株主様、お客様、パートナー様、および従業員の皆様へ

世界大恐慌以来、最悪のビジネス環境をもたらした世界同時不況により、2009 年度は Microsoft Corporation にとって試練の年となりました。 しかし、当社の盤石な財務状況と慎重な投資計画、活発な製品開発、効率化への新たな取り組みが支えとなり、今回の経済環境の変化にも迅速かつ着実に対応することができました。 2009 年度は、今後の力強い成長への足がかりとなる製品開発および技術革新の主要分野において大きな前進を遂げた年でもありました。

今回の世界不況では、ほぼすべての業種において、全世界の企業が 2009 年度の財務状況について大きな影響を受けましたが、Microsoft もその例外ではありませんでした。 消費者や企業が支出を控えたことにより、PC の売上と企業の IT 投資が減少しました。 その結果、Microsoft では 2009 年度の年間収益が前年の 604 億ドルから 584 億ドルに減少し、設立以来初めて 3% のマイナス成長を記録しました。 営業利益は 9% 減の 204 億ドルでした。 1 株あたりの収益は 13% 減の 1.62 ドルまで低下しました。

厳しい経済状況の中でも、当社は実にさまざまな革新的ソフトウェアを投入してきました。 2009 年には、Microsoft® SQL Server 2008、Microsoft Internet Explorer® 8、最新の Web 検索テクノロジである Bing などの主力製品を発売しました。 Silverlight™ 2、Microsoft Business Productivity Online Suite、Microsoft Exchange Online、Microsoft SharePoint® Online によって、当社はソフトウェア+サービスとクラウド コンピューティングのリーダーとしての地歩を固めました。 企業向けの新製品および新バージョンとしては、Windows® Small Business Server 2008、Windows Essential Business Server 2008、Microsoft BizTalk® Server 2009 があります。 また、Microsoft Photosynth™、Microsoft Robotics Developer Studio 2008、Microsoft Amalga™ Life Sciences 2009 など、人間とデジタル テクノロジとのかかわり方を根本から変える先駆的な新製品も送り出しました。

2009 年度には、インタラクティブ オンライン ゲーム メーカーの BigPark、画期的なデータ ウェアハウス テクノロジ プロバイダである DATAllegro、エンタープライズ データの配信および同期を自動化するソフトウェアを開発する Zoomix など、多くの企業を対象として戦略的な買収を進めました。 オンライン検索に初めて自然言語処理を取り入れた Powerset と、比較購買テクノロジ分野のリーダーである Greenfield Online も取得しました。

厳しい経済情勢への力強い対応

今回の世界不況は、Microsoft に、そして業界全体に過酷な試練を与えるものでした。 しかし、それは同時に大きな可能性も生みだしました。

当社は、企業における生産性の向上とコストの削減を実現する高品質のさまざまな製品を低価格で提供しており、不況を乗り越えて市場を拡大するための態勢が整っています。 したがって、世界経済が回復し始めると共に、収益を伸ばす新たなチャンスを見いだすことができます。

また、従業員と経営幹部は、不況への対抗策として、現在および将来に向けた重要性の高い成長機会に集中的に取り組み、コスト削減とリソースの有効活用の可能性を見いだすことに重点を置きました。 その結果、支出については 2009 年度の計画と比べて 30 億ドルを超える節約を達成しました。2010 年度も引き続きコストの削減に取り組んでいきます。

2009 年度には、戦略的な人員削減により、コスト構造の大幅な改造も行いました。 最大 5,000 人の人員を削減することは非常に難しい決断でしたが、会社に最大の成果がもたらされるように人材を絞り込むことができ、正しい措置であったと考えています。 同時に、当社は今後も世界中から最高の人材を募り、採用していきます。

当社の盤石な財務状況は、2009 年度のほぼ全体を覆った金融危機を切り抜ける能力を形作る重要な要素の 1 つです。 当社では、良好な財務状況のおかげで、2009 年初めに 400 億ドルの自社株買い戻し計画を発表し、四半期配当を増額することができました。 また、2009 年度には、株式買い戻しと配当により、140 億ドル近くを株主様に返金しました。

さらに、2009 年度に景気が上向いてきたため、総額 37 億 5000 万ドルの社債を発行しました。 社債発行に伴い、当社は Standard & Poor’s から AAA の信用格付けを与えられ、この 10 年で Standard & Poor’s の最高評価を得た米国初の企業となりました。

