通信業界の変革を支援する日本マイクロソフト
5G の普及や IoT 技術の発展といった Society 5.0 を実現するためのインフラが整備されつつある昨今、通信業界においては既存ビジネスモデルの伸び悩みや、低料金通信事業者などの新たなプレイヤーとの競合、設備投資負担の増大といった課題が指摘されています。これからの通信キャリアには、変化に対応した新たなビジネスモデルを構築するとともに、さらなる業務の効率化や生産性の向上を図っていくことが求められます。日本マイクロソフトでは、通信業界の変革を支援するパートナーとして、数々のソリューションを提供しています。
収益減と費用増、両面のリスクに直面する通信業界
まずは通信業界の現状を整理してみましょう。収益を減らすリスクとして「既存サービスの伸び悩み」と「低料金プラン拡充による ARPU (1 ユーザー当たりの平均売り上げ) の低下」が、また費用を上げるリスクとして「5G/6G への莫大な投資」が挙げられます。
通信技術が成熟してきた今、通信サービスだけでは収益性の拡大を見込むことはますます難しくなってきています。加えて、ここ 2 年ほどの間に加熱した携帯料金値下げ競争の結果としての ARPU 減少も、通信キャリアの収益減リスクとなっています。そしてまさに今基盤拡大・活用促進が佳境となっている 5G や、2030 年代に普及を目指す 6G といった通信システムに対応するインフラ構築のために、莫大な投資が必要とされている状況です。
こうした現状を打破するためには、主に BtoC における非通信領域での事業拡大による ARPU 向上と、BtoB 領域における新規事業の創出による収益増に加え、さらなるオペレーションの効率化、高付加価値事業へのリソース集中によってコスト効率を高めていく必要があります。
その結果として通信キャリアには、スピード感を持った事業領域の拡大と収益源の創出を可能にする「拡張性」、さまざまな業界で求められる新たな通信サービスをコスト効率的に提供し利益率を高めていく「事業性」、そして通信企業の最大の使命である安心・安全を守り続ける「信頼性」を兼ね備えた「次世代の通信キャリア」への変革が求められていると言えるでしょう。
次世代通信キャリアの拡張性・信頼性・事業性を支援
私たち日本マイクロソフトでは、通信キャリアの皆さまをサポートするために、いくつかのアセット (経営資源) を持っています。
1 つ目は、「ビジネス創出に向けた各業界キープレイヤーとのエコシステム」です。私たちは、各業界に向けて最適化された数々のリファレンス アーキテクチャや、業界におけるキープレイヤーとの協業、スタートアップ支援といった事業を通したエコシステムを築いています。
例えば製造業界に対しては、IT 技術を用いたサプライチェーンのマネジメントや現場支援、流通業界に向けたスマート ロジスティクスやスマート ストアなど各業界の課題を捉えクラウド サービスでご支援するためのリファレンスとなるアーキテクチャを多く提供しています。業界に精通したトップ プレイヤーとの協業案件も多数創出しており、日本マイクロソフトのソリューションがグローバルかつ先進的な事業をサポートしています。
また、日本マイクロソフトはスタートアップ支援にも積極的に取り組んでいます。Microsoft for Startups Founders Hub という技術・拡販支援プログラムでは、スタートアップが成長するステージに合わせた資金や技術、ノウハウを提供しており、2022 年 5 月現在、グローバルで 2 万社以上、国内でも 650 社以上のスタートアップが参画しています。
2 つ目は「データ利活用のためのソリューションと実績」です。データの適切な利活用は業務の効率化や生産性向上、新規事業の創出に大きく貢献します。私たちはデータ利活用のための多くのソリューションと実績を持っています。データ分析・活用の内製化支援プログラムも提供しており、多くの企業に利用していただいています。
そして 3 つ目のアセットが、「キャリア グレードのハイブリッド・ハイパースケール インフラ」です。マイクロソフトでは、世界最高レベルのセキュリテイと技術に裏付けられた、世界規模でエッジ コンピューティングからクラウドまで対応可能なインフラをAzure 上に構築し、「Azure for Operators」の名称でリリースしました。このインフラの活用により、効率が高く高付加価値な事業へのリソース集中を支援します。
日本マイクロソフトでは、これらのアセットを活用していただくことで「拡張性」「信頼性」「事業性」を兼ね備えた次世代の通信キャリアへの変革をサポートしてまいります。
Azure for Operators を活用して高付加価値事業へリソースを集中
通信キャリアではこれまで、多額のコストをかけて通信規格に合わせたネットワークを構築してきました。ここ 10 年ほどのトレンドでは、ネットワークを仮想化してソフトウェア ベースで動作させる VNF (Virtual Network Function) の技術が主流となっています。近年はこの技術を一歩進めて、ネットワークをクラウド基盤で動作させる CNF (Cloud native Network Function) の技術を用いた運用を始めた通信キャリアも出始めています。
Azure for Operators はこの CNF に着目し、通信キャリアの 5G コアネットワークを Microsoft Azure というハイパースケール インフラの上で動作させるソリューションです。今後通信キャリアのネットワーク運用支援に大きな役割を果たせると考えています。
