2016年10月、産官学連携によるデジタル人材育成施設である「マイクロソフトAI&イノベーションセンター佐賀(以下、MAIC)」が西日本で初めて佐賀市に設置されました。それから5年の月日を経て、今年10月22日に4期16年の任期を終える佐賀市の秀島敏行市長に、日本マイクロソフト政策渉外・法務本部の宮崎翔太がお話を伺いました。

※本情報の内容(団体名、役職名、添付文書、リンク先などを含む)はインタビュー当時のものです

 

秀島市長が椅子に座ってインタビューを受けている様子の写真です

---当時、初めてMAIC開設の話を聞いたときはどのような感想でしたか?(宮崎)

「ウッソ〜!? というのが率直な感想でした。あの見慣れた4色のロゴマークのマイクロソフトさんが佐賀に来るなんて、にわかには信じられなかったので。マイクロソフトといえば、IT業界で最先端をいく世界有数の企業で、私たちにとっては遠い存在というイメージしかありませんでした。当時はまだデジタル人材とかテレワークといった言葉が今ほど浸透していなかったこともあり、なぜ佐賀に?というのが率直な感想でした」(秀島市長)

「一方で、デジタル人材の育成は佐賀市のような地方都市にとっては場所に捉われず個人の活躍の場が広がる有益な政策であると考えていました。そんな中、持ち上がったMAIC開設を検討するやり取りの中で、マイクロソフトの方と市の職員が強い信頼関係を構築できたこと、佐賀の豊かな自然、恵まれた生活環境、誇れる農林水産物といった地元の魅力に、いち早く目を付けてくださっていたことにも驚かされました。通常、企業誘致などのお話をさせていただくと、佐賀の人たちの素朴さ、勤勉さを評価していただくことが多いのですが、MAIC開設に際しては、マイクロソフトの皆さんが市の職員以上に佐賀を愛する気持ちで地域の良さを掘り起こしてくださり、大変感謝しています。また佐賀が世界に誇る日本酒や食材などを販売する佐賀市フェアをマイクロソフト社内で定期開催いただくなど、MAICという枠組みを大きく超えた関係がずっと続いています」(秀島市長)

---ありがとうございます。我々マイクロソフトも、佐賀の皆様の人柄に触れ、本当に佐賀のファンとなりました。結果として佐賀市をはじめ、佐賀県・佐賀大学・パソナテック・日本マイクロソフトとの連携のもと、2016年にMAICが開設されました。現在はパソナテックがサポーター企業になり、連携協定にはキャリアバンク、佐賀電算センター、EWMジャパンが新たに加わり開設から5年が経過しました。秀島市長からご覧になられて、MAIC開設の効果をお聞かせください。

「MAIC開設後、佐賀市にはIT系企業の進出が17社あり、700人を超える雇用が創出されました。また、日本マイクロソフト及びEmpowered JAPAN実行委員会によるテレワーク研修事業の結果、佐賀市在住の個人が東京都や千葉県の企業で遠隔雇用されるなどの良い事例も生まれおり、非常に誇りに思っています。テレワークが普及することで、生活環境が優れている佐賀市は、仕事をするうえでも魅力的な場所になります。大都市から佐賀市に移住してきて、また佐賀市に住み続けながら、大都市の仕事をするという人をこれからどんどん増やしていきたいと考えています。新型コロナウイルスの感染拡大を機に自分も自宅からテレワークで電子決裁システムを利用し、デジタルの便利さを実感しました。まだまだ私の感覚としては、仕事とは対面で人と心を通わせて進めていくものという意識があり、そういう部分を大事にしたいとも思っています。ただ、例えば今回のコロナウイルスや自然災害でそれが出来ない時、そこで仕事が止まっていいのかというと、そうではありません。どのような状況でも仕事を続けられることが、テレワークの良さであり魅力のひとつと感じています」(秀島市長)

---自治体業務のデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進むなか、現場レベルでは様々な課題が存在すると思います。

