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2025/11/25

日本のメディア業界を牽引する朝日新聞社。来るべきAI社会を見据えてMicrosoft 365 Copilot を全社規模で導入し、「AI Ready」の機運を醸成

情報化が進み、メディア業界が情報精度の担保や流通の仕組みの変化といった課題に直面するなか、朝日新聞社では早い段階から生成 AI の可能性に着目。社長自らの旗振りによって、「AI Ready」を合言葉にした生成 AI 活用プロジェクトを展開し、社員全員が生成 AI を業務利用できる環境づくりを進めている。

まず Azure OpenAI Service を使った社内専用の 生成 AI利用環境「AsahiAI (現AsahiAI Chat)」をリリース。さらに全社で利用している Microsoft 365 との親和性が高い Microsoft 365 Copilot を、4 ヶ月の検証期間を経て本格導入。ほぼ全ての部署にライセンスが割り当てられている。

多くの社員が生成 AI を活用。常時数百人ほどが利用しており、利用実績のあるユーザーは 9 割超。エバンジェリストの育成などを通してリテラシーも向上しており、生成 AI を活用した業務改革の機運が高まっている。Microsoft Copilot Studio による AI エージェント構築の検証も進められている。

Asahi Shimbun

強力なリーダーシップのもと、生成 AI 活用を推進する朝日新聞社

目覚ましい AI 技術の進化は、メディア業界にも強烈なインパクトをもたらしています。

日本を代表する大手新聞社のひとつで、報道・出版・デジタルメディアなどの事業を多角的に展開する朝日新聞社では、早くから AI の可能性に着目し、経営層の強いリーダーシップのもとで生成 AI の活用を進めています。

フェイクニュースや不確かな情報が蔓延する昨今、「訓練を受けた記者集団が粘り強く取材を重ね、事実に裏付けられた確かなニュースを届ける。その基盤を支えるのが新聞社の使命であり、私たちはその中核を担っているという確信を持っています」と、情報化社会における同社の存在意義を語るのは、朝日新聞社 代表取締役社長 CEO 角田 克氏です。一方で角田氏は、これまで通りのやり方では社会に取り残されてしまう危機感を口にします。

「ネット社会が急激に進行し、AI 社会へと移行しつつある現在、たとえ記者が丁寧な取材を重ねて事実を積み上げたとしても、流通しなければ社会に対して価値を生み出すことはできません」と角田氏。デジタル・ネイティブ世代が中心を担うこれからの時代においては、紙媒体のみに注力するのではなく、新たな手段や発想への「チャレンジの機運」を高めていくことがより一層重要になる、と力を込めて語ります。

同社はこれまでも、先端技術を研究する「メディア研究開発センター」の設立や「朝日新聞デジタル版」の配信など、デジタルの力を情報発信に活用する取り組みを進めてきました。当然ながら、世界に衝撃を与えた生成 AI についても、早い段階からその可能性に着目し、活用の道を模索し始めていたといいます。

「生成 AI が話題になり始めた当初は懐疑的な意見も多かったですが、識者の話を聞くうちに、“これはまさにインターネットの黎明期と同じ構造だ。この波に乗り遅れるわけにはいかない”という確信を持つに至りました」と角田氏は振り返ります。その認識は経営陣にも共有され、経営会議において AI を業務に積極活用する「AI Ready」の方針が確認されました。

「AI Ready とは、全社員が AI を活用できる環境を整える段階だと理解しています。私たちが目指すのはその先、AI 活用によって実際に成果を出す “AI Powered” とも呼べる状態です。できるだけ早く、そこに到達したいと思っています」そう語るのは、同社の技術部門を統括し、生成 AI 活用推進の舵取りを担う朝日新聞社 常務執行役員 技術・IT 担当の林 宏和氏です。

林氏によると、AI Ready の方針が示されたことで、技術部門を中心に社内の一部では AI 活用の機運が高まりを見せたといいます。しかし角田氏は、誰もがAIを活用できる環境を実現するためには限定的な盛り上がりでは不十分であり、全社的なムーブメントが不可欠だと考えていました。

「ものごとを一気に広めるためにはモメンタムが必要」と角田氏は決意し、2025年 4 月に自らがトップを務める「AI 委員会」を発足。以来、先頭に立って生成 AI 活用を強力に推進する姿勢を社内外に示し続けています。

「人の創造性を必要としない業務は、すべて生成 AI に任せるように」と、角田氏は全社に向けて号令をかけています。その対象は編集、記者、ビジネス、コーポレートなど、あらゆる部門におよびます。「企業として生き残るための危機感があると同時に、今後生成 AI を使いこなせない人材は、どの企業においても活躍できない時代が到来すると考えているからです」(角田氏)

