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2023/03/27

カンパニー全体の業務効率向上を見据えたデジタル経営基盤の標準化へ。AGC 化学品カンパニー 関係会社の基幹システムを Dynamics 365 に刷新

AGC株式会社 化学品カンパニーは Microsoft Dynamics 365 によって国内関係会社の標準となる基幹システムを構築しました。老朽化したシステムを脱し、今後のデータ活用に向けた強力な基盤の構築は、いかにして成されたのでしょうか。

AGC

カンパニー全体の武器となるデジタル経営基盤として

時代の変化に合わせて独自の素材・ソリューションを提供し、いつも世界中の人々の暮らしを支える使命を掲げる AGCグループ。同社のコア事業のひとつである化学品事業は、ガラス製造に必要なソーダ灰を自給することから始まりました。現在は、多くの産業を支える高機能フッ素樹脂製品や、環境負荷を低減する素材として注目されるシリカ製品など、多様な製品を開発・製造・販売しています。化学品カンパニー配下のグループ会社はグローバルで 23 社、従業員数は約 8,900 名にも上ります (いずれも 2021 年 12 月末時点)。

AGC は「新規事業の探索」と「既存事業の深化」という、攻めと守りを両立させる「両利きの経営」で知られています。化学品カンパニーにおいても、この視点のもと、工場を中心にさまざまな DX 施策が進められてきました。

しかし、DX 推進の基盤となるべき基幹システムが会社ごとに異なっていたこともあり、カンパニー全体として大きな効果を上げるに至っていなかったのが実情でした。そこで、まずは「守りを固める」という観点から、統合化された基幹システムを活用した各社の業務・業務プロセスの標準化および効率化と、グループ全体の経営指標データ可視化を、早急に進める必要があったのです。

その最初の一歩として、2018 年に関係会社 3 社からスタートした基幹システム刷新プロジェクト。その背景について、AGC株式会社 情報システム部 グループITデリバリーセンター 日本・アジアブランチ ビジネス第2チーム マネージャー 亀山 恵祐 氏は、次のように説明します。

「きっかけは泥臭い話ですが、関係会社各社から『基幹システムが老朽化している』『新たな IT 人材の採用が難しい』という相談からでした」(亀山 氏)

当時の関係会社基幹システムは、オンプレミスで各社が異なるパッケージを独自でカスタマイズし長期間利用していたこともあり、複雑化するシステムを運用できる人材が限られる、いわゆる属人化が問題となっていました。

「もともと化学品カンパニー本社として、グループ全体で業務プロセスとデータを統合し、それらを経営指標として活用できるシステムを持ちたいという構想もあったので、この機会に、老朽化を迎えた 3 社の基幹システムをまとめて刷新することになったのです」(亀山 氏)

化学品カンパニー国内関係会社の新たな基幹システムとして AGC が採用したのは、マイクロソフトのクラウド型 ERP “Dynamics 365 Finance” および “Dynamics 365 Supply Chain Management” でした。

「1 社の要件だけを満たすシステムではなく、将来的にカンパニー全体の業務効率を向上させ、データを活用した意思決定の武器となるデジタル経営基盤にしたいと考えた場合、プロセス製造業への適合性や Office 製品との親和性、グローバルな展開やサポートの充実度という観点から、もっとも優れているソリューションは Dynamics 365 でした。既にパッケージ製品である "Dynamics AX" を導入している関係会社もあったため、Dynamics 365 には、グループ内でのデータの統一性という面でもメリットがありました」(亀山 氏)

Dynamics 365 の導入検討が進んでいたのは 2018 年。まだクラウドに対する評価が不確実だった時期です。基幹システムをオンプレミスで運用するための IT 人材獲得が難しくなっている、という状況ではあったものの、AGC はどのように決断していったのでしょうか? 亀山 氏ならびに、導入パートナーである横河ソリューションサービス株式会社 (YJP) ERPビジネス本部 コンサルティング部 ERPコンサルティングGr長 金子 美知子 氏は、このように答えます。

「AGCグループでは既にパブリック クラウドを使っていたこともあり、我々情報システム部門ではクラウドに対するアレルギーは少なかったものの、関係会社側はクラウドのトラブルで基幹システムが止まってしまい仕事ができなくなるのは困る、という不安の声はありました。その点、YJP 様はプロセス製造業向けに Dynamics 365 を導入していた実績が多数あり、日本的商習慣テンプレートによる実際原価計算の実現が可能であること、またクラウド ERP の可用性やセキュリティについて具体的なご提案をいただけたことから、導入のためのパートナーとして選びました」(亀山 氏)

「AGC 様からは、将来的にカンパニー全体の業務プロセスを標準化し効率的な経営をするため『単一のシステムを複数会社が共同利用できるようにしたい』というご相談をいただきました。そのため、各社固有のシステムにするのではなく、横展開を見据えた標準化の導入プロジェクトをご提案し、進めていきました」(金子 氏)

こうして、「単一システム・複数会社利用方式」での、Dynamics 365 による AGC 化学品カンパニー国内関係会社共通システムの構築がスタートしました。

横展開へのノウハウを蓄積する

要件定義、設計・開発、総合テスト、そして複数社に展開するための共通システム整備までプロジェクトが進み、いよいよユーザー テストとなった段階で待っていたのは、コロナ禍による緊急事態宣言の発令でした。

横河ソリューションサービス株式会社 ERPビジネス本部 プロジェクト部 部長 前田 達広 氏と、プロジェクト部 1Gr長 下川 辰之 氏は、困難への対応を、こう振り返ります。

「当時は誰しも先が見えない状況だったと思います。収束することを期待して『様子見』という判断もあり得たでしょう。そんな中で、勇気を持って前に進み、スケジュール通りに導入を完了できたことは、我々としても得がたい経験になりました」(前田 氏)