これらの措置によって、Microsoft はより力強い企業になりました。効率性、敏捷性、競争力のいずれもが、景気後退が始まる前より高まっています。

技術革新への取り組みと過去に類のない卓越したリリース予定製品

不況の中にあっても、当社のビジネスに対する基本的な姿勢は変わっていません。 Microsoft の成長と成功を常に支えてきたのが技術革新です。 当社は、技術革新を推進する目的で、この業界のどの企業よりも多くの研究開発費を投じ、比類ないほど幅広く層の厚いエンジニアや科学者を擁しています。

厳しい経済状況にもかかわらず、当社は 2009 年度も研究開発に周到で長期的な投資を行う方針を変えていません。 年度中には、マサチューセッツ州ケンブリッジに Microsoft Research を新設し、ヨーロッパでは Search Technology Center を設立しました。 2009 年度の研究開発費は、およそ 10% 増の 90 億ドルに達します。

2009 年度には、長期投資への重点的な取り組みがいかにお客様や当社へ価値をもたらすかを示す事例が数多く見られます。 10 月には、クラウド コンピューティング用の新しいオペレーティング システム Windows Azure と、ストレージ、コンピューティング、およびネットワーキング インフラストラクチャ サービスの包括的なセットである Azure Services Platform のテクニカル プレビュー版を発表しました。 これらは、情報をクラウドに簡単かつ安全に保存して共有し、あらゆる場所からどのようなデバイスでもアクセスできるようにするアプリケーションを構築するための開発者向けテクノロジであり、Microsoft のソフトウェア+サービス戦略と今後の成功にとって鍵となるものです。

もう 1 つの事例として Bing があります。これは、より多くの情報に基づく迅速な決定を可能にするパワフルなツール セットを提供することにより、検索機能のイメージを塗り替えるものです。

さらに、Xbox 360® 用の “Project Natal” も発表しました。 この画期的なテクノロジは、特殊なセンサーとソフトウェアを使用して身体の動きを追跡し、顔を認識し、口頭での指示や、さらには声のトーンの変化にも応答します。

当社のアプローチの価値は、2009 年度中に重要な開発マイルストーンに到達し、2010 年度にリリースを予定している、過去に例のない革新的な製品群にも見ることができます。

来年には、Windows 7、Office 2010、Windows Azure、Windows Server® 2008 R2、Windows Mobile® 6.5、そして Silverlight 3.0 を発表します。 これらはいずれも当社と当社のパートナーおよびお客様にとって重要なリリースです。 特に、Windows 7 には大きな期待が寄せられています。 この当社主力のデスクトップ オペレーティング システムの新バージョンは、既に、メディア、業界アナリスト、そしてプレリリース版を試用した多数のお客様から好評を得ています。

将来の変化を推進する

2009 年度は、2010 年度にリリースする新世代のソフトウェア製品の開発を進めてきましたが、Microsoft Research、Live Labs、Office Labs などの Microsoft 研究グループの科学者やエンジニアは、絶えず次世代の先端テクノロジの開発へ向けた長期的な研究に勤しんでいます。

価値と利益をお客様やパートナーにもたらす大きな可能性を生みだし、しかも Microsoft の将来的な成長を促すと考えられる分野をいくつか紹介します。

  • クラウド コンピューティングとソフトウェア+サービス : デスクトップ ソフトウェアおよびサーバー ソフトウェアをインターネットという広大な空間と結び付ける機能は、当社のほとんどすべてのビジネスに大きな成長機会をもたらします。 当社では、自宅、職場、さまざまな移動中の状況で、まったく新しい魅力的な方法によって、ユーザーを情報、コミュニケーション、エンターテイメント、人間と結び付けるエンド ツー エンド エクスペリエンスの実現に力を入れています。
  • ナチュラル ユーザー インターフェイス : 今後数年のうちに、デバイス操作の手段として、タッチ、ジェスチャ、手書き、音声認識が当たり前のものになり、人間とテクノロジとのかかわり方が飛躍的に変化します。 テクノロジがより近づきやすく使いやすいものになることで、新たな市場を開拓し、新しい形のコンピューティング エクスペリエンスを提供するチャンスが生まれます。
  • 自然言語処理 : コンピュータの能力が向上すると共に、ユーザーの意図を過去の行動から推測し将来の要求を予測するソフトウェアを構築する能力も急速に向上しています。 それによって、簡単な自然言語入力に応答し、ユーザーの要求や好みを正確に反映できるように複雑なタスクをすばやく実行する知識と知能を備えた新世代のソフトウェアを開発することが可能になります。
  • 技術革新の新たなシナリオ : コンピュータやデバイスの性能とネットワークのユビキタス性の絶えざる進歩が、医療、環境維持、教育などの世界的な重要課題への対処の可能性を切り開く時代が到来しようとしています。 プログラミングの専門知識がなくてもモデリングとシミュレーションを迅速に実行できるソフトウェアは、科学研究のあり方を変容させ、金融サービスからエンジニアリング、航空宇宙、製造まで、幅広い分野に大きな影響をもたらします。