角田 克 氏, 代表取締役社長 CEO, 株式会社朝日新聞社

“企業として生き残るための危機感があると同時に、今後生成 AI を使いこなせない人材は、どの企業においても活躍できない時代が到来すると考えているからです。”

角田 克 氏, 代表取締役社長 CEO, 株式会社朝日新聞社

Microsoft 365 Copilot の検証を実施、目覚ましい効果を得る

林氏のもとで生成 AI の導入と活用推進を担っているのが、コーポレート本部に設置された ICT 企画部の AI・DX 推進チームです。朝日新聞社 コーポレート本部 ICT企画部 部長 田代 孝介 氏にとっても、生成 AI の登場は衝撃的だったといいます。

「私たちは これまで RPA ツールやクラウド サービス、そして Microsoft 365 の導入といった施策を通じて DX を進めてきました。業務の自動化や社外対応の効率化など、7 〜 8 年前と比べて業務生産性は大きく向上したと思います。しかし、生成 AI を活用すればそれ以上の効果を得られると、大きな期待を抱きました」(田代氏)

田代氏らが生成 AI ツールの導入を検討し始めたのは、AI Ready 方針が定まる少し前のことでした。当時は社会的にも生成 AI に注目が集まり、社内からも生成 AI を業務利用したいという声が聞かれるようになっていました。そこで技術部門横断の構築チームを組成して、Azure OpenAI Service で構築された「AsahiAI(現 AsahiAI Chat)」をリリースし、データ要約やアイデアの壁打ちなどで生成 AI を利用できる環境を整えました。

「AsahiAI は、社員が会社の承認を得ずに生成 AI を業務利用してしまう“シャドー AI”を未然に防ぐことを主な目的としていました。当初はチャットだけの単機能だったこともあり、利用率はそれほど高くありませんでした」と田代氏。その状況に大きな変化が訪れたのが、Microsoft 365 Copilot (以下、Copilot)の登場でした。田代氏らは、すでに全社導入されていた Microsoft 365 に蓄積されたデータを Copilot で活用すれば、さらに大きな生産性向上が見込めると考えました。

「普段私たちが使っている Word や Microsoft Teams といった業務ツールに AI が搭載されるという話を聞いてワクワクしました。さまざまな活用シーンを想定できましたし、AI Ready の実現という観点からも、導入しないわけにはいかないだろうと考えました」(田代氏)

こうして、2024 年 8 月から約 4 ヶ 月間にわたる検証が行われることになりました。検証に参加したのは、コーポレート系部門を中心に各部門から推薦された300 名の社員でした。

「選定の基準は “Copilotを楽しんで使ってくれる人” でお願いしました」と語るのは、田代氏とともに Copilot の導入・推進プロジェクトをリードする朝日新聞社 コーポレート本部 ICT企画部 AI・DX推進担当部長の小高 ゆきえ氏です。

「参加者には、会議の議事録作成やメールの下書き、資料の要約といった日常業務で Copilot を積極的に活用してもらい、その効果を定量的・定性的の両面から検証しました。検証期間中は日本マイクロソフトさんと連携して勉強会を開くなどのサポート体制を敷きました」(小高氏)

検証の結果は目覚ましいものでした。参加者アンケートによると、平均で週 2 時間程度の工数削減を実現。なかには週 20 時間程度という大幅な業務削減に成功したケースも報告されました。

「もともと業務に積極的にデジタル技術を取り入れていた社員や、文書作成のような定型業務が多かった社員にとって、Copilot はうってつけのツールだったようです」と小高氏は分析。AI に対して感度の高い社員を選抜していたとはいえ、その効果の高さに驚いたといいます。林氏も「役員会でも説明しやすい結果が得られたので、ほっとしました」と胸をなでおろしたそうです。

田代 孝介 氏, クラウドサービス本部 クラウドソリューション二部 サービス開発室, 株式会社朝日新聞社

“普段私たちが使っている Word や Microsoft Teams といった業務ツールに AI が搭載されるという話を聞いてワクワクしました。さまざまな活用シーンを想定できましたし、AI Ready の実現という観点からも、導入しないわけにはいかないだろうと考えました。”

田代 孝介 氏, コーポレート本部 ICT企画部 部長, 株式会社朝日新聞社

全社規模のライセンス購入を後押しした日本マイクロソフトのサポートと新機能

検証の結果と、Microsoft 365 との親和性の高さ、階層化されたセキュリティモデルによる情報漏洩リスクの低さ、そして日本マイクロソフトからの伴走支援が後押しとなり、2025 年 5 月には一部を除くほぼすべての部署にライセンスが付与されることになりました。

