This is the Trace Id: 03ad444c612d15e02d9fcf0352fa5fae
2025/10/09

九電グループ Microsoft 365 Copilot を従業員約 1 万人に全社導入。現場と上層部間の風通しの良さで業務プロセスを変革

DX を推進し企業変革に取り組む九州電力。人や組織文化・風土を変革することで、生産性や働きがいの向上に取り組んできた。さらに進めるうえで、生成 AI は重要なテクノロジーとなる。現場の業務プロセス変革を実現するために、全従業員が業務で活用できる生成 AI が求められた。

九電グループは、従業員 1 万人を対象に Microsoft 365 Copilot を全社展開。現場活用に向け業務への活用ノウハウを学ぶワークショップを開催した。また、活用事例をコンテンツ化してプロンプト例も掲載。定期的に更新することで現場定着を支援。導入企業間のコミュニティでは課題共有や情報交換も活発に行われている。

活用事例を募集しコンペを実施した「Copilot チャレンジカップ」。全社規模で応募があり、業務に特化した事例も多かった。また 若手~管理職向けに活用例の情報発信をシリーズ化し、プロンプト例も掲載。さらにリバースメンタリング制度を利用し、経営層に対し若手従業員によるハンズオンを実施。現場と上層部間の風通しの良い組織体制により生成 AI を活用する文化が醸成されてきた。

Kyushu Electric Power Group

DX による企業変革に向けて Microsoft 365 Copilot を選択

九州の成長・発展とともに歩む九州電力。同社を取り巻く環境は大きく変化しています。脱炭素化、労働力人口減少、働き方の多様化など社会ニーズへの対応に加え、データセンターや半導体関連産業の集積が九州地域で進む中、電力安定供給の重要性が一層高まっています。

こうした事業環境の変化に対応しながら、生成 AI の活用を含む DX を全社的に推進してきた結果、経済産業省が東京証券取引所及び独立行政法人情報処理推進機構と共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」において、「DX注目企業2025」に電力会社として唯一選定されました。

さらに、九電グループは、2025 年 5 月に発表した「九電グループ経営ビジョン 2035」の中で、「2035 年のありたい姿」として「エネルギーから未来を拓く~九州とともに、そして世界へ~」を掲げました。エネルギー領域にとどまらず、多様なニーズに応える事業やサービスを生み出し、地域活性化、社会課題の解決に貢献していきます。

この「2035 年のありたい姿」実現に向けた重点戦略の 1 つが「企業変革をリードする DX 推進」です。九州電力は、DX の本質を「企業変革」と捉えています。その源流とも言えるのが 2019 年 6 月に策定した「九電グループ経営ビジョン 2030」 (目指す姿:九州から未来を創る九電グループ) のもとで進められた DX 戦略でした。「DX を推進し収益拡大、新規事業創出、業務基盤強化とともに、人や組織文化・風土を変革することで生産性や働きがいの向上に取り組んできました」と、九州電力 テクニカルソリューション統括本部 DX 推進本部 DX 戦略グループ 川口舞氏は話し、こう続けます。

「生成 AI の登場は、当社の DX 推進においても重要なテーマとなりました。『経営ビジョン 2030』実現の鍵を握るテクノロジーとして生成 AI 活用の取り組みに着手しました」

その一環として、全従業員が生成AIに触れることができる環境を早期に整備。「2023 年 11 月には、企業向け AI チャットサービス Microsoft Copilot (旧称 Bing Chat Enterprise) を導入するとともに、社内情報を活用する Microsoft 365 Copilot のPoC (概念実証) を開始しました」と、九州電力 テクニカルソリューション統括本部 情報通信本部 共通システム改革グループ 副長 竹本 誠氏は話し、 Microsoft 365 Copilot に着目した理由を述べます。

「現場の業務プロセス変革を実現するうえで、普段使っている Outlook や Excel などのオフィスアプリケーションや、社内で浸透している SharePoint Online や Teams を利用し生成 AI を活用できるという点はアドバンテージとなります」

川口 舞 氏, テクニカルソリューション統括本部DX 推進本部 DX 戦略グループ, 九州電力株式会社

“DX を推進し収益拡大、新規事業創出、業務基盤強化とともに、人や組織文化・風土を変革することで生産性や働きがいの向上に取り組んできました”