「やはり私たちのような年配になると、新しい操作を覚えるまでに抵抗もありますし、年齢に関係なく、変化についていくのが精一杯という方も正直いると思います。また、デジタル化すれば全てが良くなるわけではありません。私のように疎い、難しいと感じる人間もいるわけで、そのような人への配慮も別途考えておくなど、使いこなせない=“駄目な人”というレッテル貼りをしない社会にしていくことが大切です。その上で、全員がそれなりに操作でき、活用できる環境が一番望ましいと思いますし、思い立った時にすぐに手を伸ばせるところに教育機会があることが不可欠です。また、小さな子どもや若い人の中にはものすごくデジタルに長けた人もいますので、そのような方たちにはデジタルをどんどん活用していただき、支え合っていただきたいと思います」(秀島市長)

---足かせとなり得るデジタル化への不安や恐れ、苦手意識などを払拭するには、今後どのような対策が必要になると思われますか?また、2021年9月に発足したデジタル庁への期待もお聞かせください。

「誰もが自分らしく、構えることなく、すんなりと新しい環境に移行できるような環境が重要だと思います。例えば、私が使っているスマホアプリは、文字を入力しなくても、植物を写せば、その名前が出てきます。そのくらい便利な時代になっていますので、思わず使いたくなるような環境作りと雰囲気作りが大切ですね。加えて、デジタル化で何がどのくらい便利になるとか、どのような人が活躍できるようになるのかといったゴールの設定。そこが見えて初めて、皆さんが自主的に、前向きに、デジタルに取り組めるようになるのではないでしょうか。また、デジタルを悪用する人も出てくるため、安全性などへの対応も必要です。これらの包括的な現場視点を持って政府には政策を進めていっていただきたいと思います。」(秀島市長) 

 

佐賀市 秀島敏行市長(当時)がインタビューをうけている様子です

---まさに秀島市長がリーダーとして示されたビジョンがDXには不可欠ですね。また、おっしゃるようにデジタル化が進むにあたり、個人のデータやプライバシーの保護、セキュリティなどは世界的に見ても重要な課題です。マイクロソフトとしてお客様の情報を責任を持ってお守りすることを最優先事項として取り組んでいますが、同時に研修を通して企業や市民、また行政職員向けにも発信していきます。

マイクロソフトのプライバシー原則:その中心はお客様

---誰もが輝ける多様な社会を実現すべく、秀島市長は長らく市政の中で発達障がいをお持ちの方へのご支援に力を入れてこられました。これはデジタル庁が掲げる「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」というスローガンにも通じるメッセージだと思います。

「発達障がいには、周辺環境の変化に影響を受けたり、コミュニケーションを図ることに苦手意識を持たれる方々もいる一方、特定の分野で天才的な能力=個性を発揮される人もたくさんいらっしゃいます。2019年に開催された「いつでもどこでも誰でも、働き、学べる世の中づくり」を啓蒙したシンポジウムであるEmpowered JAPAN in SAGA では、全ての方が個性を活かして働くチャンスや喜びを提供できる手段として、テレワークへの期待が高まりました。また、ITツールの中に自動字幕生成や音声読み上げなど、アクセシビリティの機能が標準搭載されていることもとても印象に残っています。障がいの有無や性別、年齢に関わらず、全ての方が場所に捉われず活躍できる多様な社会をぜひ実現していきたいと考えています」(秀島市長)

マイクロソフトのアクセシビリティへの取り組み

---教育現場でもDX(デジタルトランスフォーメーション)化は進行中で、佐賀市内の小中学校ではデジタル端末が一人一台整備されています。秀島市長は早くからデジタル慣れしておくのは「良いこと」としながらも、「デジタルだけに頼るのではなく、自然のありがたさ、自然の厳しさという事も、片方では教えていかないといけない」と強調されています。

「大事にしたいのは “バランス” です。もちろんオンラインで出来ることはありますが、一緒にこの場を過ごすことの意義、アナログの重要性というものはとても大切です。何でもかんでもデジタルで完結しようとすると、人間として、社会として一番大切なものを見失ってしまうような気がしてなりません。アナログとデジタル両方のバランスを頭に入れつつ、それぞれの長所を引き出していくことが大切でしょう。そういう点を意識したデジタル研修を提供いただけるのは非常にありがたいと思っています」(秀島市長)

 

