Image photo of logistics.

ロジスティクス/物流市場の規模は年々拡大を続けており、特に電子商取引 (EC) 分野の市場規模は急速に拡大しています。
2020 年は新型コロナウィルスの世界的な流行に伴い停滞したものの、2021 年の日本国内の BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、20.7 兆円(前年 19.3 兆円、前々年 19.4 兆円、前年比 7.35% 増)に拡大しています。また、2020 年の日本国内の BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は 372.7 兆円(前年 334.9 兆年、前々年 353.0 兆円、前年比 11.3% 増)に増加しました。

一方で、ロジスティクス/物流業界には人手不足やコスト上昇、労働環境などさまざまな課題が生じています。また、消費者の意識や行動が変化するスピードも早く、感染症の流行や国際的な紛争など将来の予測が困難な時代に対応するためにサプライチェーンは広範かつ多様化しており、ロジスティクス/物流業界にはその変化に対応する変革が求められています。

経済産業省「令和 3 年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」


ロジスティクス/物流業界はこれまでも、市場の変化や課題に対応するために DX が進められてきました。しかし近年の市場の活況に伴って、小口荷物や厳格な管理を必要とする荷物の増加など顧客ニーズの多様化・複雑化が進み、ロジスティクス/物流業界で以前から指摘されてきた人手不足や再配達対応などの課題がより一層深刻化しています。それらの課題を解決するためには、レジリエンスを高め、データ分析から自動化、プラットフォームソリューションまで、最新テクノロジーの理解と活用が必須となるはずです。

大きな変革期を迎えているロジスティクス/物流ビジネスで勝ち残るためのカギは、受発注/在庫管理/運送車両/交通情報などすべてのデータを連携して物流インフラを最適化する「スマート・ロジスティクス」にあります。マイクロソフトは、スマート・ロジスティクスを実現するためのさまざまなソリューションを提供しています。


ロジスティクス/物流業界と親和性の高いマイクロソフトのソリューション

マイクロソフトのソリューションはロジスティクス/物流業界と親和性が高いと言えます。

まず、マイクロソフトは配送ルートや交通量の最適化などで期待される量子コンピューターの活用をはじめ、IoT やデジタルツイン、データ分析基盤などの広範な技術とノウハウを保有しており、「Azure Maps」のような地図ソリューションも持っています。これらの強みを生かして、世界中で物流事業者の課題解決を支援しています。

また、マイクロソフト自身は物流事業者ではありませんが、創業以来 PC や周辺機器のメーカーとして築き上げてきた独自のグローバルサプライチェーンを持っています。自分たち自身で物流を使いこなしてきた経験から、物流の実態と難しさを理解したうえで課題解決を支援できるのです。物流事業者ではないマイクロソフトはお客さまと競合する立場ではありませんから、協業しやすいことも強みとなっています。

マイクロソフトでは、個別企業の DX 支援だけでなく、視野をロジスティクス/物流業界全体に広げ、さらなる効率化のために新たなコンセプトを立ち上げました。それが「スマート・ロジスティクス」です。スマート・ロジスティクスとは、特定の企業だけでなく、ロジスティクス/物流業界全体の課題を解決していくための取り組みであり、マイクロソフトでは、データ収集や受発注管理、倉庫管理、車両管理、サプライチェーンマネジメントを含む 10 の基本分野にフォーカスし、クラウドを基盤とするデータ活用によってロジスティクス/物流業界全体の DX を推進しています。


国内のスマート・ロジスティクスを推進する日本マイクロソフトの取り組み

スマート・ロジスティクスを日本でも具体的に進めるため、日本マイクロソフトは 2020 年 7 月に組織横断型のバーチャルチームを立ち上げました。営業、マーケティング、IoT 、複合現実(MR)、パートナー事業部などに加え、金融、物流、運輸、製造、小売、自動車ほか、物流に関わるさまざまな業界の担当者がメンバーとして活動しています。
メンバーが自分の顧客企業から物流に関する相談を受けた場合にはいったんチームとして引き受け、すでに他業界で成功した事例がないか、具体的な問題解決につながる技術を持つパートナー企業はないかなど、メンバーの知識とノウハウを横断的に組み合わせて、さまざまな角度から最適な施策を検討していきます。
こうして広い視野から多くの顧客企業の課題解決を図ってきたバーチャルチームは、 2022 年 7 月からは、脱炭素や規制対応が求められ複雑化しているロジスティクス/物流業界に特化した課題やシナリオをサポートすべく、物流を取り巻く自動車・鉄道・運輸等のモビリティ業界やサステナビリティの担当者を中心に活動をしています。

