Tech Intensity が ビジネス価値の向上を促進する理由
※本ブログは、米国時間 2019 年 12 月 18 日に公開された How technology intensity accelerates business value の翻訳です。
Tech Intensity を取り入れた組織は、本質的に成功を収める傾向にあります。ではいったい Tech Intensity とは何でしょうか。また、現在の企業がまとまりのあるデジタル戦略を構築する上で Tech Intensity が重要になるのはなぜでしょうか。
Tech Intensity とは
Tech Intensity には以下の 3 つ要素が含まれます。
- ハイパースケールの “クラウド プラットフォーム” の迅速な採用
- デジタル能力に投資するための “合理的なビジネス上の意思決定”
- “顧客が信用できる” テクノロジの構築に向けた絶え間ない取り組み (信頼できるサプライヤーの利用、新しい製品へのセキュリティの組み込み)
マイクロソフトの CEO である Satya Nadella (英語) は、次のように述べています。「私たちは、これまでよりもはるかに迅速な手段でテクノロジを採用する必要があります。組織の中で、私たち一人ひとりが、これまでに採用してきたテクノロジを基盤として、独自のデジタル能力を身に付けなければなりません。Tech Intensity は、正しく理解すべき重要な考慮事項の 1 つです。」
重要な成功要因としての Tech Intensity
わかりやすく申し上げれば、Tech Intensity は現在のビジネス戦略の重要な要素です。私は頻繁に世界中の企業のリーダーの方たちとお会いしますが、私の経験では、高い業績を上げている企業ほどデジタル能力とスキルセットに最も投資しています。事実、それらの極めて業績の高い企業と、その対極にある業績の低い企業の間には生産性に隔たりがあり、それが直接デジタル投資の規模と相関しています。
また、別の調査によると (英語)、開発者を採用して、特定の企業が独占的に所有し使用する革新的なソフトウェアを開発するためのテクノロジ投資は、競争で優位に立つには重要なことだとわかっています。それらの企業は、独自の “デジタル知的財産” を開発できる能力を育成し、顧客だけがアクセスできる独占的なソフトウェアやツールを構築しています。リソースが常に不足する中、それらの企業は、既存のクラス最高のテクノロジ プラットフォーム上に差別化された知的財産を築いているのです。
マイクロソフトが出資する Economist Intelligence Unit (EIU) のレポート 「Putting customers at the center of the OEM supply chain」 (英語) で、中国拠点の ICT 企業 Huawei Technologies のグローバル ロジスティクスおよびサプライ チェーン担当シニア ディレクターである Lorenzo Fornaroli 氏は、Tech Intensity を取り入れる利点を次のように強調しています。「… ICT 企業である当社は、新たなテクノロジを早期に発見し、それらを効果的に展開するために必要な内部リソースを備えています。そのようなテクノロジに関するスキルと経験が常に社内で利用できる状態になっています。」
新たなビジネス モデル
Point of Delivery をはるかに超えてサプライ チェーンを拡張するために、Tech Intensity の原則を採用するメーカーが増えています。それらのメーカーは、Azure IoT、Microsoft AI、Azure Blockchain Service、Dynamics 365、Microsoft 365 などを利用して、スマートなコネクテッド製品の開発とビジネスのデジタル化を推進しています。
たとえば Rolls-Royce は、自社のジェット エンジンの顧客から飛行時間に基づく月額料金を徴収しています。また、Sandvik Coromant や Tetrapak などの産業用機器を扱う販売業者は、機械加工する部品や製品を詰めるコンテナーに対する請求を顧客に行うことを検討中です。
コネクテッド製品から送信されるそれぞれの状態や使用状況に関するデータを利用することで、メーカーは新しいデジタル サービスを開発しています。そのような先進的なメーカーの場合、サプライ チェーンの拡張は、一度限りの前払いの購入価格に基づいて顧客に製品を販売する形態から抜け出し、パフォーマンスの保証に基づくサブスクリプションへの課金に移行するチャンスとなります。これは、メーカーがデジタル ソフトウェア企業へと変わる中での “行動における Tech Intensity” といえます。