    今後数年のうちに、自宅、職場、移動中におけるデジタル テクノロジの利用方法が劇的に変化します。 デバイス間のユビキタス接続によって、データ、アプリケーション、ソーシャル ネットワークをいつでもどこからでも利用できるようになります。 リッチ クライアント生産性ツール、Web ベースのアプリケーション、統合コミュニケーション ソリューション、および統合ビジネス生産性サーバーおよびサービスは、生産性の飛躍的な向上への道を開きます。 新世代のエンタープライズ向けソフトウェアおよびサービスにより、IT 部門は、サービスや機能の管理と従業員および顧客への提供を自動化できるため、絶えず変化するビジネス要求に動的に対応できます。

地域社会と人材育成への投資

テクノロジの力を活用することにより、地域社会の繁栄に貢献し、世界中の人々の潜在能力を引き出すことができるという信念は、今後も Microsoft のビジネスの機動力となります。 Microsoft の最も重要な目標の 1 つは、コンピュータを日常的に利用する 10 億人の人々の向こう側までデジタル テクノロジの恩恵を拡大することです。

この目標を達成するためのプロジェクトとして、102 か国で 37,000 か所のテクノロジ トレーニング センターを運営するプログラムなどを実施する Unlimited Potential や、100 か国以上で 400 万人を超える教師と 9,000 万人を超える学生を対象としてテクノロジおよびテクノロジ トレーニングを提供する Partners in Learning があります。

また、学生と企業家を対象として開発ソフトウェアの特別バージョンも提供しています。 DreamSpark™ では、世界中の高校生および大学生が最先端のソフトウェアやインターネット開発テクノロジを無料で利用し、学ぶことができます。 2009 年度には、新興企業が前払い費用なしで Microsoft の開発ツールおよびサーバー製品をすばやく簡単に利用でき、企業の成功に役立つ特別なテクニカル サポートやマーケティング プログラムを提供する BizSpark™ を開始しました。

さらに、2009 年度には、不況の影響を受けた米国の労働者がテクノロジと情報によって動く経済において成功するために必要なスキルを身に付けられるようにする Elevate America プログラムも始動させました。

生産性向上の牽引役

厳しい経済情勢の下、2009 年度は Microsoft にとっても業界全体にとっても試練の年になりました。 しかし、Microsoft が本質的な価値と見なす慎重な財務方針、研究開発への長期的な取り組み、そしてテクノロジの力が人々の生活を向上させるという強い信念が当社の力になりました。

2010 年度も困難な経済情勢が続きそうですが、当社の可能性はむしろこれまでより拡大しています。 当社は、ソフトウェアやデジタル テクノロジの絶えざる進歩がもたらす生産性の向上が今後の世界経済の成長を牽引していくと確信しています。

Microsoft は、この流れをリードするには絶好の位置にあります。 当社は今後も、リリース予定のすばらしい製品群と、クラウド コンピューティング、ナチュラル ユーザー インターフェイス、サイエンティフィック コンピューティングなどの重要なテクノロジ分野への継続的な長期投資をとおして、人々の生活をより豊かで、生産性と創造性に富み、緊密に結び付けられたものにする革新テクノロジを送り出していきます。

このように世界中の人々が潜在能力を発揮できるようなテクノロジの可能性を追求できるのも、皆様のご支援のおかげです。

感謝いたします。

スティーブ バルマー
最高経営責任者 (CEO)