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2024/12/03

英作文を生成 AI で添削する「英作文1000本ノック」を Azure OpenAI Service で実現したナガセ、生徒から高く評価され NPS は 50 に

「インプット中心」から「アウトプット重視」へと大きくシフトしつつある高校の英語教育。アウトプット力を高めていくには英作文を数多く経験する必要がありますが、その添削を人手で行うには時間がかかり、十分な機会を提供することができませんでした。2022 年 11 月にChatGPT が登場し、この問題の解決手段として着目。2023 年 3 月に GPT-4 の登場により、十分な精度が実現できると評価されました。

「英作文1000本ノック」の開発で大きな課題となったのが、10 万人規模の生徒が同時に利用した場合でも、安定的かつ高速なレスポンスを確保することでした。この課題を解決するため、生成 AI として Azure OpenAI Service を採用。全世界約 10 リージョンの Azure OpenAI Service を組み合わせて負荷分散を行うことで、ピーク時でも平均 20 秒という、きわめて短い添削時間の実現に成功しました。

スピーディな添削に加えて、ナガセが長年蓄積してきたノウハウを生かした添削内容や、シンプルでわかりやすい画面構成によって、利用した生徒からは高い評価を受けています。トライアルの段階からアンケート調査を実施していますが、9 割が「継続して使いたい」と回答。「親しい人に薦めたいか」という質問に対しては、7 割の生徒が 0 ~ 10 の 11 段階のうち 9 以上と回答。 推奨者 (9 以上) の割合から批判者 (6 以下) の割合を引いて計算される NPS (Net Promoter Score) も、50 ときわめて高くなっています。今後は同様のサービスを他の科目でも提供していく計画です。

Nagase Corporation

アウトプット重視」の英語教育のために「英作文 1000本ノック」を開発

1971年に「ナガセ進学教室」としてスタートし、現在は高校生のための予備校「東進ハイスクール」や、「四谷大塚」「早稲田塾」などの学習塾、社会人向けの「東進ビジネススクール」など、教育に関する幅広い事業を展開している株式会社ナガセ (以下、ナガセ)。「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」を企業理念に、イノベーションを牽引する人財の育成を積極的に推進しています。その一方で、自社でも AI技術を活用することで、先進的なコンテンツやサービスを開発、リリース。教育業界ではトップクラスの AI活用実績を誇っています。

1990年代から ITを活用し、全国どこからでも受講できる映像授業を行ってきました」と語るのは、ナガセ執行役員 AI教育開発部長の山野高将氏。2017年には「志望校別単元ジャンル演習」を提供しており、このころから AIの活用が活発化していったと振り返ります。

「これは各生徒の模試などの結果や志望校の過去問などを集約かつ分析し、その生徒の得意、不得意な単元と志望校で出される問題とのギャップを明確化したうえで、それを埋めるために必要な演習セットを AIが提示するというものです。これにより、志望校への合格率を効率的に高めています」。

このような AI活用の一環としてナガセが新たに提供を開始したのが、「英作文1000本ノック」です。これは提示された英作文の問題に対し、生徒が作成した英文生成 AI自動的に添削を行うというもの。その背景について、山野氏は次のように説明します。

「生成 AIを活用した『英作文1000本ノック』を開発することになった背景には、高校における英語教育の変化があります。『インプット中心』から『アウトプット重視』へとシフトし、大学入試のあり方も変わりつつあるのです。共通テストは既に変化しており、マークシート方式であることは変わりませんが、より実践的な内容になっています」。

生成 AI を活用した『英作文1000本ノック』を開発することになった背景には、高校における英語教育の変化があります。『インプット中心』から『アウトプット重視』へとシフトし、大学入試のあり方も変わりつつあるのです

山野 高将 氏, 執行役員 AI教育開発部長, 株式会社ナガセ

GPT-4を安定的かつ高速に使うため Azure OpenAI Serviceを採用

アウトプット重視の教育を実践するには、生徒により多くの英作文を体験してもらう必要があります。しかしその添削は、決して簡単なものではありません。ナガセでも現在専任の添削員がチーム体制で英作文添削を手掛けていますが、生徒に返却するまで、4程度はかかっているのです。

「このような状況もあり、英作文は高校 3年生の途中からしか行うことができず、トレーニングの頻度も限られていました」と言うのは、ナガセ AI教育開発部上級部長で、「英作文1000本ノック」の企画を担当する義川達人氏。そもそも高校 1 2年では回答のレベルがまだ低すぎるため、人が添削することすら困難なのだと言います。

この悩みに一石を投じることになったのが、2022 11月の ChatGPT の登場でした。

「実際に使ってみて、これまでできなかったことを実現できそうだという、大きな可能性を感じました」と語るのは、ナガセ AI教育開発部上級部長で「英作文1000本ノック」の企画とシステム開発を担当する田村隆哉氏。「英作文の添削を生成 AIで行う」というアイデアも、この段階で生まれたのだと振り返ります。「さらに 2023 3月には GPT-4が登場し、これなら精度も十分だと判断。この時点で開発に着手しています」。