行動における Tech Intensity
ダイカスト テクノロジのグローバル マーケット リーダーである Bühler は、コネクテッド製品に Tech Intensity を採用しました。ダイカスト プロセスでイノベーションを促進し続けることを目指す (英語) Bühler は、さまざまなダイカスト セルのコンポーネントからのデータを単一のセル管理システムの下で集約することにより、統合された使いやすいシステムで完全なダイカスト セルの監視、制御、管理を行うことが可能になりました。また同社は、新しい洞察を引き出すために独自の人工知能 (AI) モデルを微調整することで、リアルタイムのフリート学習をはじめ、デジタル変革を進めるための新たな手段を検討中です。
レーザー プリンターとイメージング製品を手掛けるメーカーである Lexmark は、現在、Lexmark Cloud Print Infrastructure as a Service (CPI) (英語) を提供しています。このサービスで、顧客はオンサイトで印刷インフラストラクチャを管理しなくて済むようになります。代わりに、Lexmark が独自の IoT 対応デバイスを設置し、スマート サービスを有効にして、常時稼働する印刷環境を生み出します。CPI をロールアウトするために、同社はマイクロソフトと連携して、モノのインターネット (IoT)、顧客関係管理 (CRM)、AI、およびコラボレーション用の新しいツールを素早く採用したことで、内部のデジタル能力を強化することに成功しました。
ほかにも、Colfax が Tech Intensity を取り入れたメーカーの好例として挙げられます。グローバルな産業テクノロジ企業である Colfax は、産業用 IoT テクノロジを導入する必要性に気付く (英語) と共に、包括的なデジタル変革イニシアティブを取り入れ、自社の 2 つのビジネス プラットフォーム (溶接および切削ソリューションのプロバイダーである ESAB と、空気・ガス処理製品のエンジニアリング企業である Howden) のオファリングを拡大することの重要性に気付きます。そして、マイクロソフトや PTC との協力の下、同社は最先端のクラウド テクノロジを採用すると同時に、デジタル スキルセットの育成を進めました。
新たなデジタル スキルセットへの投資
見識の高いメーカーは、コネクテッド製品から得たデータを活かして、その他多くのソースから得たデータと組み合わせる取り組みを、かつてないボリュームで行っています。その膨大なデータに対処するには意識の転換が必要となるため、組織は新しいデジタル時代に対応できるスキルを育成しなければなりません。ほとんどのメーカーは、このような方法で内部の能力を向上させる必要があるという考えに賛同しています。
「サプライ チェーンを担当する上級専門職の方々は、非常に限られたデータセットに基づいて自分たちの意思決定を進める作業に慣れていることが一般的でした。しかし、それもすべて変わります」と、スウェーデンの企業グループ ABB でスイスでの品質および運営を担当するグループ長、Daniel Helmig 氏は、EIU レポート 「Putting customers at the center of the OEM supply chain」 (英語) で述べ、次のように続けています。「しかし入手可能な (しかも日々増えていく) 大量のデータを活用できるようになるには、サプライ チェーン担当者の間で、新たなレベルの可視性による迅速かつ断固とした問題への対応に基づく意識の転換が必要になります。」
同レポート (英語) で、医療用機器およびデバイスを専門とする米国拠点のメーカー Medtronic でグローバル サプライ チェーン、流通、物流を担当するバイス プレジデントの Sheri Henck 氏は、次のようにコメントしています。「過去には、データが利用できなかったことから、サプライ チェーンに関する多くの意思決定が直感を頼りに行われていました。現在では、大量のデータが利用できる一方で、データを最大限活用して、データに基づく提案や意思決定を行う際に使用したいのなら、サプライ チェーンのリーダーとそのチームのスキルや能力を変える必要があるという認識もあります。」
インテリジェントな工場の実現に向けビジネス ソリューションを活用してデジタル運用を最適化する方法については、電子書籍『未来の工場:製造業でデジタル化のメリットを今すぐ実現する』をご覧ください。