日本マイクロソフトでは、ICT で貢献することが可能な法政策に関して、どのような活動をしているのか。弊社 政策渉外・法務本部 副本部長を務める弁護士、舟山からお話させていただきます。

サイバー空間から生まれる革新を守り、育てるための法政策と、「セキュリティ」と「国際協調」というキーワード

マイクロソフトは、法政策に関する活動を、世界中で積極的に行っています。
その姿勢は、「政策渉外・法務本部」という私たちの部署名にも現れています。

 

政策渉外と法務が、一部署となっている背景はさまざまな理由がありますが、源流をたどると、創業者であるビル・ゲイツが、1976 年 2 月に発表した公開書簡「An Open Letter to Hobbyists」に行き着きます。

 

当時は、趣味でソフトウェアのプログラムを書く人が多く、ソフトウェアのコピーや改変がほぼ自由に行われる風潮にありましたが、この公開書簡でソフトウェアの権利保護を訴えたことが、ソフトウェアの開発・販売が産業として成立するきっかけとなりました。

 

パーソナル コンピューターの真価を引きだすために数多くのソフトウェアが生まれた・・・・・・これは、大きなイノベーションです。ソフトウェアの進化が未来にもたらす多様な可能性を守り育てるためにも、法の領域にまで踏み込んでソフトウェア開発に労力を費やす人々の権利を守り、産業の発展を促す必要があったのです。

 

翻って今の世界を見渡すと、各所でイノベーションの萌芽となる数多くのサービスやテクノロジが、「インターネット」および「クラウド サービス」の上に生まれています。
今や、あらゆる産業がインターネットの利活用を前提にしていると言えるでしょう。

 

日本の政府も、サイバー空間にかかる認識の中で、"実空間のモノやヒトが、サイバー空間上の情報の自由な流通とデータの正確な通信により物理的制約を超えて多層的につながる (連接する) ことで、実空間とサイバー空間の融合が高度に深化した社会、すなわち「連接融合情報社会」が到来しつつある。" と記しています (内閣サイバー セキュリティ センター: サイバー セキュリティ戦略より)。

 

サイバー空間で活動する企業、団体、組織および個人の権利を守ることは、とても重要なことであり、日本でも「新・サイバー セキュリティ戦略」の検討をはじめ、2015 年 6 月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂 2015」および「世界最先端 IT 国家創造宣言」においても、サイバー セキュリティに関する施策を掲げ、継続的なセキュリティ強化の取り組みを進められています。

 

マイクロソフトでも、「サイバー クライム センター」を立ち上げ、この課題に深く取り組んでいます。

 

しかしサイバー セキュリティは永遠の課題とも言えるほど困難な課題でもあります。
その理由の ひとつとして、「国境のない戦いである」ことが挙げられます。

舟山 聡 氏のインタビュー写真

舟山 聡 氏のインタビュー写真

インターネットは世界中を巡り、クラウドのデータセンターは世界中に分散しています。
国境を超えたデータの動き (クロス ボーダー データ トランスファー) に対応し、データを適切に保護していくためには、一国の中だけで考えるのではなく、各国と協調し、さまざまな状況を想定しながら対策を強化していくことが求められます。

 

サイバー空間で生まれるイノベーションを促進し、その可能性を守り、社会の発展を支えていくためには、テクノロジを追求するだけではなく、社会を守るためのルールを同時に検討し、継続的に改善していく努力が不可欠なのです。

 

その点において、私たち日本マイクロソフトの政策渉外・法務本部は、マイクロソフトが世界各国で法政策に関して積極的に活動している経験と専門的知識を活かして、貢献することが可能なのではないかと考えます。

 

関連する具体的な事例について、少しだけお話したいと思います。

世界各国の法を遵守することで、初めて得られる信頼感

私たちマイクロソフトは、サイバー空間にサービスを提供する立場から、ユーザーの皆様に「信頼」いただけることを、第一に考えています。

 

そのひとつに、クラウド サービスにおける「データの管理保護に関するポリシー」が挙げられます。
マイクロソフトの提供するクラウド サービスでは、下記の 2 点を特に重視しています。

 

