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2025/04/16

カプコンが Web サイトをオンプレミスから Azure Kubernetes Service へ移行、IaC も実現することで Web サイト立ち上げにおける属人性を排除

約 240 に上るゲーム コンテンツを世界中に供給すると共に、「ワンコンテンツ・マルチユース展開」も積極的に行っているカプコン。ゲームと連動した Web サイトも数多く運営しています。これらはハウジングされたオンプレミス システムで運用されていましたが、負荷変動が激しいため、ハードウェア コストがかさみやすいことと、インフラ運用の人材確保が困難という問題に直面。その解決に向け、クラウド化されることになりました。

移行先として選ばれたのが Azure です。その最大の理由は、既にコンテナ化されていたオンプレミスでの運用をそのまま移行できる豊富な機能を AKS が備えていたことでした。また、マイクロソフトと EA 契約を結んでいて、Azure 利用のために改めて社内手続きを行う必要がないことや、手厚いサポートが提供されていることなども採用の決め手に。EA 契約による割引もあるため、コスト面でも有利だと判断されました。

まず Microsoft Unified のサポートを利用し、定例ミーティングを週次で行いながら移行に伴う課題の洗い出し、移行先環境の実装方法などを検討。そのうえで Azure 上でのコンテナ環境が構築されています。さらに IaC も実現し、Web サイト立ち上げにおける属人性の排除も可能に。オンプレミス システムの運用管理から解放された分の労力を活用し、さらなる環境改善を目指しています。

Capcom

オンプレミスだった Web サイト、コスト増や人材不足で維持し続けることが困難に

ゲーム コンテンツなどのエンターテインメントを通じて、「遊文化」をクリエイトし続けている株式会社カプコン (以下、カプコン)。提供しているコンテンツの数は約 240 に上り、その供給先は 220 国/地域を超えています。その中には「ストリートファイター」や「バイオハザード」のように、海外で映画化されるほどに高い評価を受けたものもあります。ゲームから生まれた人気オリジナル コンテンツを、キャラクター グッズなどの近接事業に幅広く展開する「ワンコンテンツ・マルチユース展開」を積極的に行っていることも大きな特長。2024 年 3 月期の売上高は 1,524 億円を突破、経常利益は 600 億円近くに上り、高い利益率を保ちながら安定成長を続けています。

ここで今進められているのが、Web サイトのクラウド化です。このサイトの内容ついて、カプコン CS制作統括 プロダクション部 WEBプロダクション室 WEBインフラチームでチーム長を務める吉田 明敏 氏は、次のように説明します。

「カプコンの Web サイトは、カプコンのコーポレート サイトに加えて、ゲーム タイトルの発信やゲームと連動したコンテンツを提供するためにも活用されていますが、これまではハウジングされたオンプレミス サーバーで運用されていました」。

そのシステム構成について、2020 年ころまではファイアウォールとロードバランサーの下に複数の仮想マシンを並べた、昔ながらのものだったと吉田 氏。その後、2022 年にはコンテナ化が行われたと説明します。

「しかし、オンプレミス環境の維持は次第に難しくなっていきました。ゲーム関連の Web サイトはアクセスの増減が激しく、オンプレミスではピーク時に合わせて環境を構築しておく必要があり、コストが増大していたからです。たとえば、2024 年 11 月に実施された『モンスターハンターワイルズ』の第 1 回 β テストでは、一晩で数テラバイトのトラフィックが発生しました。また人気ゲームは 2 ~ 3 か月ごとにアップデートを実施していますが、『ストリートファイター6』のアップデートを行った際にはその変更内容リストにアクセスするユーザーが殺到し、コンテナがダウンしたこともあります」。

また運用に関しても、オンプレミス システムはインフラまでカバーする必要があり、そのための人材を確保することも難しくなっていました。実際に 20 代の技術者の中には、物理サーバーに触ったことがない人もいると言います。

このようなコストと人の問題を解決するために、2023 年 12 月にクラウド化に向けた検討を開始。ちょうどこのころに組織再編があり、Web サイト運用の人員が削減されたことも、クラウド化の検討に拍車をかける結果になったと振り返ります。

クラウド化に際して出てきた要件は、大きく 2 つありました。第 1 はスピーディに移行を開始できること。もう 1 つは、オンプレミスでのコンテナ運用をできる限りそのまま実現できることです。その結果、移行先として選ばれたのが、Azure だったのです。

吉田 明敏 氏, CS制作統括 プロダクション部 WEBプロダクション室 WEBインフラチーム チーム長, 株式会社カプコン

“オンプレミスのコンテナ環境では、運用管理簡素化のためにオープンソースの Rancher を使っていましたが、比較検討を行った他のクラウド コンテナサービスでは十分な機能が揃っておらず、運用方法をそのまま移行することは困難でした。これに対し Azure Kubernetes Service は機能が豊富に揃っていたため、そのまま移行できると判断しました”

吉田 明敏 氏, CS制作統括 プロダクション部 WEBプロダクション室 WEBインフラチーム チーム長, 株式会社カプコン

必要な機能が揃っていた AKS、Microsoft Unified の手厚い支援もスピーディな移行を後押し

「カプコンでは既に複数のハイパースケーラーを使っていたこともあり、移行先としては他のクラウド コンテナサービスも検討されました」と吉田 氏。そのうえで最終的に Azure を選択した理由について、以下のように説明します。

