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2024/06/10

グローバルで Red Hat Enterprise Linux を Azure に移行。セキュリティ強化と運用管理の効率化を図り、「One Fujitsu」の実現を加速

IT 企業から DX 企業への転換を果たすため、「One Fujitsu」を推進する富士通株式会社。この取り組みは、イノベーションを通じて社会に信頼を築き、持続可能な世界の実現を目指すことをパーパスとし、お客様とともにサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現にも取り組んでいます。グローバルで統一された業務システムの導入と業務プロセスの標準化を通じて、データドリブン経営を加速。社内システムを支えるインフラを統合する、グローバル共通のプラットフォーム「DXP Cloud」において、重要なポイントとなったのが Red Hat® Enterprise Linux® の移行でした。

Fujitsu

グローバル共通のプラットフォーム「DXP Cloud」により、グローバルでセキュリティレベルを統一し、ガバナンスを強化

データドリブン経営の実現では、経営から現場までデータに基づくリアルタイムなマネジメントが欠かせません。それを実現するためにはグローバルで統一した仕組みが必要です。社内システムを支えるプラットフォームについても、同様です。富士通は、Microsoft Azure を採用。グローバル次世代 IT クラウド基盤である DXP Cloud を構築し、プラットフォーム統合に取り組んでいます。

移行対象サーバーのオペレーティングシステム (既存の国内社内プラットフォームサービス) において、Red Hat® Enterprise Linux® (以降 RHEL) をはじめとする Linux 系が 40 % 以上を占めています。購買、販売、財務、生産管理など基幹システムが多く稼働している点が特徴です。この背景には、同社がお客様に提案・導入するうえで、社内実践で培ったノウハウや知見を生かしながら、国内のミッションクリティカル Linux 市場を切り開いてきた歴史があります。

DXP Cloud 構築の一環として、従来の課題とグローバルでオンプレミス環境に分散していた RHEL のインフラを統合する意義について、富士通株式会社 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター 舘林剛史氏は次のように語ります。「以前は、リージョンごとにセキュリティのレベルが異なりました。また、セキュリティ施策の実行に関してユーザーに依存していた部分もありました。これが、RHEL の Azure 移行による『グローバル共通のプラットフォーム』の実現により、オペレーションの標準化とセキュリティを確保したプラットフォームサービスの提供が可能になります。グローバルでセキュリティレベルを統一し、ガバナンスを強化することが目的です。運用の統一性という考え方は、RHEL に限らず DXP Cloud のコンセプトにも適用されます」

RHEL の移行先として Azure を選択した理由について、舘林氏は続けて語ります。「グローバル共通のプラットフォームの観点だけではなく、基幹システムの移行に必要な高可用性、高信頼性、ディザスタリカバリ (災害復旧) の条件を満たすこと。また Azure のサービスを利用することで、パッチ適用などの運用課題を解決できる点や、既存の基幹システムとの親和性が高く、クラウドリフト、クラウドシフトでの移行が容易である点も重視しました」

しかし、RHEL を Azure に移行するうえで、1 つだけクリアすべき課題が残っていました。それは、RHEL における特定マイナーリリースの延長更新サポート期間が 2 年間という短期間だったことです。

クラウドリフトからシフトへ 2 段階でオンプレミス環境に分散する RHEL を移行

クラウドにおいては経験や知見も十分ではなく、基幹システムのインフラのバージョンアップを短期間でおこなうことは大きなリスクを伴います。また、2 年に 1 回メジャーリリースへバージョンアップを実施した場合、バージョンアップに対する運用コストや管理負荷の増大が課題となります。

「課題が山積し、このままでは社内のオンプレミス環境に分散する RHEL をクラウドに移行できない、とマイクロソフトに相談したところ、新しい延長更新サポート (Enhanced Extended Update Support for Red Hat Enterprise Linux) の提案をいただき、RHEL のサポート期間が 2 年から 4 年に延長できることがわかりました。これを活用すれば、4 年に 1 度メジャーリリースへバージョンアップを実施しながらノウハウを蓄積し、クラウドで対応できるので非常にありがたい提案でした」と、富士通株式会社 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 マネージャー吉田 圭一 氏は、課題に即したマイクロソフトの提案を評価します。

同社の RHEL ベースのシステムは、OS 基盤、ミドルウェア、業務アプリケーションの 3 階層が基本となっています。 Azure への移行の第 1 段階としてサポート切れを迎える RHEL を対象にクラウドリフトを実施。その後、業務アプリケーション自体をモダナイゼーションしていくクラウドシフトのフェーズに入ります。

クラウドに移行し運用をスムーズにおこなうためには、設計段階が重要です。「当社の要件や条件を満たすために Azure のリソースやサービスをどのように構成していくか。実証済みのガイダンスとベスト プラクティスを集約した Azure 向けのクラウド導入フレームワーク (Microsoft Cloud Adoption Framework) をもとに、マイクロソフトからアセスメントやアドバイスを受けながら DXP Cloud の設計をおこないました。その結果として、スケーラビリティと柔軟性を確保しつつ、セキュリティとガバナンスを確立、信頼性の高いクラウド基盤を効率的に作り上げることができました。また、RHEL の 3 階層を移行するアプローチについてもマイクロソフトに相談しました」と富士通株式会社 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター 川田 祐司 氏は振り返ります。