GPT-4の能力を高く評価していたため、GPT-4の採用は当初から決まっていたと田村氏。ここで大きな課題となったのが、10万人規模の生徒に対して安定的かつ高速なレスポンスを実現するには、どうすればいいかということでした。

1分あたりのリクエスト処理能力などを調査したうえで、最終的に Azure OpenAI Serviceの採用を決めました。Azure OpenAI Service 99.9%の可用性が保証されており、セキュリティも問題ありません」 (田村)

また大規模なアクセスが発生した場合でも問題なく処理できるよう、システム構成も工夫されています。全世界約 10リージョンの Azure OpenAI Serviceを組み合わせ、負荷分散を行っているのです。

1 分あたりのリクエスト処理能力などを調査したうえで、最終的に Azure OpenAI Service の採用を決めました。Azure OpenAI Service は 99.9% の可用性が保証されており、セキュリティも問題ありません

田村 隆哉 氏, AI教育開発部 上級部長, 株式会社ナガセ

生徒の 9割が「継続して使いたい」、NPS50ときわめて高い結果に

開発着手からわずか半年後の 2023 9月には、東進ハイスクールの 2校舎に限定したトライアルを実施。約 2か月間使用し、多くの生徒から「良かった」という評価を受けています。2024 1月には、ナガセのフランチャイズも含め、希望者を対象にした無償トライアルを実施。さらに同じ時期に、能登半島地震で被害を受けた地域への支援として、北陸での無償提供も行われています。

2024 4月には製品版を正式リリース。主にナガセグループ内で展開されていますが、希望があれば高校への提供も行っています。その一例が三重県津東高校で行われた、夏休み 100分補習での利用です。この授業にはNHKや日本教育新聞のメディア関係者の取材も入り、全国的に大きな注目を集めました。

ここで「英作文1000本ノック」の概要を簡単に説明しておきましょう。出される問題は、基礎/大学受験基礎/標準/難関/最難関の 5つのレベルに分かれており、それぞれ 200問ずつ用意されています。生徒がレベルを選択すると問題が提示され、これに対して回答 (英作文)を入力すると生成 AIが添削を行い、A/B/C/D/E5段階で判定を行います。B判定以下の場合には正しい答案と講評、アドバイスが表示され、A判定の場合にはアドバイスの代わりに別解が表示されるようになっています。

画面構成はシンプルで、添削の文面も非常にわかりやすくなっています。当然ながらこれは、ナガセが長年にわたって蓄積してきた、英作文添削のノウハウによるものです。これは生徒からも高く評価されています。

「トライアルの段階からアンケート調査を実施していますが、9割が『継続して使いたい』と回答しています。また『親しい人に薦めたいか』という質問に対しては、7割の生徒が0 10 11段階のうち 9 以上と回答。推奨者 (9以上)の割合から批判者 (6 以下)の割合を引いて計算されるNPS (Net Promoter Score)50ときわめて高くなっています。津東高校でも同様のアンケートを実施しましたが、ここでも同じような結果になりました」 (義川)

トライアルの段階からアンケート調査を実施していますが、9 割が『継続して使いたい』と回答しています。また『親しい人に薦めたいか』という質問に NPS (Net Promoter Score) も、50 ときわめて高くなっています

義川 達人 氏, AI教育開発部 上級部長, 株式会社ナガセ

今後は英作文だけではなく、他の科目にも適用領域を拡大

添削が返されるまでの時間が短いことも、このような高い評価の重要な要因だと言えます。ナガセ AI教育開発部課長で、システムインフラを担当する倉岡修平氏は、次のように述べています。

「複数リージョンによる負荷分散を行うことで、OpenAI社が提供する GPT-4に比べ、はるかに高速になっています。生徒による利用は夕方に集中するのですが、このピーク時間帯でも平均 20秒のレスポンス時間となっています」。

現在は複数のエンドポイントを組み合わせた負荷分散を行っていますが、今後は Azure API Managementも導入し、各リージョンの負荷状況やレスポンス時間を計測したうえで、さらに最適な振り分けを実現することも検討されています。Azureならこのようなことも、プログラミングを行うことなく柔軟に実現できると、田村氏は述べています。

また倉岡氏は、「Azureの音声テキスト変換機能も活用し、生徒の英語発音を評価するサービスも検討しています」と言及。「Azureには音声から音素を抽出し、発音を評価してくれる APIもありますが、現時点でここまでできるのは Azureしかありません」。

最後に山野氏は、「今後は英作文だけではなく、適用領域を他の科目にも積極的に拡大していきたい」と語ります。「既に 2024 8月には、1000問のプログラミング演習問題を搭載した自動添削講座『情報プログラミングノック』の提供を開始しています。生成 AIならすぐに添削してくれるため、短時間でも充実した学習が可能。実践的な学びのあり方を大きく変革できるポテンシャルがあると感じています」。

複数リージョンによる負荷分散を行うことで、OpenAI 社が提供する GPT-4 に比べ、はるかに高速になっています。生徒による利用は夕方に集中するのですが、このピーク時間帯でも平均 20 秒のレスポンス時間となっています

倉岡 修平 氏, AI教育開発部 課長, 株式会社ナガセ

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