新たな事業の可能性を見出すきっかけに。Microsoft Meets Startups Vol.3 レポート
9 月 30 日に行われた「Microsoft Meets Startups Vol.3」。今回は 8 月に開催された「Microsoft Innovation Lab 2019」のフォローアップ イベントとして開催。
「Microsoft Innovation Lab」はスタートアップ経営者や VC ・アクセラレータ、さらに企業内で事業立ち上げに関わる人など、新たな事業の創出に携わるすべての人に向けた出会いのというコンセプトで 8/30 に開催されたイベントで、当日は多くのスタートアップ関係者の方々が来場いただきました。
「Microsoft Innovation Lab 2019」を振り返る
オープニング トークのスピーカーとして日本マイクロソフト・エバンジェリスト(業務執行役員)の西脇資哲が登壇し、「Microsoft Innovation Lab 2019」のふり返りを実施しました。
400 名以上の参加者が集ったこのイベントは、2 つのキーノートに 8 つのブレークアウトといった活発なセッション、さらに数十社からの応募を勝ち抜いたファイナリストの 5 社が参加したピッチコンテストなど盛況のうちに幕を閉じ、来場者の満足度は9割を超える結果を残したことを報告させて頂きました。
続いて、グローバルに支援を展開するスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」を紹介。
同プログラムは 14 を超える国・地域で展開されており、2 年間で 540 億円以上の投資を行っています。世界でこのプログラムに参加しているスタートアップは 1 万社を超え、日本国内でも約 300 社以参加し順調に成長をとげています。
「Microsoft for Startups」の具体的な内容としては、テクニカル リソースやクラウドの提供といった事業を支えるシステム支援だけでなく、マーケティングや営業担当としてもパートナーとなり、サポートを受けられるというものです。営業面に人的リソースを割きづらいスタートアップに対しての支援も行わせていただいています。
Microsoft Research で生まれた技術を新たな事業へ
西脇はマイクロソフトの研究機関である「Microsoft Research」についても紹介しています。「Microsoft Research」は 1991 年に設立された同社の研究機関で、AI をはじめとするコンピューター サイエンスの研究開発を行ってきましたが、その技術を活用して他分野の事業への貢献に取り組んでいます。
「Microsoft Research」ではドローンや自動車の自動運転シミュレーター「AirSim」、がん治療法の判定に役立てられる画像解析技術「InnerEye」など、数々のプロジェクトが進行中であり、マイクロソフトがこうした研究開発に大きな意義を見出し注力していることを強調しました。
例えば「AirSim」は、AI 技術を応用した自動制御技術を研究するプラットフォーム開発の一環で、“Microsoft Research” が中心となって開発を進めているオープンソースのシミュレーターです。ゲーム開発プラットフォームの「Unity」でも利用できるようになっており、「Unreal Engine」をベースとし、仮想空間でドローンや自動車の操作が可能になっています。
パネル ディスカッション「Go Big Go Global~日本のスタートアップが世界で活躍するために~」
【中島 徹】プロフィール
東芝の研究開発センターにて、無線通信の研究・無線 LAN の国際規格の標準化・半導体チップ開発業務に従事し、数十件の特許を取得。2009 年から産業革新機構に参画し、日米でロボティクス、IT、ソフトウェア系の投資を手掛ける。
2016 年には Mistletoe に参画し、Chief Investment Officer として 14 か国での投資活動を統括。2019 年に、15th Rock Ventures と Spirete Inc, を設立。日本や米国シリコンバレー、欧州などの有力な投資家・起業家とのネットワークを有する。
【田中井 将人】プロフィール
日本貿易振興機構(JETRO)入構後、海外70カ所以上にのぼる機構海外オフィスのITシステム・インフラ構築の企画・運営を行う。その後、三重貿易情報センター、南米コロンビアでの勤務を経て、2016 年 3 月より現職。250 社以上の日本発スタートアップ・ベンチャー企業のグローバル展開に携わり、CES、Web Summit、SLUSH 等の世界的カンファレンスにて日本政府パビリオンのプロデュースを行う。官民によるスタートアップ集中支援プログラム『J-Startup』の運営チームメンバー。
【森 亮】プロフィール
ハードウェア、ソフトウェア、AI など幅広いスキルをもつメンバーが国境を越えて集まるベンチャー企業「Rapyuta Robotics」執行役員。ロボティクス ソリューションの開発から運用までを加速させる、ロボティクス プラットフォーム「rapyuta.io」と物流分野向けのロボット ソリューションを提供することで、労働人口減少によって引き起こされる課題の解決に取り組む。
「日本国外に目を向けるときの課題は?」という問いについて、ファンドと支援者としての中島 様、田中井 様からは「海外だからこその “目利き力” が求められる」との言葉が出ました。「どのような企業・パートナーと結びつけるのが最適かを見極められることが、VC や政府関連機関の付加価値である」と話されています。
また、スタートアップ企業に対しては「グローバルを視野に入れること」のメリットにも言及しました。国内で同業他社とコンペティションになるよりも、海外へ目を向けたほうが可能性を広げやすいだろうと示唆しています。
田中井 様からは「日本のスタートアップは海外進出を検討するタイミングを早めたほうがよい」という意見も出されました。国内市場を制覇してから海外進出を考えるのではなく、最初からグローバルを視野に入れた戦略展開をすべきであると語っています。
続く「日本のスタートアップの現状は? 日本のスタートアップは世界でどのように見えているのか?」という問いには、日本のスタートアップの規模の小ささが指摘されました。アメリカや中国などの大きなマーケットがあるという要因も考えられるものの、日本国内のスタートアップ自体も時価総額としてはまだ小さく、強固な土壌がないために資金が集まりにくいという弱点も挙がっています。
「日本のスタートアップが世界で成功するために必要なものは?」というテーマでは、投資家視点である中島 様・スタートアップ当事者視点である森 様の両名から「気合と根性とやる気」であるという回答が出されました。中島 様の「なんとなく海外に進出するという気持ちでは成功はできない。絶対にこの事業で海外市場を獲るという気持ちの強さが必要だ」との意見に、森 様も同意を示しています。
また、参加者からの「CVCに期待するものは?」という問いに対して、「徐々に VC と CVC の垣根がなくなりつつあると感じる。 CVC の活躍を目にする機会も増えた」と、スタートアップへの資金提供にさらなる期待感をにじませました。
スタートアップ・ベンチャー 3 社によるライトニング トーク
その後、量子コンピューティングにまつわるアプリケーション開発やコンサルティングを行う「A*QUANTUM(エー・スター・クォンタム)」、クラウド ファンディング事業を展開する「READYFOR」、暗号資産取引を監視する「basset」の 3 社 によるライトニング トークを実施。各社からの熱のこもったピッチが届けられ、参加者は事業やサービスの紹介に熱心に耳を傾けていました。
多種多様なスタートアップに参加いただき、またグローバル展開を目指す企業への支援体制も整えている「Microsoft for Startups」。「Microsoft Meets Startups」は今後も定期的に開催を予定しており、ここでの出会いからさらに飛躍をとげるスタートアップが続々と現れることを期待しています。