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2026/05/14

AI を導入で終わらせない。全社員が迷わない『AIファースト』を設計した NTTドコモの Copilot 全社展開

AI・データ活用をデジタル戦略の重要な要素と位置付ける NTTドコモは、「すべての社員が AI を前提に働く会社」への進化を目指し、AI の全社展開プロジェクトを始動した。個人や部門単位の取り組みに留めるのではなく、全社員が関わる社内共通業務を起点に AI 活用の前提を揃えることで、組織としての変革を推進している。

社内共通業務の基盤として Microsoft 365 E5 を全社配備しているNTTドコモは、既存の業務データやアプリケーションと高い親和性を持つMicrosoft 365 Copilotを、全社における AI 活用の起点として採用した。利用状況や効果を可視化できる標準のモニタリング機能を活用し、KPI設計と改善を通じてROIを意識した運用を進めている。

2026 年 1 月現在、Microsoft 365 Copilot の全社配備(26,700 ライセンス)を完了。約 12,000 ユーザーが新規利用だったにも関わらず、稼働後1カ月のMAU(月間アクティブユーザー数)は 90%を維持。共通 KPI として設定した「生産性創出10時間/月/人」もクリアしており、単なるツール在りきの AI 導入に留まらず、AI を当たり前とする企業文化の醸成に成功している。

NTT DOCOMO

“すべての社員が AI を前提に働く会社”の実現に向け、AI の全社展開プロジェクトが始動”

国内最大級の通信基盤を背景に、個人・法人双方で多様なデジタルサービスを展開する NTTドコモ。同社は、AI・データ活用をデジタル戦略の重要な要素と位置付け、事業成長と業務変革の両面を支える基盤として活用を進めてきました。

なかでも近年は、会員基盤やデータと先端技術を掛け合わせることで、新たな顧客体験やサービス価値を創出する取り組みを強化しています。株式会社NTTドコモ 経営企画部 グループシナジー推進室 担当部長の竹内寛人氏は、同社のデジタル戦略について次のように語ります。

「当社のデジタル戦略において、AI 活用は重要な柱の 1 つです。事業面では顧客体験やサービス価値の向上を、業務面では全社員の生産性や実行力を高めるための基盤として位置付けています。AI を前提とした取り組みを通じて、変化の激しい環境の中でも持続的に価値を提供できる企業でありたいと考えています」(竹内氏)

同じく、株式会社NTTドコモ 経営企画部 グループシナジー推進室で担当課長を務める広瀬有沙氏は、同社のデジタル戦略において AI 活用が担う役割について話します。

「ドコモグループでは、各組織が先端テクノロジーを使いこなし、日常的な業務や社員一人ひとりの考え方をアップデートし続けることが大切と考えています。このため AI 活用についても、単なる業務効率化の手段ではなく、本来注力すべき仕事により多くの時間を充てるための取り組みと位置付けています」(広瀬氏)

こうした考えのもと同社が見据えたのは、AI 活用を一部の先進的な取り組みや個人の工夫に留めるのではなく、「すべての社員が AI を前提に働く会社」へと進化することでした。AI を使える人とそうでない人の差が広がる状況を放置するのではなく、組織として前提を揃え、全社員が同じ土台に立って業務に向き合える状態をつくることが重要だと考えたのです。

この問題意識を起点に、情報システム部と経営企画部が連携し、AI の全社活用に向けたプロジェクトが始動しました。AI を「導入すること」を目的とするのではなく、業務の進め方そのものを見直し、組織として AI を前提とした働き方を定着させていく全社変革に踏み出したのです。

竹内 寛人 氏, 経営企画部 グループシナジー推進室 担当部長, 株式会社NTTドコモ

“AI を前提とした取り組みを通じて、変化の激しい環境の中でも持続的に価値を提供できる企業でありたいと考えています。”

竹内 寛人 氏, 経営企画部 グループシナジー推進室 担当部長, 株式会社NTTドコモ

部分最適を超え、全社の判断力と実行力を揃えるために

同社では、以前より AI活用を進め 2023年には、部門や個人単位での利用が広がっていました。一方で、活用の進展に伴い、関心や活用方法に一定のばらつきが生じ、成果をどのように全社へ展開していくかが課題として認識されるようになりました。こうした状況を踏まえ、組織全体としての意思決定や実行力をより高めていくために、AIの全社活用へと舵を切る判断に至りました。株式会社NTTドコモ 情報システム部 グループIT戦略推進室 担当部長の小山智氏はその背景について言及します。