川口 舞 氏, テクニカルソリューション統括本部DX 推進本部 DX 戦略グループ, 九州電力株式会社

PoC で成果を確認、トップダウンとボトムアップの両輪で全社導入

同社の Microsoft 365 Copilot の PoC では、情報システム部門、業務部門、人事部門などから約 400 名が参加。4 カ月間にわたる PoC の成果について竹本氏は説明します。「1.打ち合わせ、2.チャットやメール対応、3.資料作成の 3 項目において最大 9.9% の時間削減が図れました」具体的には、Teams のオンライン会議の要約、メールの下書き作成、資料作成のアイデア出しなどの用途で多く利用されていたといいます。

2024 年 4 月、全社を対象に参加者数を 1,800 名に拡大し、第 2 フェーズの PoC を実施。実施期間は約 1 年間で、参加者募集は挙手制としました。竹本氏は「募集当初は 1,000 名程度の応募でしたが、クチコミで便利さが広がり、3 か月後には定員を上回る状況となりました」と語ります。さらに、「結果として、全組織で身近に 1 人は使える従業員がいる状態をつくれたと思います」と、社内への浸透効果を強調します。

このような急速な広がりの背景には、現場からの積極的な支援もありました。「各支店で発足した DX 推進チームが、社内で使えるツールとして Microsoft 365 Copilot の勉強会開催などを現場で後押ししてくれたことも、応募者急増につながったと思います」と川口氏は付け加えます。

PoC 第 2 フェーズでは、本格的な全社展開に向け、重要な 2 つの施策が実施されました。1 つ目は、2024 年冬におこなわれた「Copilot チャレンジカップ」です。Microsoft 365 Copilot を全社に普及するうえでポイントとなるのが、業務に特化した活用事例の共有です。そこで、社内での実践的な取り組み事例を集めるためにコンペを開催しました。社内放送や社内サイトでの PR に加え、入賞者に対するノベルティ配布などにより投稿への意欲を高めました。その結果、全社から 83 件の応募がありました。「投稿された内容は、どれも業務に特化した事例が多く、それぞれの職場で意欲的に取り組んでいることが肌で感じられました」と、川口氏は取り組みの成果を語ります。

「Copilot チャレンジカップ」優秀賞には、現場部門の事例も選出されました。佐賀水力センター 土木建築グループの「宿直業務における体制表素案の作成」は、従来人手でおこなっていた宿直体制表作成を、Microsoft 365 Copilot に条件を提示することで素案を作ってもらうというものです。

他にも選出された、土木建築部門の工事安全の取り込みとしての「ヒヤリハット事例集の作成と水平展開」では、Microsoft 365 Copilot を活用し、部門に蓄積されていた膨大なデータから危険要因・キーワードの要約を行い、工事の注意ポイントを事例集として整理したものです。このテーマについては、事例集の作成だけにとどまらず、SharePoint サイトで全社公開することで、現場従業員に速やかに情報を届ける仕組みを構築。この取り組みにより、現場の安全意識向上と情報共有のスピードが高まり、属人的だった知見の蓄積・展開が組織的に実行できることが期待できます。Copilot の活用が、業務効率化にとどまらず、現場力の底上げにつながることを示す好例です。

また、今回、Microsoft 365 Copilot が応募作品を評価し選出した「Copilot 賞」も設定。「“AI が選ぶ” というのは経営層からのアイデアで、Microsoft 365 Copilot の使い方を象徴する取り組みだと思います。受賞作は、各商品の情報を収集しまとめる『簡易ベンチマーク』でした」と、川口氏は同社における新たな取り組みを話します。

若手から経営層へ、デジタル変革を促すリバース メンタリング

全社展開に向けて重要施策の 2 つ目は、リバース メンタリング制度の活用です。この取り組みは、若手従業員がメンター(導き役)、経営層がメンティーとなり、最新のデジタル技術や若者の知識・価値観についてコミュニケーションを図るものです。昨年は、実施内容の充実化を目的に、マイクロソフトの協力のもとメンター向けワークショップを開催。メンターは、忙しい経営層が効果を実感できる、Outlook Copilotを利用した未読メールのサマリ確認や、スマートフォンの音声入力による、移動時における Copilot での情報収集といった Microsoft 365 Copilot 活用シーンを学びました。