「オンプレミスのコンテナ環境では、運用管理簡素化のためにオープンソースの Rancher を使っていましたが、比較検討を行った他のクラウド コンテナサービスでは十分な機能が揃っておらず、運用方法をそのまま移行することは困難でした。これに対し Azure Kubernetes Service は機能が豊富に揃っていたため、そのまま移行できると判断しました」。

このような評価に加え、マイクロソフトと Microsoft Enterprise Agreement (EA) 契約を結んでいるため、改めて社内手続きを行うことなく Azure が利用できたことや、サポートの心配がないことも、採用を後押ししたと吉田 氏。さらに EA 契約の中での割引もあるため、コスト面でもメリットがあったと説明します。

もちろん、オートスケールが容易なことも重要な評価ポイントとなっています。「実は『バイオハザード』のデータ送受信のしくみは、別のチームが 4 年前から AKS で実装していました。この経験からアクセスが急増した際にも、ノードのスケーリングで問題なく乗り切れることがわかっていたのです。また今回の Web サイトのクラウド化検討では、Azure Load Testing を使った負荷テストも行っていますが、オンプレミスではコンテナがダウンしていたような大きめの負荷をかけても、まったく問題がないことを確認しています」 (吉田 氏)。

これらの検討結果に基づき、2024 年 1 月には Azure への移行を決定。社内調整を行ったうえで、2024 年 4 月から移行プロジェクトがスタートしています。ここでまず行われたのが、Microsoft Unified のサポートを活用した、移行における課題の洗い出しです。Microsoft Unified のエキスパートが出席する定例ミーティングを週次で行いながら、2024 年 8 月までかけて実施したのです。

「ここで、大項目レベルで 9 つの課題が明確になり、これと並行して実装方法の検討も進められていきました」と言うのは、吉田 氏と一緒に Web サイトの構築と運用を行っている、カプコン CS制作統括 プロダクション部 WEBプロダクション室 WEBインフラチームの坂口 諒 氏です。カプコン側には Azure に詳しいエンジニアが不足していましたが、手厚いサポートによって環境構築の目処をつけることができたと言います。

「私自身もオンプレミスでのKubernetes は運用していましたが、AKSの経験はまだなかったためサポートに頼ることにしました。Microsoft Unified のような相談先があるため、安心して検討を進めることができました」。

坂口 諒 氏, CS制作統括 プロダクション部 WEBプロダクション室 WEBインフラチーム, 株式会社カプコン

“仮想マシンを手作業で管理していたころは、新規サイトの立ち上げに約 2 か月かかっていました。コンテナ化されてからは 2 ~ 3 週間に短縮されましたが、ネットワーク機器の設定を Terraform で行えなかったため、手作業と目視での設定チェックが不可欠でした。Azure では事前調整も含めて 1 週間で完了します”

坂口 諒 氏, CS制作統括 プロダクション部 WEBプロダクション室 WEBインフラチーム, 株式会社カプコン

IaC も実現しサイト立ち上げを迅速化、デプロイはわずか 30 分で完了

2024 年 12 月には移行先の環境整備を完了。2025 年 1 月に移行対象となる Web サイトの優先順位を決め、2 月から移行が始まっています。

Azure 上に構築されたシステムの構成は図に示すとおり。オンプレミスで利用されていたファイアウォールやロードバランサーは Azure Application Gateway へと置き換わり、これを介して各サーバー機能を担うコンテナにアクセスするようになっています。コンテナの管理は AKS で行われており、モニタリングやその可視化は Azure Monitor と Azure Managed Grafana で行われています。

さらに、オープンソースのアラート ソリューションである Prometheus も、Azure Monitor managed service for Prometheus によってマネージド サービスとして利用しており、そのメトリックスも Azure Monitor のワーク スペースに格納されるようになっています。

ここで特に注目したいのが、オープンソースのインフラ自動構築ツールである「Terraform」によって、Infrastructure as Code (IaC) も実現されていることです。IaC で使用するコード (インフラ構成情報) は Visual Studio Code で作成しており、これを他社のDevSecOps のプラットフォームで管理。またコードの作成、変更や管理の省力化のため、生成 AI である GitHub Copilot も活用されています。IaC の効果について、坂口 氏は次のように語ります。

「仮想マシンを手作業で管理していたころは、新規サイトの立ち上げに約 2 か月かかっていました。コンテナ化されてからは 2 ~ 3 週間に短縮されましたが、ネットワーク機器の設定を Terraform で行えなかったため、手作業と目視での設定チェックが不可欠でした。Azure では事前調整も含めて 1 週間で完了します」。

「IaC によって Web サイトの立ち上げの属人性を排除できます」と吉田 氏。今後は GitHub Copilot のさらなる有効活用などを目的に GitHub への移行も検討しており、その際にはGitHub Actions の活用によって IaC のしくみを拡張していくことも考えていると言います。

さらに、今回の Web サイトの移行で培われた Azure の利用経験を、今後の生成 AI 活用に活かすことも視野に入れていると述べています。「たとえばサイトに掲載するテキストの翻訳などに、Azure 上で利用できる生成 AI が役立つはずです。カプコンのコンテンツは 16 言語に対応しており、今はローカライズ チームが翻訳を外注していますが、ここで生成 AI を活用すれば外注コストや発注の手間を削減できるはずです」 (吉田 氏)。

Web サイトのクラウド移行はまだ始まったばかりですが、今後は一部のサイトを除き、すべて Azure 上で動かしていくと吉田 氏。オンプレミス システムの運用管理から解放されたことによる労力をシステム運用環境のさらなる改善に利用していくことを目指しています。

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