「当社でも先駆的な社員による AI 活用は進んでいましたが、ツールや使い方はばらばらで、ノウハウも組織に蓄積・展開できていませんでした。社員からは会社としての活用方針策定を求める声もあり、全社最適の観点から、AI を前提とした働き方への変革を目指す本プロジェクトを始動しました」(小山氏)

AI の全社活用を推進するにあたって、同社が重視したのが「いつ、どの業務で、どのツールを使うのか」という共通の判断基準を示すことでした。株式会社 NTTドコモ 情報システム部 グループ IT 戦略推進室 Copilot 全社配備 プロジェクトリーダーの宮本聖也氏は、全社員が関わる“社内共通業務”を起点にツールの選定を進めたと説明します。

「大前提として、当社は特定の AI ツールに限定せず、社員が業務特性に応じて最適な AI や先端技術を活用できる環境を整備しています。その方針は尊重しつつ、会議、資料作成・レビュー、情報検索といった全社員が関わる社内共通業務においては、社員一人ひとりが迷わず AI を活用し、その効果を最大限に引き出せるよう、全社員が標準的に利用できる AI ツールの選定を進めました」(宮本氏)

AIを適用させる社内共通業務の定義にあたっては、情報システム部と経営企画部、さらに各部門におけるAI主幹も含めて議論を重ねたと宮本氏。AI ツールの選定においては、日常業務で蓄積された社内データの活用と、利用状況や効果を定量的に可視化できるモニタリング設計を主な比較検討ポイントとし、社内共通業務における AI 活用の起点として Microsoft 365 Copilot(以下Copilot)を位置付けたと話します。

「当社では Microsoft 365 E5 を全社配備しており、メールや会議、ドキュメントといった業務データが Microsoft 365 に蓄積されています。それらをダイレクトに活用できる Copilot は最適な選択肢でした。さらに Microsoft Viva Insights などの標準機能により利用状況や効果を可視化でき、KPI 設計や改善を通じて ROI を意識した継続的な運用ができることがポイントでした」(宮本氏)

小山氏も、全社員が使い慣れている Microsoft 365 E5 との親和性が、Copilot の全社配備を決定した最大の要因と語ります。

「Copilot は Excel、Word、PowerPoint、SharePoint Online、Teams といった Office ツールと密接に連携しており、日常的な共通業務のフローに自然な形で組み込めることが採用の決め手でした。また AI 活用において重要となるセキュリティや統制面においても、既存の Microsoft 365 基盤でガバナンスを効かせられ、E5 ライセンスで提供される情報管理・セキュリティ機能がガードレールとなることで、利便性と統制を両立しながら全社最適化を実現できるソリューションと評価しました」(小山氏)

小山 智 氏, 情報システム部 グループ IT 戦略推進室 担当部長, 株式会社NTTドコモ

“AI 活用において重要となるセキュリティや統制面においても、既存の Microsoft 365 基盤でガバナンスを効かせられ、E5 ライセンスで提供される情報管理・セキュリティ機能がガードレールとなることで、利便性と統制を両立しながら全社最適化を実現できるソリューションと評価しました。”

小山 智 氏, 情報システム部 グループ IT 戦略推進室 担当部長, 株式会社NTTドコモ

Copilot を定着させるために重視したのは、「なぜ使うのか」を社員が納得できることでした。AI 活用をルールとして定着。迷いを生まない制度設計が全社展開を支える

こうして 同社は Copilot の全社配備を決定し、関係部門と連携して全社配備を推進しました。Copilotの役割や既存ツールとの棲み分けを整理し、2026 年 1 月には約 26,700 人に展開。短期間での大規模配備を実現した要因を、小山氏は次のように語ります。

「あらゆる企業が AI の業務活用に取り組んでいますが、それを全社的なムーブメントとしていくためには相当の覚悟が必要になります。当社のトップには『全社員が最先端の AI を駆使するドコモになる』という明確な意思があり、その思いを汲んで組織としてのドライブに持っていったところが大きなポイントと捉えています。一方で、経営層からはコスト面での要請も強く、AI 活用のコストが経営的なプラスになることを、しっかりとロジックを組んで説明していくことで迅速な意思決定が可能になったと考えています」(小山氏)

同社では、プロジェクトを進めるにあたり「生産性創出 10 時間/月/人」という共通 KPI を設定し、モニタリング方法までを含めてプロセスを設計。通常の大規模施策の1/4の期間で全幹部の承認を取り付けたことが、短期間での大規模配備につながっています。

