品を、より短い期間で開発できるようになることが重要な課題となっていました。
さらに、顧客には製品サンプルを提供したうえで契約の可否を判断していただくことが多いのですが、サンプルとはいえ、品質を含めた完成度が契約を左右することになります。したがって、とにかく動くものを作るというのではなく、最初のサンプルの段階から商品に近い品質を作り込むことが競合他社に競り勝つために重要な要素になります。そのため、毎年、事業部の品質目標を立てその実施に取り組んでいますが、通常の製品開発活動の延長ではなかなか目標達成をすることができず、改革プロジェクトを起こし、集中して目標達成に向けて活動することを決めました。そして、この改革プロジェクトを始めた時の品質目標は、計画外試作を半減することと、リリース後の重要品質問題を半減することでした。
改革プロジェクトは、製品開発全体をスコープとして聖域を設けることなく、目標達成に向けて活動することを決めましたが、プロジェクトの推進者は品質保証部門としたのが特徴的だと思います。品質保証部門は開発部門を牽制する役割であり、開発部門と協力して製品開発のしくみに踏み込んだ改革を推進するというのは珍しいのではないでしょうか。たとえ、品質保証部門が改革の推進者となったとしても、開発部門とは乖離した活動に終始してしまい数々の規定やマニュアルなどの文書は棚に飾ったままになっているというというような話をよく聞きます。この改革プロジェクトでは、品質保証部門と開発部門とが良好な関係を構築、維持することにお互いが心を砕きながら活動を進め、顕著な成果を出すことができました。
また、今回の改革プロジェクトでは、企画部門も巻き込み、中期計画策定や企画承認などの企画工程の改善にも取り組みました。計画外試作や重要品質問題を削減するには、製品企画を適切なものにすることが必要になりますし、個別製品の企画や計画を適正化するためには中期計画との関係やその確度、精度が問題となってくるからです。
一方、開発部門の中に目を向けると、音源などのデジタル半導体やソフトウェア開発は、商品に一日の長もありプロジェクト マネジメント体制が整っていたのですが、アナログ半導体の方はどちらかというと職人肌のリーダーが多く、早急にプロジェクト マネジメント スキルを上げる必要がありました。このリーダーのスキルアップも改革プロジェクトのねらいの 1 つでした。プロジェクト マネジメントのしくみが整備できたことで、当初のリーダーのスキルアップだけでなく、新たなリーダーの成長を促すこともできました。
今回の改革プロジェクトは、計画外試作削減という計画精度および進捗管理レベルの向上、そして、重要品質問題削減という品質の向上という 2 つの目標に対して、開発部門、企画部門、品質保証部門という事業部全体で取り組み、成果を出すことが確認できました。今後は事業部の定常業務として、しくみの徹底とレベルアップに取り組みたいと考えています。
半導体事業部では長年、開発部門と品質保証部門とが共同で品質改善活動を実施していましたが、活動のマンネリ化や経営課題との関係が明確でないことなどからなかなか成果が出ない状態が続いていました。そのため、これまでの改善活動の延長ではなく、製品開発全体を総合的に見直す必要があると考えました。ただ、品質保証部門としてどこまでかかわることが妥当なのか、そして、製品開発の実務にまで踏み込むことができるのかなど、解決すべき課題は少なくはない状態でした。
このような状態でしたので、外部の専門家の視点や経験を導入してみてはどうかと考え、開発プロセスに関するしくみ構築ができるコンサルティング会社をいくつか検討しました。最終的には、以前に電子楽器事業部で実績のあったコンサルタントに依頼することにしました。当初はアジレント・テクノロジー株式会社でしたが、その後独立して株式会社 RDPi を設立されたコンサルタントです。
1 日の簡易アセスメントを受け、開発における問題とその解決方法についてのグランド プランを作成してもらったのですが、設計や評価などのいわゆる開発プロセスだけでなく、プロジェクト マネジメントや企画工程も改善対象にする提案でした。提案自体は妥当なものだと考えたのですが、改善を進めるための準備が十分ではなく、その時点で改革をスタートするとかえって混乱を生じるのではないかと考え、基本的な開発標準の整備やその実施など、まずは自分たちで改革のための準備を行いました。
また、品質保証部門が改革を推進することに対するコンセンサスをとる必要もありました。これは、製品品質を単に製品に欠陥があるとかないとかということだけでなく、企画品質、開発品質、製造品質など製品開発に関係するさまざまなプロセスの品質の集合としてとらえ、個々のプロセス品質を保証することが品質保証部門の役割だと考えたからです。こういった背景から、これまで以上に開発部門と協調して改善を進めたり、新たに企画部門などとも協調して推進していくための体制作りを行いました。
このように事業部内の準備やコンセンサスを整えたうえで、コンサルタントに入ってもらい改革プロジェクトを進めました。テーマは次の 5 つです:
テーマ 1、2 および 5 は、パイロット プロジェクトに対するプロセス改善活動が中心でしたが、テーマ 3 とテーマ 4 は、計画作成・評価と進捗管理のしくみを整備することが含まれており、コンサルタントから Office Project を使う提案がありました。プロジェクト マネジメント ツールとして導入、活用するのが目的なのではなく、最初に全体のしくみ設計があり、そのしくみの中でどのようにして Office Project を使うのかが明確になっている点が良かったと思います。
Office Project は個々のプロジェクトの進捗管理と開発グループの年度計画に使われています。システム構成は図 (システム構成) に示すとおりです。技術者は自分が納得しないとシステムを使ってくれませんから、段階的な導入ができること、導入に際しての負担や初期投資が小さいことが重要でした。そのため、Office Project Standard を開発グループごと、プロジェクトごとに使うことにしています。
