"今回のラボ活用では、事前テックコールやアーキテクチャ提案により設計検討を大幅に前倒しでき、Foundry Toolsやイベント駆動アーキテクチャの実装を短期間で具体化できました。
特にAzure Content Understandingの採用判断やパフォーマンス検証を迅速に行えたことで、技術検証期間を約1か月短縮、初期開発コストも約70%削減するなど、開発全体 の加速に大きく寄与しました。"
Co-Innovation Challenge
施設エントランスに設置された監視カメラについては、従来は録画や目視確認が中心であり、蓄積される映像データを十分に活用できていないという課題がありました。
施設運営やセキュリティの高度化を図るためには、単なる人数カウントにとどまらず、「人の動きや行動の文脈」を把握し、混雑や滞留、異常行動の兆候といった状況を把握することが求められていました。一方で、中小企業にとっては生成AIやクラウドAIを活用した映像解析は技術的なハードルが高く、自社単独での検証や設計には限界がありました。
こうした背景のもと、旭光電機株式会社は、神戸市の「中小企業DXお助け隊」事業を活用し、神戸ラボと連携した実証に取り組むことで、生成AIを用いた動画分析の実用性を検証することを決断しました。
In the Lab:スプリント開発
施設エントランスに設置されたカメラから取得される映像という非構造データを対象に、エッジからクラウド、生成AIまでを一貫して接続し、「映像を理解し、検索・活用可能な情報へ変換する」プロトタイプの開発を行いました。現場側では、カメラ映像を Raspberry Pi に接続し、エッジ環境でデータ生成を行う。人物検出については AITRIOS(CSV26)を用い、人数や位置といった構造化メタデータを生成します。これらの人物検出データと、元となる動画ファイルは、イベント駆動型で Azure 側へ送信されます。
クラウド側では、Event Hubs および Event Grid を用いてデータ受信と処理起動を分離し、スケーラブルかつ疎結合な構成を採用しています。イベントをトリガーとして Azure Functions が起動し、動画ファイルおよび人物検出データを取得・整形したうえで 、分析処理へと受け渡します。
動画分析の中核には、Azure Content Understanding および Azure OpenAI in Foundry Modelsを活用した生成AI基盤を採用し、動画をフレーム単位で解析し、人の動きや滞留、通過といった行動の文脈をテキスト情報として抽出することで、従来の画像認識では困難であった「状況理解」を実現しています。あわせて Azure AI Video Indexer など複数手法を比較検証し、ユースケースに適した分析手法の選定も行いました。
分析結果およびメタデータは Azure Blob Storage に保存され、後続処理用のデータレイクとして管理されます。検索・活用フェーズでは Azure Cosmos DB を用い、生成AIによる出力結果を柔軟なスキーマで保持する構成とています。フロントエンドからは自 然言語による質問を受け付け、Cosmos DB に蓄積された分析結果をコンテキストとして Azure OpenAI が回答文を生成します。生成された回答は Azure App Service 上のアプリ ケーションを介してクライアントへ返却され、映像データに基づく検索・質問応答を実現します。
本アーキテクチャは、カメラ映像という非構造データを、イベント駆動・生成AI中心の設計で「理解可能な業務データ」へ変換する実証モデルであり、中小企業が生成AIを業務に適用するための現実的なDXパターンを示すものとなりました。
Beyond Technology
本実証では、神戸商工貿易センタービルのエントランスを実証フィールドとし、カメラから取得した動画データを生成AIで解析する「次世代エントランス監視システム」の有効性が検証されました。Microsoft Foundry(Azure OpenAI in Foundry Models、Azure Content Understanding)を活用することで、従来の画像認識では難しかった「状況理解」を可能にし、映像を単なる記録データから、施設運営に活用可能な情報へと転換しています。
具体的には、入退館人数の自動カウントに加え、通過・滞留・立ち止まりといった 行動パターンの分類、時間帯別の混雑状況の把握など、複数の分析が実施されました。これにより、従来のセンサーベースの監視手法と比較して、より柔軟かつ詳細な分析が可能であることが確認されています。
また、本システムでは個人を特定しない形でのデータ処理が前提とされており、顔画像や個人識別情報を保存しないなど、プライバシーに配慮した設計が採用されています。生成AIを活用しながらも、施設利用者の安心・安全を損なわない運用が可能である点も重要な成果の一つです。
本取り組みを通じて、旭光電機と神戸ラボは地域社会とともに新たな価値創出に挑戦し、今後も技術革新と共創を通じて持続的な成長を目指してまいります。