「社員一人ひとりの共通業務時間を月に 10 時間創出すること自体が目的ではありません。大切なのは空いた 10 時間をどう活用するかです。当社では、外部委託していた戦略的業務の一部を、Copilotで生み出した時間で内製化に引き戻すことも含めて ROI を設計しています」(小山氏)

経営企画部の竹内氏は、経営層の力強い後押しが短期間での全社展開につながったと、今回の取り組みを振り返ります。

「当初は費用対効果のロジック構築に注力していましたが、経営層からは『効果が出ることは前提で、むしろ迅速な配備により社員の意識を変革し、生産性を高めていくことにフォーカスしていくべき」という力強いコメントを受けました。その後押しもあり、確実さよりもスピード重視で進める方針に転換できました」(竹内氏)

宮本氏は、Copilot 導入そのものではなく、「実際に使われ、業務が変わる状態」を重視し、3つの観点から導入を進めたと語ります。

1 つ目は「利用目線でのわかりやすさ」です。「Copilot を定着させるために重視したのは、「なぜ使うのか」を社員が納得できることでした。そこで、共通業務の定義と具体的な業務置き換えルールを整理し、AI 活用を“推奨”ではなく、日々の業務の”前提”として組み込みました。たとえば会議では、『議論や意思決定そのものには人が集中し、議事録作成や要点整理はすべて Copilot に任せる』というルールを設定しています。また資料レビューでは、『上司に提出する前に、まず Copilot が一次レビューを行う』ことを業務の前提としました。このように、AI 活用を単なる“推奨”にとどめるのではなく、日々の業務フローの中に組み込むことで、社員が迷わず、安心して Copilot を使える状態を目指しました」(宮本氏)

全社配備前に地域・支社と合同で行ったパイロット検証を通じて、現場の声を反映して徹底的にルールの実効性を検証・改善したうえで展開することで、“誰もが迷わず、安心して Copilot を使える”全社モデルを確立したと宮本氏は語ります。そのうえで、2 つ目のポイントとして「活用効果を定量的に図れる仕組み」、すなわちモニタリング環境を構築し、さらに 3 つ目のポイントとして「自走的に活用が広がり、学びが循環する土壌づくり」に着手したと話を続けます。

同社が特徴的なのは、AI 活用を「推奨事項」として委ねるのではなく、「業務上の原則」として明確に位置付けた点です。使い方を個人の判断に委ねるのではなく、「どの業務で、どのように AI を使うのが基本か」をあらかじめ整理することで、社員が迷わず活用できる状態を目指しました。さらに、ペナルティを伴う統制ではなく、「判断に迷わなくて済むこと」そのものを価値として設計した点が、本取り組みの大きな特徴です。

「AI 活用の定着には現場の熱量が欠かせません。そこで全社配備以前から啓蒙活動を続けた結果、社員の AI への感度も相まって、Copilot 関連イベントには年間延べ 25,000 人が参加し、利用者サイトへのアクセスは 3 万オーバー、相互コミュニティは 4,000 人規模へと成長しています」(宮本氏)

また本プロジェクトでは、Copilot による業務変革のムーブメントを最大化するため、“まずは情報システム部門自らが使ってみる”というアプローチを採用しています。宮本氏は、AI を推進する立場に留まらず、“誰よりも使い倒す側になる”ことで、より説得力のある発信が行えるようになると、その目的を説明します。

「全社展開に先立ち、情報システム部門の 14 名の部長が自らの手で “上長エージェント” を作成し、組織全体で資料レビューや壁打ちなどの日常業務に活用する新しい業務の形を定着させました。業務上の振る舞いだけでなく、部長自身の関心事や人となりも反映することで、より自然に使われるエージェントとして定着したことが特徴です。こうした “AI部長” の実践を通じて、業務効率化の効果や運用の勘所を蓄積し、実証済みの働き方変革モデルとして全社展開につなげました。さらに、経営層向けの勉強会やハンズオンを通じてノウハウが広がり、本社・支社の全組織長が自らの AI エージェントを作成し、トップダウンの推進力も全社展開の原動力となりました」(宮本氏)

一方で、AI を介したレビューや壁打ちは、内容によっては指摘が率直に返ってくる場面もあり、使い始めの段階では戸惑いを感じる声もありました。そこで同社では、AI エージェントはあくまで思考を整理するための補助的な存在であり、最終的な判断や評価は人が担うという前提をあらためて共有。AI を“試行錯誤の相手”として安心して使える環境を整えることで、心理的なハードルを下げ、活用が自然に広がる状態を目指したといいます。

