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2025/04/30

太陽有限責任監査法人が Microsoft Azure 上で「コレポン ツール」を開発、資料授受やコミュケーションを円滑化、監査過程の可視化も実現

主に中堅上場企業を対象とした監査業務を手掛けている太陽有限責任監査法人。この仕事では「信頼を育むコミュニケーション」が重要であり、以前はクライアント先に出向いて監査を行っていました。しかしコロナ禍での完全リモート化を経て、現在ではリモートが半分を占めています。ここで大きな課題になったのが、円滑な資料のやり取りやコミュニケーションが難しくなったこと。これを解決するためにオンライン ストレージ サービスも試しましたが、監査法人に適したものは見つかりませんでした。

そこで開発したのが、資料の授受とコミュニケーションの機能を併せ持つ「コレポン ツール」です。資料は SharePoint Online に格納し、UI は Azure 上で稼働する Web アプリケーションとして実装、SharePoint へのアクセスは Microsoft Graph API で行っています。またユーザー管理は Microsoft Entra ID、クライアントの招待は Entra B2B Collaboration を活用しています。

コレポン ツールによって資料の安全かつ確実な授受と、資料を軸としたコミュニケーションの円滑化や可視化が可能になりました。また監査人とクライアントのどちらが「ボールを持っているか」も明確になり、関係者の精神的なストレスも軽減。これに伴い監査業務も効率化されています。さらに、監査の進捗をモニタリングできるようになったことで、監査品質の向上にもつながっています。

Grant Thornton

監査のリモート化で難しくなった円滑な資料の授受とコミュニケーション

「公共財の提供者であること」「監査の結果に責任を持つこと」「社会性・国際性を発揮すること」という 3 つの価値観を掲げ、主に中堅上場企業を対象とした監査業務を手掛けている太陽有限責任監査法人。上場企業の監査クライアント数は 345 社に上り、国内では第 4 位に位置付けられています。

「中堅企業の監査では、信頼を育むコミュニケーションがきわめて重要です」と語るのは、太陽有限責任監査法人 パートナー 公認会計士でデジタルイノベーション室 室長を務める有久 衛 氏。以前は、クライアント先で監査を行うケースがほぼ 100% だったと振り返ります。「しかし新型コロナウイルス感染症が広がったことで 100% リモートになり、資料の授受はファイルで、コミュニケーションはメールや電話で行うようになりました。現在でも監査の半分はリモートで行われています」。

ここで大きな問題になったのが、円滑なコミュニケーションが難しくなったことです。

「1 回の監査業務には数百から時に数千もの膨大なデータが必要になるうえ、これらに付随するやり取りも同じくらいの回数行う必要があります」と説明するのは、太陽有限責任監査法人 パートナー 公認会計士で業務推進室 室長を務める横山 雄一 氏。しかしメールでのやり取りでは時間がかかる上、質疑応答の進捗がどうなっているのかも、把握しにくくなっていたといいます。

これに加えてセキュリティの問題も懸念されました。そもそもメール添付でのファイルのやり取りには常に情報漏洩の危険性があり、その問題を解決するために考案された PPAP (パスワード付き ZIP ファイルを送信した後でパスワードを記載したメールを送信する方法) も安全ではないことが指摘され、2020 年 11 月には当時のデジタル改革担当大臣がその利用を止める方針を発表していたからです。

「PPAP を止めるためにオンラインストレージ サービスも試していましたが、監査法人に適したものはなかなかありません」と語るのは、太陽有限責任監査法人 パートナー公認会計士 デジタルイノベーション室の梶野 健 氏です。前述のように、監査業務では監査に必要な資料をやり取りできるだけではなく、それらの資料に関する質疑応答 (コミュニケーション) がどのように進んでいったのかも重要であり、その履歴管理を行うことも不可欠だからです。しかしそのような機能を持つオンライン ストレージサービスは、見つからなかったと振り返ります。

有久 衛 氏, パートナー 公認会計士 デジタルイノベーション室 室長, 太陽有限責任監査法人

“コレポン ツールによって、クライアントとのコミュニケーションを、資料を軸に可視化できるようになりました。また Web アプリケーション画面には『進捗』という項目があり、『どちら側がボールを持っているのか (どちら側が次のアクションを行うべきなのか)』がわかりやすくなっています。これによってクライアントと監査人の双方でストレスが軽減し、監査業務も効率化しています”

