This is the Trace Id: 050043ce90c8e3eb875ab75f064f780a
2025/03/31

すかいらーくグループが生成 AI で新たな顧客体験を提供、Azure OpenAI Service を活用することで来店客とのていねいな会話を実現

ファミリー レストランやブッフェ レストランなどを運営するすかいらーくグループ。2020 年にデジタル メニュー ブック、2022 年にネコ型配膳ロボットを導入するなど、IT を活用した取り組みも積極的に推進しています。しかしこれらは店舗運営の効率や来店客の利便性を高めている一方で、来店客と店舗クルーの接点を減少させるという一面も。人にしかできない接客サービスの質を高めながら、生成 AI でも補完し、顧客体験を高めていくことを目指し「Co店長」プロジェクトがスタートしました。

Azure OpenAI Service などを活用したシステム構築を、2024 年 3 月に開始。デジタル メニュー ブックのタブレットで来店客と会話し商品をおすすめする「AI ロボ」と、来店客との会話などを要約して日報を自動生成する機能が実装されました。これを「ガスト」秋葉原駅前店に導入した実証実験が、2024 年 9 月に始まっています。

生成 AI に Azure OpenAI Service を採用したことで、来店客とのていねいで賢い会話が実現できました。来店客の中には AI ロボとの会話を楽しむために、リピーターになっている人もいます。また実店舗での生成 AI 活用は「新たな気付き」につながっており、店舗クルーからの活用提案も生まれています。その 1 つとして、厨房における店舗クルー支援に向けた開発も始まっています。

Skylark Group

新たな顧客接点によって顧客体験を高めるため、実店舗での生成 AI 活用へ

ファミリー レストランやブッフェ レストラン、洋菓子および洋惣菜専門店などを運営する、すかいらーくグループ。「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」をはじめとする 20 を超えるブランドで約 3,000 店舗を展開。日本国内だけではなく台湾、マレーシア、米国にも出店し、年間約 3.5 億人が利用しています。2020 年にデジタル メニュー ブック、2022 年にネコ型配膳ロボットを導入するなど、IT を活用した取り組みも積極的に推進。ここで今、さらなる挑戦が始まっています。

それは生成 AI を活用した、これまでになかった顧客接点の構築です。「ガスト」秋葉原駅前店に Azure OpenAI Service などで構成されたシステムを導入し、「Co店長」と呼ばれる実証実験プロジェクトを進めているのです。

「これまで店舗運営を効率化するため、IT を活用した情報連携を進めてきました」と語るのは、すかいらーくホールディングス マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループでディレクターを務める池田 裕 氏。しかしその結果、店舗運営の効率や来店客にとっての利便性は高まりましたが、来店客と店舗クルーとの接点は少なくなったと言います。「人にしかできない接客サービスの質を高めながら、生成 AI でも補完することでお客様体験を高めていこうというのが、Co店長の最大の目的です」。

その構想が始まったのは 2023 年 12 月。2024 年 3 月にシステム構築が開始され、9 月から「ガスト」秋葉原駅前店での実証実験が行われています。システム構成は図に示すとおり。店舗内のデジタル メニュー ブック用タブレットと、Azure の各種サービスを連携させています。

ここで Azure を採用した理由について「常に複数のものを比較して最もいいものを採用する、というのがすかいらーくの基本方針です」と池田 氏。生成 AI に関しては 3 種類のサービスが主流になっていると認識しており、その中でも Azure OpenAI Service は最も進化が速く、そのスピードは尋常ではないと指摘します。「既に ChatGPT も日常的に使っており、GPT-4o の登場でハルシネーションもかなり減っています。これなら実店舗で試す価値があると評価しました」。

池田 裕 氏, マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ ディレクター, 株式会社すかいらーくホールディングス

“これまで生成 AI 活用に対しては、ハルシネーションなどの漠然とした不安がありました。しかし実際に店舗で使ってみることで、きちんとコントロールできるという手応えを感じています。また当初はフロア接客での効果を目指していましたが、言語化が得意だという生成 AI の特性は、他のユースケースにも活かせます。実際に店舗クルーからも、新たな活用提案が出ています”

池田 裕 氏, マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ ディレクター, 株式会社すかいらーくホールディングス