技術者はリソース ファイルとして 1 つのプロジェクト ファイルで管理してリソースの共有を利用しています。計画妥当性の分析や進捗の分析などはしくみとして工夫を重ねていく部分であり、拡張性や柔軟性が必要だと考え、Office Project にアドイン ツール (RDPi Metrics Add-in) を組み込み、データをエクスポートして Microsoft Office Excel で分析しています。
たとえば、図 (進捗分析の例) に示すように進捗分析の 1 つにタスクの遅延状況の分布があります。このグラフでは、週ごとにその週に予定しているタスク数がありますが、「遅れている」「オンスケジュール」「将来のタスク」などのタスクの遅延状況ごとの分類が表示されています。これにより、現在遅れを生じているタスクの数や割合がわかるだけでなく、いつからの遅延でその数はいくつなのか、遅延はいつまで影響があるのかなどが簡単にわかるようになっています。
また、図 (進捗指標) は開発グループ内のプロジェクトの遅延状況を簡単な指標で把握、比較できるようにした例です。開発グループのマネジャーは簡単に個々のプロジェクトの遅延状況を定量的に把握することができ、メンバーの配置転換や計画の見直しなどの判断に活用しています。
オーディオ アナログ LSI は、高音質、高品位という捉えようの無いパラメータのうえで語られることの多い商品でした。何年か前までは「性能は作ってみなくてはわからない」という考え方が根本にあり、開発マネジメントは導入しにくいと言った考え方がありました。本改革プロジェクトにおいて、高音質、高品位という考え方を崩す事無く、開発確度を向上させる手法が議論され実行されてきました。
その中の 1 つが、開発スケジュール (タスク、リスク、課題、不具合) の見える化でした。マネジメント視点では、これまで外からは大枠でしか見えていなかったプロジェクト タスクの日程マージンが見えるようになったことで、遅れ対応のマネジメントが回っています。また、まさに職人技が必要となるいくつかの技術開発プロジェクトと、それにつながる商品開発プロジェクトの連携が明らかになり、クリティカル タスクのフォローが適切に行えるようになってきています。プロジェクト視点では、リスク管理、課題管理で必要と判断したタスクの実行が計画化され、Office Project 上で洩れなく実行確認され進捗管理が出来ています。マネジャーとしては、標準化されたスケジュール管理手法により、開発マネジメントがやりやすくなったと感じています。
また、Office Project を使用した年度計画の作成では、商品開発、技術開発の計画とリソース計画の整合をとっています。これを 4 半期ごとに繰り返すことによって、常に実情に合わせた今後 1 年間の計画が作成されます。作成された計画は、カスタム ツールでリソース分析し組織のパフォーマンスを計測します。この結果は、常に高い要求をしてくる企画戦略部門と合意形成における判断材料として使用されます。以上のような手法により、これまでの山と谷の出来ていたリソース マネジメントから抜け出す事ができたと感じています。
さらに、4 半期ごとに年度計画がどの程度変更されたかを定量的に分析することで計画精度の計測が行われ、精度向上のためのフィードバックが行われています。グループによりさまざまな事情があるので単純に比較することはできないものの、計画精度向上においては有効活用できる情報だと考えています。
現在のしくみはアナログ半導体を開発しているグループから運用してきましたが、今後は事業部のすべてのグループで同じ運用ができるように水平展開したいと考えています。 Office Project は以前から利用していた人もいたのですが、思い思いの利用方法だったため単純なスケジュール作成ツールとしてしか機能していなかったため、今ひとつ有効活用できていませんでした。今回、改革プロジェクトで新しいしくみを整備し、その中で Office Project を活用することで、スケジュールの作成や進捗の分析が標準化されて効率的に進めることができるようになりました。
また、標準化されたスケジュールや進捗の分析データが蓄積できるようになったので、グループごと、あるいは、製品カテゴリーごとのプロジェクト マネジメントの違いなどを定量化できると考えています。さらには、単に WBS テンプレートではなく、設計や評価などに予定しておくべき作業時間の基準値や、リスクや計画変更などの開発遅延との相関などさまざまな新しいしくみ構築に取り組みたいと考えています。(中村 直文 氏)
本ケーススタディに記載された情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
本ケーススタディは情報提供のみを目的としています。Microsoft は、明示的または暗示的を問わず、本書にいかなる保証も与えるものではありません。
ヤマハ株式会社
1887 年の創業以来、ヤマハ株式会社 (以下、ヤマハ) は「音・音楽」を中心とした楽器、AV 機器、半導体事業からリビング用品、金型・部品事業に至るまで幅広く事業展開をしています。ヤマハの事業はグローバルに拡大を続けており、世界の各地域で優れた品質の商品とサービスの開発、提供を行っています。
ヤマハにおける半導体事業は、自社の電子楽器の音源を内製化するための LSI の製造から始まりました。楽器用 LSI の開発を通して蓄積されたノウハウは、携帯電話用音源 LSI やアミューズメント機器用 LSI に生かされ、さらに最近では車載用 LSI やデジタル アンプなど、音にかかわる技術を中心としながらも、楽器にとどまらない分野での技術開発を推進し、ヤマハならではのユニークな市場展開を行っています。
「Office Project Standard を利用して製品開発の主要タスクを一元管理して、進捗管理を標準化することができました。さらに、進捗情報 (開発タスク、リスク対応、課題対応、不具合対応) の定量化、可視化を行ったことで誰もがそれぞれのプロジェクトの状況を把握しマネジメントできるようになっています。また、プロジェクト管理のしくみが整備された中で、開発リーダーが相互研鑽してマネジメント スキルを高めることで、さらに組織の実力アップにつなげたいと考えています」 (密岡 久仁彦 氏 談)