有久 衛 氏, パートナー 公認会計士 デジタルイノベーション室 室長, 太陽有限責任監査法人

「IT×デザイン」というコンセプトを掲げるマーベリックが参画し「コレポン ツール」の開発に着手

このような問題を解決するため、2021 年 1 月にはクライアントとの情報共有を行うしくみ作りに向けた検討に着手。当初はコンサルティング会社と協議しながら検討を進めていましたが、納得できる提案には至りませんでした。そこでいったんプロジェクトを中止し、2022 年 10 月に改めて再開。少なくとも「資料の授受」だけは実現しようと社内での試行錯誤を行い、そのうえで 2023 年 7 月に複数ベンダーに提案を依頼しましたが、ここでも納得のいく提案を得ることはできませんでした。

このような袋小路の中で一筋の光明となったのが、株式会社マーベリック (以下、マーベリック) の存在です。実は太陽有限責任監査法人ではこれと並行して「監査チーム向けデータ分析アプリのリデザイン」というプロジェクトが進められており、これを担当していたのがマーベリックだったのです。

「当社では 2021 年に監査上の分析表を自動生成する RPA アプリを開発し、データ分析などに活用していましたが、複雑な分析が要求される一部の分析フォーマットで視認性が悪くユーザビリティの問題を抱えていました。その悩みをマイクロソフトに相談し、2023 年 1 月にマーベリックを紹介されたのです。ここでマーベリックは Power BI を活用した、データ分析の UI 改善を行ってくれました。その実績を評価し、マーベリックならクライアントとの資料共有やコミュニケーションを円滑にできるシステムも実現できるのではないかと考えました」 (横山 氏)。

2023 年 9 月にはマーベリックが参画し、クライアントとの資料授受とコミュニケーションの基盤となる「コレポン ツール」の開発がスタート。「コレポン」とは監査人がクライアントとやり取りする、書類や報告書などを意味しています。

横山 雄一 氏, パートナー 公認会計士 業務推進室 室長, 太陽有限責任監査法人

“コレポン ツールが入口となり、その裏でデータが蓄積されるようになれば、既に構築しているアナリティクス システムと連携させることで、ワン ストップで分析できるようになるはずです。さらに生成 AI もコレポン ツール上で動かせるようになれば、AI エージェントが進捗に関する助言をしたり、監査人の悩みに答える、といったことも可能になるでしょう”

横山 雄一 氏, パートナー 公認会計士 業務推進室 室長, 太陽有限責任監査法人

独自の Web アプリで監査業務に最適な UI を実現、高いセキュリティも担保

コレポン ツールで実現すべきだと考えられた機能は大きく 3 つあります。第 1 はクライアントとの監査計画の共有、第 2 は資料提出の依頼や QA 管理、第 3 はセキュアなファイル管理です。またクライアントも利用するシステムであるため、ユーザー フレンドリーな UI であることも重視されました。これを実現するためにマーベリックが提案した内容について、同社で代表取締役を務める秋葉 卓也 氏は次のように語ります。

「コレポン ツールの要件をすべて満たすため、まず、基本的な機能はなるべくつくらずに『使う』というコンセプトで、資料の格納には SharePoint Online、データの管理・保護には Microsoft Purview など、マイクロソフトの SaaS やソリューションを採用することとしました。一方で UI については最適なものを『つくる』というのがもうひとつのコンセプトで、監査業務に最適化された Web アプリケーションでコレポンというサービス全体をラッピングするというイメージです」。

この Web アプリケーションは、Azure 上の Azure App Service 上で稼働。これと Microsoft 365 との間は閉域網で接続し、アプリケーションから Microsoft Graph API で SharePoint Online にアクセスします。またクライアントとのやり取りの内容は Azure SQL Database に保存。これらのデータは関連する資料を紐づけた形で管理されており、どの資料でどのようなやり取りが行われたのかを、時系列で把握できるようになっています。

セキュリティ機能の実装については、マーベリック 取締3役 COO/CTOの桑村 英樹 氏が次のように説明します。

「ユーザー管理は Microsoft Entra ID で行っており、クライアントの認証は Entra B2B Collaboration を活用。クライアントが既に Microsoft Entra ID のアカウントを持っている場合には自社テナントへのアクセスと同様に利用できます。また Microsoft Defender for Cloud と Microsoft Sentinel も活用し、強固なセキュリティを実現しています」。

梶野 健 氏, パートナー 公認会計士 デジタルイノベーション室, 太陽有限責任監査法人

“コレポン ツールによる監査業務の工数削減効果は、1 プロジェクトあたり平均で 8.28 人日となっています。当社の上場企業のクライアント数は約 350 社なので、その数をかけ合わせると最終的に 3,000 人日に上るという試算になります。これによって、監査業務の本質的な部分に注力できるため、より高品質な監査が可能になります”