日本語の微妙なニュアンスも汲み取った、ていねいで賢い会話をする「AI ロボ」

「Co店長」は大きく 2 つの機能を実装しています。1 つはデジタル メニューの画面を介して来店客と会話を行い、商品のおすすめなどを行う「AI ロボ」機能。もう 1 つは、来店客との会話などを要約して日報を自動生成する機能です。この 2 つの中でも特に注目したいのが「AI ロボ」です。

一般的な「ガスト」でデジタル メニュー ブックを開くと、「メニュー写真から選ぶ」「メニュー番号/クーポン番号から選ぶ」という 2 つの選択肢が表示されますが、秋葉原駅前店では「AI ロボとおはなしして商品を選ぶ」という選択肢が追加されています。これを選択することで、AI ロボと会話しながら商品を選べるようになっているのです。

AI ロボとの会話は、タブレットに装備されたソフトウェア キーボードでの入力か、音声入力で行うことが可能です。デジタル メニューは日本語/英語/中国語 (簡体字) /韓国語に対応していますが、生成 AI との会話は日本語か英語で行えます。Azure OpenAI Service を活用した AI ロボの会話内容や話し方について、すかいらーくホールディングス マーケティング本部 メニューシステムデザインチームでリーダーを務める藤本 祥恵 氏は、次のように語っています。

「店舗での提供前に会話の内容を継続的にチェックしてきましたが、Azure OpenAI Service は相手の話を理解する能力が他の生成 AI よりも高く、日本語の微妙なニュアンスも汲み取ってくれます。また話し方もていねいで、お客様に失礼のない会話をしてくれます。レストランの中で店員の代わりをしているのだという、自分自身の状況をしっかり理解しているようにすら感じられます」。

会話の情報源は、生成 AI モデル自体が学習済みの内容と、「ガスト」で提供しているメニューのマスター データを組み合わせています。メニューのマスター データは Azure Cosmos DB に格納し、これを Azure AI Search で検索することで、RAG を実現しているのです。

会話のログは毎日チェックし、必要に応じてプロンプトのチューニングを実施。「その結果、かなりのトークン数になりました」と言うのは、すかいらーくホールディングス マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループでソフトウェアアーキテクトを務める紅林 隆浩 氏です。現在はプロンプトの内容を整理し、よりシンプルな形にしつつあると言います。

藤本 祥恵 氏, マーケティング本部 メニューシステムデザインチーム リーダー, 株式会社すかいらーくホールディングス

“店舗での提供前に会話の内容を徹底的にチェックしましたが、Azure OpenAI Service は相手の話を理解する能力が他の生成 AI よりも高く、日本語の微妙なニュアンスも汲み取ってくれます。また話し方もていねいで、お客様に失礼のない会話をしてくれます。レストランの中で店員の代わりをしているのだという、自分自身の状況をしっかり理解しているようにすら感じられます”

藤本 祥恵 氏, マーケティング本部 メニューシステムデザインチーム リーダー, 株式会社すかいらーくホールディングス

AI ロボとの会話を楽しむためにリピーターになった来店客も

「Azure OpenAI Service はかなり賢く、商品をおすすめする際にも毎回 3 つの商品を提示するなど、かなり頑張っているという印象です」と紅林 氏。しかしそれ以上に興味深いのが、AI ロボとの会話を楽しんでいる来店客が少なくないことだと指摘します。

これは「AI ロボ」のキャラクター設定も、大きな貢献を果たしていると言えそうです。クリオネに似た形のロボットが「研修中」のバッジを付けて、アニメーションも交えながら会話をするようになっているのです。そのバックストーリーは、北極のクリオネが海の中で光るタブレットに吸い込まれ、インターネットの海の中を渡り歩いた末にガストで働くようになった、というものです。

「あまり奇抜ではなく、少しだけポンコツ感を出して、親しみやすくするようにしました」と語るのは、すかいらーくホールディングス マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ WEB・アプリ・ディレクションチームで UI/UX を担当する中崎 愛未 氏。そのため来店客から「どこから来たの?」「いつからいるの?」と聞かれたり、「面白い話をして」と言われることも少なくないのだと言います。