「日本マイクロソフトさんには、検証中も勉強会のお手伝いや講演会を開催してエバンジェリストの方に登壇していただくなど、さまざまな支援をしていただきました。導入後も引き続き伴走支援を受けられるという安心感は、本格導入の大きな後押しになりました」小高氏

当初、本格導入は段階的に進める方針だったといいます。「広く展開するには社内でのナレッジが乏しく、“宝の持ち腐れ”となる可能性が高いと感じていました」(田代氏)

安易なライセンス拡大によって活用しきれない場面が増え、活用の機運がしぼんでしまうことを懸念していた ICT 企画部。そのような中で、ほぼ全社員に相当するライセンス購入への方針転換を決定づけたのが
Copilot に実装された「Researcher」機能と「Analyst」機能でした。

「なんて革命的なツールだろう、と感動しました。たとえばResearcher機能では、自然言語で問い合わせるだけで、こちらの意図を汲み取り、関連情報を収集・整理し、深掘りされた調査レポートを自動で構成してくれる。従来なら数時間かかっていた調査業務が、数分で完了する可能性すら感じました」と田代氏。

また、Analyst 機能についても使用した感想をつづけます。「Analyst 機能では、データを読み込ませるだけで、多角的な視点からの分析結果示唆あるアウトプットが返ってきます。この機能だけでも全社展開する価値があると感じました」

新聞社においてリサーチと分析は、常に時間をかけて綿密に行われる重要な業務です。取材の下調べを効率的に補助できる Copilot の新機能は、会社全体に大きなメリットをもたらすと評価されたのです。

小高 ゆきえ 氏, コーポレート本部 ICT企画部 AI・DX推進担当部長, 株式会社朝日新聞社

“Copilot の導入は、単なるツール利用に留まらず、社員の意識改革にもつながっています。自発的に学習を始める社員や、AI だけでなく “他の業務も IT 技術を使って効率化したい” と考える社員が増え、社内全体にデジタル マインドセットが醸成されつつあります。”

小高 ゆきえ 氏, コーポレート本部 ICT企画部 AI・DX推進担当部長, 株式会社朝日新聞社

「AI に全振り」のメッセージを受けて、着々と進む活用

本格導入と時を同じくして、AI 委員会の勉強会で角田氏から、「当社はこれから AI に“全振り”する」という社内に大きなインパクトをあたえる指針が示されました。

この指針について林氏は、「新聞業界は保守性が強く、既存の業務プロセスを変えることに抵抗を覚える社員も少なくありません。この “AI 全振り” という言葉は、私たち自身の意識を変えなければ、当社も私たち社員も生き残っていけないという社長からの強いメッセージとして捉えられたはずです」と振り返ります。

このメッセージは、ICT 企画部のメンバーの気持ちも奮い立たせました。

「あくまで個人的な感覚ですが、当社では、ここまで経営層がメッセージを強く発して、けん引する取り組みは珍しいケースではないかと思います。社長自らキャッチ アップした情報を発信し、役員が揃って研修会を受講する姿を見て、社内の AI 活用への熱量が高まる様子を日々実感しています」(田代氏)

ICT 企画部のメンバーは、その熱い気持ちを持って、定期的な研修や活用事例の共有、利活用事例やAIを利用した新規事業のアイデアを競い合う全社イベントの実施など、生成 AI の活用推進に力を注いでいます。AI 人材の育成も、重要な施策のひとつと小高氏は語ります。

「全社の AI 活用を推進する組織である“AI 利活用部会”と、部門の利活用をけん引する“AI エバンジェリスト”の育成に取り組んでいます。どちらも各部署から選出してもらった人材ですが、彼らを起点として、全社員が Copilot を当たり前に使いこなす文化を醸成していきたいと思っています」(小高氏)

小高氏によると、Copilot の本格導入から 5 ヶ月ほど経った時点で調査したところ、さまざまな活用事例が報告されたそうです。

「多くの社員が、議事録や会議の要約、メールの下書き、資料検索などで活用しています。評価が高いのは翻訳時の活用です。海外からのメールを翻訳する際などに利用されているようです。現在、常時数百人ほどが活用しており、利用実績のあるユーザーは 9 割を超えています」(小高氏)

なにより、ICT 企画部のメンバーが Copilot の利便性を享受しています。「ログ解析などをしたいときもデータを投げればすぐに回答してくれるので助かります」と田代氏。「それから、動画の要約は便利ですね。セミナーや社内説明会などの動画の内容を簡潔にまとめてくれるので、業務をかなり効率化できています」と笑顔で語ります。