具体的な取り組みとして「Azure Synapse データベース テンプレート」を活用した支援があります。Azure Synapse データベース テンプレートは、特定の業界のニーズを満たすために事前に設計された、ビジネス上のおよび技術的な一連のデータ定義で、業界のベストプラクティス、政府の規制、複雑なデータと分析のニーズから派生した共通の要素を提供するブループリントとして機能します。このテンプレートのなかには貨物運送およびロジスティクスのサービスを提供する企業向けのものも存在しており、ロジスティクス/物流業界の多くの企業で DX の指針として役立てられています。
さらに、Azure Synapse データベース テンプレートは企業の社会貢献にも配慮しており、二酸化炭素の管理コンポーネントはすべての使用可能なデータベース テンプレートに含められています。 これらのコンポーネントは、温室効果ガスの直接および間接的な排出を追跡して報告する必要がある企業に、便利に活用いただけるはずです。


スマート・ロジスティクス のトップランナーに学ぶ

ここからは、マイクロソフトの支援によってスマート・ロジスティクスを推進する企業の事例をご紹介します。

【データ収集蓄積・分析事例】ヤマトホールディングス

2021 年夏に日本で開催され、数多くのドラマと感動を生み出した国際的なスポーツ大会。その膨大な物流を支えたのが、ヤマトホールディングス株式会社です。そのために同社は物流計画やリソース配置、実績などを可視化できるダッシュボードを構築しました。
その基盤として活用されているのが Microsoft Power Platform です。採用理由は、アジャイル開発が可能なこと、すでに大会組織委員会で利用されていた Microsoft Excel との連携が容易なこと、そして十分なセキュリティが担保できることでした。これによって約 11,000 台の車両と約 7,700 名の総力を結集、日々変化する物流要件に迅速かつ安全に対応しながら、効率的で確実な物流を実現したのです。またダッシュボードによる情報の可視化は、大会組織委員会とヤマトHD との間に共通認識を醸成するうえでも、大きな貢献を果たしました。

日本マイクロソフト お客様事例:
 Microsoft Customer Story-Microsoft Power Platform で構築したダッシュボードを活用し、史上最大となる国際的な大規模スポーツ大会の物流を実現

【倉庫管理(WMS)事例】thyssenkrupp

thyssenkrupp では、データサイエンスの専門知識が不足していたことや、社内でのデータ形式や保存に課題があり、豊富なデータが未使用のままになっていました。データを分析、可視化し、最終的にそこからアルゴリズムを構築してさまざまなシナリオにデプロイ可能にする関連ツールがなかったのです。
そこでマイクロソフトの Azure を利用し、年間 200 万件以上の注文をより効率的に処理し分析するプラットフォーム「alfred」を構築。データの可用性を高めることに成功しました。Alfred は Microsoft Azure Machine Learning に基づく自己学習アルゴリズムを使用して、関連するすべての情報を分析し、重要な調査結果を生成、適切な推奨事項を従業員に提供します。
alfred が顧客ごとの利益率や機械のメンテナンス予測、状況に合わせた出荷予測などを指示することで、在庫レベルやサプライネットワークの最適化も実現、満足度も向上しました。さらに従業員が自分でアクセスできるデータが大幅に増加しデータの可用性と透明性が向上し、DWH 担当者の工数を削減できました。

Microsoft Features:
Thyssenkrupp Materials Services ‘keeps calm and carries on’ – with its new Alfred AI solution to optimize its logistics network

【輪配送管理(TMS)事例】Merck&Co.,Inc

医薬品の有効性を持続させるためには、保存、取扱、および出荷作業の全体を通して適切な温度を維持する必要があります。 Merck&Co.,Inc では、有効性が低下した医薬品の破棄が課題となっていました。ビックデータの分析により温度変化の要因を調査し、低温管理が必要な医薬品の輸送成功率を向上させる必要があったのです。
そこで Microsoft R Server (現: Machine Learning Server) を利用してコールドチェーンに影響を与える様々な要因(出発地、目的地、出荷ルート、屋外の天候、物流業者など)を分析し、温度変化の原因を特定。過去 14 年分のセンサーデータ(コンテナ輸送中の温度を測定したデータ)を活用し、医薬品の輸送後の温度上昇率を事前に測定できる予測モデルを開発しました。
輸送時の温度変動を事前に予測することで、医薬品の鮮度を損なわない最適な温度の管理が可能になり、在庫の廃棄コストを削減できるように。さらに Microsoft R Server は内蔵の Hadoop サポートに加えて R の並列処理が可能なため、大量のデータを高速に分析できます。

【車両管理/ドライバー支援事例】SCANIA

SCANIA では、中核となるビジネスプロセスがアナログで、紙やホワイトボードなどにかなり依存していたため、マネージャーが活動を調整するための、簡単で一元化された方法がありませんでした。そこで、欧州事業の各拠点を最適化することで運用の混乱を最小化することを目指しました。
Project Online を Microsoft SharePoint Online と Microsoft Power BI で補完した、新しい社内プロジェクト計画ソリューションを構築することで、Azure で膨大なデータから情報を探り出して分析し、全体の輸送の流れを測定および監視できるようになりました。
さらに SCANIA 社全体の状況についてリアルタイムで洞察を得ることにより、データに基づく迅速な意思決定が可能になり管理プロセスも合理化。結果として経営が向上、設備の損傷、検査、および安全に関連した遅れから生じる運用の混乱が最小に抑えられるようになりました。