秀島市長と日本マイクロソフトの宮崎さんが座って会話をしている様子の写真です

---自治体、教育現場のDX化に加え、政府は昨年10月、脱炭素社会の実現を目指す「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、これに伴い、IT関連企業では業界をあげてカーボン排出量削減に向けた取り組みを進めています。マイクロソフトでは2030年にカーボンネガティブの達成を宣言しました。佐賀市では、2014年に「佐賀市バイオマス産業都市構想」を策定するなど、世の中に先駆けて持続可能な環境づくりに取り組んできました。そこに着目した背景をお聞かせください。

「今の地球環境は、私が小さい頃に比べて条件的にかなり悪くなっています。これ以上、悪化させないこと、これがまず第一です。そして、次世代に引き継ぐために、何らかの形で環境問題を捉えていく必要があると感じたことがきっかけでした。ただ、一朝一夕で効果が出せる事業ではないので、その大切さを理解していただくまでには苦労もありました。長期的な視野に立ち、地道にコツコツ継続していくことが大事になります。デジタル人材育成などの教育政策も同様ですが、市民の皆さんには、近視眼的に、特に目先の損得だけで判断しないようにとお伝えしています」(秀島市長)

---現在、佐賀市は暮らしやすさでナンバーワン(※1)、九州・沖縄のテレワーク環境でも1位(※2)になるなど、あらゆる面で生活環境が整ってきており、ポストコロナ時代における都市としての可能性が高まってきています。16年にわたり市政を担ってきた秀島市長が描く、佐賀市の10年後の姿をお聞かせください。

「とても美しい自然環境が残る山間部では、過疎化が進んではいますが、おかげさまで高い水準のテレワーク環境が佐賀に整いつつあります。田舎にいながら都会並みの仕事が出来るようになったことで、首都圏や大都市圏から人が流れてくると良いですね。そして、アフターファイブや休日には、豊かな自然の中で大切な家族や友人たちと穏やかな時間を過ごす……そんな人間らしい暮らしをエンジョイできる社会になってほしいと思います」(秀島市長)
---たくさんの力強い、そして本質的なお言葉をいただき、本当にありがとうございました。最後に、全国の自治体に向けたメッセージをお願いいたします。

「Windows、デジタルなど、ちょっと難しいイメージが強かったマイクロソフト社の皆さんと、佐賀市の美味しい料理とお酒を食べて、飲んで、騒いで、とても人間臭い、アナログなお付き合いをさせていただき、マイクロソフトという社名に対して抱いていた高いハードルが、消えてなくなった気がしました。中でも、日経新聞掲載のために、吉田社長さんと対談をさせていただいた時に、社長さんの口から、人を大切にする、人間中心の考えを伺い、とても暖かい気持ちになったのを思い出します。マイクロソフト社とお付き合いをさせていただくようになったことが、私たちにとってどれほど自信になったか分かりません。MAICが市内に立地していることは私たちの自慢でありますし、佐賀市の未来を担う子どもたちにとって重要な存在になると思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」(秀島市長)

※1 ㈱野村総合研究所「2017年 成長可能性都市ランキング」より
※2 2021年 日本経済新聞の調査

 

退任される秀島市長に感謝状を贈呈している様子の写真です

※ ご退任される秀島市長に日本マイクロソフト代表取締役社長 吉田仁志より感謝状を贈呈させていただきました

「佐賀市は、人口23万人余り、佐賀県の県庁所在都市です。九州最大の都市福岡市へはJR九州の特急で40分、車で約1時間と大変近く、便利な立地です。空港や高速道路のインターをはじめ様々な都市機能も充実しており、加えて自然環境も整っていて、きれいな空気と水、美味しい食材に恵まれた、とても暮らしやすいまちです。秋から冬にかけて、佐賀市の空には、熱気球が日常の風景として浮かんでおり、毎年11月には、世界有数の熱気球国際大会を開催しています。テレワーク環境も十分に整っており、移住先としては、とても魅力的なまちです。皆さん、佐賀市に是非お越しください。」

 

美しいインテリアの空のオフィス
左の壁に大きなテレビ画面を持つオフィスの廊下
佐賀県佐賀市の上空にたくさんの熱気球が飛んでいる様子の写真です

※インタビューは 2021 年 10 月 15 日に実施いたしました