  1. 第三者へのデータ開示は原則として行わず、当局からの要請も適用法に準拠して厳格に運用
  2. お客様のデータは、広告配信などの別の用途には一切使用しない

「1」に関しては実際に、アメリカの司法当局とマイクロソフトが、データ開示を巡って争っている事例もあります。

このケースでは、アメリカの捜査機関から、容疑者が利用していた無料の個人用メールである Outlook.com のデータ開示を求める令状を提示されたのですが、データがアイルランドのセンターに保存されていたため、「アメリカの令状だけでは対応できません」と押し返したのです。
どうやら、容疑者がアイルランド滞在中にアカウントを作成したらしく、最寄りのデータセンターが設定されていたようですが、マイクロソフトでは適用法に準拠して厳格に運用していますので、アメリカの令状の効力はアイルランドのデータに及ばないという対応をしたのです。

 

これは、当社のクラウド サービスの信頼に関わる、非常に重要な事案です。アメリカの令状ではアイルランドの家宅捜査が行えないのと同じように、サイバー空間の中にも、明確な境界線を敷かなければなりません。

 

同様に、日本のデータセンターにあるデータを、アメリカの警察から開示要求されても、私たちが応じることはないでしょう。

 

もちろん、国際協調による正規の手続きが行われた時には、私たちも迅速に対応します。
事実、2015 年 1 月にフランスで起きた「シャルリー・エブド」襲撃事件に際し、フランス政府から、FBI を通じて、適正な手続きに基づいてマイクロソフトに捜査協力が要請された際には、わずか 45 分で必要なデータ提出を終えています。

 

現在、マイクロソフトでは、各国における法執行機関からの情報開示請求対応について統計情報を Web で公開しています。

 

私たちは、あくまでも各国の「法」に基づいて、厳格かつ透明な運用を行っているのです。

 

「2」に関しては、2014 年 7 月に公開されたばかりの国際標準の新たな規格で、パブリック クラウドにおける個人情報保護の実施基準を定める ISO/IEC 27018 にも準拠するなど、自らの姿勢を第三者認証等の枠組みを通じて担保できるようにしています。

舟山 聡 氏のインタビュー写真

舟山 聡 氏のインタビュー写真

急速な技術革新の可能性を伸ばす法政策のあり方と、私たちの職務

サイバー セキュリティが終わりのない課題である、もう ひとつの主な理由が「テクノロジの急速な進歩」です。

 

今、「モノのインターネット」(IoT: Internet of Things) が急速に発展しています。
インターネットにつながる端末は多様化し、あらゆるモノが、ネットワークにつながった "サービス" へと変化し、さまざまなビジネス ソリューションを変革します。

 

もちろん、最新の Windows 10 も、このイノベーションの加速に貢献します。
Universal Windows Platform (UWP) という新しいテクノロジによって、これからの Windows アプリケーションは、Windows 10 デバイスのみならず、Android/iOS タブレットやスマートフォンにまで広がっていきます。

 

PC 以外のさまざまな機器には、組み込み用の OS である Windows 10 IoT が広がっていきます。

世界中のあらゆる場所にデバイスとアプリケーションが展開され、データはクラウドに保存され、国境を超えたデータの動きはますます勢いを増していくでしょう。

 

現実社会への影響も広範です。遠隔コミュニケーションがますます容易になることで、テレワークの普及は進むでしょうし、3D プリンターやウェアラブル端末が本格的に普及することで、世界にはかつてない新たな産業が創出されるかも知れません。
実空間とサイバー空間の融合が高度に深化した社会では、今後さらに、その可能性を増していくと思います。

 

その中で発生する「かつてないイノベーション」の中には、既存の社会ルールや法政策には、うまく当てはまらないものもあるでしょう。大なり小なり、トラブルが起きるかも知れません。
しかし、トラブルを恐れて規制を強化するだけでは、イノベーションも育たなくなります。大切なことは、社会の要請を見極めつつ、プラスとなる可能性を伸ばしていけるように、適切なルールを整備し続けていくことにあります。そして、透明性のある手続きによって、明確なルールとして策定されることも重要です。
さらに、サイバー空間においてはもちろん、国際間の協調が必須です。

 

私たちは、マイクロソフトの中にあって、そうした職務に取り組み続けています。
この職務は、一民間企業であるマイクロソフトの枠を超えて、もっと広く、社会と未来に貢献することにつながっていると確信しています。・・・・・・その思いは、私たちが法政策に対して積極的に活動していく強力なモチベーションとなっています。

舟山 聡 氏のインタビュー写真

舟山 聡 氏のインタビュー写真

参考リンク: マイクロソフトの姿勢について

・ モノのインターネット 

Windows デベロッパー センター

 

※本情報の内容(団体名、役職名、添付文書、リンク先などを含む)は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。