Azure for Operators は 2020 年 11 月にリリースされ、現在に至るまで進化を続けています。2021 年 6 月には、米国大手通信キャリア AT&T が自社で構築したクラウド基盤 Network Cloud をマイクロソフトが買収し、運用中の 5G ネットワークを Microsoft Azure 上に移行することを発表しました。またこれまで AT&T が培ってきた、クラウド基盤上で大規模なパケット コアネットワークを展開するための技術に関する知的財産も、併せてマイクロソフトが取得しています。
このコラボレーションを通してマイクロソフトが AT&T の持つ知見を得ることにより、Azure for Operators をキャリア グレードのハイブリッド クラウドとして強化でき、さらに Microsoft Azure が持つ既存のエコシステムと統合することで、新たなサービスの創出につなげられます。
マイクロソフトではこのキャリア グレードのハイブリッド クラウドでネットワークを運用するための仕組みを「Azure Operator Distributed Services」と名付けて、2022 年 2 月に開催された「モバイル ワールド コングレス (MWC) 2022」で発表しました。これは AT&T が構築してきた Network Cloud のオーケストレーション、運用監視、セキュリティを担保する仕組みなどを Microsoft Azure で実現できるように開発したもので、今後、AT&T が運用するネットワークも順次 Microsoft Azure に移行していく予定です。
Azure Operator Distributed Services がリリースされれば、これまで AT&T が独自で行ってきた仮想化クラウド基盤の設計・構築やベンダーとの調整、運用管理などの一切をマイクロソフトが担うことになるので、AT&T はネットワーク運用コストの削減のみならず、ネットワークの設計やサービスの企画などにリソースを集中できるようになります。まさに、冒頭で触れた「高付加価値事業へのリソース集中」の好例と言えるでしょう。
Azure for Operators をさらに強化する 4 つのソリューション
マイクロソフトは「モバイル ワールド コングレス (MWC) 2022」において、Azure Operator Distributed Services を含めた Azure for Operators に含まれる 4 つの新たなソリューションを発表しました。
「Azure Operator 5G Core」は、Azure Operator Distributed Services 上で動作するコンテナ化した通信設備という位置付けのサービスです。キャリア コアネットワークの各機能をソフトウェア ベースで提供します。
「Azure Private 5G Core」は、工場や店舗などエンタープライズ オンサイトでの使用を想定しており、「Azure Stack Edge」と呼ばれるサーバー上で動作し、5G コアネットワークを運用できるサービスです。Azure Stack Edge 上にデプロイするアプリケーションと組み合わせて、5G の超低遅延性を活かしたソリューションを実現できます。
「Azure Public MEC」は、通信キャリアが持つデータセンターに Microsoft Azure のサーバーを設置し、アプリケーションの動作環境を構築するソリューションです。Azure Private 5G Core が工場や店舗などのオンサイトで使われるのに対して、スマート シティや自動運転といった、広範囲のパブリック インフラにおける 5G 活用のために使われることを想定しています。
通信キャリアの皆さんがこれらのソリューションを活用するメリットとしては、まずトラヒック量に合わせて柔軟にスケールを変化させられるため、ネットワーク運用コストの効率化が図れる点が挙げられます。従量課金の形になるため、CAPEX (設備投資コスト) モデルから OPEX (ランニングコスト) モデルへと経営体質を変えるきっかけにもなり得ます。さらに、Azure Operator Distributed Services を活用することにより、クラウドおよびエッジのみならず、通信キャリアが従来保有しているオンプレミスで稼働するネットワーク機能を含め、ネットワークを一元管理することが可能な点も大きなメリットです。そして繰り返しになりますが、基盤の維持・管理をマイクロソフトに任せることでネットワークやサービスの企画にリソースを集中できる点が挙げられます。
これらのソリューションは、通信キャリアのビジネス創出にも貢献します。例えば、超低遅延環境が求められる製造業や自動車制御などへの専用ネットワークの提供。しかもソフトウェアベースの構築なので、超短期間での設計~構築・運用が可能になります。将来的には Azure Operator 5G Core および Azure Private 5G Core も Microsoft Azure Marketplace 上から一元提供できるようになる予定なので、さらに便利に使っていただくことができます。
私たち日本マイクロソフトは、次世代通信キャリアの拡張性・信頼性・事業性を支援するパートナーとして、生産性の向上や業務の効率化、新たなビジネス創出につながるソリューションを提供してまいります。
ご相談も随時承りますので、どうぞ弊社担当営業に気軽にお問い合わせください。