Microsoft Customer Stories:
Automotive giant Scania boosts European project management efficiency

【現場支援事例】トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車では、紙の作業手順書・修理書を見ながら行う作業に多くの時間がかかっており、内部構造や勘やコツなどの表現にも限界がありました。ベテラン技術者へのスキル依存度が高く整備士の作業技術レベルの標準化や作業品質の維持確保が課題となっていたのです。
そこで HoloLens 2 を導入し、トヨタ販売のサービスエンジニア(整備士)を対象にした 3D の作業手順書・修理書を Mixed Reality テクノロジーによって作成。段階的な作業手順を 3D で表示する Dynamics 365 Guides の活用および Azure AI を活用した、作業ミスや作業漏れを検出する機能の開発および検証を実現しました。
その結果、作業の習熟度が上がることで未経験や経験の浅い整備士でも短期間で質の高い作業ができるように。点検作業にかかる時間を 70% から 80% カットでき、今後の作業技術レベルの標準化と作業品質の維持が期待されています。

日本マイクロソフト株式会社 公式 YouTube チャンネル:
〔HoloLens〕トヨタ自動車事例 Microsoft HoloLens を活用した整備士の働き方改革

【サードパーティロジスティクス(3PL)事例】SNCF

27 万人の従業員と国際的なサービス提供地域を持つ SNCF では、業務効率化に向けて “Digital for All” と呼ばれるソリューション開発プロジェクトを発足。Power Platform を採用し、従業員へのトレーニングを積極的に実施、各従業員が自分の日常の業務を改善する方法を革新することになりました。
フランス語以外の話者のコミュニケーションを容易にするために Power Apps と Microsoft Translator を用いた音声認識アプリを 1 日で開発しドライバーに提供、サプライチェーン注文管理、検査アプリ、リクルーティング アプリなど、Power Apps や Microsoft Flow、Power BI などをあらゆるマイクロソフトソリューションを活用して、アプの迅速な構築およびカスタマイズを行いました。
その結果、直感的な UI でコミュニケーションが図れるデジタル言語アプリが国際的なドライバー間の緊張を緩和し、仕事に集中できるようになりました。さらに数万人の従業員が 150 を超えるアプリを使用してタスクの簡素化と合理化を進め、Power BI のリアルタイム分析を使用してエラーを減らし、信頼性を高め、生産プロセスを改善できました。

Microsoft Customer Stories:
SNCF: Power platform customer success story

【利用者サービス事例】United Parcel Service(UPS)

220 を超える国と地域で毎日 1,900 万を超える荷物を配達する UPS は、膨大な顧客追跡リクエストに対する顧客体験の向上と IT スタッフの業務効率化を目指しまして革新的なデジタル施策を進めています。
UPS は複数のバージョンがある UPS Mobile アプリの開発に Xamarin 用の Visual Studio Tools を採用し、コードを統合して複雑さを軽減、Microsoft ボットフレームワークと Azure で実行されるチャットボットを使用してサービスレベルを向上しました。
UPS Mobile の新しいバージョンによって顧客体験を改善し、コストを抑えながら開発スピードを大幅に短縮し開発者の生産性を向上。顧客はボットを利用することで、テキストベースおよび音声ベースの会話で簡単に貨物、料金、UPS の場所に関する必要な情報を得られるようになりました。

Microsoft Customer Stories:
UPS paves the way for better service with faster development and artificial intelligence

【サプライチェーンマネジメント事例】KOTAHI

ニュージーランドからの輸出品の多くは日持ちしないため、出荷のタイミングを最適化し、需要を正確に予測することが重要です。ところが KOTAHI では、積載効率向上と全体的な輸送コスト削減のための需要予測が主導のプロセスに依存しており、工数と属人化が課題になっていました。
そこで需要予測プロセスの自動化を目指して Azure Machine Learning を利用した新しい需要予測アプリケーションを構築しました。このアプリケーションでは Azure Data Factory を使用して、Microsoft Dynamics AX、Azure SQL Database、Kotahi のトランスポート管理システムからの履歴需要データを読み取るプロセスを自動化して予測を生成することができます。
結果として、需要予測を 4 日から 30 分に短縮。BI を活用して意思決定を迅速化しながら顧客へのサービスを改善する方法について、より多くの洞察を得られるようになりました。さらに予測の精度を 80% から 90% 以上に向上し、コンテナ容量の最適化とサプライチェーンの効率化を実現。サプライチェーンの年間コストを 100 万米ドル以上節約できる見込みです。


日本のロジスティクス/物流業界のサービス品質は、世界的に見ても極めて高いといわれています。しかしその半面、業務効率の改善が進んでおらず、いまだに紙によるデータのやりとりが行われ、電話や FAX が主な連絡手段という場合も少なくありません。
日本マイクロソフトは個別企業と業界全体の両方を見据えながら、クラウドを基盤とする新たなデータ活用によってロジスティクス/物流業界全体の DX を支援してまいります。