その後、実際に若手従業員によるハンズオン形式でのレクチャーが経営層に対して実施され、Copilot の導入意義や価値を直接体感してもらう機会となりました。終了後、Microsoft 365 Copilot のライセンスが付与されていない経営層から「自分も使ってみたい」との声が寄せられるなど、経営層が生成 AI による業務効率化の手応えを実感したことは、本制度活用の具体的な成果となりました。

「Microsoft 365 Copilot の導入は、生成 AI を活用する企業文化への変革につながります。実現するためには、経営層の理解と共感が大切です」と大石氏は語り、今後についても言及します。「今回の取り組みは、そうした理解促進に寄与したものだと考えています。メンター・メンティー双方から高い評価を得ていることもあり、このようなワークショップなどの取組みは、今年も実施したいと考えています」(大石氏)

2024 年度の第 2 フェーズ PoC では、1.打ち合わせ、2.チャットやメール対応、3.資料作成の 3 項目において最大 13.2%の時間削減が図れました。第 1 フェーズ PoC よりも規模が大きくなったにも関わらず、より多くの成果を達成。全社展開を想定し、損益分岐点以上の効果が見込めることを試算できました。「結果が出たことに加え、さまざまな会議で経営層が『Microsoft 365 Copilot を活用していこう』というメッセージを出したことと、現場の機運を高めるさまざまな施策との両輪により、全社展開がスムーズに決まったと考えています。2024 年 7 月には、AI 活用における基本姿勢や理念を明確に示す『九電グループ AI 基本方針』も策定しました」(竹本氏)

大石 薫子 氏, テクニカルソリューション統括本部DX 推進本部 DX 戦略グループ, 九州電力株式会社

“Microsoft 365 Copilot の導入は、生成 AI を活用する企業文化への変革につながります。実現するためには、経営層の理解と共感が大切です”

大石 薫子 氏, テクニカルソリューション統括本部DX 推進本部 DX 戦略グループ, 九州電力株式会社

操作から実践、活用を促す社内コンテンツの工夫

Microsoft Copilot (旧称 Bing Chat Enterprise)の導入当初は、普及に向けて、生成 AI の基本的な操作方法を学べる初心者向けのオンラインワークショップを、1 回につき定員 200 名で計 10 回開催しました。「募集開始と同時に即満席となり、職場全体で視聴するために会議室を確保するなど、組織的な参加も見られました。現在、このワークショップはコンテンツ化され、グループ会社も閲覧可能な社内サイトで公開しているため、未受講者の自主学習の支援や、部署内での活用促進にもつながっています」 (川口氏)

一方で、これらのワークショップを通じて見えてきた課題もあります。ワークショップ後のアンケートでは、操作方法は理解できたが日常業務での活用イメージがわかないという声が数多くありました。このため、Microsoft 365 Copilot の普及にあたっては、単に操作方法を理解してもらうだけでなく、ユーザーに日常業務でどのように活用するのかというイメージを持ってもらうことが重要だと考えました。知識と現実を埋める PR ツールの 1 つが、同様に社内サイトで公開している「DX 推進本部社員の Copilot をフル活用した 1 日」という活用事例集です。内容について大石氏は説明します。

「作成当時、私は入社 3 年目でした。『1 日の業務でこういう使い方をしています』という具体例を中心に、DX 推進本部メンバーと話し合いながら作りました。役職によって活用シーンは異なることから、中堅社員編、管理職編、ベテラン社員編などシリーズ化しています。立場の近い DX 推進本部メンバーの体験をベースにすることで、Microsoft 365 Copilot の活用を自分ごととして捉えてもらいやすくなります。さらに、掲載しているプロンプト例はコピー&ペーストでそのまま使えるため、デジタルツールに苦手意識がある方でも、すぐに試してみることができます。また、これまで Copilot に触れたことがない従業員の方にも興味を持ってもらえるよう、デザインはポップで楽しい雰囲気を意識するなど、さまざまな工夫を散りばめました。このような社内サイトを活用した情報発信は、現在も定期的に実施しています。地道な取り組みながら、従業員から反響の声が寄せられる場面もあり、今後も継続して取り組んでいきたい、重要な施策の一つです」 (大石氏)