梶野 健 氏, パートナー 公認会計士 デジタルイノベーション室, 太陽有限責任監査法人

安全で確実な資料授受と可視化されたコミュニケーションで監査品質を向上

2024 年 3 月には、クライアント 3 社とのトライアル利用を開始。2024 年 8 月には正式リリースし、その翌月には 90 社、12 月までに 188 社が参加しています。ただしこの間に決算期を迎えている企業は少なく、ほとんどの日本企業は 3 月決算に向けて監査を受けることが一般的であるため、2025 年 3 月までに一気に利用クライアントが増える可能性も高いと言えます。

その効果について、有久氏は次のように語ります。

「コレポン ツールによって、クライアントとのコミュニケーションを、資料を軸に可視化できるようになりました。また Web アプリケーション画面には『進捗』という項目があり、『どちら側がボールを持っているのか (どちら側が次のアクションを行うべきなのか)』がわかりやすくなっています。これによってクライアントと監査人の双方でストレスが軽減し、監査業務も効率化しています」。

それでは監査業務はどの程度効率化されたのでしょうか。これについては梶野 氏が次のように説明します。

「コレポン ツールによる監査業務の工数削減効果は、1 プロジェクトあたり平均で 8.28 人日となっています。当社の上場企業のクライアント数は約 350 社なので、その数をかけ合わせると最終的に 3,000 人日に上るという試算になります。これによって、監査業務の本質的な部分に注力できるため、より高品質な監査が可能になります」。

ただし重要なのはあくまでも「コミュニケーションの可視化」であり、工数削減はその副次的な効果だとも指摘。有久 氏と横山氏も「最も重視しているのは監査品質であり、その過程をしっかりモニタリングできることこそが、コレポンツールの真価です」と述べています。

秋葉 卓也 氏, 代表取締役, 株式会社マーベリック

“コレポン ツールの要件をすべて満たすため、まず、基本的な機能はなるべくつくらずに『使う』というコンセプトで、資料の格納には SharePoint Online、データの管理・保護には Microsoft Purview など、マイクロソフトの SaaS やソリューションを採用することとしました。一方で UI については最適なものを『つくる』というのがもうひとつのコンセプトで、監査業務に最適化された Web アプリケーションでコレポンというサービス全体をラッピングするというイメージです”

秋葉 卓也 氏, 代表取締役, 株式会社マーベリック

今後は生成 AI を組み込みさらに利便性を向上、海外への横展開も視野に

コレポン ツールの今後の展望について、横山 氏は次のように語ります。

「コレポン ツールが入口となり、その裏でデータが蓄積されるようになれば、既に構築しているアナリティクス システムと連携させることで、ワン ストップで分析できるようになるはずです。さらに生成 AI もコレポン ツール上で動かせるようになれば、AI エージェントが進捗に関する助言をしたり、監査人の悩みに答える、といったことも可能になるでしょう」。

太陽有限責任監査法人では、2023 年 7 月に Azure OpenAI Service を導入し、全スタッフがチャット ツールとして利用できるようになっています。また RAG によって社内ルールや業界情報データベースを生成 AI で利用する、といった取り組みも進んでいます。これをコレポン ツールに組み込めれば、さらに可能性が広がると期待されているのです。

その一方で、コレポン ツールを横展開することも視野に入っています。太陽有限責任監査法人には世界的に提携しているグラントソントンとのネットワークがあるため、海外のネットワーク ファームでの利用が検討されているのです。

「もちろんあくまでも人が中心であり、コレポン ツールなどによる DX は人間を支援するためのものです」と有久 氏。これを活用することで、人の価値や会計士の価値を最大化していきたいのだと言います。「そのためにこれからも、マイクロソフトと共に DX の幅を広げていきたいと考えています」。

桑村 英樹 氏, 取締役 COO/CTO, 株式会社マーベリック

“ユーザー管理は Microsoft Entra ID で行っており、クライアントの認証は Entra B2B Collaboration を活用。クライアントが既に Microsoft Entra ID のアカウントを持っている場合には自社テナントへのアクセスと同様に利用できます。また Microsoft Defender for Cloud と Microsoft Sentinel も活用し、強固なセキュリティを実現しています”

桑村 英樹 氏, 取締役 COO/CTO, 株式会社マーベリック

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