小高氏も「同僚に悩み相談をするような感覚で、アジェンダや議論の切り口を相談しています。嫌がらずに何度でも相談に乗ってもらえるありがたい存在です」と、もはや Copilot は普段の業務に欠かせない様子。

「役員でも使いこなす人は増えているようです。私も、メールの文案を考えてもらったり、予定を一覧にまとめてもらったり、便利に使っています」(林氏)

角田 克 氏, 代表取締役社長 CEO, 株式会社朝日新聞社

“新聞業界は保守性が強く、既存の業務プロセスを変えることに抵抗を覚える社員も少なくありません。この“AI 全振り”という言葉は、私たち自身の意識を変えなければ、当社も私たち社員も生き残っていけないという社長からの強いメッセージとして捉えられたはずです。”

林 宏和 氏, 常務執行役員 技術・IT担当, 株式会社朝日新聞社

デジタル マインドセットが醸成され、次の目標に向けて視界は良好

現在同社では、ノーコード/ローコードで業務特化型のAIエージェントを構築できる開発基盤である Microsoft Copilot Studio による AI エージェント構築の検証も進めており、過去の業務資料から情報を抽出して回答する AI エージェント構築や、AI エージェント間での連携による業務自動化といったプロジェクトが進められています。

「目下の課題は、当社のデータの保管ルールが AI に適した設計になっていないという点です」と田代氏。長い歴史を誇る同社には膨大なデータが蓄積されていますが、統一された保管ルールがないため、検索性や再利用性に課題があるのが現状です。ただし状況は変わりつつあります。

「この課題は技術部門だけで解決できるものではありません。全部門の協力が不可欠で、その労力は決して小さくありません。しかし幸いなことに、生成 AI を積極的に活用しようとしている社員のなかにはこの課題に気づいた者も多く、文書保管方法や、情報構造の在り方を見直す機運が高まっています」(田代氏)

この傾向は小高氏も感じているそうで、「Copilot の導入は、単なるツール利用に留まらず、社員の意識改革にもつながっています。自発的に学習を始める社員や、AI だけでなく “他の業務も IT 技術を使って効率化したい” と考える社員が増え、社内全体にデジタル マインドセットが醸成されつつあります」と、生成 AI 活用のますますの進展に大きな期待を寄せています。

続けて田代氏は、今後の展開の一例として、編集部門での活用環境の整備をあげました。「編集部門ではセキュリティや精度を重視しながら、今後の導入に向けた評価を進めています。編集部門も生成 AI には強い関心を寄せていますので、ガバナンスを整えて、編集部門でも Copilot を活用できる環境を整えることは、これからの大きな目標です」(田代氏)

本プロジェクトを総括して林氏は、「Copilot の導入は、当社にとって DX の新しいスタート」と気を引き締めます。「これからの DX は、単に業務を効率化するだけではなく、新聞社として社会にどう貢献できるかが焦点となります。これまで暗黙知の領域にあった情報や知識を社内外で循環させて、持続可能な社会を支える役割も意識しなければなりません。そのために AI の力は欠かせないものだと思います」(林氏)

最後に角田氏から、改めて日本マイクロソフトへの期待の言葉が寄せられました。「いまや、AI に限っても新しいニュースが日に何本ももたらされる時代です。日本マイクロソフトさんに期待したいのは、私たちの技術部門と密に連携して、世界的な知見をいち早く伝えていただくこと。それから、いかに世の中に溢れる真偽不明の情報のなかから価値のある情報を選別して流通させるか。その手法を、ぜひ私たちと一緒に考えていただきたいと思っています」(角田氏)

角田 克 氏, 代表取締役社長 CEO, 株式会社朝日新聞社

“いまや、AI に限っても新しいニュースが日に何本ももたらされる時代です。日本マイクロソフトさんに期待したいのは、私たちの技術部門と密に連携して、世界的な知見をいち早く伝えていただくこと。それから、いかに世の中に溢れる真偽不明の情報のなかから価値のある情報を選別して流通させるか。その手法を、ぜひ私たちと一緒に考えていただきたいと思っています。”

角田 克 氏, 代表取締役社長 CEO, 株式会社朝日新聞社

約 150 年の長きにわたって常に民主的な目線で世界を見つめ、真摯な取材に裏付けられた情報の発信によって社会に貢献する朝日新聞社。私たち日本マイクロソフトも皆さまの思いに応えるべく、皆さまと目線を揃え、持続可能な世界を目指して伴走を続けてまいりたいと思います。

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