竹本 誠 氏, テクニカルソリューション統括本部 情報通信本部 共通システム改革グループ 副長, 九州電力株式会社

“結果が出たことに加え、さまざまな会議で経営層が『Microsoft 365 Copilot を活用していこう』というメッセージを出したことと、現場の機運を高めるさまざまな施策との両輪により、全社展開がスムーズに決まったと考えています”

竹本 誠 氏, テクニカルソリューション統括本部 情報通信本部 共通システム改革グループ 副長, 九州電力株式会社

従業員約 1 万人が利用、教育・文化・連携を軸に、Copilot活用を全社へ定着・加速

2025 年 5月、九州電力は、グループ会社含む従業員(約1 万人)を対象に Microsoft 365 Copilot を全社展開。

九電グループ従業員約 1 万人の利用拡大に向け、スキルや用途に応じた教育は重要なポイントとなります。初心者向けコンテンツとして、Microsoft 365 Copilot の使い方を説明する動画を全従業員に展開。またマイクロソフトの支援のもと、業務への活用ノウハウを学ぶワークショップを開催しました。「自分の業務を棚卸し、負荷の高いタスクに対し、どのようなプロンプトによって Microsoft 365 Copilot を活用すれば、業務を改善できるのか。マイクロソフトのサポートを受けながら体験型で学び、現場で使えるプロンプトを作成しました。営業所や配電事業所など、様々な現場の従業員からも参加があり、大変好評でした」 (大石氏)

Microsoft 365 Copilot の全社展開により生成 AI を活用する文化が根づいてきました。報告書を提出する際、Microsoft 365 Copilot のレビューを受けたかを確認する上司もいます。また、Microsoft 365 Copilot にアイデアを出してもらい、それに自分の考えを入れて練り上げていくという使い方をする従業員も増えていると感じています。「私も、Microsoft 365 Copilot にアンケート結果を読ませて『どんな施策が必要ですか』と問いかけることで、施策の方向性を探るヒントを得ています。ゼロから構想を練るよりも、初期案のたたき台があることで検討のスピードが上がり、業務の効率化に大きく寄与しています」(大石氏)

Microsoft 365 Copilot を他社はどのように活用しているのか。九州電力 DX 推進本部が有効活用しているのが、マイクロソフトが運営している、Microsoft 365 Copilot 導入企業の活用推進担当者が集うコミュニティです。大石氏は、その意義について語ります。「Microsoft 365 Copilot を社内で浸透させるにあたって、同じ悩みを抱える担当者同士で意見交換や情報共有ができることは非常に有益です。社内の推進施策を検討するにあたり、コミュニティで紹介された他社事例を参考にさせていただいていることも多くあります。また、推進担当者としてのモチベーション向上にもつながっています」

今後の展望として大石氏は話します。「Microsoft 365 Copilot の社内ブランディングに取り組んでいきたいと考えています。動画配信や利用者コミュニティの運用、Copilotグッズの配布などを通じて認知度向上を図っていきます。また、好評だった業務活用ノウハウを学ぶ体験型ワークショップの実施も検討中です。利用率を把握できる Copilot ダッシュボードなどを活用し、詳細データを可視化・分析することで、より効果的な施策を展開していきたいと思います」

こうした取り組みに加えて、専門業務を支援する Copilot エージェントに関して、全社での活用に向けた準備を進めています。

「今後 Copilot 活用のさらなる定着を進めるためには、部門横断的な情報検索や過去の文書資産の利活用促進が必要です。当社には膨大に量のデータがさまざまなファイル形式で保存されています。これらを活用するために、Copilot にはもっと多くのファイル形式のサポートしてもらえることを期待しています」(竹本氏)

「九電グループ経営ビジョン 2035」の実現では、生成 AI 活用による業務変革の加速が必要です。マイクロソフトは Microsoft 365 Copilot、Copilot エージェントの提供を通じて、九電グループと九州の成長・発展に貢献していきます。

さらに詳しい情報を見る

次のステップに進みましょう

Microsoft でイノベーションを促進

カスタム ソリューションについて専門家にご相談ください

ソリューションのカスタマイズをお手伝いし、お客様独自のビジネス目標を達成するためのお役に立ちます。

実績あるソリューションで成果を追求

目標達成に貢献してきた実績豊かな製品とソリューションを、貴社の業績をいっそう追求するためにご活用ください。

Microsoft をフォロー