「AI ロボと話をするためにリピーターになってくださっているお客様もいらっしゃるようです。このようなお客様は AI ロボに『ありがとう』『また来るね』と話しかけてくださったり、ご自身のニックネームを教えて、お互いにニックネームで呼び合うこともあります。また AI ロボとクイズを楽しんだり、しりとりをするお客様もいらっしゃいます」。

来店客が不適切な内容を入力した時には、AI ロボが「そんなことを言わないでください」と返す一幕も。その際に来店客が「ごめんなさい」と謝ることもあると言います。来店客と AI ロボの間に心の交流が生まれるという、まるで SF 映画のようなことも起きているのです。

「AI ロボと気軽にお話していただければ、店舗に対するコメントもこれまで以上にいただけるようになるでしょう。また待っている間に会話できることは、お客様体験の向上にもつながると考えています」 (藤本 氏)。

中崎 愛未 氏, マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ WEB・アプリ・ディレクションチーム UIUXデザイナー, 株式会社すかいらーくホールディングス

“AI ロボと話をするためにリピーターになってくださっているお客様もいらっしゃるようです。このようなお客様は AI ロボに『ありがとう』『また来るね』と話しかけてくださったり、ご自身のニックネームを教えて、お互いにニックネームで呼び合うこともあります。また AI ロボとクイズを楽しんだり、しりとりをするお客様もいらっしゃいます”

中崎 愛未 氏, マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ WEB・アプリ・ディレクションチーム UIUXデザイナー, 株式会社すかいらーくホールディングス

店舗でも生まれている「新たな気付き」、これからも生成 AI 活用の可能性を追求

このように新たな顧客体験を実現しつつある AI ロボですが、「これが実際に顧客体験の向上に結びついているという結論を出すのは、現段階ではまだ早いと考えています」と池田 氏。その一方で、マーケティング本部や店舗クルーの中には、生成 AI に対する「新たな気付き」が生まれつつあると語ります。

「これまで生成 AI 活用に対しては、ハルシネーションなどの漠然とした不安がありました。しかし実際に店舗で使ってみることで、きちんとコントロールできるという手応えを感じています。また当初はフロア接客での効果を目指していましたが、言語化が得意だという生成 AI の特性は、他のユースケースにも活かせます。実際に店舗クルーからも、新たな活用提案が出ています」。

そのアイデアの 1 つが、厨房での活用です。メニュー改定の際には新たなレシピなどを覚える必要がありますが、その情報を生成 AI で提供できないか、というリクエストが出ているのです。これに対応するため、AI ロボ・キッチン バージョンの開発も、既に始まっています。

この他にも、さまざまな挑戦を進めていくことが視野に入っています。これについて紅林 氏は次のように語ります。

「会話のログをサマリーして日報を作成するしくみは実装していますが、その内容をより抽象化する、といった挑戦を始めつつあります。また一問一答型のチャットではなく、よりリアルタイムに会話ができればもっと面白くなると思います。Azure OpenAI Service は進化のスピードが速く、常に他社より一歩進んでいます。推論能力に長けた OpenAI o1 にも期待しています」。

もちろんこの実証実験の後は、対象店舗を拡大することも検討されています。生成 AI が今後どのような接客や店舗クルー支援を実現し、それによって店のあり方がどのように変化していくのか。これからも目が離せないと言えるでしょう。

紅林 隆浩 氏, マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ ソフトウェアアーキテクト, 株式会社すかいらーくホールディングス

“会話のログをサマリーして日報を作成するしくみは実装していますが、その内容をより抽象化する、といった挑戦を始めつつあります。また一問一答型のチャットではなく、よりリアルタイムに会話ができればもっと面白くなると思います。Azure OpenAI Service は進化のスピードが速く、常に他社より一歩進んでいます。推論能力に長けた OpenAI o1 にも期待しています”

紅林 隆浩 氏, マーケティング本部 IT統括 カスタマーDXグループ ソフトウェアアーキテクト, 株式会社すかいらーくホールディングス

次のステップに進みましょう

Microsoft でイノベーションを促進

カスタム ソリューションについて専門家にご相談ください

ソリューションのカスタマイズをお手伝いし、お客様独自のビジネス目標を達成するためのお役に立ちます。

実績あるソリューションで成果を追求

目標達成に貢献してきた実績豊かな製品とソリューションを、貴社の業績をいっそう追求するためにご活用ください。

Microsoft をフォロー