ライセンス管理が不要、グローバルで統一したセキュリティを実現

こうして 2022 年 4 月から、Red Hat Enterprise Linux on Azure へのクラウドリフトが開始し、2024 年 3 月時点で約 400 を超える RHEL サーバーが Azure 上へクラウドリフトしています。

Azure を利用することで RHEL の運用が大きく変わりました。RHEL のパッチ適用は、Azure の更新プログラム管理機能 Azure Update Manager で自動的におこなわれます。「プラットフォームサービス提供部門が Azure Update Manager を使って規定のスケジュールを設定した状態でユーザーに提供します。業務特性に合わせて、ユーザー自身で希望のスケジュール設定もおこなえます。運用負荷の軽減と確実なパッチ適用の両方を実現できることにメリットを感じています」(吉田氏)

Azure を利用することで RHEL のライセンス管理も不要となりました。「オンプレミス環境では、Microsoft Excel や専用管理ツールを使ってライセンスを管理していましたが、Azure の従量課金プランには RHEL のライセンスも含まれるため、ライセンスを意識する必要がありません。また、これまではライセンスが年間契約のため不測の事態に備えバッファーを持たせて契約しており、余剰資産が発生する課題もありましたが、従量課金として利用する事でライセンスコストの最適化が図れます。これにより、既存の オンプレミス 運用に対して 40% 程度のコストが削減できています。さらに運用面では、毎年稟議をまわして契約する手間から解放され、時間の有効活用とともに心理的にも余裕が生まれたことを実感しています」(吉田氏)

DXP Cloud において、「ユーザーは使いたい時にボタンをクリックするだけ。マニュアルを読むことなく、すぐにサービスを利用できることを目指しています。」(舘林氏)

オペレーションの標準化とユーザーの利便性はトレードオフの関係です。同社では、そのバランスの調整を図っていると言います。「CPU やディスク容量などのスペックはあらかじめ設定してあります。ユーザーが設定するのは手間がかかりますし、Azure のノウハウも必要です。しかし、ユーザーごとに必要なリソースが異なるケースもあるので、基本的な設定をベースに、ユーザー自身でセキュリティが満足する範囲であれば設定を変更することもできます」(川田氏)

グローバルで統一したセキュテリィの実現は、目に見えない大きな効果をもたらします。新しいプラットフォームサービスでは、セキュリティの観点で望ましくない RHEL の設定変更はもとより、ランサムウェア対策に有効なバックアップなどを設定した状態でユーザーに提供されます。また、クラウド環境を保護する Microsoft Defender for Cloud により、ユーザー自身が Azure のダッシュボードで環境のいずれかの領域で脅威が検出されると、アラートが生成され PUSH 型で確認できるため、速やかな対処が可能となります。インシデントを未然に防ぐことから、リスク発生時の迅速な対応までを実現できるのです。

RHEL とAzureのサポートをマイクロソフトに一元化

同社は、RHEL のクラウドシフトに向けて動き出しています。吉田氏は「老朽化した業務システムをモダナイゼーションする次のステップでも、マイクロソフトにサポートしてもらっています。利用している Support for Mission Critical では、単純な技術課題の解決だけではなく、業務部門の要望や悩みなどについて、どう対処するべきか、相談にのってもらっており、とても心強く感じています。業務システムの移行は、業務部門がおこなうため Azure の PaaS (Platform as a Service) に関する教育プログラムの支援などもお願いしています」とマイクロソフトへの信頼を述べます。

今後、クラウドに対する業務部門の漠然とした不安を解消することが重要なポイントとなります。「地道に説明会を開催し、実際に Azure 上で動く RHEL に触れてもらう機会を増やしていきます。また、問題解決や改善の報告だけでなく、Azure のマネージドサービスにより、業務部門における運用の工数やコストを大幅に削減できる点など、より良くなることをアピールしたいと思います」(吉田氏)

RHEL と Azure について個々に問い合わせるのではなく、マイクロソフトにサポートを一元化できるメリットは大きいと舘林氏は話します。「クラウドで RHEL をどう生かしていくか。初期段階の設計、クラウドリフト、業務部門の支援、クラウドシフトなど各ステップで、マイクロソフトからトータルサポートの提供を受けることで、当社の“やりたいこと”を実現できていると思っています。今後も、マイクロソフトには当社の立場から先を見通したプロアクティブな提案を期待しています」

最後に、舘林氏はこう締めくくります。「現状、One Fujitsuプログラムについて、道半ばです。DXP Cloudについても、本格的な業務システムの移行・利用の本格化はこれからと考えています。利用者に安心してご利用いただけるよう、パブリッククラウドである Azure のメリットを最大限活用し、常に今後も最新技術に追従したプラットフォームサービスを提供し続けたいと思います。そして、これからも富士通自身を変革する One Fujitsu というミッション達成に取り組んでいきます。また、社内 RHEL システムのクラウド移行で培ったノウハウをお客様に還元し、国内企業の DX 加速に貢献していくことも重要なテーマです。富士通は、これからもクラウド時代の Linux 活用に向けて積極的に取り組み、新たな価値の創出に寄与していきます」

“クラウドで RHEL をどう生かしていくか。初期段階の設計、クラウドリフト、業務部門の支援、クラウドシフトなど各ステップで、マイクロソフトからトータルサポートの提供を受けることで、当社の“やりたいこと”を実現できていると思っています”

舘林 剛史 氏, Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター, 富士通株式会社

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