「これまでERP の導入は、お客様を含めたプロジェクト メンバーが対面形式で 1 つ 1 つのプロセスを進めていくのが当たり前だったので、代わりの手段として Microsoft Teams のリモート会議などを最大限活用し、より良い方法を模索しながらプロジェクト内外のコミュニケーションを進めていきました。その中で、たとえば要件定義のセッションや設計レビューなどは、リモートでも十分に対応できることを実感しました。一方で、ユーザー教育などは対面でないと非効率であることもわかり、1 回あたりの人数制限を設けたり、開催数や期間といったスケジュール面を工夫して対応しました」(下川 氏)

1 社目への導入という苦労を乗り越えた先は、スムーズに進めることができたと、亀山 氏は言います。

「最初は本当に大変で、特にマスタ体系に対する認識のすり合わせがなかなかできませんでした。2 社目からは、Dynamics 365 導入のノウハウを持てたこともあり、比較的スムーズに進められたと思います。導入した 3 社は取扱製品や業務プロセスはもちろん、理念や価値観などカルチャーもさまざまだったので、会社ごとに臨機応変に対応しなければならないですが、カンパニー全体の効果を考えた場合、ある程度は AGC 本社からトップダウンで統制する必要があります。そのあたりのバランスを調整しながら、最終的に、各社とも満足いくかたちで基幹システムを刷新することができました」(亀山 氏)

化学品カンパニーへの Dynamics 365 導入は3 社で終わりではなく、さらなる横展開を見越しています。そのため、導入プロジェクト自体が標準化を念頭に進められていきました。横河ソリューションサービス株式会社 ERPビジネス本部 ソリューション1部 1Gr 浅井 翔太 氏は、標準化の一環として携わった「原価計算」への対応についてこう説明します。

「私たち YJP は、化学品業界特有の商習慣や実際原価計算などに Dynamics 365 を対応させる『YOKOGAWA 日本的商習慣対応機能』をテンプレートとして用意しています。今回も AGC の経理ご担当者と綿密なすりあわせを実施し、『AGC 基準』の方針を定めることができました。こうした標準化は導入を円滑化するだけでなく、カンパニーとして同じ目線で会話できるメリットをもたらせたと思います」(浅井 氏)

クラウド化により高効率・高品質な管理を実現

Dynamics 365 には配合表管理など、プロセス製造業に適した機能を備えています。日々の業務として、受発注・入出庫管理、生産管理、品質管理、在庫管理、原価計算などがスムーズにできていることはもちろん、さらなる効果も生まれていると、亀山氏ならびに AGC株式会社 化学品カンパニー 企画管理室 情報システムグループ マネージャー 岡本 崇生 氏は評価します。

「Dynamics 365 のプロセス製造業向けの機能として『ロット トレース』が非常に便利です。出庫期限日の日付管理が細かくできるようになりましたし、在庫状態についても、検査中なのか工場からの横持ち中なのか、システム上ですぐに追えるようになりました。従来の Excel 管理では、お客様へ状況を回答するのに時間がかかってしまっていたので、助かっています」(亀山 氏)

「Office 製品との連携が強いのはやはり便利です。Excel ファイルとしてダウンロードできるのはもちろんですが、逆に Excel の表をそのまま Dynamics 365 にコピー & ペーストすることもできます。また、各社からは、『これまで課題だったアクセス制御ができるようになった』というよろこびの声が上がってきています。Dynamics 365 によってガバナンスを向上させることができました。そして 3 社とも Dynamics 365 を使うことで、自営サーバーのインフラ保守に頭を悩ませることもなくなっています」(岡本 氏)

さらに岡本氏は、クラウド ERP の利点についてこう続けます。

「定期的なアップデートにより、検討時には無かった機能が次々と Dynamics 365 に追加されており、どんどん使い勝手が良くなっています。これは予想外のメリットですね」(岡本 氏)

カンパニー全体の経営可視化を進めていく

Dynamics 365 のもとに標準化された基幹データを使って、今後は Power BI による可視化をしていきたいと岡本 氏は展望します。

「個社ごとに帳票をつくるのではなく、共通の視点で関係会社のデータを可視化していきたいと思っています。そのため、マイクロソフト ユニファイドサポートの協力も得ながら、Dynamics 365 のダッシュボードに Power BI を埋め込み、経営のさらなる見える化を進めていきます」(岡本 氏)

また、亀山 氏は、化学品カンパニーに対する Dynamics 365 の横展開を引き続き進めていくと言います。

「1 年に一度、国内関係会社の IT 担当者を集めた会議を実施しているのですが、その中でDynamics 365 の活用について発表したところ、『自社にも導入したい』という要望がありました。他のカンパニーからも注目されています。まずは化学品カンパニーの共通システムとして、しっかり整備していきたいと思います」(亀山 氏)

マイクロソフトは "Do more with less (より少ないリソースでより多くを)" というメッセージを掲げています。Dynamics 365 は、AGC が従来の基幹システムにかけていた保守・運用の労力を軽減し、データ活用につながる基盤をもたらすことができました。今後も AGC が進める「両利きの経営」の、1 つの武器となっていくことでしょう。

“1 社の要件だけを満たすシステムではなく、将来的にカンパニー全体の業務効率を向上させ、データを活用した意思決定の武器となるデジタル経営基盤にしたいと考えた場合、プロセス製造業への適合性や Office 製品との親和性、グローバルな展開やサポートの充実度という観点から、もっとも優れているソリューションは Dynamics 365 でした”

亀山 恵祐 氏, 情報システム部 グループITデリバリーセンター 日本・アジアブランチ ビジネス第2チーム マネージャー, AGC株式会社

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