宮本 聖也 氏, 情報システム部 グループ IT 戦略推進室, 株式会社NTTドコモ

“Copilot を定着させるために重視したのは、「なぜ使うのか」を社員が納得できることでした。 そこで、共通業務の定義と具体的な業務置き換えルールを整理し、AI 活用を“推奨”ではなく、日々の業務の”前提”として組み込みました。”

宮本 聖也 氏, 情報システム部 グループ IT 戦略推進室 Copilot 全社配備 プロジェクトリーダー, 株式会社NTTドコモ

AI を“当たり前”にするところまでがゴール。月間利用ユーザー 90%+KPI を超える成果を実現

Copilot の全社配備を完了した 1 カ月後の段階で MAU(Monthly Access User:月間利用ユーザー)が 90% 水準を達成するなど、すでに確かな導入効果が現れています。マイクロソフトのメトリクスにより算出した結果では、すでに「生産性創出 10 時間/月/人」という KPI を超える効果が出ています。広瀬氏は、AI の全社配備による成果について言及します。

「AI 活用にあたっては、もともと社内にあった社員の高い関心や挑戦意欲を、正しい方向に加速させ、それを全社に伝播させていくことを重視してきました」と述べ、さらにその取り組みが業務プロセスや生産性にどのような変化をもたらしているのかを続けます。

「まだ改善の余地はあるものの、社内共通業務を中心に、AI を前提とした働き方は着実に定着しつつあります。Copilot で削減した時間を、お客さまへの提案検討や次の打ち手に充てられるようになったという声も届いており、生産性向上を実感しています。資料ドラフトやセルフレビュー、会議要約などを AI に任せることで、意思決定に集中できる環境が整い、部門や役職を問わず、スピードと質を両立した業務プロセスが実現しています。こうした変化が、全社で同じツールと前提のもとで働く環境づくり、ひいては MAU 90%という結果につながっていると捉えています」(広瀬氏)

こうした成果を支えているのが、AI を当たり前とする企業文化づくりです。広瀬氏は現場の熱量を正しい方向へ加速させることを重視し、宮本氏はグループ横断のイベントや事例共有を通じて学び合いを広げていると語ります。

「直近では Copilot エージェントのユースケースをテーマに「ドコモグループ Copilot万博」を開催しました。グループ 4 社から 100 件を超えるアイデアが集まり、約 2,000 人が配信を視聴。個人の活用知見を組織へ広げる契機になったと考えています」(宮本氏)

本プロジェクトの成果を踏まえ、同社では今後も継続して Copilot を軸に「全社員が最先端の AI を駆使するドコモになる」という目標の実現に向けた取り組みを継続していく予定です。

「経営層が求めているのは、AI 活用を“使える人のスキル”ではなく、“組織の当たり前の能力”として定着させることです。そのうえで、部門・業務特性に応じて AI 活用を深化させていくことが期待されています。こうした要望に応えるため、全社共通業務への AI 適用で得た成功体験をベースに、各現場で AI を活用した業務変革を推進し、企業競争力の底上げに寄与していきたいと考えています」(竹内氏)

今後の展望について、宮本氏は「Microsoft Copilot Studio の導入や、Microsoft 365 環境と連動した AI 活用のエコシステム化など、より高度で業務に根ざしたユースケースを育て、社内イベントやグループ横断のコンテストなどを通して全社に展開していきたい」と語ります。小山氏は「今後の取り組みを加速させるうえでは、マイクロソフトのさらなる支援が必要になる」と期待の言葉を口にします。

「経営トップが求める “最先端の AI”であることが、本プロジェクトで Copilot を選定した最大の理由です。マイクロソフトには、今後も常に最先端であってほしいと強く感じており、競争の激しい AI 市場の最前線で磨き上げた技術やノウハウを提供し続けていただけることを期待しています。もちろん、当社としても現場で蓄積された知見や次のステージに向けた要望などをフィードバックし、お互いが密接に連携していくことで、AI を最先端の業務基盤として活用していきたいと考えています」(小山氏)

広瀬 有沙 氏, グループシナジー推進室 担当課長, 株式会社 NTT ドコモ 経営企画部

“AI 活用にあたっては、もともと社内にあった社員の高い関心や挑戦意欲を、正しい方向に加速させ、それを全社に伝播させていくことを重視してきました。”

広瀬 有沙 氏, グループシナジー推進室 担当課長, 株式会社 NTT ドコモ 経営企画部

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